猫はいつもつまらなそうな顔をしていますが Part7

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521名無し草
前いた猫は自分の名前と「猫」って言葉に反応した。
自分が「猫」と呼ばれるものだと言うことは分かっていたようだが自分が人間と
は別の生き物であると言うことは長い間理解していなかったようで、綿の国星の
チビ猫のようにある日起きたら人間になると思っていたような雰囲気だっだ。
そんな彼に野良猫の友達が出来た。去勢していたうちの猫は他の野良猫には全く
相手にされてなかったが、その三毛猫だけは姉弟のように親しく接してきた。
三毛から見てうちの猫は世間知らずのおぼっちゃんだったのだろう。猫のしきたりを
彼女は色々と教えていた。
二匹で背中合わせに座り周りを警戒する。うちの猫が飽きて振り返ると無言で
猫パンチを食らわせまた背中合わせに座る、そんな感じで彼女は教育していた。
我が家の猫もお返しに家に遊びに来いと誘っていたが、家の中に人間がいるので
どうしても怖くて入れず玄関先で震える三毛がなぜ怖がっているのか分からない
ような世間知らずぶりだった。
522名無し草:03/06/15 18:01
二匹は本当に仲良しだった。
そしてそんな事が続いたある日。玄関を見ると三毛がそこに座っていた。
普段人間を怖がる彼女が開け放しのドアから「にゃあ」と鳴いてきた。
「三毛ちゃん。今うちの猫は外にいるよ」と言うともう一度「にゃあ」と鳴いた。
「なになに私を呼んでるの?」とアジの開きのしっぽを持って外に行くと三毛は
なんだかずいぶん痩せていた。
「どっか物陰でお食べ」と地面にアジを置くとちらっとこちらを見て、静かに
その場で食べ始めた。
この猫こんなに痩せてたっけ。こんなに人を怖がらなかったっけと思いながら
「いつも遊んでくれてありがとうね。これからもよろしくね」と私は言った。
食べ終わって三毛は、黙ってどこかへ行った。

それが三毛を見た最後だった。
三毛はその日から姿を消した。
三毛は、私にうちの猫のことをよろしくと言いに来たのかもしれない。
気が付けばうちの猫は猫らしい猫になっていた。/e