◇◆◇◆有閑倶楽部を妄想で語ろう12◇◆◇◆

このエントリーをはてなブックマークに追加
500名無し草:02/09/27 05:01
人はいても感想書きたいような作品がないという罠(w
501名無し草:02/09/27 05:05
>497
そだねー。
私は490ですが、「?」のあと空欄って本当に知らなかったので
「知らなかったよアリガトウ」って感じ。

「!!!」に関してはマンガじゃ多いし(私はドラゴンボール世代)、
マンガぽくなるってことかも。
つか、元ネタがマンガだし、このスレに関してはあまり気にせずとも。
502名無し草:02/09/27 05:05
感想で気がついたけど、椿三夜の感想書いてなかった…
毎回楽しみにしてるのに、
他の話題でレスが流れたので、忘れてたよー

>椿三夜
なんか、ますますなぞめいてきてますね。
初めの方にあった、あのお歌、実は伏線だったのですか。
うーん、すばらしい構成。
何気ない登場人物の仕草が、緊迫しつつも、しっとりとした雰囲気が出ててすごい。
続き、楽しみにしてます!
503名無し草:02/09/27 05:16
>>497
「*多用すると*、DQNっぽく見える」ってあるから、1回使った=DQNでは
ないんじゃ?
いずれにしろ、「見える」の主語は490さんなんだから、490さんにとっては
そう見えるということ。497さんは違うというなら、それでいいんじゃない?
最後2行には禿同。

>>501
490さんじゃなくて、491さんなのでは?
504名無し草:02/09/27 08:32
でも最近ほんとに新作増えたよね。
祭りの最中に妄想ためこんでた人が
多いって事なのかな?
505名無し草:02/09/27 11:16
無知な自分がお恥ずかしい。
色んな作品読んだら
「〜。」なんて使って無かった。
ハァ〜ただでさえ駄作なのに...
気を付けます。

506名無し草:02/09/27 12:45
う、う、う。
悠里はなんて幸せ者なんでしょうか。
それにしてもナオ様のあふれんばかりの妄想は、渇くことはないのでしょうか!?
もう次が楽しみで楽しみで♪
はぁ。
明日が待ちどおしいわ(って明日もアップするとは言ってないって!?)

>渇くことはないのでしょうか!?
あります。っていうかすでに渇いてます。さぁて、この先どーっすかなぁというカンジです(笑)←笑い事じゃないって
でもあと一週間ほどはまだ毎日リク小話をアップしていきますのでね〜♪




sugoine
genngareya
507名無し草:02/09/27 12:55
衣擦れの音が響いた。
悠理が畳を後ずさっていたのだ。
野生の勘が、身の危険を告げていたのである。
むろん、逃げられるような距離ではない。
たった3歩。
それだけで、花は簡単に手折られてしまう。
魅録は片膝を付くと、悠理の細い腰に腕を回した。
僅かに抵抗する波動が伝わってきたが、構わず胸に引き寄せる。
悠理は腕をかざして、身体の密着を避けようとした。
「ちょ、ちょっと待ってくれ・・・」
「ダメだ」
悠理は男が分かっていない。
力ない抵抗など、プレーンヨーグルトにフルーツソースをかけるようなもの。
どうぞ美味しく食べてください、と言わんばかりなのである。
魅録は容易く彼女の腕を取り払うと、貪るように唇を吸い始めた。
「みろ・・・」
性懲りもなく発された抗いの言葉さえ、潤んだ熱い舌が容赦なく巻き込んでゆく。
柔らかな髪が梳き上げられる度、口付けは深みを増し、悠理は息もできない。
苦しい息の中で、危うい光が乱反射する。
見えない絆を結び合うようなキスを終えると、魅録は彼女の瞼に触れた。

kakoii!
arenotudukikakeya!
508名無し草:02/09/27 13:08
先生!精神遅滞児がここにいます!
特殊学級へ連れ戻してください!
509名無し草:02/09/27 13:14
気の毒になー
ここで作家をやれば細かいお約束や
皆が気にもしてなかった表記ミスをつっこまれ
卒業すれば荒らしに付け込まれる。
ナンダカナー
510名無し草:02/09/27 13:19
ほんとだね〜
作家は名無しのおもちゃかいって
511名無し草:02/09/27 13:32
アドバイスという名の叩きがたまにあるよね。
はじめは親切そうに書いてあるんだけど
最後に「小学校で習わなかった?」とか
「DQNにみえる」とかさ。
512名無し草:02/09/27 14:01
細かい表記法や文法をいちいちつっこまれるんじゃ
なんかこわくてうpしずらいんじゃないの。本当に気の毒。
そこまで細かくこだわる方がおかしいと自分は感じる。
もっと気楽に妄想できる場所であってほしいよ。
513名無し草:02/09/27 14:08
でもさ、祭り以前のサイト持ちじゃない作家って
どうしちゃったんだろうね〜
514名無し草:02/09/27 14:13
>513
あちこちのサイトにバラけて行った
あるいは
名無しとして作品発表してる
って感じなんじゃないの?

ここに愛想つかした人も多そうだけど・・・(ニガワラ
515名無し草:02/09/27 16:03
文章の書きかたにこだわらないくていいと思うのは剥げ堂。
でも、みんな過剰に反応しすぎ。
煽りですらないじゃん、あの程度。
ここは2chだしさ。
みんな、もっと鷹揚になろうよ。
516名無し草:02/09/27 16:50
>>490
」の前に。をつけないというのは、ただの慣例であって、きちんと
決まっているわけではないのでは?
ちなみに国語の教科書や子供向けの本(青い鳥文庫など)では、
」の前に。がついてますよ。
たしか作文の授業では。」と1マスにおさめるように習った記憶があるけど。
517名無し草:02/09/27 17:09
>516
私も小学校〜作文の時は、そう書いてたよ> 。」
一マスに収めるように、とも習ったから今日の今日まで
それが正しいのだと思い込んでいたよ。
しかし、「〜。」としないのは、大人向け(?)の小説
なのでは?確かに 。 あると読みづらくなるしね。

なので、「小学校で習わなかった?」ときかれたとき
「うんにゃ、あたしゃ〜そうはならわなかったわよっ!」
と思ったべよ。
518名無し草:02/09/27 17:54
>>516-517
印刷・出版用原稿・論文の場合、>>490のやり方で定着している模様。
ただし、小学校の作文の授業では>>516-517のやり方で指導して
いるため、子ども向けの本はそれに準じることがあるのかも。
参考文献「論文執筆ルールブック」中村健一著
519名無し草:02/09/27 18:31
前から思ってたんだけど有閑倶楽部のメンバーって誰と誰が同じクラスなんだろ?
それともみんな別クラス?
知ってる人いる?

520名無し草:02/09/27 18:34
>519
ガイシュツだったと思うけど・・(少女漫画板のほうかも?)
悠理&魅録は同じクラスらしい。他は不明のよう。
521名無し草:02/09/27 18:57
ガイシュツすまそ
逝ってきます。。。
522名無し草:02/09/27 22:19
>513・514
祭り以前のサイト持ちじゃない作家さん戻ってこないかな
とくにあの2人とつぶやいてみるテスト
523名無し草:02/09/27 22:33
触発されて私も作ってみた。アラーシと思われないように念の為貼っとこう。

諸君、私は〜が好きだ【しょくん、わたしは〜がすきだ】[成句]
漫画「HELLSING」(平野耕太・作)を出典とする長文コピペ。
何かに熱狂的にはまっている・萌えている様を宣言するコピペとして流布している。
原文は>>5の2典にあります。ではいきます。
524名無し草:02/09/27 22:35

諸君 私は清×野が好きだ
 諸君 私は清×野が好きだ
 諸君 私は清×野が大好きだ

 清四郎が好きだ 野梨子が好きだ すだれ頭が好きだ でも本当は下ろした方が好きだ
 大和撫子が好きだ 幼馴染という設定が好きだ もどかしいのが好きだ でもじれったいのが本心だ
 学園で 街中で 入園式で 信州で パトカーで 廃ビルで 瀬戸内海で 南海で 初詣で 空港で
 この有閑倶楽部に登場する 清×野を匂わせる ありとあらゆるエピソードが大好きだ
 二人をならべた 微笑ましい登下校シーンが好きだ
 幽霊を見たと騒ぐ野梨子を 清四郎が催眠暗示をかけて眠らせているのを想像した時など 心がおどる
 美童の操る よろよろ運転に 「こ・・・こわい・・・」と震える野梨子を 清四郎が抱きしめているのが好きだ
 悲鳴を上げて 暴走するパトカーから 野梨子を片手抱きして飛び出した時など 胸がすくような気持ちだった
 廃屋ビルで 「野梨子は僕につかまれ!」と手を差し伸べ 怖がる野梨子を「大丈夫だ、しっかりつかまってろ」と
 励ますシーンが好きだ
 取っ組み合いの喧嘩などした事無い野梨子が 清四郎を庇って悠理と互角に戦っていた様など 感動すら覚える
 「助けてくれると思ってましたもの」「まかせなさい、いつでも絶対助けますから」と 微笑みあう様などはもうたまらない
 魅録と美童と可憐が 悠理の両親とともに 結婚話に大盛り上がりするのに 「清四郎はだめですわ!」と野梨子が一人
 反対するのも最高だ
 結婚を承諾した清四郎を 野梨子が思いきり引っぱたいた時など 絶頂すら覚える
 裕也との交際を 保護者気分の清四郎が 難癖つけて反対するのが好きだ
 みんなを助ける為 わざわざ変装までして潜入したのに 「清四郎は冷たいところがありますもの!」と思いきり目の前で
 言われてしまった清四郎の立場は とてもとても悲しいものだ
 倶楽部が分裂し インドで仲直りした時 頬を赤らめて謝りあっているシーンが好きだ
 香港マフィアに追いまわされ おまるを抱えて部屋から出る姿を三度も清四郎に見られてしまったのは 屈辱の極みだ
525名無し草:02/09/27 22:36
 諸君 私は清×野を 悶える様な清×野を望んでいる
 諸君 私に付き従う清×野スキーな諸君 君達は一体 御大に何を望んでいる?
 更なる萌えエピソードを望むか? キスまでOKの さわやかラブシーンを望むか?
 妄想の限りを尽くし 少女漫画の枠をぶち壊す 嵐の様なセクースシーンを望むか?

 清×野!! 清×野!! 清×野!!

 よろしい ならば清×野だ
 我々は満身の力をこめて 今まさに振り下ろさんとする握り拳だ
 だが この暗い闇の底で 20年もの間 堪え続けて来た我々に ただの清×野ではもはや足りない!!

 萌える清×野を!! 一心不乱の大萌えの清×野を!!

 征くぞ 諸君



頭がずれて鬱だが思いの限りを叫んでみますた。お目汚し失礼しますた。
526名無し草:02/09/27 23:03
>523-525
同志よ!と画面を前にして叫びそうになりますた。
途中さりげなく本音が混じってるのにワロタ。
527名無し草:02/09/28 00:16
>>524
>すだれ頭が好きだ でも本当は下ろした方が好きだ

わ、ワタシも。スパの時は萌えた。
528名無し草:02/09/28 00:46
>523-525
私はどっちかっていうと清×悠なんだけど、これは「禿同!」な部分もあってワロタ。
529名無し草:02/09/28 01:52
>523-525
すげえ・・・ちゃんと元の文をなぞってる!お見事!
私も見たいよ〜。>一心不乱の大萌えの清×野
530名無し草:02/09/28 07:37
>523-525
清×野への愛が溢れてて(・∀・)イイ!
私はカップリングには拘らないタイプなんだけど、
こういう愛溢れるカップリング話は大歓迎でつ♪
531名無し草:02/09/28 09:23
>524−525
声高らかに叫んでいるところを想像してワロタよ・・・

>嵐の様なセクースシーンを望むか

これを望みます(w
532名無し草:02/09/28 09:44
3×3=9通り、どのカップリングもOKの私ですが
524-525の雄たけびはワラタ。
他のカップリングでもだれか雄たけんでくれ!
533椿三夜-23:02/09/28 10:24
>>483
薄暗い土蔵の中で、堆く積み上げられた大きな箱を、二人は片っ端から開けていった。
この蔵に入ってから、既に三時間が経つ。
衣装、茶道具、器物などが仕舞われた箱が続き、ようやく書物類を収めた箱を見つけ出したのが一時間ほど前。
今は、天井高くに吊るされた裸電球の灯りを頼りに、それを読み進めているところであった。
「なんかあったか?」
「いや、まだ何も……」
それから、更に一時間が経った。
「あ、これは…」
次の一冊を手に取り、その黄ばんだ表紙に書かれた文字を読んだ。
日是覚帳とある。
清四郎は、手早く頁を繰りながら、
「魅録、歳時記がありましたよ!」
顔を突き合せるようにして、二人は文字を追った。
「これだ…!」
―――貞享三年丙寅の年、玉水は死んだ。享年二十歳。
心中立ての自害であった。
「自殺だったのか……」
その相手は、頭蓋を割られ殺されたらしい。
無頼の者をけしかけた首謀者として、同じ遊女屋の天神・萩尾が町方に手配されたが、これは行方知れずとなっている。
後、遺恨を晴らさんがための玉水の物の怪が跋扈する。
そこへ旅の僧が現れ、名刀・兼次(かねつぐ)を振るい、これを斬って捨てると、その魂を三国峠に封印した。
「……あ? これで終りか? 釘打ちのことなんか書いてねぇぞ」
清四郎は少しの間沈思し、半眼を上げると、
「僕たちは……と言うより野梨子たちは、あの化け物を甦らせる片棒を担がされてしまったようですね」
「片棒を?」
魅録に促され、清四郎は説明を始めた。
534椿三夜-24:02/09/28 10:25
「……宗台宗(そうだいしゅう)の門下に九眼宗(くげんしゅう)という一派があるんです。鎌倉後期に起った一派で、
 一時は広く伝わりましたが、現在この宗派が残るのは山陰と北陸の極一部、それからこの辺りだけです。
 そして今年は、ちょうど玉水さんの三百十七回忌にあたります」
「どういうことだ?」
「317と言う数は、九眼宗では復活を意味するんです」
「復活……」
「勿論、それは浄土での精神の復活という意味ですが………それを逆手に取ったんでしょうね」
「……317本の釘で玉水を閉じ込めた封印を解いて、この世に復活させたってわけか」
清四郎は声を荒げ、
「大体、社の中心に立てられた柱に釘を打つなんて、どう考えてもおかしいですよ!
 釘を打つということは、何かを傷つけるということなんです。昔は普通の家の柱でさえ、
 釘を打つ時には日を考えたぐらいなんですから!」
額に、じっとりと汗が浮いた。
「…………もっと早く、気付くべきでした」
険しい顔を俯かせ、座り込んだままの清四郎の横で、魅録はすっと立ち上がり、空間の一点を凝視した。
が、何かを見ているわけではない。
胸の内の何かを探しているのだ。
「………おい、清四郎」
「なんです?」
「さっき、旅の坊さんが化け物を斬って捨てたって言ったよな?」
清四郎は、はっと顔を上げ、
「そうですよ、魅録!」
「多分、社の中だろうな。……行こうぜ」
二人は蔵を飛び出し、未練がましく残る薄霧の中を三国峠へ駆けた。
535椿三夜-25:02/09/28 10:26
秋の山中のこと故、大気はひんやりと冷えてはいるが、そのせいだけではない鳥肌が、泥濘んだ山道を急ぐ二人を不快にさせた。
晴れきらぬ霧のせいで、思いのほか時間がかかり、水滴の膜に包まれた社が見えてきたのは、夕刻も間近い頃だった。
「これは悠理たちが壊したワケじゃねぇよな」
木戸の破片が、辺りに散らばっている。
あの化け物の仕業であろう。
足元に落ちた破片のひとつを蹴りながら、どこからか届く水音を、聞くともなしに魅録は聞いた。
ふっとある連想が頭を過ったが、それもすぐに忘れた。
社殿の中に入ると、木戸と同じく、柱の左半分が微塵に砕け落ちていた。
「ひでぇもんだな」
二人は、さして広くもないその中を見渡した。
そこには何かを収める箱もなければ、引出しもない。
「ってことは、上か、下だな」
清四郎は頷いてみせ、手始めに床板を剥がしにかかった。
三枚目の板を剥がそうと力を込めた途端、まだ辛うじて立っていた柱がめりめりと傾くと、天井板が落ちてきた。
「危ないっ」
二人は頭を庇いながら、床に伏せた。
濛々と埃を舞い上がらせ、落ちるべきものが一頻り落ちた後、立ち込めるその埃に咽びながら互いの無事を確認し、
二人はやっと顔を上げた。
と、幾つもの破片の下に、細長い箱が見える。
「………あった、これだ!」
上に被さる破片を取り除き、魅録が桐箱を両手に抱えたちょうどその頃。
木立の家に、徒ならぬ気配が迫りつつあったのである。
<続く>
536名無し草:02/09/30 12:31
まる2日カキコないけどどーしたの?
537夏の匂い:02/09/30 13:02
2レス使います。

悠理がなかなか出てこないし、なんだか物語が脱線ばかりしてますが、
実は「夏の匂い」後の話も書きたいと思っているので、(もう秋だし)
その伏線貼りだったりもします……。
(とか言いつつ、書かないかもしれませんが)
うざったいと思われた方、すみません。
538夏の匂い [22]:02/09/30 13:04
>445

 わたくしは、まるで頑是無い子供でした。



 しばらく海を見詰めていた野梨子は、ひとり海からあがってくる清四
郎に気がついた。こちらに近づいてくる。
 まだ他の三名はジェットスキーに夢中である。
「お帰りなさい」
 声をかける野梨子に、清四郎は滴る海の雫をバスタオルで押さえな
がら、ちらりと横目で悠理を見ながら問う。
「悠理は寝ましたか」
 野梨子は頷いた。
 悠理は幸せそうな顔をして、すっかり寝込んでいる。確かに泳いだ
後の脱力感はひどく心地いいものであるが、貴重な旅の一日を、睡
眠で過ごすのは勿体ない。
「お昼になったら、起きると思いますわ」
「違いない」
 誰に聞いても撫子はかくもごときと言わしめる幼馴染のこの言いよ
うに、清四郎はくすりと笑った。
 清四郎はトレードマークのすだれ頭を今はすっかり崩れて、いつも
より幼く見える。――反対に、野梨子の方は大人びて見えた。
 清四郎は、水着を着た野梨子をまぶしく見詰める。
 幼いときから傍にいた少女は、近頃何かが羽化するように変わった。
ただ輝くばかりの美しさは、何か複雑なものを秘めるようになった。
539夏の匂い [23]:02/09/30 13:04
 野梨子は清四郎の眼差しに気づき、直視できずに目を逸らす。その
眼差しの意味を知らぬほど、いつまでも子供でいられる筈がなかった。
 名も知れぬ、普通の男性が野梨子に投げかけるような眼差しを、今、
清四郎もまた投げかけてくる。憧憬と酷似した、それは。
 胸が痛い。
 目を逸らされた清四郎は、己の視線の意味が、はからずも正しく野
梨子に通じてしまったことを知った。これまで一度たりとも通じたことの
なかったというのに。それだけ野梨子が成熟したということか、それと
も、美しくなった野梨子を見詰める己の視線が、それほどまでに熱を
帯びていたというのだろうか。
「野梨子、僕は」
 とうとう、想いを紡ごうとした清四郎の言葉に、野梨子は肩を震わせ
る。
 いつまでも、子供のようには……
「僕は、ずっと君のことを……」
 何もかも、変わっていく。
 野梨子は、耐えられないと思った。この先に続くだろう清四郎の言
葉が不快なわけではない。ただ、それは困惑だった。
 いつまでも、綺麗なままではいられない。子供のままでは。
 分かっている。自分には、変化を拒む権利などない。
 ――それでも。


 野梨子は、清四郎の口に己の手を遣り、言葉を止めた。
540夏の匂い:02/09/30 13:07
<続く>を入れ忘れました。たびたびすみません。
あと、清四郎ファンの人、すみません(汗)
541名無し草:02/09/30 14:35
>夏の匂い
お待ちしてました♪

>誰に聞いても撫子はかくもごときと言わしめる
そうなんですよね。
野梨子スキーなので、野梨子が美しく描写されているのが嬉しいです。
542椿三夜-26:02/09/30 15:49
>>535
二人が、ぬかるんだ道をものともせずに駆け降りている頃。
老爺の隠宅で待つ面々は、清四郎達が問屋の土蔵でそうしていたように、物置から引っ張り出してきた書物を片っ端から調べていた。
「あ〜、やっぱりあたしにはムリッ! こんなの読めないわよぉ」
と、手に持っていた煤けた冊子を放り出した可憐の傍らでは、文机に向った野梨子が一心不乱に頁を繰っている。
そこへ、悠理と美童がやって来た。
縁側伝いの廊下から、座敷へ続く障子を足で開けると、二人は抱えていた書物をどさっと下ろした。
「物置にあったの、これで全部だよ」
「まだこんなにあるのぉ」
可憐はうんざりしたように、それを眺めた。
美童も同じく、嫌気の差した顔付きになりながら、
「でもさ、またいつあのモンスターが来るかと思うと、おちおち読んでもいられないよね」
「……ふふ。モンスターって言うと、あんまり恐くないわね」
空は既に、桔梗色に染まっている。もうすぐに夜が来る。
誰かが篝灯篭に灯を入れたらしく、早々と訪れた庭の闇を少しだけ払っていた。
「遅いな、あいつら」
「そうですわね。……でも大丈夫ですわよ、あの二人のことですもの」
湧き上る不安を押し殺しながら、四人が言葉を交していたその時。
庭の叢から、うるさいほどに聞こえていた虫の鳴き声が、ぴたりと止まった。
突然、悠理が唸りながら体を硬直させたのと、庭を向いて座っていた美童ががくがくと震え出したのは殆ど同時であった。
雪見障子から見える縁側の縁、そのまた向こうの土の上に、女の顔が半分。
ほの黒い霞がかかったようなその顔は、右半顔を地に埋めた格好で、横向きの目は直と座敷へ据えられていた。
543椿三夜-27:02/09/30 15:50
「ひっ!!」
と最初に声を上げたのは、美童の隣に座っていた可憐である。
反射的にその目線を辿ろうとした野梨子が振り返るよりも早く、するすると軒の上辺りから伸びてきた真っ白な手が、
開いた障子から入り込むと、その首に巻き付きついた。
「あぅっ」
野梨子は仰向けに倒れ、障子を破り、そのままずるずると庭まで引き摺り下ろされた。
「野梨子!」
咄嗟に身を泳がせ、延ばした可憐の腕も空しく宙を掴んだ。
庭の中ほどまで連れて行かれた野梨子の脇に、今やはっきりと女が見える。
それはあの晩、老爺の寝間に淀んでいた女であった。
が、座敷で凍りつく三人が、そのようなことを知るはずもない。
女の半顔が、陽炎のようにゆらゆらと揺蕩いながら、
「…………よこ……しゃれ…………」
細い掠れ声で囁くと、白い腕が野梨子の体を吊り上げていく。
「……よこ……しゃれ……………」
「うっ……うぅっ……」
女は、けたけたと笑いながら、今や宙吊りとなった野梨子の足元辺りを、ずるずると廻り始めた。
「……の………野梨子」
ようやく最初の衝撃から我に返った可憐と美童は、手当たり次第に物を投げつけてはみたものの、
そのようなことでどうにかなるものではない。
二人の背後では、悠理が目を見開いたまま、石のように硬直している。
横向きの女の目がぬたりと笑うと、野梨子の腕から力が抜けた。
意識が体を離れはじめたらしい。
544椿三夜-28:02/09/30 15:51
「まずいよ、可憐! どうしよう!?」
可憐の肩を掴み、美童は為す術もなく震えている。
「…………野梨子」
可憐はぐっと唇を噛み、意を決すると庭に踊り出た。
飛びつくように野梨子の体に腕を回し、激しくこれを揺さ振りながら、
「野梨子、しっかりしなさいっ! のりこったらっ!」
すると、ぴたりと旋回を止めた女の半顔が、物凄まじい形相で可憐を睨み据え、かっと大きく口を開いた。
「きゃっ!」
ふわっと宙に浮いた可憐の体が、阿舎手前の地面に強か叩き付けられた。
半顔の女は、標的を可憐に変えたかの如く、ずるずるとその足元に近付いてきた。
「…………よこ……しゃれ…………」
「や……やだ……来ないでよ………」
地面に尻をついたまま、可憐はじりじりと後退る。
その隙に、ばったりと打ち倒れた野梨子を、美童がすかさず座敷に担ぎ入れた。
半顔は、地面に投げ出された可憐のつま先にまで迫っている。
後退りながら、可憐の手が、ふと傍らにある椿の枝に触れた。
冷たく湿ったその枝を、可憐は無我夢中でへし折り、
「い……いやぁぁーーー!!」
叫び声を上げながら、滅多矢鱈に振り回した。
転瞬、女の目が針のように細められ、そこに止み難い色が浮かんだかと思うと、
「……………お……のれ……たま……みず……」
その呟きを残し、あっと言う間もなく掻き消えた。
茫然と、女が消えた地面を見詰める可憐たちの耳に、玄関からばたばたと物音が聞こえた。
清四郎と魅録が駆け入って来た音であった。
<続く>
545名無し草:02/09/30 16:20
>夏の匂い
おおっ!!清×野の展開!!
嬉しいです、楽しみです〜
546名無し草:02/09/30 16:41
>椿三夜
こ…怖い。
半顔の女は萩尾タンでつか。
真相はどうなるのか、どきどきです。
547名無し草:02/09/30 16:54
原作の野梨子は時々いやみがきつすぎて嫌いなんだけど
妄想の彼女は美しいですね。
548名無し草:02/09/30 23:16
>椿三夜
悠理が硬直して動けないままだと、逃げるのも一苦労。
かなり強力な怨霊さんですね。

コワコワ
549名無し草
>夏の匂い
清四郎が自分をオトコの目で見ている事に気付いてしまった野梨子の
戸惑いが伝わってくるようだ。うう、可愛すぎる・・・。
何気に乱れ髪の清四郎に萌え。(w

>椿三夜
コワイ、コワイヨー。
地面から顔半分の女なんて見たらその場で卒倒しそう。
でもそこで動ける可憐はさすがだ!カコイイ!!