「野梨子。野梨子のそういうところ、すごくよくないよ。こんなところで、みすみす
勝負を捨てるようなマネをするの?テニスの時を思い出せよ。強気な野梨子はどこへ
いったんだよ?」
怒ったような美童の顔に野梨子は目を丸くした。
美童は色白の肌を紅潮させて熱弁を奮っていた。
「最後まで勝負を捨てちゃだめだ。野梨子には何が何でも清四郎を自分のものにして
やるっていう気迫が足りないんだよ。あきらめるな、最後まで。」
眉間に皺を寄せて懸命に考えていた野梨子はやがて顔をあげると、
微笑んだ。美童は彼女の瞳に再び強い光が戻ったのを見ると嬉しくなった。
「わかりましたわ、美童。ネバーギブアップですわね。最後まで勝負は捨てませんわ」
金髪と黒髪、二人の悪党は健闘を誓い合った。
そんなこととは知らない可憐と清四郎は、すでに別のことを考えていた−−−。