スレ立てご苦労さま
だが一つ言っておくワイ
IGPKは真面目にモナコ殿下の為の部隊であって、寸毫たりと危害を加える訳は
ないのジャイ!!
のう福士?
「オウヨ!」
>2
えー、ホントにー??(爆)
おう、本当じゃワイ(邪笑)
だからのう、こっそりとで良いので後で来てくれんか?
そう、もなこ殿下をお連れして(熱核自爆)
はい、九重さん、よくできました。
みなさん、ちゃんとお礼を言いましょうね。
「おつかれさまでした、新スレありがとう。」
お、つ、か、れ、さ、ま、で、し、た!(みんなで)
えと、報告ー。掲示板がサイトの外にあります。見つけにくくてごめんね。
「慶祝スレッド総合掲示板」
http://jbbs.shitaraba.com/sports/1776/keishuku.html あと、覚えておいて欲しいるーるみたいなもの。
・このスレはsage推奨です。
別にそうでなきゃいけない訳じゃないけど、今までのクセで(爆)
・次スレは、基本的に800踏んだ人が立ててね。800まで容量がもたなそうな時は、誰かが
騒ぎはじめると思うよ(笑)
それともう一つ、大事な事があるんだ。もなこちゃん、お願い(笑)
「あの、みんななかよく、なのです。」
スレ立てご苦労様です。
堅苦しくて申し訳ありませんが、以下の三つも出来れば守って頂けないでしょうか。
・話が独り善がりに成らない事。
・他の参加者の方に迷惑を掛けない事。
・キャラクターのOver'sを推測で書き込まない事。
★お花見『春はあけぼの・・・花見だ宴会ワッショイ! 』
解説:再起一回目の記念すべき次回予告。まだ人数が少なかったため、短めでした。
★モエロワ『モエルロワイヤル 〜 101匹ネコちゃん大晩餐(惨)』
解説:突発した裏イベント。賛美両論ありましたが、活気が出始めたような気もします。
★もなTV『もなこのおたよりこーなーなのです』
解説:もなこ様が「ちゃい」の魔法を使われました。過去の事は水に流しましょう。
★逝き合戦『カチカチパン大作戦、オットーもハーマンも品切れなのです!』
解説:現在進行中です。
★『ニホンちゃんがやってきた!!』
解説:現在保留中です。
10 :
逝き合戦(修正版):02/05/16 02:39
チーム名称:「ひなぎく(+生徒?)」(強引にテログループ役)」
使用可装備:あり合わせアラカルト。
*食料調達部隊が調達した食料。
*学校内の備品&食材。
勝利条件:もなこ様を守れ!
〜VS〜
チーム名称:「特務放送宣伝中隊(IGPK特殊支援小隊)」
使用可装備:ヨーグルトフルコース。
*ヨーグルト風船
*ヨーグルト高水圧銃
*ヨーグルトバケツ
*ヨーグルトビニールプール、等。
勝利条件:もなこ様のヨーグルト和え写真Get!
注記)適当です。理屈が通っていれば自由に変更修正してください。
*乱入参加有り。単発参加も歓迎します。
*勝利条件は絶対ではありません。もなこ様の行動が鍵となるでしょう。
*第五旅団員はお互いに拳で語ってはいけません(子供達の前です!)
*炊き出しをしている「食料調達部隊」は現時点では中立です。「ひなぎく」や「IGPK」
のように全員が同じ行動をとるとは限りません。説得や懐柔もあるでしょう。
参加している方、される方の判断で自由に動かしてください。
この部隊の行動によっては、結末は大きく変わるかもしれません。
新スレおめでとうございまーす♪
( ヽ ―――― ○ ――――
, ⌒ヽ ( ) // | \
( ' ( ヽ⌒ヽ 、 / / | \
ゝ `ヽ( ) | (⌒ 、
( ⌒ ヽ ( ヽ
∋oノハヽo∈ @ノハ@
____________________ ( ^▽^) ______________________________ (^▽^ ) __________________________
( つ(\ ( つ(\
(\_ノ(___)⌒ ⌒ヽ_ (\_ノ(___)⌒ ⌒ヽ_
) ____ ・_つ ) ____ ・_つ
(/ (/ (/ (/
。 ゚ 。 ゚
。 ゚ 。 ゚
〜〜〜〜 〜〜〜〜
〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜 〜〜 〜
〜〜 〜〜 〜 〜〜 〜〜 〜 〜〜 〜〜 〜 〜〜
〜〜 〜〜 〜〜〜 〜〜 〜〜〜 〜〜 〜〜 〜 〜〜 〜〜
と「みんなーっ、起きろーっ!朝だぞぉーっ!」
拓「(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル 」
と「あははっ、しっかり掴まってないと落っこちるぞーっ!」
学校の構成。(ネタバレ>97の案を使わせて頂きます。名無しさん有難うございます)
校門はいってすぐに校庭。正面右手から北棟、南棟、体育館。裏手に室内プール。離れに給食室。
北棟1F1年教室と理科室。2F2年教室と図画工作室。3F3年教室と家庭科室。4F図書室、視聴覚室、放送室ほか。
南棟1F職員室と保健室、用務員室。2F4年教室と音楽室。3F5年教室と視聴覚室。4F6年教室と会議室等等。
クラスは各学年30人弱の4クラス。(本当のG院はもっと少ないらしいですが)
北と南は1Fと3Fに渡り廊下が2本。門は正門の他は裏門のみ。周囲はフェンスで封鎖。
もなこが学校にいるときは常に宮様警護の「ひなぎく」が常駐している。
(情報封鎖により、ひなぎく同士の通信、外部との連絡が機能していません)
今回、正門から「食料部隊」裏門から「特務隊」が侵入しました。
あと、状況整理もかねて各部隊やキャラクターの現在位置と状況を簡単に説明したほうが良いでしょう。
隊員Bと共にIGPKの企みを知ったが、室内プールで捕らえられてしまう。
辛うじて二人の児童にメッセージのようなものを残した。
隊員A「IGPKに捕獲されて、どこかに連行されている」
ズルズルズル…
隊員B「俺はすでに逝っている…」
「何故か体育館に居ますわ。ですがNPC状態なのです。主(参加者)のお導きをお待ちしております」
狩谷「休養中。異次元酒場でマターリしている。たぶん出番は無いし、そのほうが良いだろう」
紫村「シスターLOVE」
武藤「……あまり電波飛ばすな」
「現在北棟4階図書室ですわ。これから九重さんのクラスへ向かうところでしてよ。」
現在、北棟1Fから2Fに向けて移動中だ。
目的はとりあえず児童たちを避難させるべく、放送室に向かっている。
「アタシはもちろん給食室さ。下膳待ちってところだね」
隊員C「現在児童昇降口。AとBを探している。食料調達部隊の件で他の隊員に確認を取ろうとして、
通信機が使えない事に気が付いた」
学校から少し離れた国立図書館に到着。
〜電波〜
学校に行く理由が見つからない……。通学している設定にすればよかった……。
少しでも西朝の役に立てるように頑張ってたのが裏目に出たよ。キャラクターとして
もえみちゃん(もなこ様のクラスメイト)に怪しまれているし、警戒させたくないしね。
「え〜学校側に提案です。
ご飯は外で食べませんか?
天気は良いし、ピクニック気分が味わえると思うのですが(笑)
陸上自衛隊以来、国防軍のご飯は美味しい事で有名です(特に海自のカレーはね:笑)
食器は第5旅団の分を利用しますので、後々も楽だと思います。
如何なものでしょうか」
「送信、こんな感じで良いですか副総長閣下?」
食べ盛りだからいくらでも入るよー。
バーベキュウも在るよ!
神戸牛に松坂牛、鹿児島黒豚も在るからねぇ!!
キャビアにフォアグラ、松茸も在るんだヨォ!!!
「良いんですか班長? こんなに高級食材を使っちゃって・・・・・」
俺に額面の書いてない小切手を渡した副助(副総長)が悪い!
「登ざ〜ん列車ができたので〜♪だれでも〜のぼれる〜♪」うろ覚えのいい加減な
フニクリフニクラを歌いながら、いせは階段を下っていた。先ほど司書のおばさんに
教えてもらったところによると、九重加也のクラスは2階、しかも殿下と同じクラス
ということである。
「お友達と殿下に危機が迫っていますのよ…。早くお知らせしなければ〜。」
現状を早く殿下に知らせたい、というよりも、もうすぐ殿下に会えるかもしれない。
その感情のほうが強く、いせの顔は緩みっぱなし。
「行こう♪行こう♪下の階〜♪行こう♪行こう♪殿下のクラス〜♪」
かなり苦しい替え歌だが本人はおかまいなしである。と、階段を昇ってくる人影があった。
「ふにくり・ふにくり・ふにくり・ふにく…ら…ぁぁぁっはははははははははは!」
突然、大爆笑。
「フフフフフ!なんでこんなところに!ラーメソマソがぁ…ぅっぷははははは!ひ、ひきつけが…」
笑いすぎである。相手の男は呆れ顔でその様子を見ていた。そして…。
>26
一回には人影もない。どうやら、見つからずに中に入り込めそうだ。
俺はそろそろと二階へと上がっていった。そしてさらに上へ行こうとしたとき。
歌声が聞こえた。かなりおかしな歌だ。しかもかなり音痴の。
身を隠そうとしたが、遅かった。しかし、反応がおかしい。
俺を見るなり笑い出した。・・・・・・天然か?それとも○○○?
まぁ、姿を見られたからには仕方あるまい、黙らせるしかない。
俺はすぐさま彼女のもとへと駆け寄ると後ろに回りこみ、腕を極める。
そのまま開いている手で口をふさぐ。
そして耳元でささやいた。
「手荒な真似はしたくない。声は立ててくれるなよ?」
「むぐむぐ…。」
笑っているうちに捕まってしまった。間抜けである。まあ、元々間抜けなのだが。
この男が何者か分からない以上、ここでヘタに抵抗するのは得策ではない>アヤシイ格好だが
もしかしたら殿下の近衛かもしれないし。
こくり。と首を縦に2回振り、男に従うことにした。男が敵なのか味方なのか。それを
見極めてからでも逃げるのは遅くない。なにせ実体化おふすればいつでも逃げられるのだ。
>21
平日の図書館は利用者も疎らだ。昼下がりの時間帯などは無人に近い。人付き合いの苦手な彼女でも、
これはさすがに退屈だった。以前は本に囲まれているだけで満足だったのに。
ただ少し前から、ほとんど毎日来るようになった少年がいる。
「こんにちは、おねえさん」
今日もやってきた彼の名前は水上 拓。
「こんにちは水上くん。今日は早いのね」
何故こんな時間に図書館を利用するのか知らないが、彼女の退屈を解消してくれる貴重な利用者だった。
おまけに知的で華奢で犬チックと、彼女の理想(何の?)をほぼ完璧に体現していた。
無垢な笑顔を絶やさないが、どことなく影を感じる雰囲気にも興味をそそられた。
彼女は、いつもこっそり少年を観察する。
彼は先ず鞄をいつもの席に置き、本を探し始める。その姿が本棚の間に見え隠れする。
10分ほどで数冊の本を選び、早速読み始めた。
本のタイトルは『経済七不思議』『論理学の哲人』『81式戦術指南』……最近すごく難しい
本ばかり読んでいて、しかも内容を理解しているようなのだ。
「へえ、小切手って……ふふ」
無邪気に笑っている。
青田刈りしようかな? と、彼女は一瞬だけ本気で考えた。
>28
俺は彼女の態度を見て、腕を離し、非礼を詫びた。
「手荒なことをして申し訳ない。本当はこんなことはしたくないんだが・・・・・・
色々と訳ありな身なのでね」
苦笑しながら、彼女に話し掛けた。
「私の名は貫(クワン)。よろしく」
>30
「…いえ。あたくしも悪うございましたわ。人の顔を見て笑うなんて失礼以外のなにものでも
ありませんものね。貴方が怒られるのも当然…。あたくしは志摩いせですわ。どうぞよろしく。
この学校の非常勤講師をしておりますの(嘘)。」
ぺこり。頭を下げる。さてこれからが問題だ。一体このあやしい男は何者なのだろう。
訳ありな身なのだから自分から正体を明かすようなボケ茄子ではないだろう。
素性が分からないにしても、敵か味方かそれを知る必要がある。男もおそらく、本当に
こちらが非常勤の講師だとは思っていないであろうことは、サングラスの奥の眼を見れば
分かる。こちらが疑うように、男も疑っている。とりあえずは軽く、探りを入れてみよう…。
「今日は兵隊さんたちが沢山おいでになっておりますのね。どうしたのかしら?
クワンさん、なにか御存じない?」
…言ってみてから、しまった、結構、ストレートですわね?と思ったいせであった。
>31
ふむ、こいつはとんだ雌狐かも知れんな・・・・・・
話をしてピンときた。自分では非常勤講師といってるが、
ヒトの香が伝わってこない。 しかもカマをかけるつもりなのか、
いきなり確信を突いて来た。まぁ、隠しても仕方ない、か。
「さて、私にもさっぱり。この構内には一部の兵士を除いて入れないことになってます。
しかし、彼らはその許可を受けた兵士ではないようです。
宮様にもしも、ということもありましょうしね。俺は放送室に向かっているところですよ」
さ、こっちのカードを一枚切った。そっちの手札はどうだい?
>32
宮様にもしも、という言葉に反応する。食料部隊の人間だったら。宮様においしいご飯を、
だろう。もしも、という言葉は危険が迫っている、ということを知っている人間でないと
発しない。
今のところ(海軍の電報によると)宮様(と加也たん)ヨーグルト和え計画に
基づき行動している部隊は…宣伝中隊だけである。ならばこの男は宣伝中隊の人間なのだろうか?
だがこの男の風体は、今まで見た宣伝中隊の格好とは余りにも違いすぎる。それに、
一体何の目的で放送室へ向かうのだろう?いせの頭ではさっぱりわからない。…ならば。
「本当に陸式の人間って、なにを考えているかわかりませんものね。放送室は4階ですわ。
よろしければごあんないいたしますわ?」
放送室の位置はさっき図書室を出てくる時に確認してある。この男が放送室で一体、
何を伝えようというのか。そこでまたなにか分かるかもしれない。
(それにこの男の目線、なにかぞくぞくするものを感じますわ…宮城の結界みたいな…
ブルブル。)
>29
う、変な視線を感じるよ。……またあの司書のお姉さんかな? 気配が分かるってのも考えものだね。
仕方ないか。僕みたいな子供が学校にも行かずこんな所にいるなんて変だからね。
補導されたり、理由を聞かれないだけでも有難いよ。
……お姉さんは僕がここに初めて来た時からいたから、監視役とかじゃないよね?
>34
水上君の不幸っぷりに萌えた、通りすがりのただの「ピーッ」よ(謎)
お姉さんは忙しいから、今回だけ特別よ(笑)
>20
隊員C「……一体どうしちまったんだ」
もなこ様のクラスの給食が全滅した事は、隊員速水から直接聞いた。だが、それがどうして
第五旅団が校庭で全校規模の炊き出しを始める事になるんだ?
先ほど速水に連絡を取ろうとしたが、専用回線、携帯電話のどちらも通じない。隊員AやB、
他の隊員にも連絡が取れなかった。どうやら情報封鎖がされているようだ。
嫌な予感がした。
だがまずは眼前の光景を何とか収拾しなければならない。校庭に飛び出し、食料調達部隊に呼びかける。
隊員C「お前達! 何やってるんだ!? 誰か説明しろ!」
>33 いせ
陸式、ねぇ・・・・・・早速ボロ出し始めたか。
つうことは、海軍の人間なわけだ。
しかし、なんだって海関連のヤツが此処に?
まぁ、俺には関係のないことだ。
放送室は4階、か。
まぁ、混乱させればそれだけ、こっちも仕事がやりやすくなるというものだ。
「それでは、案内していただけませんか、お嬢さん?」
タイーキ。
もなこ様が魔法を使ってれば即解決してたかも、と言ってみる罠。
(゚д゚)「もなこ様はなぜ魔法を使われなかったのか?」
A.つくしんぼステッキを忘れてきた。
B.気が動転してて魔法の事を忘れてた。
C.魔法少女だと知られると、魔法の国に帰らなければならない。
D.「あの日」だった。
ライフライン[50:50] [テレフォン] [オーディエンス]
>>40 お菓子しか出せませんが、学校の中ではお菓子禁止なので。
>41
(゚д゚)「ファイナルアンサー?」
( ゚ 〜 ゚ )……( ゚ ∧ ゚ )……( ゚ д ゚ )……( ゚ 皿 ゚ )……
( ゚ Д ゚ ) グハァ!!…………ミリオネア ネタ、ヤリタカッタ(シクシク
むむ、終わってしまったのか、残念。
もしもDと答える不敬の輩がいたら粛清しようと思っていたが……。
折角なので…プシュ!(>40の出題者を狙撃)…………久しぶりだ(笑)
「みんなのるっ、フニクリフニクラ〜♪」
変な歌を歌っている女と、アヤシイ中国っぽい男が歩いているが、
周りの児童たちはそんなことよりも校庭の第五旅団が気にかかる
らしく、別に気に止めようとはしなかった。昼休みの放送部の
出し物で、先ほどまでクイズをやっていたようだが、それも終わった
らしく、今は各学年の投票で選ばれた音楽がかかっている。
「ここですわ。今は多分放送委員の子達がいますわね。」
がちゃり。扉を開ける。放送委員の女子児童がこちらを振り向く。
「…あの?どちらさまですか?なんのごようですか?」
わたしは更級美希子と言います。学校では放送委員をしています。
今日もお昼の放送はいつもどおりはじまり、本日の出し物が終わると、
いよいよ私の担当している歌のコーナーです。
1曲目は「コンピューターおばあちゃん」。なかなか渋いリクエストです。
そして、次の曲を用意している時でした。放送室の扉が開いて、
見たことのない女の人と、中国から来たみたいな人が入ってきました。
「…あの?どちらさまですか?なんのごようですか?」
さっきから外に来ている兵隊さんたちのお仲間でしょうか?
学校のみんなになにか伝えたいことがあるのでしょうか。でも、私は
放送委員です。このお昼の放送を楽しみにしてくれる人がいます。
「なにか連絡ですか?でも、今曲を流し始めたばかりなんです。こちらに
おかけになって、待っていてください。」
とりあえず、この曲が終わるまでまってもらうことにしました。
「あさー、あさだよーぉ。あさごはんたべてぇー、がっこーにいくよぉー。」
蒸篭をガンガン。
「おねえちゃん…元ネタが…それに遅刻だよ?」
「……うぐぅ。」
蒸篭だと、ガンガンとは言わない気がします。静かな朝です。
今朝は起きられない人も多いことでしょう(笑)
ホントに遅刻しちゃったのさ……
校庭…
「諸君!準備は完了しているか?」
「万全であります!」
「よろしい!ならば我々はこれから宮様のお待ちになっておられる教室へ向かう!」
「はっ!!」
「しかーし!!今回の我々の行動は校内に常駐する‘ひなぎく‘に事前通達はしていない!
そして彼らは事前通達のない兵士の侵入は排除するという基本方針がある!」
「それでは校内に入れないのであります!」
「ひなぎくに連絡は取れないのでありますか?」
「彼らは私服で学校に侵入している!そして、外部からの連絡は本部以外は受けていない!
旅団の外部通信はなぜか回線が切断されていた!かくなるうえは我々のとるべき行動は一つ!」
「強行突破でありますか!?」
「宮様に食糧をお届けするのが我々の役目!邪魔するものは排除する!」
「おおおおおーーーっ!!!」
「それでは状況を開始する!皆の者、進めぇーっ!!」
鍋や釜、皿にコップ、リヤカーやら台車が一団となって学校へ向かう。
それを運ぶのはすべて軍服姿の男達…
「ところで隊長殿…宮様の教室ってどこなんでしょう?」
「……あ。」
訂正
私服で学校に侵入>私服で学校に常駐
モップを片手に、近衛を庇いつつ校舎内を進む。
食事中のため、廊下は割と人がいない。この状況は教室にいたほうが
安全なのだろうから好都合なのだけれど、やっぱりちょっと怖い。
「い、急いでもどらないとね…」
「守屋君…あれ…」
指差すほうを見るとリヤカーやら台車を引いた軍服の一団が押し寄せてくるのが見えた。
「急がないと!」
二人は慌てて教室まで駆け上がって行く。
職員室。
先生に相談しているもなこを横目に、本部に連絡を取ろうとした速水は愕然としていた。
外部への回線が切断されているのだ。通常回線の携帯も電波が遮断されている。
これではまるでテロではないか…内部造反?誰が?
ともかく宮様を守らなければならない。となると1階は危険すぎる。
「宮様、参りましょう。宇月先生と合流しましょう。」
「はい、なのです。」
宮様は心なしか元気がない。お腹がすいているのか、交渉が不調に終わり続けるのに
疲れてしまったのか…
「大丈夫です、なんとかなりますよ。」
カラ元気も、元気。そう思うしかない。
>49(36より)
隊員C「……俺は無視ですか」
確かに「ひなぎく」の学校常駐用の制服は、部隊内でも「まるで私服のようだ」とよく言われるが、
フツー同じ第五旅団だから気付かないか? ……まあ、あまり見る機会が無いのは確かだ。
食料調達部隊は完成した料理を抱え、ぞろぞろと校舎へ向かってゆく。
手近な1Fの渡り廊下から侵入しようとしているようだ。
炊き出し係「まあ、いいじゃないですか。子供達も喜んでるし」
部隊と入れ替わるように、すでに給食を食べ終わった児童達数人が校庭に現れる。
児童達は興味深々で兵隊さん達を見学している。
炊き出し係「みんな食べるよねぇ!」
児童達「「「「はーい!!」」」
食べ盛りの食欲は、あの耳猫兵士にも匹敵するのだろうか。
隊員C「やれやれ……あっちはどうしよう?」
一応は隊員速水から第五旅団に連絡したとは聞いていたが、止めるべきだろうか?
割り込み申し訳ありませんが、
慶祝スレのflashってあったりしませんか?
あったら是非見てみたいのですが・・・。
すみません、鉄の掟『sage』を
忘れてしまいました。
菊水に殺(以下略)
「うおらぁーっ!朝だあぁっ!!起きろぉっ!!」
MG34をガンガ……
「うわあああああ!おねえちゃん!それはダメ!!起きるからやめて!」
>56
flash見たら、途中で不正な処理&強制終了……さすが教授(笑)
ノートンさん入れてるからヤバイやつじゃないはずだけれど、何でだ?
>>58 普通に見れるが…
重いから(3.2MB)とか?
>55
今は鉄則ではありませんので。sageお勧め程度で構わないと思います。
>56
ひょっとして本物の「教授」さんですか? で無くても、もし見られていたら
皇式祭都の件で御相談があるのですが。
>58
私も普通に見られました。
(どうする……第五旅団とはいえ無許可……しかし隊員速水から話は聞いてるし……もなこ様……)
わりと簡単に考えはまとまった。最近C国の大使館で起きた亡命者連行事件を思い出したのだ。
シチュエーション的には少し似ているような気がする。ああいう情け無い破目になるのは御免だ。
ひなぎく隊員として最低限の対応は取らなければならない。
意を決し走り出そうとした隊員Cに、炊き出し係が呼びかけた。
「あっ、『先生』も食べていかれませんか?」
ズルッと踏み出そうとしていた右足が滑る。隊員Cは一瞬沈黙し、炊き出し係を振り返ると
胸の隊員章を指で示して叫ぶ。
「俺は『ひなぎく』だ!!」
そして校舎の前で何故か一時停止している配給部隊めがけ全力で駆け出した。
(ちくしょう、あとで絶対カッコイイ制服を申請してやる!)
「お前等ちょっと待てやゴルァ! 勝手な真似は『ひなぎく』が許さん!」
>>61 足を止めている食糧班。理由は段差にあった。この学校はバリアフリーにはできていないのだ。
自然、台車やリヤカーは不利である。(ちなみに生徒は給食用リフトを使っている)
そこへ私服の「ひなぎく」が走ってくる。
「お前等ちょっと待てやゴルァ! 勝手な真似は『ひなぎく』が許さん!」
「あにを!宮様がお腹をすかせて待っておられるのだぞ!」
「ここは押し通らせてもらう!」
声をあげる若い兵士達。
「お前達先に行け!ここは俺たちが食い止める!」
>62
食糧班の連中は殺気立っている。もなこ様の為だ、当然だろう。しかしこちらも
もなこ様と御学友の身の安全の為には譲れない。
「……」
多勢に無勢だし、学校ではやむを得ない場合以外、子供達が見ている前で暴力を振るう事は
禁止されている。なんとか説得で解決したい所だが。
「……第五旅団が来るという、正式な通達は来ていない。たとえ同じ釜の飯を食った仲間でも
規律違反は許せない。早急にこの情報封鎖を解き、本部と確認を取ってくれ」
>>63 若い隊員たちを押し留め、前に出る部隊長。
「貴兄の言は理解できる。が、これは急務だ。非常事態にあっては例外も存在するだろう。
それともこの行動でさえ関東軍の二の轍を踏むと揶揄されるか?宮様にお会いしたい。」
できるだけ、ゆっくり、落ち着いて話す。自分が激情に流されては部隊としての規律が保てない。
なにより、紳士たる第五旅団が学校内で粗相はできない。
「それに、この情報封鎖は我々の知るところではない。我々も外部との通信ができないのだ。
何者かがこの一帯の通信電波、回線を遮断していると見られる。それは我々も調査中なのだ。」
>64
内心ほっとする。話の分かる部隊長で良かった。第五旅団の連中は、もなこ様の事となると
全世界でも相手にしかねない暴走スイッチがオンになるが、さすがに学校内、児童達の前では
まだ大丈夫のようだった。もちろん、自分にもそのスイッチがあると思うが……。
情報封鎖の事は気になったが、先ずは相手が冷静なうちにどこかで折り合いを付けなければならない。
「……では作戦指令書を見せて頂きたい。これだけの規模の行動を起こしたのだ、それぐらいはあるはず。
その上で自分も同行するという条件なら、許可します…………その責任は自分が取ります」
>>65 作戦指示書…か、痛いところを突かれた。
実際、そんなものはないのである。あるとするならば、コピーが一枚。
「宮様の一大事である。
食糧部隊は至急、物資を調達の上、現地に赴くべし。」
…考えてみればこれだけでこれだけの部隊を動かしているのだ、ひどい話である。
「残念だが、指示書らしき指示書はないのだ。それが原因で罰を被るのなら私が責を負う。
ここに速水という者がいるはず。その者からの連絡により、副長から指示が出ているのだ。
なにぶん、可及的速やかにとの事だったので、正式な文書はないのだよ。」
言っていて苦笑を禁じえない。無茶な話である。
「同行については依存はない。我々も宮様の教室がどこなのか知らんのだよ(笑)」
>66
苦笑と共に部隊長から渡された一枚のコピー用紙。
『──宮様の一大事である。
食糧部隊は至急、物資を調達の上、現地に赴くべし──』
書かれていたのはそれだけだった。隊員Cは頭を抱える。
(……アリなんだよなあコレ。第五旅団の場合……)
彼自身も第五旅団兵なのだ。ひなぎくに抜擢されてからは忘れていたが、
──いや、忘れようと思っていたが「第五旅団はそんなところだ」で納得してしまう。
以前もなこ様の猫の「なーちゃん」が行方不明になった時も『なーちゃんを探せ』という
たった一文の指令で、彼のいた部隊は丸二日間宮城中を探し回った事があった。
そういえば、あの時「なーちゃん」を保護した手柄で、ひなぎくになれたんだっけ。
もなこ様に直接猫をお渡しして御言葉を頂いたときの感動はもう………………
(……現実逃避してる場合じゃないな)
開き直った笑みを湛えて立ち上がる。
「分かりました、譲歩します……もし何かあったら、二人で腹でも切りましょう」
相変わらず得体の知れない嫌な予感は続いている。その彼の感が、食料班を味方にして
おいた方がいいと告げていた。
「では案内します」
ひなぎく隊員の顔が緩んだのを見て部隊長は少し安堵した。
(なんとか、なったかな?)
「分かりました、譲歩します……もし何かあったら、二人で腹でも切りましょう」
お互いどうにも旅団兵、その辺の所は合い通じるものがあるのだろう。
顔を見合わせると、ふっと苦笑いを交わした。
「お互い、業が深いですなあ…よろしくお願いします。」
とりあえず私の方はここまで。他の方の行動待ちです。
話が急に加速したので焦りました(笑)
「朝だぞーっ、みんな起きろーっ!!」
ラッパをタッタカタッタカ。
「ううっ、海軍式はやめてホスイ…」
食量班を案内する隊員C。途中、電話を見つけた。さっきは気付けなかったが、
ひょっとして内線は使えるのではないだろうか?
「……一応、職員室に連絡してみるか」
まさかこの騒ぎに気付いていないとは思えないが、事件が発生してから彼が見かけた学校の職員は
もなこ様のクラスの担任の女教師一人だけだった。第五旅団が圧力でもかけたのだろう。
「ちょっと待っててください」
部隊長に断りをいれ、受話器を取ると職員室への内線を押す…繋がった。
「失礼、ひなぎくの者だがカクガクシカジカ──」
>44-45
(なんなんだろう、こいつは・・・・・真性デムパなのか?)
音程の狂った意味不明の歌を聴きながら、
俺はこの女性の正体について考えていた。
妙に学校内に詳しいくせに、妙にここに似合っていない。
果たして何者なんだ?
何時の間にか、放送室についていたようだ。
扉を開けて中に入ると、どうやら放送委員らしい少女が座っていた。
訝しがる少女に微笑みかけると、じっと目を見つめた。
だんだんと目の焦点が合わなくなっていく。
「この曲が終わったら、こう言ってくれないかな?
『今、校庭や校舎内に、水鉄砲を持った兵隊さんたちが来ます。
しかも、中身はヨーグルトです。汚されたら、掃除するの大変だよね?
さぁ、箒を持って!机とイスでバリケード作って!
水鉄砲持った兵隊さんたちを追っ払いましょう!』とね?
お願いできるかな?」
「・・・・・・はい、何も、問題、ありません」
彼女は、焦点の合わない目でうなづく。
軽い暗示だ、十分もしたら正気に返ることだろう。
これで下準備はOKだ、後は水上君を探すだけ。
「さぁ、それでは行きましょうか?」
俺は女性に微笑みかけた。
抑揚のない声。
目が虚ろな少女。
『今、校庭や校舎内に、水鉄砲を持った兵隊さんたちが来ます。
しかも、中身はヨーグルトです。汚されたら、掃除するの大変だよね?
さぁ、箒を持って!机とイスでバリケード作って!
水鉄砲持った兵隊さんたちを追っ払いましょう!』
2度、繰り返す。
72>
(放送の内容から察するに…この男、宣伝中隊ではないようですわね…
それにしてもぞぞぞぞぞぞぞぞっ!なんか催眠術みたいなの使ってるし!
やっぱり只者じゃありませんわ!おっかないですわ!)
「さぁ、それでは行きましょうか?」
ニコリ
(おっかない、おっかない、おっかないですわ!)
「そうですわね。あたくしも御一緒しますわ。」
(おっかない…ですけど!こんな危険人物を殿下の学び舎に野放しにしておく事は
できませんわ!あたくしが!帝国海軍の御召艦たるこのいせが、必ず殿下を
お守り致しますわぁぁぁぁぁぁぁ!)
手を胸の前できゅっと握って、いせは男に少々引きつった微笑を返した。
(>73の)放送を聞き、唖然とする。
「……なんて勘違いを…パニックになるぞ」
通話の途中だったが、受話器を置き慌てて食料班を振り返る。少なくとも彼らは
『水鉄砲』など持ってはいない。そして自分と同じように怪訝そうな表情をしていた。
「……部隊長殿、申し訳ありませんが私は放送室のほうへ、今の放送の確認に行きます。
もなこ様のクラスは、この上の階の──あの階段から昇った最初の教室です」
敬礼もそこそこに駆け出した。
私はプチテレビ入社二年目の女子アナ、大和 撫子(やまと なでしこ)
……だってそういう名前だもん。
男顔負けの行動力が武器の、現場アナウンサーの卵です。
今日も現場にやって来たんだけれど……
「どうして私達は通れないんですか?」
詰め寄っても、道を封鎖している交通整理員達は表情さえ変えない。
「マスコミは通さないように命令されています」
「だったら、どうしてエムエチケイ(MHK)だけ?不公平じゃないですかっ!?」
「学校側への配慮です。そのように説明されています」
「ああっ、もう!(怒)」
頑として受け付けない交通整理員。交通整理員と言っても国防軍の人間だから、
ここを無理やり通ることは不可能に近い。
「……こうなったら」
クルーの元に駆け戻る。……横をMHKの放送車が通り過ぎてゆく。
「カメちゃん、この辺の地図ちょうだい!」
「……せめて亀雄と呼んでくれませんか?」
コンビを組んでいるカメラマンの名前は亀雄 雄一(かめお ゆういち)
名前みたいな変な苗字だけれど、私よりはマシかもしれない。
「却下。それとも『ユウユウ』がいい?」
「……カメでいいです。地図なら用意してますが、裏道とかも無理みたいですよ」
かまわず地図をひったくり、目を走らせる。
「…………ここね」
ピンポーン……………ガチャ。
「はーい」
「こんにちわっ『突貫(とっかん)隣の昼ご飯』です。よろしいですか?」
放送用スマイルで強引に一軒の民家に入り込んだ。玄関を開けた主婦は面食らっている。
「は、はい?」
「ありがとうございます。では早速」
「ちょ、ちょっと撫子さん?」
「いいから撮影してなさい。靴は持ってね」
問答無用で突き進む。すぐに食卓を発見。裏口も確認。
「ふむふむ、風情あるお昼ご飯ですね。一口失礼…あむ………美味しい!」
五分後。
「ご協力ありがとうございましたー。放送に使われる事が決まったら、ご連絡しますね」
適当な事を言って裏口からエスケイプする。学校は目前だ。
「なんて強引な……知りませんよ」
雄一くんはため息をついている。いいかげん慣れればいいのに。
「第一関門、突破ね。行くわよ」
>73
奇妙な放送だったが、生徒達はそれほど驚かなかった。というか、よく判っていないようだった。
教師の声だったらともかく、生徒の声で棒読みぽかったのも理由の一つかもしれない。
この学校では時々出し物で変わった放送をするので、その一環と思ったのか、
第五旅団兵と関連付けて、いきなりパニックになるような事はなかった。
教室の生徒の半数ほどは既に校庭に出て、炊き出しを見学したり食べたりしている。
むしろ担任の教師のほうが困惑していた。
「みなさん落ち着いて。いいですか、『人』という字を手のひらに──」
放送室に飛び込むと、放送委員らしき児童が一人だけいた。放送委員は二人一組でやるのが普通だが、
今日は休んででもいるのだろう──そんな事はどうでもいい。
「……どちらさまですか?なんのごようですか?」
抑揚のない声で児童が問いかけてくる。間違いなくさっきの放送の声だった。
「あの放送をしたのは君だね?」
「……なにか連絡ですか?でも、今曲を流し始めたばかりなんです。こちらに
おかけになって、待っていてください」
「……曲?」
曲など流れていない。そして気付く。少女の目は妙に虚ろだった。その視線は隊員Cを通り越し、
はるか彼方を見詰めている。
「おい、君、しっかりしなさい!」
肩を掴み揺さぶると、しゃぼん玉を割るように、あっさりと正気に戻った。
「……どちらさまですか?なんのごようですか?」
先程と全く同じ台詞だったが、今度は声に抑揚があり、表情も戻っていた。
白昼夢から醒めたような顔をしている。
「あ、ひなぎくの方ですね。こんにちは」
ぺこりとお辞儀する。礼儀正しい子だ。
「さっき、君がした放送を覚えているかい?」
「はい。『コンピューターおばあちゃん』と、次に『ひとりぽっちのサラマンドラ』をかけました」
……どうやら覚えていないようだった。催眠術としか考えられないが、誰がどうしてそんな真似を…?
「じゃあ、変な人を見なかったかい?」
少女はしばらく考えて、答えた。
「……いいえ」
夢だと思ったのだ。白いドレスのお姉さんと、中国人(ラーメンマソ)が来ただなんて。
貫大人「さて…職員室へ行きたいのだが、教えてくれないかな?非常勤講師さん?」
はうっ!職員室ってどこですのん?知らないですわ?
いせ「へぐっ…ええと…。」
きょろきょろ…あ、そういえば階段の所に案内図がありましたわね!
いせ「ええ…こちらですわ…アセアセ。」
案内図をみると、図書室は南棟の1階、となっていた。南棟へ行くには3階にある渡り廊下を
通らなければならない。西、東の2本の渡り廊下があり、東廊下の方が教室よりだ。
ぺぺぺっと記憶して、いかにも前から知っていたかのような(でも引きつってる)顔で
いせ「さあ、はりきっていきましょう…!」
貫大人(はりきってどうするんだ?)
階段を降り、家庭科室の前を通ると西廊下があった。だが…
生徒「水鉄砲もった兵隊だってよ!ホントにくるのか!?」
生徒「面白そうじゃん!どんどん積んじまおうぜ!」
一部の男子が既に机と椅子を積み上げ、バリケードを構築しつつあった。
いせ「あら…これじゃ通れませんわね…。実体化おふ!」
あ…いつものくせで実体化おふしてしまった…クワンはさぞ驚くだろう。
人がいきなり消えたのだから。彼は大丈夫かしら?後ろを振り返る。
ガシッ。腕をつかまれる感触。実体化おふしたはずなのに。
貫大人「とうとう尻尾を出したか?お前はいったい何者だ?」
いせ「あ、あたくしが、見えてらっしゃるの!?あなたこそ何者ですの?」
腕を掴まれたまま、手近な家庭科準備室に連れて行かれる。
(おっかないですわ〜!あたくしをどうするつもりですの?でも、
命あっての物種、ですわね…)
とりあえず…正直に無難なところから話すことにした…。
「あたくしの名前はいせですの。帝国海軍連合艦隊直轄練習艦「いせ」の船魂で、
殿下萌え萌えでぴちぴちの艦齢4年ですわよ…。」
>73
その放送は、すごく嫌な予感がした。ついさっきヨーグルトを浴びたばかりの加也にとっては、
まるで悪い予言のように聞こえる。
「そういえば、さっきの人・・・」
白いものを体中につけて逃げていた男の人の事を思い出した。何故すぐに気が付かなかったのだろう、
あれは、あの白いのは、ひょっとしてヨーグルト?
なんだか一人でいるのが心細くなってきた。
「もなこちゃんと速水さん、早く戻ってこないかなぁ。。」
83
斥候A「加也タン ハケーン」
斥候B「しかし何、今の放送?もうバレたの?」
斥候A「だろうな。だが児童の声だったよな……ともかく本隊に伝令してくれ。
内容は『馬は発見したが将はまだ。指示を仰ぐ』でいいな」
斥候B「了解……こっちも無線が使えないって、不便だなあ」
「みんな起きろーっ!朝だぞーっ!」
バケツをガンガン。
「何かねー、ぶっそうだよね。。教室もーどろっと。」
日に2度もヨーグルトかぶるなんて事態は、さすがに避けたい。開いていた窓を閉めると、
数メートル先の教室へと向かった。
・・・・・
・・・
「たーだいまー!・・・あれれ。」
教室を見渡すと、いやに人が少ない事に気付く。ざっと見て、10人前後といった所だろうか。
加也「ねぇねぇ、みんなは?」
生徒A「ほら、あっち。」
指差す方向を見ると・・・なるほど、校庭の炊き出し目当てに何十人かの生徒が校庭に
集まっているようだった。
生徒A「加也ちゃんも行ってきたら?私はね、もう食べてきちゃったんだ。」
加也「うーん、いいや、もなこちゃん待ってるよ。」
学校のフェンス越しに見えるのは、軍隊の車両、詰まれた物資、炊き出しをしいてる第五旅団兵士達、
そしてそこに集まる生徒達の姿だった。
「……まるで戦後の配給のようですね」
雄一くんがカメラアングルの調整をしながら感想を洩らした。彼はあの時の新潟へも撮影に行ったのだ。
「ジャミングって言うんでしたっけ、こういうの……生中継できないのが残念ですね」
「だけど他局(MHK)と条件は一緒よ。とりあえず此処で一度撮影しましょう」
頭の中で原稿を作成し、リハ無しで撮影を始めた。
「テステス………えー、私達は今、某小学校の前まで来ています。本日未明、突然謎の行動を起こした
国防軍第五旅団ですが、政府の発表にも不自然な点があり、私達は独自に調査を──」(略)
隊員C「さて、どうするか……」
目の前には放送機器。これを使えば学校中に声を送る事が出来る。ひなぎくである自分が使えば、
かなり効果的に使えるはずだ。今まで後手後手にまわってきたが、これでようやくイニシアチブを取れる。
だが同時に暗躍する何者(達)かにも聞かれることになるし、パニックを引き起こす事もなるべく避けたい。
最優先は当然もなこ様だが、隊員Cはこの学校と生徒達も好きなのだ。
隊員C「……う〜ん何て言おうか」
後ろで見ていた更級美希子は、なんとなく呟いてみる。
「ひなぎく名人、一回目の長考に入りました」
クラブ活動は囲碁・将棋部だったりする。
木陰に座り込む兵士の数、4人。疲弊のあまり真っ白に燃え尽きている(感じだ)。
彼らが特別軟弱だった?いやいや。では訓練が足りない?それも正解ではない。
兵士A「つ、次は俺達だぞ?」
兵士B「ああ。(ゴクリ」
兵士C「そんな…馬鹿な。」
彼らの目に映る光景。それは正に修羅場だった。
子供A「おかわりー!!」
子供B「おっちゃん、まだかよー。あと5秒〜4秒〜〜サン、ニー、ほら、後つかえてんだぞー!」
兵士D「おい、飯炊けたか?もうすぐ無くなっちまうぞ!」
兵士E「おまち!ほら喰えガキども!!」
兵士F「米、洗っとけって言っただろ!現場舐めテンのか!?」
子供C「・・・おかわり、大盛りね。」
兵士A「餓鬼・・・?俺の幼少時代はもっとこう慎ましく・・・ねーか。」
「おい、あそこ見てみ?」
「あ・・・(ムグ」
「バカ、騒ぐな。気付かれないように一気にいくぞ。」
空腹を満たした子供達、その興味は早速他へと移っていった。数十の視線に晒されている
事にも気付かず、自分の仕事に没頭している標的。
「これまでに第五旅団が行ってきた非常識な・・・・・・・今回の目的は・・・・」
「よし、今だ!」
ザザザ!!!茂みの中から飛び出した子供達は、一斉にカメラの前を占拠した!
「いえー!!見てるかーヒロシー!」 「ぼ、僕がやりました・・・うう・・・」 「MHKサイコー!」
「フ・・」 「一番!高木亮太です!タルレンジャー歌います!」 「うりゃー!」
・・・・・・・MHK、収録続行不能・・・・・・・
「あららら……」
校庭の様子にようやく気付く。炊き出しをしている旅団、
食糧を「奪い合う」子供達。そして…ウチのクラスの子は?もなこちゃんは…いない…?
慌てて兵士の一人を呼び止める。
「すみません…」
「あ、宇月先生ですね?ちょうどよかった。宮様に御給食をお持ちしてるところなんですよ!」
うれしそうに言うわね…この人…
「でもあの子…教室にいませんよ?」
「え!?」
顔を見合わせること数秒。
「大変だ…」
「うわ、探さなきゃ…」
かわいそうなことしちゃった…まだ回ってるのかしら?ともかく探さないといけないわね…
2階東、渡り廊下。
物陰に隠れていた。
「ど、どうしたのですか?」
「いえ、不審な人影が見えたものですから。」
寸刻前、対岸の渡り廊下に「変な中国人風」の男と「場違いな白いドレス」の女が見えた。
速水の記憶にはそんな人物は校内に存在しない!とっさ、もなこを庇うように物陰へ入ったのであった。
「でも、いそがないとみんなが…」
「すみません、宮様。今、校内に侵入者があるという情報もありますし、先の放送の事もあります。
緊急時ですのでお許しを…」
不幸にして2人は炊き出しが見えていない…
>81-82 いせ
さて、彼女の正体を知ったはいいが、さてさて、どうするか。
しかし、つくづくデタラメだな・・・・・・
船魂が船を離れてフラフラしてるなんて話、聞いたことないぞ。
「・・・・・・それで・・・・・・なんで船魂の貴女がフラフラ萌習院の校舎内に居るのか、
そっちの方が興味あるんだがね、俺は」
俺は言うと、彼女に向かって笑いかけた。
「俺は貫大人。それ以上でも以下でもありゃしませんよ。
ちょいと用があって此処に居るだけでね。もなこ殿下に手を加えようとは思っちゃいませんよ」
ま、これで信じるようならいいんだけどな。
「どうしてここにいるか、ですって?そんなこと決まっているじゃありませんの。
一時でも多く殿下の御傍にいたいから、ですわよ…ハァハァ。」
顔を真っ赤にしてしゃべる。妄想炸裂ファイヤー一歩手前だ。
「殿下に手を加えない、本当ですわね?それが本当ですのなら、あたくしは別に
クワンさんをどうこうするつもりはありませんの。むしろ早く貴方の案内を済ませて、
殿下の教室へ行きたいんですのよ!」
「どうしてそこまでして殿下の傍にいきたいのですかね?」
「それは…殿下とそのご学友に危機が迫っているからですわよ。これをごらんあそばせ。」
そういって、手を一振り、二振りすると、先ほどの連合艦隊司令部発の電報が実体化する。
それをクワンに手渡す。
「そういうことですのよ。おわかりになりまして?」
いつまでも考えていても仕方が無い。隊員Cはマイクのスイッチを入れた。
♪ピン・ポン・パン
『全校の生徒さん達へ、ひなぎくよりお知らせです。昼食を食べ終わったら、体育館に集まってください。
繰り返します、(略)。教師の方々にも協力をお願いします』
スイッチを切る。情報が錯綜している今、下手に説明したりするよりもこの方がいい。
大半の生徒達は素直に体育館へ行ってくれるだろう。残るのは一部の生徒と、もなこ様のクラス、
ひなぎく、食料班、そして謎の人物(集団)となる。
パニックの発生と巻き込まれる生徒数を最小限に抑え、こちらが動き易くなる最善の方法を取ったつもりだ。
「……よし」
>95
「──あっ」
更級 美希子が小さく叫んだが、遅かった。
バシュッ!
背中に激しい衝撃を受け、隊員Cは放送機器に叩きつけられた。さらに連続して打ち込まれるのは──
「…ヨーグルト?」
視界に映る全てが白に染まってゆく。ヨーグルトは放送機器の隙間へも流れ込み、火花を散らす。
ようやく銃撃が止んだ。振り返った隊員Cが見たものは、閉まるドアと、投げ込まれたヨーグルト爆弾。
感覚がスローモーションになった。
空中にある数個の爆弾。人の頭ほどもあるヨーグルトの詰まった風船と、やたら大きい破裂装置。
その形は、まるで鮭の稚魚のようにも見えた。
「…マジですか!?」
ドンッ!!!
(ドンッ!!!)
防音構造のため音は通らないが、放送室の曇りガラスが静かに震え、一瞬で真っ白に塗り潰される。
いくらヨーグルト爆弾とはいえ、密室で使われた場合の衝撃は桁違いだ。中を確認するまでも無いだろう。
偵察A「……ひなぎくに先を越されたか」
偵察B「いいさ。放送設備は潰し、障害を一つ始末した。自分から所在を教えるとは、バカな奴だ」
ガンガレIGPK
>>95 「あれはさっきの?」
「多分。」
教室への通路はなぜか人がいっぱいで通れなかった。
どうしようかと2人で相談していたら放送が聞こえたのだ。
「どうする?」
「教室に行くのが先だと思う。」
人が少なくなれば戻りやすいのかも…
>90
雄一「正門前で撮らなくて正解でしたね。MHKめ、いい気味だ」
撫子「他人を呪わば穴二つ、よ。……私達は裏門から行きましょう」
妙に軽い足取りで、駆けて行く二人だった。
>96
ヨーグルトの粒子が充満した放送室。完全に白一色に塗り替えられていた。
「…………」
床の白い塊が、ごろっと横に転がった。床に綺麗な人型が二つ出来る。体の前側だけ無傷な隊員C自身と、
もう一つは彼の影の形に残った絨毯。そしてその中で耳を押さえて縮こまっているのは放送委員。
あの一瞬では彼女を庇うのが精一杯だった。しかし全身に衝撃を受けたものの、動けないほどではない。
放送室の防音設備、吸音壁と厚い絨毯が衝撃を半減させてくれた。もしこれが普通の密室だったら、
行き場を無くした衝撃と圧力の大半を人体が吸収するはめになっていただろう。
「──」
少女が何か呼びかけているが、耳がほとんど聞こえなかった。たぶん一時的なものだろう、問題ない。
この子は耳を塞いでいたので、こちらの声は聞こえるはずだ。
「……大丈夫だ。君も体育館に行きなさい」
かなり酷い目に遭ったが、その代わりついに敵の尻尾を掴んだ。ほんの一瞬、ドアの向こうの人影が見えた。
あの制服は間違いなく、第五旅団IGPKのものだった。隊員Cは嘆息する。
「……なんて事だ」
>101
立ち上がろうとした更級 美希子は、ヨーグルトで足を滑らせ尻餅を突いた。
「きゃ?」
彼女のお尻の下で「もふっ」という声が聞こえ、同時に床の上でゴン☆と鈍い音が響いた。
どちらも、ひなぎく隊員Cの発した音だった。簡単に言えば、身を起こそうとしていた隊員Cの顔面に
座ってしまったのだ。それは空手で言うところの『自然石割り』の状態だった。
もしも床に絨毯が敷き詰められていなかったら。隊員Cは後頭部を痛打し、即気絶していただろう。
だがこれで行動不能にさせてしまったのは変わりない。
慌てて退く更級 美希子。
「ああっ!すみません!すみません!」
赤面しながら何度も謝る。
「……あと十歳……」
意識朦朧としている隊員Cは、ヨーグルト塗れの手で胸の隊員章を外し、握らせる。
「ひなぎくか…もなこ様のクラス…部隊長がいるはず……伝えてくれ『敵はIGPK』と。──急いで!」
更級 美希子は頷くと、隊員Cの体を手がかりに、危なっかしい足取りで放送室のドアまで辿り着いた。
「頼んだ…ぞ」
「……あと十歳、成長していれば役得だったけど……もしそうだったら圧死してたか」
薄れゆく意識の中、適当に呟いてみる。
「しかし、縞パンか……最近の小学生は、進んでるなぁ…」
ガクッ(ひなぎく隊員C 行動不能)
なかなか格好良く逝けないのは、お約束(笑)
「…ふう、少し眠いや」
あまり難しい本ばかり読んでるとバカになるっていうから、ちょっと休もう。
机に上半身を投げ出し、ぺたりと頬を付ける。……冷たくて気持ちいいや。
僕がそのままの姿勢で、ぼーっと窓の外を眺めていると、急に騒がしくなってきた。
「へえ、立派な図書館だね。まあ、僕の家のほどじゃないけれど」
「アメリーくんちは、敷地の中に図書館があるんだよね。えーと、たしか…ポメラニアン?」
「……スミソニアン図書館だよ、ニホンちゃん」
「あっ、ごめんなさい」
「別にいいさ。とにかく急いで探さないと、昼休み終わっちゃうよ。で、なんて本だっけ?」
「消えたパパを探せ、って言うの。『パパ』の部分はカタカナなの。分かるかな?」
「んー、日本語は難しいからねー。だいたい一つの言語に三つの形式なんて要らないと思うけど?
やっぱり英語がNo,1さ。Simple is the bestだよ」
「あら、英語はわたしのが本家ですのよ」
「む…」
「えーと(汗)でもパパが、日之本家が賢くなったのは漢字、ひらがな、カタカナを
組み合わせて使う日本語の難しさのお陰でもあるんだって」
「ニダァ!そんなこと言って、また日本語を押し付けるつもりニダ!」
「え、そんなつもりじゃ…」
「謝罪と賠償を(略)ハングル文字マンセー!」
「あら?でもカンコ君の着てるTシャツ、日本語がプリントされてますわ」
「ギク!」
「しかも『デムパ少年』でっすって。ふふ、ぴったりですわ」
「アイゴォ!」
……なんだか、楽しそうだね。
TVカメラのファインダー越しに、マイクを持った大和 撫子のバストアップ。
『……裏門へ近付くのは無理のようです。逆にこちらの方が、より物騒そうです』
裏門の周辺に遠距離ズーム。軍用トレーラーだと、判る者には判る数台の偽装トラック。
消火銃を改造したような装備を身に付けた兵士達の姿。
『戻りましょう、カメちゃん』
目前を通り過ぎてゆく大和 撫子──カメラはしばらく後を追う──急に立ち止まり、フェンスを見上げる。
『ここ、登れそうね』
躊躇うことなく登り始める。カメラは近付き、下から見上げる──ズームアップ。
『……撫子さん止めましょうよ。これって不法侵入ですよ』
『今更なに言ってるのよ。よいしょっと、それに連中こそ──ちょっ…まだ撮っ…きゃあ!?』
Gパンのヒップ部分を手が隠す。次の瞬間カメラは更にズーム──ではなく──落ちてきた。
ブツンと音声が途切れ、景色がノイズを発生させながら回転する。
そしてカメラには、しばらく青い空だけが映っていた。
>84,95
斥候より加也嬢発見の報告を受けたIGPK隊長。しばし考え、そして命令する。
IGPK隊長「本隊はこれより作戦の二段階に入る! 編成は下記の通り」
*甲式部隊:特殊支援班(5名)+撮影班(5名)×3部隊。
各々北棟、南棟、校庭に展開する。もなこ様を探しつつ、基本的には撮影行動をとるが、
邪魔する者は実力を以って排除する。ただし可能ならば食料調達部隊の懐柔を行う。
*乙式部隊:特務警護班(三人一組)×6部隊。
巡回する(北校舎周辺、南校舎周辺、学校周辺)
守備する(室内プール、正門、裏門)
*丙式部隊:ヨーグルト戦闘員(30名)
時期を見計らい、半数を以って体育館を占拠、封鎖に動く。
備考
*IGPK本部(裏門)に残るのは隊長、乙式1部隊、待機中のヨーグルト戦闘員15名。
あとは撮影班本隊、伝令、オペレーター等の非戦闘要員。
*通信は内線を利用する。本部への通信は視聴覚室の番号をジャックし使用。
*バックパックのヨーグルト容量は10リットル。銃一発で1リットル、爆弾は2リットル消費。
室内プールがヨーグルトの補給基地となる。
IGPK隊長「もなこ様を発見次第、作戦の最終段階へと突入する。……諸君の健闘を祈る!」
わたしは廊下を走ります。高学年になって初めてです。途中で兵隊さんに会いました。
たぶんアイジーピーケーの兵隊さんです。挨拶をして、ドキドキしながらすれ違います。
「お嬢さん、ちょっと待った」
呼び止められて、腰が抜けそうになりました。なるべく普通に振り返ります。
「……なんでしょう?」
「もなこ殿下の所在を知らないかな?」
「しりません。急いでますので失礼します」
走り出したいのを我慢して、ひとまず目の前の女子トイレに入ります。ドアに鍵を掛け、
便座に座って一息つきました。このまま全部終わるまで、ここに隠れていたいです。
でも私を助けてくれた、ひなぎくのお兄さんの信頼を裏切る事など出来ません。
大切な放送室を汚されたお返しをしなければいけません。
萌宮さんのクラスは、もうすぐそこです。
ようやく、教室にたどり着く。
ここまでの長かったことといったら…!行き交う人を掻き分け、教室にたどり着くと10人前後しかいない。
「みんなは?」
「出かけちゃったよ。僕らは先生を待ってるんだけど。」
「外で炊き出しやってるって言うからさあ…」
さすがに食欲には勝てない。みんなちょっと表情が暗かった。
守屋も自分が空腹のままだということに気付いたが、今は非常時でもあった。
もなこちゃんを守らないと!
「とにかく、話を聞いてくれ!」
2人はクラスの皆に自分達の見てきたことを語った…
あたしは走る。
焼きそばパンの袋を抱えたまま。
「うーん…どこなのかしら…」
校内に兵隊の姿が多い。制服はひなぎくの物じゃないし、旅団のそれとも違うみたい…
なんか、変。銃持ってるってのが一番おかしい。
と、思っていると後ろから声をかけられた。
「どちらの方ですか?」
「あ、先生、お疲れ様でございます。我々は第五旅団の者であります!」
それは見れば分かるのよ…
「何をされておいでです?」
「殿下と御学友殿を探しております。ご存知ありませんか?」
………ぜったい、変。
「あたしも捜してるんですけどね…」
周囲を見渡す。一人…で行動はしないわね…軍隊なら。(カメラのレンズハケーン(笑))
「見つけたら連絡いたしますわ。」
適当にごまかして去る。これが一番。
さっきから携帯メールが使えないのよね…これって絶対変だ。
何か起こってる!この学校内で!とすれば狙われる子は決まってる!
探し回っていると(
>>107)トイレから女の子が出てきた。妙なくらいキョロキョロして…
あの子って確か放送委員の…
渡り廊下を通り過ぎ、図画工作室、理科室を回って今、家庭課室・・・・
「はやみさん、なにをしているのですか?」
「いろいろと武器を…集めています。」
「?」
「先ほどからなにやら不穏な動きが見えます。今ある装備では手薄ですから…」
何か!なにか使えるものは何かないか!?
くそ、俺がマクガイバーだったらなあ……いいアイディアが…
世代のばれる思考であった…テレビっ子の速水君…
「あら…家庭科室にだれかいるようですわね…もう授業がはじまるのかしら?」
隣の家庭科室から話し声が聞こえる。次の時間は調理実習でもあるのだろう。
クワンはまだ電報を読んでいる。
「あまり人目につくのはよろしくありませんわね。クワンさんもそうでしょう?」
電報を読み終わったようだ。
「そうですねぇ。どうやらお互い敵という訳ではないみたいですな…。さあ、これから
どうします?」
「まあ、乗りかかったフネですし〜。職員室まで御一緒しますわ。」
じゃあ行きましょう、と、いせがドアを開ける。
「おい!そっち(家庭科室)には人がいるんだろう!?」
「あら…」
アホだ。そして、家庭科室にいた人物と目が合ってしまう。!!あれは!!
「で、でんかァァァァァァ!あたくしです、いせです!お逢いしとうございました!」
5年生「おかわりー!」
6年生「おかわりー!」
4年生「ボクもー!」
炊き出し係「ヒー!(汗)」
上級生はすごいなあ。……うー、お腹いっぱい。
そろそろ体育館いこっと。なにがあるのかな?
〜各部隊よりの通信〜(時間は前後しています)
オペレーター「甲式イ部隊、北棟に到着。まずはモナコ殿下の教室へ向かいます」
オペレーター「甲式ロ部隊、南棟1FLを捜索中。職員室にて美人教師の撮影成功だそうです」
オペレーター「甲式ハ部隊、校庭にて撮影開始。同時に配給班への交渉を開始」
乙式イ〜ハ部隊(各々外周を巡回中。以降は緊急時以外連絡無し)
乙式ロ〜ホ部隊(10分間隔で定時連絡)
丙式イ部隊「e〜」(まだ待機中)
丙式ロ部隊「¥e〜」(待機中)
守屋の語った内容は不完全とはいえ、クラス内の生徒を驚愕させるには充分なものであった。
10人足らずの子供達…守備にはほとんどならない…
「どうしよう…」
「もなこちゃんは?」
「まだ帰ってきてないよ。」
「困ったなあ…」
加也も頭を抱えていた。実はターゲットの一人であることなどこの時点では知る由もないのだが。
「さっきの放送って、そういうことなのか…どうしよう?」
「とりあえず、篭城しかないと思う。」
加也が口を出した。
「もなこちゃんが帰ってくるまでここを守らなきゃ…」
なけなしの知識をより集めて守備を固めることにした。
指示は意外に迅速で的確だった。
カーテンを閉めて鍵をかけ、防火シャッターを閉める。2人がもなこ捜索と伝令に走る。
残った者は武器になりそうなものをかき集める…
宇月と別れた食糧班員が職員室に入る。
と、IGPKの姿を認め、思わず姿を隠した。
(なんで、こんな所にあいつらが?…)
そのまま、見つからぬように職員用の校内放送ブースに近づく。
これまで抑えられると少々面倒なことになる…マイクを取り、またこそこそと隣の会議室に隠れた。
(ひなぎくがいない…何かあったのか?…)
ともかく、ひなぎく本隊に連絡を取りたい。
校内放送のマイクをONにするとコツ、コツと叩き始めた…
>114
ありゃ?何か子供達が動き始めたぞ。しかも向こうから食料班がやって来る。
不味い雰囲気……連絡しようにも加也タンから目は離せないし。
(彼はまだ内線が使えるとは知らない)
とりあえず教室の出入りを確認できる程度まで下がるか……。
『今、軍用トレーラーから大勢の兵士達が現れました。ついに事態が動き始めたようです』
木陰から撮影するTVカメラ。
『兵士達の制服も装備も、見たことの無いものばかりです。彼らが政府の発表にあった
対テロ支援部隊なのでしょうか?』
なんとか校内に侵入した二人だったが、兵士達が居なくなるまでは、まだ動けない。
茂みに隠れて息を潜めつつ、プロ根性でリポートを続けていた。
「OKです。いい絵撮れてます」
「ふう……ところで、さっきの部分(>105)ちゃんと消したでしょうね?」
「編集は局に戻ってからじゃないと……テープの巻き戻しは難しいんですよ」
「どうして今日に限ってデジタルカメラじゃないのよ」
「妨害電波出てるみたいですから、アナログ方式のほうが良いかと…」
「えっ、デジカメじゃ撮れないの?」
「……いえ、なんとなく」
>>115 放送用マイクから漏れるように聞こえて来る音に反応する隊員。
「隊長!」
「ああ、まちがいない。」
第五旅団、しかも一部のものしか知らないモールス信号を応用した暗号文。
秘密裡に情報の伝達をするのにはうってつけである。
「…IGPKコウナイニウシンニュウ、フオンナウゴキアリ…」
「本隊に確認は?」
「連絡普通です!旅団の通常回線、及び電話、電波が遮断されています!」
「情報封鎖か!うかつ!」
「この規模だとそう広範囲には及ぶまい。だれか3人!どこかで電話回線を遮断しているか、
電波妨害を行っているものがいるはずだ、探せ!」
「ハッ!!」
「宮様の警護は?」
「速水がついております!」
「よし、全部隊を校内に展開!校庭にいる食糧部隊にも増援を要請しろ!本隊に連絡は間に合わん!」
「宮様と宮様の教室を確保せよ!その際、発砲以外のすべての行動を認める!急げ!」
隊長の激と共にひなぎくが本格的に動きはじめる。
分隊A…電波障害の発生源を特定、排除。
分隊B〜D…北棟へ展開。教室の確保へ。
分隊E…宮様の捜索、身柄の確保。
分隊F…食糧班への協力要請。その後は体育館の生徒達の警護に回る。
分隊G…南棟へ展開。放送室などの解放へ。
「人員が少ない…分隊といっても2,3人…なんとか…頼むぞ…」
子供達が、わたくしの周りにどんどん集まってきます。何故?(当然)
……わたくしに何か期待しているようです。今ここで出来る事といったら、
お話と(説法)ピアノくらいですが……ああ酒よ──じゃなかった主よ、
いい加減、わたくしをお導き下さい(笑)
>115
IGPKがやる事といったら、撮影活動以外に何があると言うのだね?
>118
食料班隊員程度が使える暗号文……最低でも副総長直属の私やオペレーター達なら
知ってそうな気もするが……偽装トラック内で聞こえない(笑)
おお、配給班の諸君お疲れ様。副総長殿の指示により君達の勇士を撮影させてもらっているよ。
──ん? この装備は何だって? ただの水鉄砲だが(ヨーグルト銃を掲げて見せる)
判っているとは思うが、君達の突然の行動に世間は大騒ぎなのだ。──いやいや貴兄らの殿下へ対する
想いと忠誠は良く判っている。そう同じ第五旅団としてね。しかし世論を無視する訳にもいくまい。
……実はね、副総長殿のお力で今ここは対テロ支援活動の演習中とマスメディアに発表されていてね。
つまり我らIGPKが支援部隊、そしてひなぎくがテログループ役となっているのだ。
MHKや学校側が見ている以上、世間向けにそれらしい行動もしなければいけなくてね。もしここに
ひなぎくが現れれば、我々は仕方なくこれで彼らに発砲する。と言っても中身は無害なヨーグルトだがね。
かなり強引な展開になると思うが、こちらも貴兄らの尻拭い──いや失礼、フォローに必死でね。
ま、驚かすといけないから報告に来たわけだが、冷静に頼むよ。
ところで、我らが主に殿下の御姿を中心に蒐集している「萌え写真」幾葉か欲しくはないかな?
>>121 「写真集?それはぜひとも欲しいぞ(;´Д`)ハァハァ 」
………って、こういうボケはこの際必要ないかな?
IGPKの諸兄のご協力は感謝したい。何せ装備もいい加減なまま出てきてしまったからねえ。
しかし、珍しいですな。いや、あなた方のことですよ。
IGPKといえば我々旅団の広報を担っているといいつつ訓練の写真など一切撮りに来ない、
宮様の同人写真集の作成に血道をあげ、撮影の邪魔になるものを強制排除しては
苦情対策係に迷惑をかけている部隊と聞いておりますが…いや、これは失礼。
手を上げて首を振る。
任務ご苦労様です。お役目は存分に果たしてください。あ、ただし我々の任務の邪魔だけは
なさらないでくださいよ。ひなぎくの方々にもよろしく。あ、そうそう、ニラ茶でもいかがですかな?
ハ部隊が去る。と、笑い出す隊長。
「…隊長?」
「……ひなぎくがテログループ?笑わせるよ。そんな話聞いたこともない。ひなぎくは近衛中の近衛、
イメージが大事だ。そんな連中がテロ役なんてする訳がない。どっちがって言ったら奴らのほうが適任だよ。」
「????」
「バカにして貰っちゃあ困る。こちとら旅団の生命線、食糧を預かる誇り高き補給部隊食糧班だ、
状況把握、情報伝達、行動速度には前線の奴らにも負けやしない!あんな副助の私兵にバカにされる覚えはない!」
バン、と机を叩く。
「ひなぎくに至急連絡を取れ、裏を取る。その上で部隊を学校に展開。いいか、奴らに気取らせるな。
油断させておけ。連中の目的がひなぎくの排除ならその先にあるのは間違いなく宮様であり、学校の生徒達だ。
子供達を守れ。」
…え?ああ、いや別に。カレーの鍋を転がしたバカがいたようで、叱っていたのですよ。掃除も大変です。
まったく、食べ物を粗末にする奴は許せませんなあ…
>>120 まあ、こんな感じですかね。
補給は軍の生命線ですから、独自の暗号文くらい持っていても…と都合よく考えてみるテスト。
彼らは食べものを粗末にする人を許しません(笑)理由のいかんを問わず、ね。
>122
我らIGPKが嫌われているのは百も承知。
(何しろ第五旅団内で優秀ではあるが歪んだ萌えのため、各部隊で爪弾きにされた者達が集められた、
ひなぎくとは正反対のエリート(基地外)集団なのだから。旅団内から膿を取り除き、それさえも有効活用する
副総長の紙一重のアイディアであった。利用されている事は判っているが、居場所を与えてくれた事は
IGPKの誰もが心から感謝している。ゆえに鋼の結束。死して屍拾うもの無し)
ただ筋くらいは通しておかんとな。それが自らの首を絞める事になるとしても、だ。
同じ第五旅団兵に対する最低限の礼儀(言い訳)だと、言っても解ってもらえんだろうが……。
懐柔は可能なら行うといった程度で、最初から大した期待はしていない。
なにしろ我らの戦闘力は国防軍の特殊部隊にも匹敵しうるのだから。
決して慢心ではないぞ。
>122,123
食べ物を粗末にするな、ですと?……む…食料班よりの御忠告、至極もっともな意見ですな。
これには着弾を判りやすくするという意味もあったのですが(適当)
(よく考えれば、最終目的以外でヨーグルトを使う必要は無いような……)
判りました。このヨーグルトは差し上げましょう。児童達に振舞ってください。
逝印乳業が信頼回復の為に丹精込めて作ったものです。そのほうが喜ぶでしょう。
なに、この装備は元々水を発射するもの。心配御無用です。
(くそ、参ったな……)
〜電波〜
食べ物を粗末にする事を許さないのなら、黙ってないで注意されますよね?(苦笑)
仕方ないので校庭の部隊は水を使う事にします。扱いにくいヨーグルトを撃ち出すために
強化改造されてますから、水だとかなり威力が上昇します。痛いです。補給も近場で出来ます。
しかし追加効果"滑る"等は失われます。加也タン(児童)にも使えません。
……校庭を白く染めたかった。一応、白色絵の具でも混ぜておきますか。
>115
会議室のドアを開く。そこには呼び出し用のマイクを持った食糧班員がいた。
「──やあ、我らが気付かないとでも思ったのかね?それでは余りにも間抜けと思わないかい?」
(本当は放送を聞くまで気付かなかった)
「放送ブースの電源は落とさせてもらったよ。先ほどの暗号は何か、聞かせてもらえないかな?」
銃口を向けられても食糧班員は喋らない。
「……黙秘ね。フフ、あれは食料班と各部隊長クラスしか知らない、補給部隊専用の暗号だろう?」
さすがに食糧班員は驚いたようだった。彼(IGPK隊員)は薄笑いを浮かべた。
「かつての先輩の顔を忘れたのかね?まあいい、君は見事に役目を果たした。ゆっくり休むといい」
ヨーグルト銃の引き金を引く。食糧班員は壁まで吹き飛ばされた。続けてヨーグルト爆弾を投げ込み、
扉を閉める。彼は一瞬だけ、任務に忠実な元後輩に黙祷した。
(ドドンッ!!!)
すぐに作戦本部への内線を架ける。
「──こちら甲式ロ部隊。ひなぎく駐留本部に感付かれた可能性あり。注意されたし」
意を決して、私はトイレから出ました。習慣で、意味もなく手を洗ってしまいます。
ついでにヨーグルトまみれだったあの人の隊員章も洗います。きれいになりました。
萌宮さんのクラスは、ここから一つ向こうの教室です。でも何か様子が変です。
アイジピーケーの兵隊さんと、別の兵隊さん達が教室の前で向かい合っています。
ここからは何を言っているのか判りませんが、なぜか二組とも困っているようです。
どうして教室の中に入らないのでしょう? それとも入れないのでしょうか?
ひなぎくの人はいないようですし「ぶ隊長」さんが誰か聞けそうな状況ではありません。
もうしばらく、ここから様子を見たほうがよさそうです。
「何奴!」
速水が銃を構える。まだいせのことを覚えていないらしい。
「ふなだまのおねえさん?どうして学校にいるのですか?」
「それは1分1秒でも多く殿下のお傍にいたいと思うその心がそうさせるのですわ〜♪」
「…殿下のお知り合いで?」
「はい。いせさんはよこすかのぐんかんのふなだまのおねえさん、なのです。
でも、こちらのかたは知らないのです…どなたですか?」
「こちらはクワンさんですわ〜♪武術の心得のあるとっても頼もしい中国人ですのよ〜♪」
おいおい。
>117
ガサガサ…
「──ん?」
茂みが不自然に揺れている。警護班員は銃を構えた。
「そこにいるのは誰だ?」
『…に、にゃー』
「なんだ猫か──って訳ないだろ! 五つ数えるうちに出て来い。ひとーつ」
「ストップ、ストーップ! いま出ます」
木陰からマイクを持った女性リポーターとカメラマンが出てきた。二人の顔を確認し、
警護班員の一人の態度が一変する。
「な、なでしこさんっ!?」
「はい…?」
「あの『突貫(とっかん)リポート』の大和 撫子さんですよね? 俺ファンなんです!」
「俺もいつも見てます! 今カメラ回ってるんですか?」
えらくミーハーな隊員達だった。
「一緒に写真撮って頂いてもいいですか?」
「良ければお茶でもどうです?トレーラの中をご案内しますよ?」
>129
「良ければお茶でもどうです?トレーラの中をご案内しますよ?」
はしゃぎ気味で提案してくる兵士。彼らに見つかった時は
もはやこれまでと覚悟していた二人だったが、状況は好転しているようだった。
「……変な所には変なファンがいるもんですね」(ぼそっ)
「何か言った?」
「いえ別に(汗) どうするんですか?」
撫子は考える。
(むー。撮影続行を最良とした場合。テープ没収、撮影中止が最悪よね。
断る?もし今回は上手くいったとしても、また何度も同じ目に遭うかもしれないし……
受ける?わたし達は無断で侵入、撮影してるから、下手すれば……でも…
えーとアレなんだっけ…虎の穴?…許可を……始末書…ランチ…録画……)プスプス
脳がショートする寸前で気が付いた。こんなのは自分のスタイルではない。
「──では、案内していただけます?」
喜ぶ兵士達。雄一はそっと囁く。
「いいんですか?」
「いいの。昔から言うじゃない、当たって砕けろって」
「……砕けるのは勘弁して欲しいです」
>>128 「くわんさんなのですか、はじめまして…なのです。」
ぺこり。手を出そうとするのを速水が止める。
「宮様、あまり不用意に…失礼。近衛の速水と申します。」
丁寧にお辞儀をする。が、警戒は解いていない。
「なぜ、校内におられるのか、理由をお聞かせ願いたい。」
「…?くわんさんてどこかでみたようなきがするのです。もなこのきのせいですか?」
唐突に、もなこが尋ねた。
>>127 教室の前はシャッターが下ろされていて、その前で兵隊たちがにらみ合っている。
物陰で女の子が見ている。あの子ならちょっとは事情が分かってるかも…
後ろから近づき、ぽんと肩を叩く。
「!!!!!!」
声にならないくらいびっくりする女の子。あわてて、口を押さえて階段の陰に隠れる。
「ごめん、びっくりさせちゃったね。更級さんでしょ?どうしたの?」
>132
突然肩を叩かれました。
「!!!!!!」
声も出ませんでした。悲鳴とは、ある程度の余裕があってこそ出るもののようです。
やっと悲鳴を上げられる状態になった時には、私は口を塞がれて、暗がりに引きずり込まれてしまいました。
私は、ここまでなのでしょうか?
「ごめん、びっくりさせちゃったね。更級さんでしょ?どうしたの?」
優しそうな声に私は目を開けます。犯人は学校の先生でした。新任の先生で、確か……
「…ウツキ先生?」
うろ覚えでした。先生のほうはほとんど面識のない私の名前を覚えて頂いているのに、恥ずかしいです。
八つ当たりで、お説教しちゃいます。
「先生、なんてひどい。これではまるで誘拐です。私達のお手本である先生が(中略)
いいですか? まずは声をかけるべきです。この場合適した呼びかけ方は(中略)
逃げた小鳥を手で掴むと、驚いて心臓マヒを起こしてしまう事が(以下略)」
ああ、先生ごめんなさい。でも、とてもとても怖かったんです。喋るのを止めたら泣いてしまいそうです。
もう少しだけ聞いていてください。
>>133 なんか…とっても驚かせちゃったみたい。
半泣きになりながらあたしに説教している更級さん…ちょっとかわいいかも。
…でも、なんかほっておくと小一時間説教されそうね…声も大きいし…
頭をなでて、ゆっくりと抱きしめてあげるとようやく落ち着いてきたみたいだった。
うん、古今東西女の胸の中ってのは最強の精神安定剤とはよく言ったものね…
とりあえず、深呼吸、しようね。
さて、とりあえず、話を聞かなきゃいけないわけで。
(ウヅキと読んでくれないのは慣れてるから突っ込みなしの方向で)
〜各部隊よりの通信〜(2回目)
オペレーター「甲式イ部隊、殿下の教室前で食料班と遭遇。児童達が教室を封鎖し膠着状態です」
IGPK隊長「先ずはターゲットの確認を優先せよ」
オペレーター「甲式ロ部隊より警告。ひなぎく本隊に気付かれた可能性ありとのこと」
IGPK隊長「了解した。部隊は引き続き南棟の捜索を続行するように」
オペレーター「甲式ハ部隊、校庭にて撮影中。配給班との交渉は失敗に終わった模様」
IGPK隊長「現在、校庭にいる児童の数は?」
オペレーター「…………15名だそうです」
IGPK隊長「そうか。ひなぎく本隊への注意を促すように」
そう言って席を離れるIGPK隊長。状況はやや彼の予想から外れつつあった。何より依然として
モナコ殿下の所在が掴めない。しかしこの程度なら十分に修正範囲内だ。
「……丙式イ部隊に出撃を通達せよ。体育館を占拠し、児童の入館以外の出入りは禁止しろ。
ターゲットが居ないか確認も忘れるな」
(……しかし、あのコスチュームだけはなんとかならんものだろうか? 目立って仕方がない)
などと考えていると、乙式ハ部隊の一人がやって来て、彼の前で妙に気合の入った敬礼をした。
「失礼します。大和 撫子さんをお連れしました!」
「…………何いっ!?」
実は隊長もファンだった(笑)
内部回線にて。
こちら体育館前。
ひなぎく分隊Fと合流完了。これより体育館の封鎖を行います。
装備の確保が急務ですが、ひなぎくのおかげで何とかできそうです。
シスターを一人発見しましたが、誘導できないのでそのまま体育館にて保護します。
こちら宮様の教室前。
子供達はシャッターを下ろして独自に篭城作戦を展開の模様。宮様の所在は不明です。
IGPKの接近も確認済みのため、教室への通路を封鎖して備えます。
なお、ひなぎく本隊より装備と人員の補充を受けました。
なお、ひなぎくの側でも宮様の所在地は不明とのこと。
速水少尉が同行しているものと推察されるが本人との連絡は途絶。
IGPKの側も把握はしていない模様。
装備が不足です。「緊急決戦装備」の使用許可を要請します。
「お腹減ったなー。。」
教室の、前後の扉にバリケードを作り終えた所で、ぽそりと呟く。
もなこの帰りを教室で待つつもりだったが、こうなってしまっては外部から教室に入ることも
出来ない。完全に出入り口を塞いでしまっているため、教室内を見る事さえ難しいくらいだ。
となると、ここに居てもあまり意味がないように思えた。
「良く分からないままにバリケード作っちゃったけど。。もなこちゃんは、速水さんがいるから
大丈夫だよね。」
教室には十数人の生徒が、少し興奮した様子でお喋りを続けている。まぁ恐がっている人は
いないみたいで、むしろこの状況を楽しんでいるようだった。
それもそうだ。実際危険と思われる事態には一度もあっていないのだから。
窓の外を眺めると、相変わらず炊き出しに群がる生徒達が見える。…余計に空腹感が増す。
「うん。加也もご飯貰いに行っちゃおっかな。」
誰に語りかける訳でもなく呟くと窓枠に手をかけ、ひらりと外へ飛び出していった。
「電波障害の発生源は突き止めたか?」
「はっ、裏門側にIGPKのトラックを確認しました。そこから学校内に向けて妨害電波を放射しているものと
思われます。」
「電話回線は?」
「通信局の一部を接収して一時的な遮断を行っているようです。」
「情報封鎖はお手の物か…まあ、表ざたに出来ないのも事実だからな。」
「どうされますか?」
「学校の放送網を回復させる。インカムくらいは使えるようにしないと人数が少ない我々では
連中の物量に対抗できん。」
「装備はどうされます?」
「校庭の連中が手薄だ。いただけるものは頂こう。」
「なるほど。」
「でだ、一つ思いついたことがある。」
「なんでしょうか?」
「成功したら、こいつを奴らに平文で送りつけてやれ。」
「……こ、これは……」
「なつかしいだろう?私はこれを生で見たことがあるのだよ…少々趣は違うが、こんな時にこそ
ふさわしいと思うのだよ。」
>137
何気なしに校舎を見上げていたIGPK隊員(撮影班)
2Fの教室の窓から飛び出そうとしている児童に気付く。いくら基地外部隊と呼ばれているくらい
歪んでいても、これには驚き、思い留まらせようとして慌てて駆け寄る。
「早まるなっ!」
飛び降りた──間に合わない!──スタッ。
「へっ?」
軽やかに着地する児童。何事も無かったかのように長い髪を整える。
一方、IGPK隊員は勢い余って校舎の壁に激突し、気絶する。彼女がターゲットの九重加也である事など、
もちろん知る由もなかった。
甲式ハ部隊は
校庭には現在10人で展開中。制服なのでよく目立つ…
望遠レンズつきのカメラを持ち、立っている隊員。後ろのドラム缶のふたが開き、音もなく影が立つ。
と、首をつかまれ、缶の中にそのまま音もなく引きずり込まれた。
同時に隣にいた支援班の一人もまた、ドラム缶の中に姿を消す。
「悪く思うなよ。」
ボソリとつぶやく2人は先ほどの2人ではなかった。
反撃が密かに開始されてゆく。
「よーし、食べるぞー♪」
はやる気持ちをおさえつつ、足早に食料調達部隊のいる所へと近付いていく。
距離が近付くごとに、何だか恐ろしいまでに活気付いている事に気がつく。あれは6年生達
だろうか。給食はちゃんと出てるハズなのに・・・?
見ると兵士の人達もだいぶ疲れているようだった。今にも駆け出してご飯を貰いたい所だった
のだが、それをぐっとこらえる。
「なんか大変そうだしねぇ。おとなしく順番待ちしてよっと。」
>111 >128 >131
思わず頭を抱えたくなった。
此処に来たのはまったくの義憤だった。
だが、此処に来て混乱を利用して水上君に接触することを考えた。
だが、あくまで極秘裏にすませるつもりが、
このあーぱー船魂のおかげで全てぶち壊しだ。
「私ですか?少々、義憤に駆られましてね。日本の軍隊の方は、
学校にまで銃火器を持ち込んで幼き純真な子供の心を壊すつもりなのか、と」
俺は速水と名乗る青年兵に向かって皮肉をこめて答える。
もちろん、自虐もこめて。水上君を巻き込んでおいて、これもないもんだ。
その時、もなこ殿下が俺に尋ねた。
・・・・・・正直、子供の記憶力ってすごいな・・・・・・
おぼろげな記憶ながら、俺を覚えていたらしい。
「・・・・・・いえ、これが始めてお会いするのですよ、殿下。貫大人(クワン・ターレン)言います。よろしく」
俺は内心冷や汗をかきながら、しれっとした顔で答えた。
「それで、どうしますか、これ?このままだと、殿下の友達もヨーグルト塗れね。
そして写真撮られるね。とても、とても悪いことね」
もう、ここまで来たら俺も腹をくくることにした。
多少、恩を売っておくのは、けして悪いことじゃないはず。
>140
「全員集合!」
即座に集まるIGPK隊員達。二人だけ、少し遅れてやってくる。
「作戦本部から、ひなぎくに気付かれたらしいという報告を聞いた。各自用心するように」
「はっ!」×8
「……ん? お前とお前、見ない顔だな。新顔か?」
「はっ、そうであります!」
と姿勢を正す二人に、全員が水圧銃の銃口を突きつける。
「……何をするでありますか?」
「あのな、我らIGPKは他の部隊から寄せ集めの間抜け集団だとでも思われているのか?」
バシュッ!!
一人を吹き飛ばす。
「TVドラマじゃあるまいし、仲間の顔ぐらい把握しているぞ。大体たった10人の中に
潜り込めるわけ無いだろ。二人を何処へやった?」
「………」
「そうか。まあタイミングも悪かったって事だ」
バシュッ!!
「こいつ等をふん縛って木に吊るしとけ。IGPKの制服のまま『私は敗北主義者です』と張り紙してな。
我らのイメージが下がる分には、一向に構わん──ああ食料調達部隊の諸兄方ご心配なく、
無作法な部下に処罰を与えているだけです。愛の鞭って奴ですよ」
>143の続き。
「……しかしこいつ等何者でしょうか? 我らの誰もが気付かなかったという事は、
入れ替わられた二人はおそらく抵抗する暇さえなかったのでしょう」
「ここにいる面子でそんな芸当が出来るのは、ひなぎくの連中ぐらいだろう。
……やはり我らの作戦が知られているのか…?」
校庭の木に吊るされる二人。早速児童たちが棒で突いたりして遊んでいる。
「とにかく用心しろ。お前達は行方不明の二人を探せ。俺は作戦本部に増援を頼んでくる」
「……ところで隊長、気になってるんですけど、今ここには7名しかいませんよね?」
「何? まさかまた…」
「──あ。あそこでノビてます(>139)」
どうやら何故か校舎に突っ込み、自爆したようだった。
「…………はあ。馬鹿にされる訳だ」
>>143-144 笑顔の食糧班。
「そうですか、それはそれは。愛の鞭、結構です。私なんかもいつの日か宮様に鞭でこう…
されてみたいなあなどと夢見ているのですよ。」
集まってくる。
「先ほど校舎のそばで一人、倒れている方をお見受けしましたよ。どうされたのでしょうねえ…」
さらに集まる。
「先ほどですね、分隊よりいろいろ受電をしましたのですよ。ええ、いろいろと。」
集まる。手には鍋。
「我々にはですね、まあ、戦闘用装備といわれるものはあんまり持ち合わせておらんのですけどね…」
鍋の中には……
「我々としてはこういうことはしてはいけないと隊規にもあるのですがね…」
隊長が去り、残された6人の表情が変わる。
……笑顔。
>134
わたしは宇月先生に、放送室で起こった事をなるべく簡潔に話しました。
ただ、私が運悪くひなぎくのお兄さんにトドメを刺してしまった事だけは黙っていました。
別に後ろめたい事ではありませんが「あの人は私のお尻でいってしまいました」などと言ったら
すごく誤解されそうな気がしたからです。
……はい、なんとなく意味は分かります。最近の小学生は進んでるんです……(真っ赤)
「私がぐずぐすしている間に、私がやろうとした事も、あの人が伝えようとした事も、
もう意味を無くしているかもしれません。……でも私は最後までやり遂げたいんです。
先生、一緒に付いてきて頂けますか?」
>>146 なんか、顔を赤くしてる…いいわねえ、かわいい。本当に。
なんか、こう、ぎゅーっとしたくなる。
いいわよ。どうしたいのかお姉さんに言ってごらんなさい。
モナコ殿下の教室の前で向かい合うIGPK甲式イ部隊と食料班。最初は二部隊とも子供達の篭城に
困惑していたのだが、先ほど放送でモールス信号のようなものが流れた途端、食料班の態度が一変した。
しかも現れた数人のひなぎく隊員達が彼等に物騒な装備を渡してゆく。それを黙認しているのだから、
食料班と争う気が無い事が判らないのだろうか? 自分達の目的はあくまでモナコ殿下の写真なのだから。
大切な料理を横に置き、装備を構える食料班隊員達。当初の目的など忘れてしまっているようだった。
ただ部隊長だけは落ち着いている。彼は立場上知っているのだろう。IGPKの存在の意味を。
IGPKに表(撮影部隊)と裏(副総長の私兵集団)の顔がある事は、第五旅団の者なら誰もが知っている。
だが裏の顔が二つあるという機密を知るのは、旅団の部隊長クラス以上の者達だけだった。
知っている者がいる以上うかつな事は出来ないが、逆に『確証』が無い以上、向こうも下手に
手出ししてこない。
「………?」
食料班の背後で、合図している斥候Aに気付く。ブロックサインで教室には『馬』がいる事を
知らせている。ならばモナコ殿下の所在が判らない今のところ、ここにいても意味が無い。
「フフ、貴方たち何を殺気立っているのか知りませんが、さっさと子供達を説得して、食事を与えて
あげたらどうですか? 私達が気に食わないのなら退きますから。ただモナコ殿下が居られたら、
連絡役のそこの彼(斥候A)に伝えてください」
部隊長にだけは真面目に敬礼して、回れ右をする。この建物内はまだほとんど探索していない。
そしてモナコ殿下がいる可能性も、最も高いはずだ。
>>142 「かやちゃんが?それはどういうことなのですか?」
とびつこうとする宮様を慌てて押し留める。
「状況を多少は把握しておられるようですね、そして我々に敵対するつもりも
現在のところないということも理解しました。…ご指摘については真摯に受け止めます。」
頭を下げる。宮様とそのご学友を無用の危険に晒したことはひなぎくの恥だ。それは受け止めなくてはならない。
「かやちゃんは?かやちゃんはどこなのですか?もなこ、かやちゃんになにかあったら…」
「宮様、ご安心ください。加也殿は我々ひなぎくが身命を賭してお守りしますから。」
宮様のお心を煩わせてしまった…万死に値するな…これは。
溜息をつくと2人に向き直り、手を差し出した。
「お二方は我々にご協力いただける…そう解釈してよろしいのですね?」
「協力?当然じゃありませんの。あたくしは殿下のフネですのよ。
目立舞鶴造船所で生まれて4年、殿下の御足で甲板に印をつけてもらう
その日を夢見ていままで生きてきたのですわ!」
>147
それはとても簡単な事でした。宇月先生と一緒に、萌宮さんのクラスの前で殺気立っている兵隊さん達に
近付きます。握って頂いた先生の手が、私に勇気をくれました。
「ブ隊長さんは、おられますか?」
すぐに立派そうな小父さんが私の前に来ました。私はぺこりとお辞儀して、あの人の隊員章を手渡しました。
「それを付けていた方が気を失われる前に、ブ隊長さん伝えるように頼まれました。
『敵はアイジービーケー』だそうです」
宇月先生は教室に立て篭もっている生徒達を説得されるようです。私も残ろうと思ったのですが、
体育館に行くように言われてしまいました。
「宇月先生、ありがとうございました」
ぺこりとお辞儀します。少し躊躇ってから、ぎゅっと抱きつきいてしまいました。すぐに離れて、
もう一度お辞儀します。恥ずかしくて、私は廊下を走ります。高学年になってから、これで二回目です。
「いやー、ありがとう」
出来立ての大和撫子のサイン色紙を見詰めながら、微笑む隊長。彼が優しく微笑む事など
滅多に見られることではなかったが、もちろん部外者の二人は知らない。
「さて、私も忙しい身だ。いちいち細かい事は言わない。撮影は自由に許可するかわりに、
テープはこちらで検閲させて貰う。これはMHKと同じ条件だ。さらにサービスで私が三つだけ
質問に答えてあげよう。どうかね?」
そこへやって来るオペレーター。一礼して隊長に一枚の紙切れを渡す。そこには食料調達部隊が
学校の内線を使って会話した内容が走り書きされていた(>136参照)
彼らは内線をジャックしているのだから、当然すべての通話内容は筒抜けだった。
「ちょっと失礼。質問でも考えていてください」
席を外し司令室へ戻ったIGPK隊長はニヤリと笑う。こちらの冷笑は頻繁に見られるものだった
「誰か一人、悪いが丙式イ部隊を呼び戻してくれ。体育館にモナコ殿下は居ないことが判明した。
さらには向こうが貴重な人員を裂いて体育館の生徒達を守ってくれるそうだ」
食料調達部隊がすでに敵対している理由が判らなかったが、多分勝手な決め付けで先走ったのだろう。
今回はその決め付けが幸いしているようだが、これで圧倒的有利になったのには変わりない。
ただ気になるのが『緊急決戦装備』という彼も知らない怪しげな兵器。何かの暗号だろうか?
「……丙式ロ部隊は装備を整え次第、校庭へ進撃せよ!」
どんな装備でも使う者がいなければ意味が無い。
「宛 特務放送宣伝中隊 殿
発 第一警護隊学舎専任駐留部隊本部隊長
現在諸兄らの画策され、展開されている状況は我々にとっては看過しがたきものである。
よって、望むなれば我々は殿下の御盾としての使命を全うさせていただこう。
手順がいささか前後してしまってはいるが、古式に則り、ここにかの名高き宣戦布告文を
贈らせていただく。
「俺のヨーグルトを舐めろ!」 」
シャッターの前に立つ。
「みんなー、あたしよ!開けて頂戴。」
むこうでひそひそと話し声がした。
「先生?兵隊さんはいないの?」
「うん?いるけど…どうしたの?」
「先生だけなら、入っていいよ。」
少し、考える。
何か、あったのかしら。事情を説明しようとしたら部隊長さんはどこかへ行ってしまっていた。
ま、いいか。
「いいわよ、兵隊さんは入らないから。」
いいわよね?と確認する。うなずく兵隊さんたち。
中に入るとすぐシャッターを閉めた。一応、先生としての信義は貫かないといけないからね。
教室には生徒達が10人弱。もなこちゃんは…いないわ…
「先生、加也ちゃんが飛び出ていっちゃったんです。」
指差すほうを見ると、炊き出しの列の中に見覚えのある長い髪の女の子がいた。
「ありゃ……しょうがないわねえ…せっかくパン買ってきたのに…」
しっかし、ここから飛び降りたの?よく怪我しなかったわね…
>>150 「ありがとうございます。では、いせさんは加也嬢様の捜索と警護をお願いします。
船魂であるあなたなら容易いことでしょう。貫大人殿は私と宮様の警護を共にしてください。
狙いが宮様と加也嬢様である以上、あまり動くのは得策とはいえないかもしれませんが…
まずは本隊に合流したいのです。」
「いせさん、かやちゃんを…おねがいするのです…」
ぎゅっと、手を握る。目が少し、潤んでいた。友達の危機に自分が駆けつけられないのが悔しいのだろう。
>149-150 >155
内心ため息をつく。元々は北朝側の人間だったが、
今じゃ西朝のトップの俺が、北朝とこうして共同戦線を張る羽目になるとは・・・・・・
だが、ご学友の危機にオロオロしながらも助けようとするもなこ様(;´Д`) ハァハァ ・・・・・・
じゃなくて!
「ま、乗りかかった船言います。手伝わせていただきましょか?」
あーぱー船魂を少し呆れた目で見つつ、俺は速見氏の手を握った。
結果、速水とともに本隊に合流するための護衛となる羽目になった・・・・・・
・・・・・・お尋ね者なのに・・・・・・お尋ね者なのに・・・・・・(涙
ぎゅっ、と手を握られて…そこで大爆発…はしなかった。
「お任せください、殿下。必ずや九重様をお守り申し上げますわ。」
きりっと決める。決める時は決める。スマートで鳴らした海軍の練習艦なのだから。
「では、行ってまいりますわ〜♪」
実体化おふして、ふわり、と舞い上がる。クワンが何か言いたげな目で見ていた。
「まずは北棟…殿下のクラス、ですわね。」
すぅ…と床を抜け、2階に降りる。殿下のクラスは防火シャッターが下り、その前で
兵士が睨み合いをしている。防火シャッターをすり抜ける。
「ええと…九重さま九重さま。…いらっしゃいませんわね。」
クラスには十数人の児童と、先生が1人いた。だが、九重加也はクラスにはいないようだった。
「こまりましたわね…。虱潰しに校内を探すしかないのかしら?」
その時、先生と生徒が話しているのが聞こえた。
「先生、加也ちゃんが飛び出ていっちゃったんです。」
「ありゃ……しょうがないわねえ…せっかくパン買ってきたのに…」
…先生の見ている方向を見る。校庭だ。
引き続き状況確認。
「守屋君と近衛さんは戻ってきたの?」
「戻ってきたんですけど、九重さんを追いかけて行っちゃいました。」
「ふーん…わかった、ちょっと先生行ってくるわ。これ、みんなで食べてね。」
パンを置いて外に出ようとした時、「何か」にぶつかったような気がした…気のせい…よね。
外へ向かう。兵隊だらけの所に生徒は置いて置けないわ。しかも、普段ならいざしらず、
なんか変だし。てか、他の先生は何やってるのよ!
双眼鏡を覗く眼。
「加也たんハケーン…(;´Д`)ハァハァ 」
カレーの配給の列に並んでいる加也がいる。
「おい、どうする?」
「も、も、も、もちろん(;´Д`)ハァハァ …決まってるじゃ、じゃないか…」
「や、やるのか?でも、こいつを当てたらさすがに危ないぞ。」
「あ、あ、あのドラム缶を狙うんだな…跳弾が飛び散って、か、か、加也たんの顔に…(;´Д`)ハァハァ 」
「なるほど、お前なら可能だな。よし、後はこの俺が望遠カメラで激写だ。」
「(・∀・)イイ!スゴク、(・∀・)イイ!」
「命令なんて待ってられない!すぐに行動!撮影成功して(゚д゚)ウマー!」
ヨーグルトライフルのスコープが、加也を捕らえる……
校庭に出る。
「まったく…九重さんったら、危ないから隠れてましょうって言ってたのに…」
「早く連れ戻さないと、奴らが来たら大変だよ。」
校庭ではカレーの配給がまだ行われていた。加也はその列の後ろで暇そうに立っている。
カレーのいい匂いが漂ってきていた。
「あ、いたいた。九重さーん。」
駆け寄っていく近衛。守屋も慌てて後を追った。
「あ、二人とも来たんだ。一緒に並ぼうよ。お腹すいちゃってさあ。」
舌を出し、手を振る加也。
その時、何気なく校庭の隅(体育館側)を見た守屋はキラッと何かが反射するのを見た。
(え?)
よく見る。これでも視力は2.0。先生にも褒められたんだ。
それは、ライフルの銃口だった。明らかにこっちを向いている!
「危ない!」
とっさに守屋は二人を突き飛ばす。その刹那、守屋の背中で白い弾丸が破裂した。
「守屋君!!!」
「きゃあああーーーっ!!」
吹っ飛んで倒れる守屋。悲鳴が、校庭に響き渡った。
校庭に出た時、感じたのはカレーの匂いと悲鳴だった。
何事かと見ると、校庭の方で誰かが倒れていて子供達が集まってきている。
猛烈に、悪い予感。
急いで駆けつけると、あろうことか、守屋君が倒れていた。
…な…なんてこと…
「先生!も、守屋君があたし達を庇って…」
半泣きの近衛ちゃん。加也ちゃんも青い顔をしてうずくまっていた。
「ヨーグルト弾ですから、命に別状はありませんが、まともに当たりましたので…」
説明しようとする兵士を睨みつける。
「命に?あたりまえでしょう!!」
校庭には続々と違う制服の兵士達が向かってきていた。
銃声を聞きつけてきたのだろう。食糧を配布していた兵隊達もカメラやヨーグルト銃を持った兵隊達も…
装備を積み上げてある所にあった拡声器を取る。なんか言ってやらないと気がすまない。
「あんたたちはいったいここで何がしたいの!?ここは学校なのよ?勉強するところよ!!
戦争なら外でやりなさい!ウチの生徒に怪我までさせて!!貴方達みんな出て行きなさいよ!!」
我ながら、よくこんな大声が出せたもんだと思うくらいの大声だった。
生徒達の大半はこちらに避難してきていた。
不安げな表情で、何をするでもなく座っている。先生たちも半数がここにいる。
やはり何をするでもなく、おろおろとしていた。
そして、兵士が数名見張りをするように扉の所に立っていた。
……遠くで、いや、距離的には近くで銃声が聞こえ、生徒達がどよめく。
「大丈夫ですから!落ち着いて、ね?」
先生達がなだめる。が、どよめきは治まる気配を失い、ざわ…ざわ…とした空気が漂っていた。
そして、決定的な一撃が音声として飛び込んで来た。宇月の、声だった。
「!?」
「誰か撃たれたの?」
「誰に?ねえ、どうなってるの?」
「落ち着いて!座りなさい!」
「怪我って…銃で撃たれたら…」
収拾を失う体育館内。その時、扉が開いて一人の女の子が入ってきた。
ようやく体育館までたどりついた更級美希子であった。
廊下を移動中。
「?何か聞こえるね。」
貫が足を止めた。つられて二人も足を止める。
耳を澄ますと、誰かが叫んでいるようだった。
「…あのこえ…せんせいなのです……」
「宇月先生が?」
「……徒に怪我までさせて!…つもりなの!…」
速水の表情が変わる。確かに聞こえた。「怪我」と。
「け…が…?」
思わず同時にもなこの顔を見る二人。もなこの顔は…真っ青だった。
健康的な笑顔が消え、不安に囚われているのが痛々しいほど見て取れた。
「(誰だ?)」
「(分からない、聞こえなかった)」
とっさにアイコンタクトを交わす二人。初対面でありながら、なかなか息が合っている。
「さっき、この場の全方面に向けて電文が飛んだね。「これ」はこの場にいれば誰でも受電できる…
そういうもの…見るかい?」
貫が携帯端末を開いた。そこには彼自身にもなつかしい、あの文字が並んでいた。
(北朝同士でこのセリフが使われるなんて思いもしなかったが…なあ…)
「これは!!」
「もう、止められないよ。」
自嘲気味に笑う貫。驚愕する速水。もなこは、唇を噛み締めていた。痛々しい。心底思う。
そして、ゆっくりと、決意を秘めた表情を二人に向けた。
「……とめられるのです、とめなきゃ、いけないのです。」
思わず、気をつけの姿勢をとる二人。言い知れぬオーラがもなこの周りを漂っていた。
「おねがい、してもいいですか?」
「もちろん。」
「身命を賭して、ご命令をお受けいたします。宮様。」
思わず敬礼をしていた。直立不動のまま、速水は女王たる少女の威厳をまじまじと感じていた。
>152
撫子「……うーん、3つの質問ね……」プスプス
雄一「あんまり複雑に考えない方がいいですよ。本当の事を教えてくれるかどうか分からないし。
こんなのでどうですか?」
・あなた達の所属、目的は?
・なぜ演習が平日の学校で行われるのか? 学校側の許可は取ったのか?
・第五旅団が各所から強引に食料を接収したという情報があるが?
雄一「とにかく、早く撮影に向かいましょう。ぐずぐずしてたら真実は逃げていきますよ」
>153
電文を読むIGPK隊長。
「……ふん、青いな。萌えも燃えも感じない硬い文章だ。しかも『俺のヨーグルトを舐めろ』とはな。
確かに名高い宣言だが、北朝が南朝にやられたアレをパチってどうする……」
大げさな溜息をつき、そして意外にも微笑んだ。
「だが、とても真っ直ぐだ。こんな奴らがこれからの第五旅団を背負っていくのだな。
我らが汚れ役を引き受けた甲斐があるというものだ」
「……隊長」
オペレーターに軽く手を振る。
「もちろん、それとこれとは話は別だ。我らの目的はあくまでモナコ殿下の御写真にある!」
「はっ! では返信はどう致しましょう?」
「客人も待たせているしな、任せる。若造達を適当に煽ってやれ」
笑う隊長とオペレーター達。事態が取り返しの付かない方向へと進みつつある事など、知る由もなかった。
>164
・我らは特務放送宣伝中隊(IGPK)主にモナコ殿下と第五旅団の活動を撮影している。
今回の目的は対テロ支援活動の演習への参加と、その撮影。
・テロが休日に行われるとは限らない。またこの演習は学校の防災訓練と合同で行われている。
・それは演出である。実際は事前に相手側の了解を得ている。
IGPK隊長「この第五旅団の腕章を付けていれば無問題。良い映像を撮られて下さい。それでは失礼」
〜電波〜
もちろん事後承諾(懐柔)でほとんど嘘。突っ込みは無しの方向で(笑)
美希子が入ったとたん、生徒達は彼女に殺到した。
「外は!?外はどうなってるの?」
「さっきの銃声は何?宇月先生は何を言ってるの?」
「誰か撃たれたの?ねえ!?」
恐慌状態。
おろろおろするばかりの先生達、そしてシスター(笑)
美希子はようやくの思いで自分の体験を話すことが出来た。
放送室でのこと、教室までの事……
動揺が広がる。最早、先生やその場にいる兵士達は抑止力とはなり得なかった。
「みんな!この学校は誰のものなんだ!」
壇上に一人の男の子が立っていた。6年生の生徒会長で守屋透。奇しくも、撃たれた守屋の兄であった。
「この学校はいつから兵隊達が勝手に戦う場所になったんだ!?ここは勉強をする場所じゃなかったのか?
なんで、僕らがこんな所に閉じ込められていないといけないんだ!?」
「いや、それはね、君達の安全と平和をだね…」
先生の一人が制しようとするが、他の生徒達に止められる。
「ボクはこの学校が好きだ。この学校が勝手にされるままになっている事にボクは我慢が出来ない!!」
どよめく生徒達。どよめきは歓声に変わりつつあった。
「学校は僕らの手で守るんだ!!兵隊達は出て行け!!」
「おおおーーーーっ!!!!」
食糧班の持ち込んだ資材の中に、未だに開封されていないドラム缶があった。
それは現在、対決の為のバリケード代わりに並べられていこうとしている。
耳を澄ませば缶の中で「(゚∀゚)アヒャ?」という声が聞けたかもしれない。
決戦を直前に、それに気付くものはいなかったのだが。
北棟1Fより探索を再開した甲式イ部隊だったが、拍子抜けするくらい簡単にモナコ殿下を発見した。
というか、その四人(殿下、ひなぎく、白い女、中国服)の組み合わせは余りにも目立ちすぎていた。
今までの苦労はなんだったのだろうか?と思いつつ、一人を伝令に出し、物陰で素早く打ち合わせをする。
ヨーグルト銃と撮影機材を構え、一気に突撃する兵士達。
(その時には忽然と、白い服を着た女性は消えてしまっていた)
加也嬢は居ないものの、ある意味絶好の的があった。
「殿下!ひなぎく! その男は危険人物(適当)だ! 離れろ!!」
でまかせを叫びつつ(もちろん離れるのを待たずに)怪しいとしか言いようのない中国服めがけ
彼らはヨーグルト銃の引き金を引いた。
校庭に出てきたものの、眼前に広がる状況に対してなすすべもない…
九重加也を発見したが、その直後の発砲、そして生徒へのヨーグルト弾の直撃。
完全に遅れをとった。
「…九重様、おひさしぶりです。いせですわ。覚えていらっしゃるかしら?
先生、はじめまして。志摩いせ海軍…少尉ですわ。訳あって、殿下より護衛の任務を
承りました。」
とりあえず挨拶をする。それどころではないというのはわかっているのだが。
叫ぶだけ叫んだら頭がくらくらした。
そういやあたし、ご飯食べてない…あ、やせていいかも…違う。
喉も痛い。水が…欲しいなあ。
と、眼の前に女の人が登場する。少尉…らしい。見えないけど。
「…あ、あのときのふなだまさん?」
加也が顔を上げる。
「ふなだま?…まあいいわ、説明は後。子供達を体育館に逃がすの、手伝って。」
言いながら守屋の体を抱え上げる。気を失っているみたいだけど、外傷はたいした事ない。
ショックを受けただけみたいね。よかった。
「とりあえず、ここにいるのは危険、いいわね?逃げるわよ。」
「くそっ、どうしてこんな事に!」
ただ一人走りながら吐き捨てる甲式ハ部隊長。
〜回想〜
彼が内線で増援を頼もうとしたその時、校庭から児童の悲鳴が聞こえた。
慌てて駆け戻ると、一人の児童がヨーグルト塗れになって倒れていた。
誰もがその光景に気を取られ、戻ってきた彼に気付くものはいなかった。
それは部下の仕業ではないようだった。彼の部隊は今ヨーグルトではなく水を使っているし、
なにより部下達は既に全員倒れていたのだ。
6人とも装備を奪われ、気持ち悪いくらいの笑顔で、身体の所々を痙攣させていた。
児童達に悪戯されたのか、額に『肉』と油性マジックで書かれたり『シェー』ポーズをさせられている。
校舎の傍で自爆した一人もそのまま放置されている事から、彼が行った直後に襲われた事になる。
しかし6人もの兵士をろくに抵抗させず倒す方法などあるのだろうか? たとえあの猫耳兵士達
相手でもここまで無抵抗にやられる訳が無い。考えられるとすれば、大勢で動きを封じ無理やり毒物か
それに類するものを食べさせた………………
「俺は、馬鹿か?」
校庭にいた食料班の連中がすでに敵に回っている可能性。それを失念していた。
結局は、騙すつもりが騙されていたという事だ。
だが今は、そんな事はどうでも良かった。あんな目立つ形で児童に犠牲者が出てしまった。
TVカメラなら編集できる。しかし人の口を塞ぐのには限界がある。しかもマスコミ連中だけでなく、
教師や他の児童達にも目撃されているのだ。もはやIGPKの力で誤魔化しきれるレベルではない。
下手すれば第五旅団全体が叩かれる事になる。
そしてその責任は、彼が唯一尊敬する上司が確実に引き受ける事になるだろう。
「──隊長っ!」
校庭へ近付く二人。腕にはプチテレビと第五旅団の腕章をつけている。
「それにしても撫子さん、兵士に人気あるんですね」
「んー、軍事方面を取材する女性リポーターって少ないから」
時々、変な場面や妙なアングルで彼女を撮る某カメラマンの所為でもある。
「校庭のほう、何か騒がしいですね」
「──隊長っ!」と緊迫した表情で口走るIGPKの兵士とすれ違う。
「…急いだ方が良さそうね」
辺りが白く染まっている。そして、意識の戻らない守屋君を抱えて、宇月先生が立っていた。
非常事態だ。加也が、表に出てしまったから?
近衛ちゃんの、半ば錯乱した叫びが聞こえる。それを聞いたお陰で冷静になれる自分に
驚きつつ、放心状態であった自分自身に喝を入れた。
「ごめんなさい。」
あまり多くを語るだけの余裕もなく、ただ一言、発する。本当は、誰の仕業なのかを知りた
かった。守屋君への謝罪の言葉を求めたかった。でも、これ以上勝手は出来なかった。
そして何かに寄りかからなければ倒れてしまいそうな、そんな心境からだろう。いつの間にか、
無意識にいせの手をきゅっと握り締めていた。
>169
「まったく、ご挨拶なことだ。いきなり発砲するとは」
俺は苦笑交じりに呟くと、もなこ殿下を小脇に抱え、
一気にヨーグルトの雨に向けて駆ける。
目視でその軌道を確認すると、ひょいひょいと避けていく。
目を丸くする兵士たち。
気づいたときには、手刀を受け一人の兵士が崩れ落ちている。
しかも、貫の手にはヨーグルト銃が握られている。
彼はにやりと笑う。
「こういう時は、こい言わねば。『俺のヨーグルトを食らえ』」
そして呆けたように突っ立っている兵士に向かい、ヨーグルトを乱射した。
>174
握り締めた手を軽く握り返す。既に戦いは始まっている。艦を降りた船魂が
戦いに役に立つことはそうない。ならば今はこの少女の力になろう。
殿下にお願いされたから、ではなく、今はそれが一番だと思ったのだ。
「九重様。あたくしにできることなら何なりとお申し付けください。
今日限りは、あなたさまがあたくしの艦長ですわ!」
校庭にはIGPKが押し寄せつつあった。
ひなぎくも動きを察知し、校庭へと向かう。
そして、食糧班はすでに迎撃戦への準備を完了していた。
「先生、離れてください!奴らが来ます!」
「お前ら許さんぞ!!子供に危害を加えるとは何事だ!!」
引き出されるそれは、大砲のように見えた。カチカチパン射出機である。
奪った銃には今、残り物のカレールーが詰められている。再生利用…にしては…だが。
「だからやめなさいって!」
「どいていてください!危険です!」
「来るぞ!!」
叫びは届かない。戦端は一気に開かれようとしていた。
「目標、IGPK!撃てえーッ!!」
>175
「──俺のヨーグルトを食らえ」
流暢な日本語で言い放つと、モナコ殿下を抱えたままヨーグルト銃を乱射してくる中国服。
達人級の身のこなしに呆気にとられ、反応が遅れたIGPK兵士三人が直撃を受ける。
しかし、銃の水圧は誤って殿下を吹き飛ばしてしまわぬよう最低レベルに抑えられていた。
彼らでもそれくらいの理性と判断力は、まだ持ち合わせていた。兵士三人はヨーグルト
塗れになったものの、転びさえしなければ問題無い。
「こいつ、強いぞ!」
距離を置いて取り囲むIGPK兵士達。
「……お前日本人か?しかも『俺のヨーグルトを食らえ』だと。何処の機関の者だ?」
カマをかけてみる。中国服はヤバ…(汗)と、間違いなくそんな顔をした。
動揺した一瞬を逃さずヨーグルト銃を発射する。一発、二発……当たらない。
「全員で撃て!」
そうすれば確実に当たるはず。だが次の瞬間、中国服はとんでもない行動に出た。
「──もなこ様、失礼」
言うなり、モナコ殿下を放り投げたのだ。
「はにゃーん?」
弧を描き、ひなぎく隊員(速水)の腕に収まる殿下。
はっ!と気が付いた時には、二人目のIGPK兵士が蹴り飛ばされるところだった。
「くそっ、格ゲーみたいな動きしやがって!」
甲式イ部隊長は焦りつつも考える。この装備では勝てない。だがこいつを倒す事が目的ではない。
「3…いや4人でこいつを足止めする!残り(2人)で目的を達成せよ!」
放り投げられるもなこを危うくキャッチする。
「ば、ばっかやろお!宮様を投げるとはなにご…うおっ!」
やや、素が出てしまうあたり、まだ若い。
2人から放たれるヨーグルト銃は出力が抑えられているせいもあってなんとか避けることが出来た。
「ふふ、水鉄砲ごときで僕に当てることは出来ないよ。」
言い捨てるとひょい、とビニール袋を放り投げる。床に落ちると、バシュ、という音と白い煙。
(硫酸?)慌てて飛びのくIGPKの2人。
「ふふ、当たると痛いよ。」
そのままもなこを抱えて走り出す。白い煙が広がる。
「いつのまによういしてたのですか?あぶないのです。」
「あれですか?水とドライアイスですよ。ちょっとした演出です。」
舌を出し、角を曲がるともう一つ袋を放り投げる。
「宮様、ちょっと隠れていてください。」
白い煙の中から2人の兵士が姿を現し、角を曲がろうと…したとたん、思いっきり足をすべらせて
転倒した。油がまかれていたのだ。倒れた2人の傍らに立つ速水。
「足元にご注意、だよ。」
一撃づつ、きっちり入れてからもなこの元へ戻る。
「行きましょう、宮様。」
>179
「ぐう…なんのこれしき!」
二人とも、一撃で倒されるようなヤワな鍛え方はしていない。立ち上がり追跡を続ける。
もはや形振り構っていられない。モナコ殿下に直撃こそさせないようにしているものの、
最大水圧で壁やら床やら打ちまくる。
ひなぎく隊員(速水)が立ち止まり、仕方なさそうに数本の試験管を投げつけてきた。
一本を銃身で叩き落す。ガラスが砕け、封入されていた少量の液体が銃に付着する。
「何だこりゃ!?」
合金製の銃身が凄まじい勢いで溶けていくのを見て、慌てて銃を捨てた。
「王水だ!硝酸と塩で簡単に作れる」
続けてペットポトルが飛んでくる。今度は二人とも素早くかわす。しかし何も起きない。
「…フェイクか」
と思った瞬間、ビス!と消音銃の穴が開き、ベットボトルが破裂した。
殺傷能力こそ無いものの、至近距離の爆発に弾き飛ばされるIGPK兵士。
「……今度は硫黄と石炭の粉末……奴はマクガイバーか?」(ガクッ)
「……つーか、お前は物知り博士か?」(ガクッ)
注)良い子は真似しないように。
>180
硝酸は小学校の理科室には無かったかも。
王水orアンモニア水
黒色火薬もどきorオキシドール+二酸化マンガン
と置き換えても可。
「バカ者っ!」(バチィ!)
作戦本部に駆け戻ってきた甲式ハ部隊長を迎えたのは、IGPK隊長の怒声と平手だった。
「貴様、俺の立場とモナコ殿下のハァハァな写真、どちらが大切か言ってみろ!」
「はっ! ハァハァな写真であります!」
「…分かっていれば良い。つまらん心配はするな」
やっぱりこの人は凄い、と敬服する部隊長。……ヤな尊敬のされ方だった。
そこへオペレーターが入ってくる。モナコ殿下発見の報告と共に、IGPK隊長に下書きを渡す。
「隊長、返信はこんな感じでどうでしょうか?」
「……最近はこういうのが流行りなのか?」
「最近ってわけではありませんが、相応しいかと」
「そうか……」
宛 特務放送宣伝中隊長代理補佐
発 第一警護隊学舎専任駐留部隊本部隊 殿
諸兄らの固き団結と忠誠、実に感じ入る。だが其れだけでは足りぬ。
諸兄らには萌えも燃えも足りぬのだ。
我らの萌えは業深く、目的達成のためには手段を選ばない。
我らの燃えは溶岩の如く全てを侵食するだろう。
我らを止められるか?いや不可能だ。
形式に習わず失礼するが、ここに返答する。
「なんて無様」
>176
「ありがと、いせさん。そう、もし知ってたら教えて欲しいんだけど・・・」
そこで一旦躊躇した後、いせの顔を見上げる。
「今、何が起こってるんだろう?何も分からないまま流されるだけなんて、嫌だよ。」
校庭では徐々に戦闘が激しくなってきている。使われているものこそふざけているが、
その効果を考えると、とても楽観視出来ない。こんな非日常はご免だった。
「とりあえず非難しながらでも。お願い。」
〜でむぱ〜
ご、ごめん!非難してどうする、だよねぇ(汗 避難です、避難。あ゛〜〜〜・・・・・
>184
「あたくしも海軍の情報だけで、詳しいことはわかりませんの。でも、あたくしの
わかっている範囲でお話いたしますわ。」
体育館へ足を向ける。手は繋いだまま。
「まず最初。殿下のクラスで何かの異変があって、第五旅団の糧食部隊が出動いたしました。
その後に、殿下の"すぺしゃるショット"を撮影すべく、近衛写真中隊が出動したようですわ。」
「"すぺしゃるショット"?」
速足で歩く。
「ええ。"殿下が、ヨーグルトまみれになった御学友を救う。そして殿下にもそのヨーグルトが…"
というショットですわ。そしてその御学友というのが…九重様、あなたさまなのです。」
歩みを進める。
「それを阻止せんとするひなぎく・糧食部隊、対する宣伝中隊の衝突が起こった、というのが今の状態
なのだと思いますわ。あたくしの知っていることはここまでですの。おわかりいただけましたかしら…?」
自分がターゲット。その事実に、一瞬耳を疑った。じゃあ、この騒動は・・・・
「そっか・・・・。」
怒りが、抑えられない。考え方が間違っていたとしても、どうにも止められなかった。
「・・・いせさん。加也、何か出来る事ないのかなぁ。」
そう語りかけながらも、色々と考えてみる。実際、仮にも兵士と言われる人間を相手に出来る
ほど、自分は強くない。そう、まともに戦っては勝ち目などないのだ。では、相手の不意をつく
というのはどうだろう?
「囮になって、少人数をどこかに誘い込むとか・・・・」
ダメだ、逆に格好の的になってしまうだろう。相手を撃退できる術を持たない限りは。
「そだ!もなこちゃんは、無事?顔みなくなって大分経つけど・・・」
「殿下ですの?ええ。御無事ですわ。ひなぎくの速水さんと、
怪しい中国人のクワンさんが護衛についてますのよ。」
「怪しい中国人?あやしいの?」
「ええ。とっても怪しいんですの。見た目ラーメソマソですのよ。」
ラーメソマソ・・・・?良く分からない(だって小学生だし)
だが、怪しい中国人という言葉から色々と想像してみると、可笑しくなってきた。
「あはは、そうなんだ。」
なんだか久しぶりに笑った気がする。実際、守屋君が撃たれてから十数分と経っていない
のだが。
「速水さんも一緒なんだ。じゃあ心配はなさそうだね。」
少し気が楽になり、また考え始めた。もなこちゃんと合流しなければ、たとえ自分が撃たれたと
しても、もなこちゃんが「すぺしゃるショット」を狙う兵隊さん達に狙われる危険も少なくなるだろう。
やがて体育館に到着した。だが、随分と中は騒がしいようだ。入口に近付くにつれ、声も大きく
なっていく。
「なんか、凄い騒ぎだねぇ。」
「ええ、そのようですわね…。」
『あまり入って行きたくないな』 それが素直な気持ちだった。それに、ここにいてはいずれ
もなこちゃんと出会う可能性も高い。別行動でいるならともかく、2人一緒では危ない。なにせ
相手に理性ある行動を望む事は出来ないのだから。皆を危険に晒してしまうかもしれない。
「ね、他の場所に行ってもいいかな。」
突然の発言に、驚いて加也を見るいせ。
「あのね、加也がみんなの所にいると、他の人達が危ないと思うんだ。それと・・・」
我侭だとは分かっている。一瞬躊躇したが、それを跳ね除けるだけの感情の高ぶりが加也を
押し動かす。そう、このままで済ます事は出来なかった。
「守屋君を撃った兵隊さん、わかる?ちょっとは後悔してもらいたいんだな。」
悪戯な、それでいて少しばかり邪なものが入り混じった笑みを浮かべる。
「やられっぱなしじゃ、お兄ちゃんに笑われちゃうしね。」
(実際、隆史は心配のあまり部屋に閉じ込めておくようなタイプだと思うのだが・・・)
「了解ですわ〜♪ではでは、ちょっと失礼いたしますわよ。」
加也の前に立つ。と。
抱きしめる。
「なななな!?」
「ウフフ。しっかりつかまっててください、ですの。」
ふわり、と浮かび上がり、学校全体が見渡せる高さまで舞い上がる。
「さあ、艦長。進路の指示をお願いいたしますわ〜♪」
>178-180
上手いこと、やってくれる・・・・・・
ドライアイスの煙幕弾を利用して、
俺はその場を離脱、今は無人になっている職員室に忍び込んだ。
これなら、水上君の名前もすぐに見つかるはずだ・・・・・・・
(10分後)
「・・・・・・無い・・・・・・」
そこには、彼の名前が見つからず途方にくれる貫の姿があった・・・・・・
怒りの矛先を必死に探す彼。
そして辿り着いたのは・・・・・・
「IGPK潰す」
完全に逆ギレではあるが、まぁ、これで心強い(?)援軍が校庭へ向けて出発した・
守屋透くんを先頭に、生徒達は体育館の出口を塞ぐ兵士の方達と向かい合っています。
先生方も横から懸命に説得されていますが、突破されるのは時間の問題でしょう。
透くんの気持ちは判ります。……でも、男子と女子の考え方は違うのです。
私は壇上に立ち、マイクを握りました。最上級生として、生徒達を守らなければいけません。
「皆さん、落ち着いてください。皆さんは戦いたいのですか?それとも守りたいのですか?
守るために戦うのであれば、一番守りたいものは何か考えてください。
さっきも言ったように、アイジーピーケーは私達でも容赦しません。
学校を守るために守屋君のような犠牲者を何人も出してしまうのは嫌です。
大人が子供を守るように、上級生は下級生を守らなければいけません。
私はひなぎくの方達を信じます。私を守ってくれたように、きっと……」
いろんな感情で胸がいっぱいになって、上手く言い表せなくなってきました。
これくらいで透くん達を止められないのは分かってます。
でも私は訴え続けます。分かってくれる人が一人でも増える事を祈って。
「よく考えてください。私達が争いに巻き込まれて、悲しむのは誰ですか?」
図書館の窓からは、遠くに小学校の校舎が見える。
「…もえている」
「えっ、何が?」
ニホンちゃんに訊かれて、僕は我に返った。変なこと言っちゃったかな。
「ううん、なんでもないよ。ええと、シューキューカードだったっけ?」
ニホンちゃんの友達の間では定期的に大会を開くほど大人気のカードゲームらしい。
「今回は私とカンコくんの家で主催しているの」
「カンコくんっていうのは、さっきのデムパ少年ですわ」
「ニホンちゃんのトルシエデッキは、なかなかいいね。まあ僕はローキューカードの方が好きだけどね」
「うん、頑張って構築したの。きのうの予選では久しぶりに勝っちゃった」
「へえ、おめでとう」
「えへへ、まだ一勝だけれど」
ニホンちゃんは顔を赤らめながら本当に嬉しそうに頷く。可愛いね。
「でも、今回の目玉はチューゴ君ですわ」
「ああ。噂ではあの伝説のコバヤシデッキを──」(小林→少林)
……よく分かんないや。でも勝てて良かったね、ニホンちゃん。
>179,180
ドライアイスの煙の中へ中国服が逃げていく。誰も深追いする気はなかった。
「……正直な話、助かったな」
「奴の目的が気になるところだが、今はモナコ殿下を追うのが先決だ」
ヨーグルトや薬品の痕跡が残っているので、追跡は比較的楽だった。途中でノビている隊員2人を見つける。
2人はコントに出てくるの博士と助手のように煤で真っ黒で、前髪が少しパンチパーマになっていた。
「こりゃ…また派手にやられたな。おい、大丈夫か?」
「放っておけ。死して屍拾うもの無し、だ」
「死んでないって……」
>>193 ぴたり、と透の動きが止まる。
「美希子さん…今、なんて?」
「え?」
騒いでいた生徒達の動きが止まった。透の目は一直線に壇上の美希子を見つめていた。
つられるように生徒達の注目も集まる。
「守屋君…って言ったよね?僕はここだ。犠牲者って言うのはひょっとして…?」
美希子の顔があっとなったまま固まってしまう。何よりもそれが返答であった。
「そうか、ならばなおさら僕は行かなくてはならないな。」
不思議に、透の顔は冷静さを失っていなかった。辺りを見回すと、透をみつめるいろいろな表情があった。
同情、怒り、悲しみ…なぜか、透は笑顔であった。
「今から兵隊達を止めに行こうと思う。無駄かもしれない。が、僕は行かなければならない。
女子と4年生以下のものはここに残るんだ。男子も危険だから無理についてこなくてもいい。」
言い放つ。マイクを使ってもいないのにその声は妙に通る声だった。
そしてそのまま扉を開けて出て行った。その後を数人の男子がついて行った。
美希子はその光景を呆然と見送っていた…無力感とか、いろんな感情がないまぜになって、へたりこんでしまっていた。
職員室を抜けて校長室に入る。
中では役員達がなにかにおびえるように座っていた。
「な、なにかね?」
「ノックもなしに……」
「あ、こ、これは宮殿下。失礼を…」
慌てたように反応する役員たちを見ていると速水は溜息を禁じえなかった。
なーんでこんな連中がこんな所でのうのうとしているのか。生徒達を避難させるとか、
兵士たちと折衝するとか、ちょっとは行動のしようというものがあるであろうに。
対応が遅れたのはひなぎくの非であるが、連絡の一本も無しというのは納得がいかない。
この部屋には専用の全校放送用マイクが設置されていたというのにだ。
「失礼、第一護衛隊速水と申します。この部屋は宮様が使用いたしますので、接収いたします。」
冷然と言い放つ。唖然とする役員達。
「え?」
「はやみさん?」
「先生方は体育館にご避難ください。」
もなこに見えぬように、役員達を睨みつける。自分達だけが安穏としていられるなんて、思ってもらっては困る。
宮様でさえこうしてご苦労されているのだよ?
「……」
「どうぞ、体育館へ。」
有無を言わさずに役員達を外に出す。
「さ、宮様。ここから皆に呼びかけてください。この茶番劇は終わらせなくてはなりません。」
向き直る速水はいつもの笑顔であった。
〜各部隊との通信〜
オペレーター「現在校庭では丙式ロ部隊、乙式イ〜ハ部隊が食料班&ひなぎくと戦闘中」
IGPK隊長「ヨーグルト装備は接近戦に弱い。丙式ロ部隊(ヨーグルト戦闘員)を前衛とするように。
乙式ニ〜ヘ部隊はビニールプールを使って校庭へヨーグルトの補給を開始せよ」
オペレーター「甲式ロ部隊は南棟に待機中です」
IGPK隊長「伏兵として頭上から狙撃せよ!」
>196
私はすぐに立ち上がります。これくらいで透くん達を止められないのは分かってました。
でも守屋君のことを喋ってしまったのは失敗でした。体育館へ入る前に見たあの光景に、
動揺していたのでしょう。
少なくとも低学年の子達は守れました。何も問題ありません。
そして私がやれる事はまだあります。体育館にも放送室があります。薄暗くて、
演劇部の道具置き場と兼用で、体育館内にしか放送できませんが。
外の騒ぎが聞こえないように、音楽をかけましょう。
あそこなら、泣いても誰にも見られません。
カレーの黄色とヨーグルトの白が飛び交う戦場と化した校庭。
「カレーにヨーグルトとは(゚д゚)ウマーだな。」
「ああ、でも入れすぎは酸っぱくなるから(゚Д゚)マズーだぞ。」
「りんごに蜂蜜、これ最強。」
戦闘中のセリフではない。が、食糧班らしい会話であった。
「屋上に人影!」
「何!対処しろ!」
ブルーシートや鉄鍋で防御しつつ屋上へひなぎくの攻撃を要請する。
ヨーグルトの雨が降り注ぐ中、ドラム缶の一つに穴が開き、倒れた。
水が詰まっていると思っていた食糧班。しかし、その中身がこぼれた時、兵の一人は悲鳴を上げた。
「それ」は一つの島を壊滅寸前にまで追い込んだ伝説の蟲だった。
慌ててふたを閉じようとするが、ヨーグルト銃に阻まれて敵わない。
「な、なんであれがここにいるんだ!?」
その「中身」は軽い笑い声を上げて次々と缶を飛び出していく。
(゚∀゚)アヒャ蟲……突如現れ、唐突に消えた、謎の蟲であった……
(゚∀゚)アヒャ?(゚∀゚)アヒャ?(゚∀゚)アヒャ、(゚∀゚)イイ!!(゚∀゚)イイ!キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
隊長室で思案するIGPK隊長。状況は良いとも悪いとも言える。
「……ふむ。プチテレビの撮影を許可したのは失敗だったかもしれん」
副総長への専用回線を開く。デスク上の小さなモニターに、副総長の顔が現れた。
「ワシに連絡してきたという事は、上手く入っているという事じゃろうノウ?」
「──はい。作戦は最終段階に入ります。……ですが」
「過程はいいワイ。結果が全てじゃ」
「はっ。お任せ下さい」
「──しかし」
「はい?」
「こうしていると、ワシは故人の写真みたいじゃノウ」
「………」
「・・・すごい・・・・すごーい!」
まさか飛べるとは。それも、自分を抱えて。いせの首につかまりながら、校庭を見下ろす。
しかし、高所恐怖症という訳ではないのだが、やはり少し恐い。きゅっと、いせの首に回した
手の力を強める。
「そうだなぁ、とりあえず・・・・(ボソボソ・・・・」
「わかりましたわ〜♪」
「おい、あ、あれは加也タンじゃ、ないか…?」
「なに?・・・おお、間違いない。」
前方を歩く少女は、間違いなく加也だった。
「さ、さっきは失敗した、からな。今度こそは…(;´Д`)ハァハァ」
校舎裏の細道をすいすいと進んでいく加也。それを後方から追いかける兵士2名。やがて
加也は道無き道を進み、校舎と校舎の間に出来た横幅数十pの細道をすり抜けていく。
「さすが小学生。よくこんな道を見つけるもんだ。」
「じ、自分から人気の無いと、所に、行くなんて……(;´Д`)ハァハァ」
不自然に立てかけられているトンボ(整備用具)を邪魔に思いつつ、一本道を追いかける。
そして更に細道を数メートル進むと、曲がり角になっていた。慎重に周囲の気配を探り、曲がり角の
先を覗き込む兵士。
「な、これは……」
細すぎる。子供ならともかく、大人の通れるような道ではなかった。しかも、加也の姿は既に無い。
「何か、嫌な予感がする。。おい、引きかえし……ワブッ!!?」
やがて校庭の見えるところまできた俺の目に映ったのは、
ヨーグルトの白とカレーの黄色と、そして・・・・・・・
かって見た、あの悪魔の姿だった。
「だ、醍醐蟲!?な、なんで此処に!?醍醐旅団長は死んだはずなのに・・・・・・」
しかし、呆然としたのもつかの間。
かっての惨劇を思い出し、彼は一つの決断をした。
「もはや此処に居ても仕方あるまい―――逃げよう」
そして彼は裏口目掛けて走り出した。
「うまくいったねぇ。」
「当然ですわ〜。」
2人で顔を合わせてニコニコしながら、校庭の方へと歩いていく。
「お兄ちゃんから教わったもんね。『地の利を生かして戦え』って。」
隆史の声を真似つつ、上機嫌に話しを続ける加也。
いくらターゲットが一人歩きしてるからとはいえ、ホイホイ後をついて行くものではない。それが
たとえ小学生であっても。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「おい、、俺達、兵士失格だな。。」
「か、カメラも、壊れちゃったんだ、だな。。」
あの時振り返った瞬間、突然頭上から降り注いだもの凄い量の石灰(ライン引き用)、背後からは何者か
による容赦の無い放水。それによってバタバタと倒れ掛かってくるトンボ。進退ままならぬ状態で、
トンボに足をすくわれ、石灰に目を塞がれ、あっという間に戦闘不能に陥ってしまった。
彼等は、体にこびり付いた石灰を拭う気力も起きず、呆然と座り込んでいた。
プチテレビの二人は校舎の陰から校庭の戦闘を撮影している。
IGPK隊員「お前ら、食べ物を粗末にするなって言ってたくせに、それでも補給部隊か!」
バシュバシュッ!
食料班「お前らに…おまえらに何がわかるっていうんだあぁぁ!」(泣)
ガガガガガカ!
ヨーグルト戦闘員「e!」
ドンッ!!!
ひなぎく隊員「左、弾幕薄いぞ! 何やってんだ!!」
「撫子さん、元気ないですね。どうしたんですか?」
いつもなら容赦なく突っ込んでいくはずだった。いや別にヨーグルト塗れになる事を
期待しているわけではない。
「……なんていうか、アレね。スペインのトマト投げ祭りって感じ」
(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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(゚∀゚)
(゚∀゚) \\
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(゚∀゚)
(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)
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(゚∀゚)
(゚∀゚) \\
// (゚∀゚)
(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)
(゚∀゚)(゚∀゚)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(゚∀゚)
(゚∀゚)(゚∀゚)
(( (゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚) ))
(゚∀゚)(゚∀゚)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(゚∀゚)コウブツハデンカ!!デンカ!!
奇妙な泣き声を発しつつ蟲が増殖してゆく。
それはまるでもなこの存在を嗅ぎ付けるかのように校内へとなだれ込んでいった。
無数に増殖し、姿を変え、形を変え、走り回る。
旅団蟲…伝説上の蟲だったはずである。本体が行方不明な今となっては存在しないはずなのに…
そして、もなこに一番接近していた甲式イ部隊の4人は、あわれ、最初の犠牲者となる。
「デンカノニオイ!(・∀・)イイ!」
「アヒャ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!」
一瞬にして、目の前は蟲で包まれてしまった…
アタシは愕然としたね。さっきまで楽しそうに配給していたかと思ったらなんだい?
いつのまにか兵隊達がバカ騒ぎ始めてるよ。しかも食材を武器にしてさ。
「………」(プチッ)
もう鶏冠(とさか)にきたよ。
「食べ物を粗末にするんじゃないいいいいいい!!!」
調理道具で武装し、彼女は単身戦場に突っ込んでゆく。敵は食べ物を粗末にする者全て。
戦いの結末とは関係無いが、後に彼女は第五旅団の兵士達に『割烹着の悪魔』『G(学院)の衝撃』
などの二つ名で呼ばれる事となる。
>>204 ミ⌒彡
(゚∀゚ ) ヤ-!ジョークン、ヒサシブリー!
/#y#"#ゝ
ヽ====∪ _
|#|_#_#|\ 、,/ヽヽヽ、
∪ ∪ (゚ー゚)ヘヘヘ )
見つかってしまったようです・・・・
児童達は窓から校庭での戦闘を見学している。
とりあえずは宇月先生が買ってきたパンを食べて空腹は治まった。
「ひなぎくガンバレー!」
「……うづき先生、行っちゃったね」
「ボクたちも体育館行こうよ」
「ここなら平気さ。ほら、みんな体育館から出てきてる」
「あっ変なムシ〜。………たくさんいるね」
ひなぎく「君達、この蟲は危険だ!うわっ!?窓を閉めなさい!」
「だいじょうぶでーす!ムシが登ってきたらすぐに閉めまーす!」
ひなぎく「違う上だ!」
「えっ…?」
一斉に上を見る児童たち。頭上の校舎の壁面にはビッシリと──
(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)アヒャ!
「うわあぁ!」
「きゃー!」
(゚∀゚)デンカ、デンカ、デンカノニオイ、イイ!
〜電波〜
分かる人には分かるネタ。かな?
当然、旅団蟲はモナコ殿下本人の所へ最も大量に集まっていた。
(゚∀゚)デンカ、デンカ、デンカノニオイ、デンカノニオイ、イイ!!
校長室の扉を埋め尽くさんばかりにギッシリと。
その様子をかなり遠くから逃げ腰で見ているのはIGPK斥候B。校長室の中にモナコ殿下がいることは、
もはや確認するまでもなかった。しかし、あの状態ではモナコ殿下に逃げられる事はまず無いだろうが、
逆に自分達(IGPK)の突入も不可能ではないだろうか?
「……一応、連絡はしておくか」
今度はお姫様抱っこの体勢で加也を抱きかかえ、宙に浮かび上がる。
「…蟲ですわ…おぞましいですわね…。とりあえずこのまま様子見ですわね、九重様?」
「いせさん!下、いや!上!」
「はい?」
上下に首を動かすと… パタパタ/|\(゚∀゚)/|\
パタパタ/|\(゚∀゚)/|\ パタパタ/|\(゚∀゚)/|\
「か、囲まれてますわ〜!!」
ケサラーンパサラーン♪
ミ゚∀゚彡 フワフワ ミ゚∀゚彡 フワフワ ミ゚∀゚彡 フワフワ
ミ゚∀゚彡 フワフワ ミ゚∀゚彡 フワフワ
ミ゚∀゚彡 フワフワ ミ゚∀゚彡 フワフワ ミ゚∀゚彡 フワフワ
ミ゚∀゚彡 フワフワ ミ゚∀゚彡 フワフワ ミ゚∀゚彡 フワフワ
カヤタン、イイ!イセタン、イイ!
空も飛べる様子…
ハァハァ……(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)
(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)
(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)
(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)
(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)
(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)口(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)
(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)
(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)
(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)
(´Д`;)(´Д`;)(´Д`;)ハァハァ……
「…い、行けよお前…」
「……うう、なんかいやだ……」
「うかつに触ると取り付かれるらしいぞ…なんか、昔侍従の一人がえらい目に遭ったとか・・・」
「……どうすんだよ…これ…」
体育館へ急いでいる宇月たち。
学校内は収拾がつかない状況になりつつあった。
「もう、どうなってるのよ・・・って、…ん?」
ふと目をやった花壇にどう考えても変な物体がいた。
∩∩∩
⊂(###)つ /| ウヅキターン! カワイイ? カワイイ?
しUUJ //,' |
(゚∀゚ ) //,'丿
UU ヽ |//
( ( )/~
∪ ∪
…えーと……気のせいって…ことにしよう(汗)…
だめよ、あんなのと目を合わせちゃ…ろくな目に遭わないわ。
_ - ─ -..、
/ ::::::ヽ
/ :::::ヽ
| :::;|
.| , ' ⌒`ヽ :::::|
| /~~\ ヾ ::::::|
ヽ/(゚∀゚ )ヽ_ノノノノ ヤア!ボクタチリョダンチュウ!ヨロシクネ!
//(( )))(( ヾ(( (( ヽ
)) ))((/))) 》 )))ソ)) ) ) )
(( (((ソゝ(((( (ノノ人ヘ
゚ ゚ ゚゚ ゚゚ ゚゚゚ ゚ ゚ ゚゚ ゚ ゚
(゚∀゚) イイ!! (゚∀゚) ヨグールト!! (゚∀゚) デンカ!! (゚∀゚) モナコタン!! (゚∀゚) コウブツハ、デンカ!!
三( ゚∀゚) 三( ゚∀゚) 三( ゚∀゚) 三( ゚∀゚) 三( ゚∀゚) 三( ゚∀゚)
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!! キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルブルガタガクガクガクガクガク
軍用トレーラーから降りるIGPK隊長。外には既に丙式イ部隊(ヨーグルト戦闘員)が整列していた。
「これより作戦の最終段階に入る」
敵の戦力は全て校庭に集結している。戦況はほぼ互角だった。ここまで温存しておいた
彼らを投入すれば勝利は確実だろう。だがそれが彼らの、IGPKの目的ではない。
「情報によると、モナコ殿下は校長室、加也嬢は体育館にいる。しかも体育館からは生徒達が
大量に流出し、それを止める為に警備と教師達も出てしまい、非常に手薄になっている。
これは千載一遇にして最後のチャンスだ」
敵を騙すには先ず味方から。そう、校庭の戦闘は囮なのだ。勝とうが負けようが関係ない。
彼らの勝利条件は『モナコ殿下のスペシャルショットGet!』なのだから。
「撮影部隊は校長室の窓際で待機。丙式イ部隊は体育館から加也嬢を奪取し校長室の中庭へ。
──諸君の健闘を祈る!」
撮影部隊「はっ!」
丙式イ部隊「e!」
「上級生、みんな行っちゃったね」
「ヒマだな〜」
「ぼく達も行こっか?」
「えー、怖いよ」
「僕たちみたいな子供が戦場に出るなんておかしいよ」
「でも生徒会長は凄いね」
「……あれ? あれって、えーと『ヂャパンアクションクラブ』かな?」
『e〜』
>>211 _____________
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.|;;;;; ( ゚∀゚) ミンナ ゲンキー?♪
|;;;; つ /=ヽつ
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\;;_ヽ三ノ
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.|;;;;; ( ゚∀゚) デンカノニオイ、イイ!
|;;;; つ /=ヽつ
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\;;_ヽ三ノ
>210
「・・・・・・」
一番聞きたくない声を聞いた。
恐る恐る振り返ると、そこには醍醐童子が立っていた。
今日何度目か分からない嘆息をつく。
北朝に醍醐蟲の対処の仕方はわかるまい。
対処法を知ってるのは、南朝と我々のみ。
こいつもでてきちまった以上、仕方ない、か・・・・・・
「や、久しぶり。で、出てきて早々だけど、お願いきいてくれないか?」
( ゚∀゚) イイヨー、ナニー?
「もなこ殿下の居場所を、その自慢の鼻で探してくれるとうれしいね。
探してくれたら殿下のグッズ上げるから」
( ゚∀゚) コウブツハデンカー! ヤルー
そして、俺は再び殿下に合流すべく、移動を開始した。
電光石火で警備を無力化した丙式イ部隊。といっても体育館の警備は本当に数人しか居なかった。
『e〜!」
全ての扉から一斉に飛び込み、内側から封鎖する。防災上、体育館の扉は頑丈だ。
ガスバーナーでも使わなければ外からは開けられないだろう。
ヨーグルトリーダーがマスクの口元を剥ぐって、ハンドマイクで高らかに宣言する。
「この体育館は、我々IGPK団が占拠した!」
ヨーグルト戦闘員達は、すぐにターゲットを発見した。長髪の児童を抱き上げる。
「きゃあー!」
「e?」(訳:この子か?)
「e…」(訳:タブン…)
右からシスターが抗議してくる。
「その子を離しなさい!」
左から宇月が駆けよって来る。
「貴方たち、何をしているの!」
戦闘員達は、二人の女性をじっと見詰める。メガネっ娘の美人教師と、金髪碧眼のシスター。
「な、なによ?」
「……なんですか?」
「ee!!」(訳:どっちもイイ!!)
二人とも抱え上げられた。
「e〜!」
宇月「私を降ろしなさい!」
2年生「先生を放せー!」
3年生「シスターを放せー!」
シスター「みなさん、来てはいけません!」
「e〜!」
>224
私は騒ぎに気が付いて、放送ブースの覗き窓から体育館の様子を見ました。
『e〜』
……変態、じゃなかった大変です。黒い全身タイツの方達が宇月先生とシスター、そして長髪の
女子を御神輿のように担いでいます。生徒達の半分ほどがそれに群がっています。
見た目だけなら、まるでお祭りでもしているようでした。
黒いタイツは二十人近くいました。百人近い生徒達に囲まれて、さすがに動きにくそうでしたが、
それでも低学年の力では止める事が出来ない人数でした。
(ガタッ)
私がここからマイクで大声を出せば、なんとか外の人達に聞こえるかもしれません。
……でも、また失敗してしまったら私は…………いえ、やります!
(ガタガタッ)
背後の物音に、私は5cmほど飛び上がってしまいました。おそるおそる振りかえります。
音は暗がりの中にある古びたロッカーから、ロッカーの中から聞こえてきます。
「……どちらさまですか?」
嫌な事を思い出してしまいました。学校の七不思議ですが、魔界に繋がっているロッカーという話が
ありました。扉が開くと、中から何本もの手が飛び出して、生徒を引きずり込んでしまうのです。
(ガタガタッ)
……違いますよね?校庭の騒動に怯えた生徒が中に隠れているだけなのでしょう。
バタン!
ロッカーが内側から勢いよく開きました。そして中から出てきたのは、何本もの人の腕。
私は今度こそ、本当に腰を抜かしてしまいました。
どうして今日は変な事ばかり起きるのでしょう?
私に出来るのは、ただ呆けたように見ている事だけでした。
何本もの手のうち二本が、ロッカーの中から出てきます。腕の持ち主は普通の男の人でした。
「やっと開いたな…………ここは何処だ?」
二人目の男の人が、座り込んでいる私を見つけました。
「おっ、女の子ハケーン。……ハァハァ、しょ、小学生の縞ぱぎゅ!」
三人目の男の人が、持っていた酒瓶で無言のツッコミを入れました。
急いで両手でスカートを抑えます。本当に、今日はこんな事ばかりです(真っ赤)
「お前、最近見境い無しだな」
「…オマエモナー」
「やれやれ……。お嬢さん、驚かせてしまったね」
そう言うと、一人目の男の人が私をひょいと抱え上げました。その人の身体からは
甘くて苦い大人の匂いがしました。(お酒と煙草でしょうか?)
私を机の上に置くと、ハンカチをくれました。私はまた泣いてしまっていたようです。
「俺達は怪しい者じゃない…とは言い切れないか。あんなとこから出てくるんじゃな」
優しく苦笑しながら、自分達が出てきた小さなロッカーを振りかえられます。
「しっかし今回はまた変な所に出たな。昼間みたいだし」
「もう一度戻ってみるか?」
「待ってください!」
私は思わず叫んでいました。
少女に助けを求められた三人は、とりあえず顔を寄せ合って覗き窓から体育館の様子を見てみる。
「……なんだか凄い事になってるな」
「ぬうっ、俺のシスターをワッショイしやがって」
「……あいつ等、第五旅団副総長の暗部だな。菊水のデータベースで見たことある」
「お願いします、みんなを助けてください」
不安げに胸元で両手を組み合わせ、三人を見上げる少女。迷う三人。
「……俺達はあんまり表舞台に出れないんだよな」
「一応、裏の世界の住人だからな」
「助けてはやりたいが、どうしたものか……」
虚空へ視線を彷徨わせる三人。ふと、演劇部の小道具が目に入った。
「これは、使えそうだな……」
そこには『隕石戦隊タルレンジャー』のお面が五つ並んでいた。
228 :
新井ちゆ(菊水新人):02/06/13 20:05
せ、先輩〜っ、
いったいここどこなんですか〜???
お面ですか?
かぶるんですか??
?????
デンパ〜
乱入させていただきました。
あとは中本工事と高木ブー、早い者勝ちだ!
>228
紫村「よく来た新人。君はコレだ!」
(タルピンクのお面を渡す)
狩谷「では、ぶっつけ本番行くよ」
後藤「やれやれ…」
〜電波〜
慶祝スレッドへようこそ。
体育館の照明が消える。静まり返る場内。薄暗いステージに、スポットライトが点った。
そこには『隕石戦隊タルレンジャー』のお面をつけた三人+1が立っていた。
タルレッドのお面「ひとーつ、人の世生き血をすすり」(一歩前へ)
♪ポポン、ポンポン
タルブルーのお面「ふたーつ、不敬な悪行三昧」(一歩右へ)
♪ポポン、ポンポン
タルブラックのお面「みっつ、醜い歪んだ萌えを」(一歩左へ)
♪ポポン、ポンポン
タルピンクのお面「しし、粛清しちゃうぞっ!」(慌てて飛び出す)
四人「──我ら、粛清戦隊キクレンジャー!」
♪ジャーン!!
へっぽこな効果音と共に、適当にポーズを取る三人+1。……それなりに様になっていた。
タルピンクのお面「…ンジャー……はずかしいです〜」
キクレッド「IGPK団、お前らの企みはキクレンジャーが全てお見通しだ!」
完全に止まってしまっているヨーグルト戦闘員達に、びっ!と指を突きつけるキクレッド。
ちなみに三人には結構な量の酒が入っている。一人しらふのキクピンクは非常に落ち着きがない。
キクブルー「お前達が選べる道は、ここで我等に倒されるか、
あとで『キクスイホンブ』に追い込みかけられるかの、二つしかないっ!」
キクブラック「やれやれ……それとも、我等を倒し逃げ切ってみるか?」
「e〜」
ヨーグルト戦闘員達は一言で意思の疎通を済ました。十人ほどが派手なアクロバットをしながら、
瞬く間にキクレンジャーを取り囲む。互いに背中を庇いつつ、構える四人。
「e!!」
232 :
新井ちゆ(菊水新人):02/06/13 21:52
キクピンク「わ、私だって、菊水の一員なんだから!
しっかりしなきゃ駄目なんだから!」
そういってお土産にもらってたスピリタスを一気に…。
.
.
.
.
ぷちん。
デンパ〜
やっぱりsageときます。
すまん。
わーい、がんばれキクレンジャー!(笑)
生徒達の前で、デパート屋上ででもありそうなアトラクションが繰り広げられている。
「わーい、がんばれキクレンジャー!」
それなりに好評のようだった。
「トオッ!」
「e!」
キクレッドは空手使い。キクブルーはトリッキーな動きで翻弄する。
キクブラックは地味に、ヨーグルト戦闘員の背後へと回り込む。
「…ブラック撲殺」
呟くと酒瓶で殴る(省エネ)
キクレッド「こいつ等、ザコ戦闘員のくせに結構強いな」
キクブラック「情報では、全員が格闘のエキスパートのはずだ」
キクブルー「俺達のほうがザコかよ。けど、その割りには余裕あるんだけど?」
キクレッド「まあ、猫耳兵士に比べれば、なあ?」
キクブラック「経験値の差ってやつか」
キクピンク「……ヒック」
「ブラック、ほんと黒いな・・・撲殺か・・・・・・・」
「教育上良くないです。。」
「はっはっはっ!久しぶりに血が騒ぎますな。どうです、先生?」
「いっちょやりますかあ。」
「はーい、落ち着いて下さ〜い。先生なのよ、あ・な・た・は。(シワシワのジジイが…」
生徒一同「シムラ後ろーっ!」
キクブルー「おうっ!?」
ヒョイ…バキッ!
「¥e〜」(ガクッ)
キクブルー「ありがとうチビッコ達!」
(何で俺の名前わかったんだ…?)
(゚∀゚)シムラ… (゚∀゚) シムラ… (゚∀゚) ニムラ… (゚∀゚) ニウラ…? (゚∀゚) ニウラ!!
(゚∀゚)ブブー
「e!」
外見のイメージとは違い、ヨーグルト戦闘員は本当に強かった。何より多勢に無勢。
最初こそ余裕を持っていたものの、徐々に追い込まれていくキクレンジャー。
「くっ、そろそろキツイぞ。やっぱりテレビみたいにはいかないのか?」
「逃げたいところだが、チビッコの夢を壊す訳にはいかないし」
「……キクシューター」
キクブラックは、いきなり消音銃でヨーグルト戦闘員を狙撃した。
「…e?」
パタッと倒れるヨーグルト戦闘員。どよめき、盛り上がる児童達。戦隊ものに飛び道具はつきものだ。
「……なるほど。最初からこうすればよかったのか」(プシュ!)
「e〜!」
「何を言っているか判らん」(プシュ!)
「e〜!!」
「安心しろ、峰打ち(麻酔弾)だ」(プシュ!)
あっと言う間に片付いた。これまで殴り殴られた苦労は一体……急に疲労感が押し寄せる。
「……まあ、いいか。──闇に紛れて悪をKILL! 粛清戦隊キクレンジャー!」
気を取り直してポーズを決める三人を、万雷の拍手が包んだのだった。
「おや? 新人…じゃなかったキクピンクは?」
「ムニャ……がんばります〜」(お休み中)
( ゚∀゚)ジョークン、コッチー
醍醐童子に導かれ、俺が着いたのは校長室だった。
既にIGPKの一個小隊ほどがその前に陣取っているが、
醍醐蟲を前に突入を躊躇してるようだ。
「・・・・・・できれば、こういう使い方はしたくなかたんだけどな・・・・・・」
ごそごそと懐に手を入れ、何かを取り出した。
それは、紺色のリボンの切れ端だった。
「もえみ殿下に、あの夏の砂浜でいただいた褒美のリボンだ!
ほうれ、持ってけーーー!!」
俺は小隊の中心目掛け、そのリボンを投げつけた。
キタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━( ゚)━━( )━━( )━━(゚ )━━(∀゚ )━━(゚∀゚)━━!!
キタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━( ゚)━━( )━━( )━━(゚ )━━(∀゚ )━━(゚∀゚)━━!!
コウブツ(゚∀゚)ハデンカ
(゚∀゚)イイ!!
それに素早く反応する醍醐蟲たち。
そして小隊は大混乱に陥る。そりゃそうだ、あの熱い夏の日を、
俺は生涯忘れることはなかったんだからな・・・・・・・
混乱に陥った小隊メンバーに次々と手刀をかまして戦闘不能に陥れていく。
わずか数分で、一個小隊は壊滅したのである。
「さてと、それじゃ決着つけていただきませんとねぇ」
リボンにワラワラと群がっている醍醐蟲を無視して、
俺はゆっくりと校長室のドアを開けた。
「はーい、殿下、良い子にしてた?貫さん、助けに来たね。怪我はないアルか?」
IGPK隊長はトレーラーの前で落ち着きなく行ったり来たりしている。
そろそろ体育館の部隊から連絡があってもよさそうなものだ。
IGPK隊長「……遅い」
オペレーター「隊長、校庭の援護に向かう許可を!我々でもヨーグルトの補給くらいは出来ます!」
IGPK隊長「……頼んだぞ」
朝礼台の上に、一人の男の子を先頭にして5人の男子が並ぶ。
彼は守屋透。この騒ぎで初めての犠牲者となってしまった守屋正の兄にして、生徒会長だ。
「コホン・・・」
咳払いを一つすると、手に持ったスピーカーのスイッチをONにして、真っ直ぐ正面を見据える。
『僕らの学校に侵入してきた兵士たち、聞いてくれ!あなた方は何のために、こんな無益な争いを始めたんだ!』
唐突に鳴り響く声に、一瞬皆の注目が集まる。
『(よし、つかみは十分だ)・・既に一人の生徒が犠牲になってしまった!これで良いはずがない。僕らは・・・・
・・・・な生活を取り戻すために・・・・・即刻立ち去って・・・・・・・しかるべき・・・・・・』
だが、最早誰も聞いていない。
兵士A「いるよね〜、あんな熱血クンが一人は。」
教員A「我が校の生徒会長なのですよ、彼は。」
兵士A「なるほど・・・」
兵士B「ウルサイ!(プシュ!」
『・・・今のままでは・・・ぅわぷ!!』
威力を最弱に抑えたヨーグルト弾が、演説に夢中になっていた透の顔を直撃する。
「僕は負けない!たとえこの身を犠牲にしようと・・・・・あれ・・・?」
今の銃撃で、スピーカーが壊れてしまった。しかし、これで彼の熱意を冷ます事など出来ない。
「みんな、声を合わせていくぞ!しっかり復唱してくれ!」
「僕らの学校を!」
「「「僕らの学校を!」」」
「このまま・・・・見過ごして・・・・・」
「「「このまま・・・・見過ごして・・・・・」」」
顔を真っ赤にして、後悔でいっぱいの男子生徒たち。だが透を止めることは、もう誰にも出来ないのだった。
もなこはいま、こうちょうしつにいます。
こうちょうしつはきれいなおへやでもなこ、ちょっとびっくりしているのです。
はやみさんにマイクをせっとしてもらいながらかんがえたのです。
どうしてこんなことになったんだろうなあって。
りょだんのへいたいさんたちはさっきからずっとがっこうのなかでけんかしているのです。
せんせいがおおごえをだしてました。だれか、けがをしたっていってました。
もなこ、とってもとってもかなしいのです。
もなこがシチューをこぼしちゃったからなんでしょうか?
それでみんなこんなことしてるのでしょうか?だとしたらもなこはみんなにあやまらなくちゃいけないのです。
がっこうがめちゃくちゃになってしまったのはもなこのせいなのだから…
でも、でもなのです。
「本来、兵隊は民を守るものであって民を傷つけるためのものではないのですよ。」
って、おにいちゃんはいっていたのです。だとしたらがっこうのみんなにけがをさせたへいたいさんはめーしなきゃいけないのです。
もなこはりょだんちょうなのです。へいたいさんがいけないことしたらもなこがしかってあげないといけないのです。
でも、どうはなしたらみんなにおはなしをきいてもらえるのかなあ…もなこ、いろいろかんがえたのです。
で、ちょっとおもいだしたのです。くんれんしてるときにたいちょうさんがおしゃべりしてるへいたいさんたちにおおごえでいっていたことば。
いみはよくわからないのですけど、たぶんこれであっているとおもうのです。
マイクのスイッチをいれておとをさいだいにして…おおごえをだすのってちょっとドキドキするのです。
はやみさんをちょっとみると、とびらのほうをみているのです。はずかしいのでちょっとほっとしたのです。
おおきくいきをすって…すぅーー…
「…あはとうんぐ!!なのです!!」
誰もが知る声が、学校中に響き渡る。
>242
武器こそ玩具同然だが、ここは戦場だ。戦いの場だ。平和な世界の常識は通じない。
自分達には特にだが。まず説得が可能な相手かどうか見定めるべきだった。
あの生徒がやっている事は道路に飛び出したカエルと変わらない。
……一年ほど前に、どこかの小学校に侵入した基地外が児童を何人も殺害したという
とても痛ましい事件があったが、たとえば彼らはその基地外に対しても、
前に出て「僕たちを殺さないで下さい」とでも言うつもりなのだろうか?
「君、これでも食べて頭を冷やしなさい」
その少年の無知を悲しみ、しかし勇敢さと純粋な心に少しばかりの憧憬を抱きながら、
ヨーグルト銃の引き金を引く。
モナコ殿下の放送が聞こえたのは、その直後のことだった。
周囲を得体の知れない生き物に囲まれ、硬直状態のいせと加也。
そこに、よく知った声が響いてきた。
「…いせさん、あれ、もなこちゃんの声だよ。」
周囲の生き物達も、その声に反応している。視線が…ずれていく。
「ね、今なら逃げられるんじゃない?(…あはとうんぐって何だろう…」
>>243 それはある意味壮観ともいえる光景だった。
戦闘中だったはずの兵達全員の動きが完全に止まる。
下士官に到っては直立不動の姿勢で固まってしまった。
にらみ合いをしている廊下の兵達、校庭で撃ち合いをしている兵達。壁の隙間で挟まっている兵までも。
倒れて動けない兵はそのままの格好で気をつけの姿勢に修正している。
マイクからさらに声が流れてくる。
「…えと、え…と。…もえみやもなこなのです。みんな、けんかしちゃだめなのです。がっこうで
けんかするひとはめーなのですってせんせいもいってたのです。へいたいさんたちにおねがいするのです。
みんななかよくするのです。もなこはみんながだいすきです。でも、けんかしたりもなこのともだちにけがさせたりするひとはきらいなのです。
もなこ、みんなをきらいになりたくないのです…だから、もうやめにしてほしいのです。」
生徒も、先生も皆、静かに聞き入っていた。さっきまでの喧騒が嘘のような静けさであった。
>>246 ガサゴソ
「…コホン、第一護衛隊速水少尉が宮殿下の勅命を伝える。戦闘を直ちに終了せよ。従わぬものは朝敵とみなす。
繰り返す、戦闘を直ちに終了せよ。」
ガサゴソ
「もなこのおねがいなのです。けんかはもうやめにしてほしいのです。」
静まり返る校内。
もなこのちょっとほっとしたような溜息がマイクから漏れ聞こえてきた。
「…これまで、だな。」
校庭で直立不動のまま独白する食糧班長。
----------------------------------------------------------------------------
がっこうがしずかになったのです。もなこ、ちょっとほっとしたのです。
はやみさんのかおをみたら、わらってたので、もなこもにこーとわらったのです。
そしたら、きゅうにおなかがすいてたことをおもいだしたのです。
あっ、とおもったとき…
「……きゅう〜〜……」
って、おなかがなってしまったのです。しかも、おおきいおとがしたのです。
しかもしかも、マイクのスイッチ、はいったままなのです!!はやみさんがもなこをみてるのです!
「あ、ああ、ああああ、い、いまのなしなのです、きかなかったことにしてほしいのです!ああああ…」
かおがあついのです。たぶん、まっかなかおしてるのです…うう、はずかしいのです…
なんか、わらいごえがきこえるのです…
キクレンジャーさん凄いです。あっという間に黒タイツをやっつけてしまいました。
私が『萌太郎侍』の次に『暴れん坊SYOUGUN』の曲を流す暇さえなかったほどです。
……腰が抜けっぱなしなので、操作が遅れてしまったのですが。
生徒達の拍手に見送られながら、三人の男の人はステージ裏に戻ってきました。
あとからロッカーから飛び出してきた女の人は背負われています。
「ありがとうございます」
机に座ったまま、ぺこりとお辞儀をします。お行儀が悪いですが仕方ありません。
「まあ、いい肩慣らしになったよ」
「じゃあね、縞パンちゃん」
スパコン!
小道具のハリセンで叩かれてます。
「痛いなー」
「また酒瓶の方が良かったか?」
「…んばります〜」
ガタガタと音を立てながら、ロッカーの中に戻って行かれます。
そういえば私の名前も、あの人達の名前も聞いていませんでした。追いかけようとしましたが、
私の下半身はまだ力が入りそうにありませんでした。仕方ないので、ロッカーに向かって
もう一度お礼を言います。
「キクレンジャーさん、本当にありがとうございました」
萌宮さんの放送が聞こえます。とても可愛らしくて、でも力強い不思議な声でした。
その声がきっと全てを解決してくれると、何故か私は確信を持てました。
>243>246
いきなりのあはとうんぐには、さすがにがくっときそうになったが、
その後の言葉だけでこの事態を完全に収めてしまうあたりに、
彼女の王者としての資質を感じた。
(さすがは、北朝のプリンセス、というわけか。ま、気づく前に帰らせてもらうさ)
そっと校長室を抜け出す。幸い、醍醐蟲どもは殿下に夢中で、
俺には気づきもしない。そのまま、俺は裏門へひっそりと姿を隠すように出て行った。
殿下の放送が終了した。IGPK隊長は静かに椅子に腰を下ろした。
「……終わったな」
部下に作戦終了の信号弾を指示する。さすがに悪足掻きをするつもりはない。
全力を尽くし、そして失敗した。悔いは無かった。
「学校の清掃を行う。ジャミングを解除し全部隊に伝えよ『来た時よりも美しく』とな」
放送が終了した。
ひなぎくの全部隊員が直立不動のまま聞き入っていた。
「…ふう、我々もまだまだだな…宮様のお手を煩わせてしまったか…」
溜息をつく隊長。
そして、全部隊員にモップと箒を持たせる。
「校内の掃除を行う。塵一つ残すな、ひなぎくの誇りにかけてきれいにせよ。」
全隊員が去った後、隊長自らもバケツと雑巾を手に取り、一人流しへ向かった。
「……しかし…宮様のおなかの音…かわいい…(;´Д`)ハァハァ …」
校庭では呆然と皆が立ち尽くしていた。
自分達のしたことの重大さにようやく気付いた…といったところか。
そして、校庭に散乱するヨーグルトとカレー。
「……はは、これは…」
正直、自分の首で済むかどうかこの時の班長には想像も出来なかった。
「ともかく、後始末はせねばならんな。」
指示を出そうとした時、「きゅう〜」という音が響き渡った。え?今の音…
「しまったあああーーーーっ!!」
あろうことか、宮様はまだ何も召し上がっておられない!!
残っていたわずかなカレーを手に、班長が全力で駆けてゆく。
「…目的忘れてるって…俺達って…バカか?」
「……間違いなく、大バカだろうよ。」
「撤収準備!!校内清掃及び装備の撤収を行う!」
副班長が声をあげた。
屋上にて、不動の姿勢から元の体勢に戻る。
「どうやら…おわったようですわね。フゥ。全く陸式には困ったものですわ!」
ぱふぱふ、っとスカートの裾を払う。
「さ、殿下の元ところへ行きましょう。九重様。」
そして2人はすたすた、っと階段を下りていくのであった。
>253
誤「さ、殿下の元ところ〜
正「さ、殿下のところ〜
もとところってなんですの?全くこれだから(略)は…
プチTVカメラクルー、亀雄 雄一は第五旅団の兵士達が後片付けを始めた様子を撮影している。
校庭は白く染め上げられ、死屍累々というか、半数ほどの兵士がヨーグルト塗れで逝ってしまっている。
先ずは彼らを叩き起こし、自分達の身体を学校の水道を使って洗う所から始めるようだ。
「……撫子さん、何処に行ったんだろ」
彼女と組んで第五旅団の騒動に関わったのは、これで3度目になる。相変わらずの大騒動だったが、
今回は規模が小さい気がした。平日の学校でやるのは問題あるとは思うが……
「カメちゃん!」
声に気付きカメラを向ける。大和 撫子が駆けてくる。彼女はいつの間にかヨーグルト塗れになっていた。
雄一は臍を噛んだ。浴びる瞬間を撮り逃してしまうなんて、カメラマン失格だ。
「大スクープよ、コレ!」
撫子は嬉々として右手に掴んだモノをカメラの前に突き出した。
(゚∀゚)アヒャ!
「うわっ!?なんですかソレ?」
(゚∀゚)テレビデビュー!
「新発見、喋る……何か生き物よ!」
「……よくそんな正体不明なもの掴めますね」
スタタタタタタタ………………バタン!!
「もなこちゃーん!だいじょうぶ!?」
屋上から一気に廊下を駆け、階段を飛び降り、もなこの居る校長室へ駆け込む加也。
「か、かやちゃん??」
扉を開けたその先には、普段と何も変わらぬ元気そうなもなこの姿があった。加也のあまりの勢いに、
目をまんまるく見開いて驚いている。
よかった、と心底思う。速水を信用しない訳ではないのだが、やはり自分の目で確認しない事には安心
できなかった。そのままもなこの所へ駆け寄ると、むぎゅ・・・・と抱きつく。
「ほんと、よかった〜・・・。心配したんだよー。」
一瞬の抱擁の後もなこの手を取ると、今度はその手を嬉しそうに縦にぶんぶん振る。
「あはは・・・。」
突然沸いてくる笑いを抑えられずに、もなこの手をとりつつ笑い続ける加也。妙な高揚感が体を満たし、
自分でも意味不明な行動を取ってしまう。まぁそれだけ今回の騒動が堪えたのだろう。
>>252 宮様のおられる校長室に駆け込む。
「失礼いたします!」
そこでは2人の少女が互いの無事を喜ぶ姿があった。なぜだろう、その姿を見た瞬間、
私はふっと顔が緩む思いがした。そして、同時に慙愧の念にかられもしたのだった。
「第五旅団装備部補給係食糧班長であります!宮様のお食事をお持ちしました。」
速水少尉に敬礼をする。この若い男が宮様を守り通したのかと思うと感謝しても仕切れない気持ちだった。
「ありがとうございます。宮様、お食事が参りましたよ。」
「…きいてたのですか?はずかしいのです。でも、ありがとうなのです」
顔を赤くしてうつむく宮様。かわいい…。
速水少尉も、加也嬢様も笑っていた。ついでに変な生き物も…
(・∀・)イイ!
学校帰り。お昼の時間に起ったほんの一時の出来事(爆)で、午後はあまり勉強どころではなかった。
「・・・でも、あの後通常通り授業再開だもんなぁ。気合い入ってるねぇ、先生達。」
ボソリと一人呟く。なんにせよ、今日は疲れた。一日ジャージでいるのにも。
「今日は早めに寝よっかな。」
やがて家にたどり着き、ようやく加也の一日も終わりに向かい始めた。。
「タダイマー」
「アラ、オカエリ。」
「オカエリ、カヤ。キョウハニイチャンガ、ショクゴノデザートカッテキタンダゾー」
「メズラシイネェ、ナニカッテキタノ?」
「フフン、ヨーーーーグルト、ダ!! ウマイシ、カラダニイイゾゥ?」
「・・・・・・ア、アリガト・・・オニイチャン・・・・・・・・」
自室のデスク。うんざりとした顔で書類の山と格闘している大隊指揮官。そこへ甲女史がさらに追加の書類を持って入室してくる。
「またかい?かんべんしてくれないかね。」
「暇そうにしてらしたのは蛇行の方でしょう。ここは暇人を置いておくほど余裕は無いはずです。」
「きついねえ、全員が理想的に機能を果たすなんて組織はこの世の幻想でしかないんだよ?君。」
「サボタージュの言い訳としては低レベルとしか形容できません、代行。」
言いつつ、ドサリと音を立てて書類が積まれた。
処置なしと言うように首を振ると溜息をつき、リクライニングの椅子で伸びをする。
「ところで、あれはもう片付いたんだよね。」
「ええ、彼らは自分達で情報封鎖も行っていましたから。一部マスコミと近隣住民さえなんとかすれば問題ないと思われます。」
「うん、それでいいよ。多分この件に関して市ヶ谷は動かないだろうから、こちらも最低限でいいよ。」
「何も…ですか?」
「だって、誰か処分したりとか旅団に介入とかしたら‘事件‘を認めるようなものじゃないか。そんな事を
彼らがするとは思えないな。さらに言えばあの守銭奴の手はあそこの内部にも伸びているってことさ。」
「財は剣、財は盾…ですか。」
「まあ、これに関しては国防軍の一組織でもある我々がとやかくいうことじゃあないんだよ。この件は
何事も無く、いつものバカ騒ぎという事で落ち着くしかないんだろうね。」
「旅団の自浄作用にも期待は出来ませんしね。」
「そういうこと。」
言いつつタバコに火をつけ、ゆっくりと燻らせる。と、目に影が宿る。
「…とはいえ、すべてをなあなあで許すほど我々が甘くはないということをあの守銭奴には覚えておいて貰わないといけないね。」
「既に居場所は捕捉済みです。」
2人の視線の先には2枚の写真があった。手に取り、灰皿に乗せるとその上にタバコを放る。
「よろしい。教授に連絡を。「彼女」の再試験を行う。」
「は。」
写真がゆっくりと燃えてゆく。敬礼をして、きびきびとした所作のまま退出しようとして、甲は扉のところでくるりと振り返った。
「…ところで、書類は今日中に提出をお願いします。」
「………」
時刻は5時を回っていた。残業確定。大隊指揮官は溜息と共にやけっぱちでやりつけぬデスクワークに勤しむ事となった。
現像係A「……IGPKもお終いだな」
現像係B「あーあ。これが仕事納めか」
写真No,044
何処かから飛び降りている、G院の女子。スカートを抑えてはいるが、下から撮っている為
しっかりパンチラになっている。
A「……上半身がフレームに入ってればな。少しブレてるし……」
写真No,050〜54
調理後もなお毒々しい色の、キノコを握った手のアップ。
写真No,080
空を飛ぶ白い女。少し姿が透けている。
A「……心霊写真?」
B「学校の七不思議とか、ありそうだな……」
写真No,086
校舎の壁に半分めり込んでる、白い女。海軍の制服っぽく見えなくもない。
A「……」
B「……何処かに投稿してみるか」
写真No,134
IGPK隊長と大和 撫子を中心に撮った、20人ほどの集合写真。
A「……」(涙)
B「……」(涙)
写真No,176
包丁を咥えた顔のアップ。画像は激しく乱れ、眼光の残像だけが鮮明に赤い尾を引いている。
A「うわっ!?」
B「……ああ、これは」(汗)
写真No,177
お玉を振りぬいた、割烹着姿の女性の後ろ姿。手前でピントのずれた人影が二つ、逆立ちしている。
A「なんだこれ?」
B「この写真撮ったの、多分俺……実際は上下逆なんだよな、コレ……」(ガクガクブルブル)
写真No,230〜244
『隕石戦隊タルレンジャー』ショー。
B「何処から混じったんだコレ?」
写真No,270〜281,313〜339
(゚∀゚)×たくさん。
B「襲われて、思わずシャッター押しちまったって感じだな」
A「……よく見ると可愛いかも」
写真No,358〜374
A「こっ、これは!」
モナコ殿下に駆け寄る加也嬢。抱き締め、手を取ってブンブン振る。くるくる回る。
食事を前に何故か赤面している殿下。そして二人で仲良くお食事中。
A「イイ……目からウロコが落ちるようだ」(涙)
B「けど一体誰が撮ったんだ? あの場の撮影部隊は全滅していたはず……」
犯人は(>257)のコイツ(笑)
(・∀・)イイ!
青のユニフォームに短パン。手にはフライパンとおたま。
「ニッポン!!」
ガンガンガン!
「ニッポン!!」
ガンガンガン!!
「ニッポン!!」
ガンガンガン!!
「起きろーっ!応援だぁっ!ソレ!オー、ニーッポーン!ニーッポーンニーッポーンニーッポーオン!!」
ガン、ガン、ガンガンガンガン!!
「久しぶりの登場でテンション上がってるね…おねえちゃん…」
――――――――――――――
トッティが・・・デルピが・・・
あああ・・・
__ ___________
∨
日 凸 U 日 凸 ▽ ∇ U
≡≡≡≡≡≡≡ ∧ ∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
U ∩ [] ∨%(゚Д゚;) <・・・宮城に戻らなくていいんですか?
__ 「 ̄|_____|つ∽)_ \_____
酉酉酉 / 」|||;)∪∪∪∪⊂
― / |⊃―――――――
〜(__.ノ
━┳━ ━┳━
 ̄ ┻  ̄ ̄ ̄┻ ̄ ̄ ̄ ̄
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今戻ったら、わたくし絶対に
もなこ様に朝鮮討伐をお勧めしてしまいますわ・・・
__ ___________
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日 凸 U 日 凸 ▽ ∇ U
≡≡≡≡≡≡≡ ∧ ∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
U ∩ [] ∨%(゚Д゚;) <・・・あんたシスターでしょうが。
__ 「 ̄|_____|つ∽)_ \_____
酉酉酉 / 」|||;)∪∪∪∪⊂
― / |⊃―――――――
〜(__.ノ
━┳━ ━┳━
 ̄ ┻  ̄ ̄ ̄┻ ̄ ̄ ̄ ̄
帝国海軍横須賀海兵団。大東亜戦争終了後、米軍進駐に伴い、
元横須賀第二海兵団のあった武山に移転し、現在に至っている。
海の男(女も少々)を養成する海軍の教育機関である。
そこに似つかわしくないスーツを着たサラリーマン風の男。田中彦一だ。
そして、その隣には海軍の軍服を身にまとった女性。階級は少尉だ。
「そろそろ来ますよ。これからよろしくお願いしますね。」
田中が女性の方を見る。
「あたくしにまかせてくださいな。」
女が笑う。その前に、兵員輸送車が止まった。その中から少女たちが降りてくる。
その少女たちは水兵服(海軍で支給されているのと同型である)を身にまとっている。
そして、頭には猫の耳、おしりには尻尾があるのだった。
「今はコントロール用の鈴で制御してるんで、まあ安心です。」
2人づつ同じ顔をした猫耳水兵が都合3対、6体整列した。
「じゃ、制御外しますんで、よろしくお願いしますよ。」
ぱちん。田中が指を鳴らす。と、猫たちの目が正気に戻る。
「はい、みんな起きたかな〜。それじゃ、これからみんなの教官を紹介するよ〜。」
「あたくしは志摩いせ海軍少尉ですわ。これから2週間、よろしくですわね。」
猫たちはきょとんとしている…。
「むー、おなかすいた…」
クーラーをきつめに効かせた部屋で、Tシャツだけ着た姿の宇月がごろんと転がった。
ビールの空き缶が転がり、漫画と理学書が一緒くたに転がっている。PCもテレビもつけっぱなし。
男の匂いのまるでない、いや、それどころか雑然としすぎな部屋である。
「……てか、なーんでこのあたしが土曜日の昼間っからボケボケ過ごしてるのかしら…」
ゆっくりと起き上がる。前髪が数本、重力に逆らうように浮き上がって触覚のようになっている。
ゆるゆると移動して、冷蔵庫を開ける。牛乳と卵、乾麺と…冷凍食品が少々。あとはパンとビール。
男の下宿みたい…見たことはないが、そういう印象を宇月は持っていた。
足元に転がる洗濯物を足蹴にしながら、パンをトースターに突っ込み、牛乳を火にかける。
片隅に山と積まれた部屋着の数々。クローゼットの中の外出着とは別格の扱いであった。
焼きあがったパンをくわえつつ、牛乳をお気に入りのイルカのマグカップに注ぐ。
彼女の部屋はお気に入りのもの以外はどれも粗雑な扱いを受けているといってよかった。
マグカップも例外ではなく、イルカ以外は流しで放置されている…
「むぐ…たまには掃除しないとだめねえ……」
部屋を見渡し、溜息をつく。広いはずの部屋はたまりまくる本と服、小物雑貨に埋もれて狭く見えていた。
これはさすがに乙女の部屋じゃないわね……
「よおし、今日は掃除の日…っと!」
ようやく、意を決して掃除を始めようとしたとき、つけっぱなしのPCのアプリが声をあげた。
『メールがとどいたよーん。えーっとねえ、防疫給水部からだよー。』
この瞬間、彼女の休日の予定はすべて変更となった。そして彼女の部屋が掃除される機会はまた遠く去る事になる。
「君、これは危険だよ。」
「はは、何をおっしゃいます。制御実験の効力はすでに横須賀でご覧になったでしょう?」
「しかしだね、安全性の面から言っても不安があるとしか言えないのではないかね?」
「なるほど、そうかもしれませんな。」
「そうかもとは何だね!」
「失礼、これは失礼。しかしですな、兵器というのは使ってこそのものなのですよ?駆動実験なしに
実働には載せられないのは事実でしょう?なればこそ、「あれ」がコントロール下に置けるという事を
証明せねばならんのですよ。「彼ら」は待っていてはくれませんよ。」
「……しかし、危険だ。」
「ふふふ、ご安心を。監視者の人選にはこれ以上ないものを選びます。」
「いいかね、「あれ」らは君らの勝手な行いで始められた計画だという事を忘れるな。予算ばかり食う
金食い虫にいつまでも資金は出せないのだぞ。」
「そうでしょう、そうでしょうとも。あなたがたに責はありませんよ。ええ、ありませんとも。しかしこれは
秘匿命令によるものであるという事をお忘れなく。計画は予定どうりに進行します。」
「…またそれか……」
「今日の実験、ごらんになられますかな?」
「やめておこう、今晩は焼肉にいく事になっている。」
「賢明です、が、軟弱ですなあ。」
「無礼だぞ。」
「はっは、いや、らしくない事をおっしゃるものだと。では、失礼いたします。」
あ、アイタタ、腰にきたよ。……久しぶりに本気を出したからね。
けど二〜三日後に”くる”なんて、アタシも年だろうか……
「タマ〜、ちょっと来ておくれ〜」
「──はーい」
「ちょっと腰を踏んでおくれ」
「はーい」
フミフミ、フミフミ
「ん、ん、もう少し下。ああ、そこそこ。んぅ〜」
半年ほど前”危険な職場”に勤めていた兄さんが殉職しちまってね……殉職手当てと私物の送り先を
アタシに指定していたらしいんだけれど、この子はその私物の中の一つだったのさ。
兄さんの人格はともかく、当時は人型のペットなんて信じられなかったね。まあ猫耳は
もなこちゃんにも付いているから驚かなかったけれど。ワケありみたいで、引き取り手が無かったら
”処分”されるって泣きながら言うから、同情半分で面倒見ていたんだけれど、今では子供も同然さ。
フミフミ、フミフミ
「タマ〜、晩ご飯は何がいい?」
「……お肉…焼肉でいいですか?」
相変わらず、生肉が好きだねえ。
「よーし、今夜は奮発するよ」
「わーい!」
「にゃ…教官…ですか?」
「きょ〜かん?おいしい?」
「教官だと…ふん?」
3タイプ3様の反応を示すが、目の前にいる女が自分たちの上官になるということを
良しとしていないのは共通している。
「あたくしに不満があるんですの?いいですわ…かかっていらっしゃい…。」
「ちょっとちょっといせさぁん、あんまり手荒なことしないでくださいよぉ?」
田中が困った顔をする。課長に小言を言われるのを恐れているようだ。
「かかってこいだと…なめられたものだ?」
猫耳の1タイプ、黒い髪、高い背、がファイティングポーズを取る。
「ああ、やめてください〜。」
「いいぞいいぞぉ!やっちゃえ〜!」
各タイプそれぞれの反応を示す。いせは両手ぶらり。何をする気もないようだ。
2体の猫耳が上空を舞う。太陽を背にして飛びかかる!
ざくっ!猫耳の爪は確実にいせに突き刺さった。はずだった。
感触がない。
「にゃっ!ガクガクブルブル…」
確かにいせの体にその爪は深々と刺さっている。だが、いせの体からそれは抜けない。
いせの体が爪を掴み、押さえているのだ。
「うぁ…私が悪かった!頼む、腕を離してくれ!気持ちが悪い〜〜〜〜〜〜!!」
すぽんっという音がして腕が抜ける。
「わるいですけれど、あたくしも人間じゃありませんの。そこのところ、よろしくですわよ!」
「にゃぁぁぁぁ…。」
6体の猫耳が地面に仰向けに転がり声を出す。ごろごろごろ…。服従のポーズらしい(笑)
「フフフ。じゃああらためまして。あたくしは志摩いせ。あなたたちの名前を教えて下さる?」
茶色い髪の猫耳。髪は短く、背はまあ標準だろうか。スタイルも…標準である。
「私は猫耳水兵タイプA、わかばです。よろしくお願いします。」
「私は猫耳水兵タイプA、ふたばです。よろしくお願いします。」
次に赤い髪の猫耳。長い髪は真ん中で二つに分けている。背は低く、幼い印象を受ける。
「ねこみみせーらーたいぷびー、みつばだよ。」
「ねこみみせーらーたいぷびー、よつばだよ。」
最後に、先ほど飛び掛ってきた黒い長髪の猫耳。背は高く、スタイルも良い。
「猫耳水兵タイプC、いつは…だ…です。よろしく…たのみま…す…ギリギリ」
「猫耳水兵タイプC、むつは…だ…です。よろしく…たのみま…す…プルプル」
さきほど負けたのがまだ納得いかないらしく、少し震えている。
「ありがとう。じゃあ、時間がありませんの。早速基本動作から始めますわね。
グランドへいきますわよ!」
こうして、変な船魂と猫耳6体の班がここに誕生したのであった。
基本訓練。それは水兵として艦で生活するための、基本となる訓練である。
彼女たちの体力については全く問題がない。そのような訓練ははしょることにした。
まず最初の数日間で、菊水式の基本動作に染まっている彼女らの動作を
海軍式に鍛えなおす。
「敬礼の角度!約45度!陸さんよりも狭いのはどうしてかしら?」
「はい!わすれました!」
「みつば、よつば、思い出すまで前支え!前支え用意!」
「いやぁん。」
「いつは、むつははわかるかしら?」
「艦の甲板に整列すると、どうしても間隔が狭くなるからだ。」
「答えはあっていますわ。でも、返答の仕方が違いますわよ。(はい!〜です!)でしょう?
はい、両手を上げてくださいな。」
上げた両手に、12.7mm機銃を載せる。いくら猫耳水兵の体力が常人離れしているとはいえ、
これはつらい。
「ぐぅう…(いつかコロス…)。」
「わかばとふたばはちゃんとお勉強してきてくださるのに…。あなたたちは困ったものですわね…。」
「いたいよ〜うでがもたないよ〜!」
「ぐぅぅ…(ぜってぇコロス…)。」
「はいはい、もういいですわよ。みつば、よつば、その場に、立て!いつは、むつは、立て、銃!」
「あらあら…菊水自慢の猫耳兵士が…この程度のものでしたの?」
煽るいせ。猫耳水兵たちの目には明らかに反抗の色。
「では、いきますわよ〜♪もやいむすび、ピッ!」
「「「もやいむすび!」」」
号令復唱の後、マニラ索を結びにかかる。結索は艦の運用作業で欠かすことのできない作業である。
「え〜と…これがこうで…こっちへ通して…」
「にゃ…さくがにげるにゃ!にゃにゃにゃ!」
「簡単なことだな…そら!」
「はい、時間ですわよ〜。できた人は、低い姿勢〜。」
すっ、と低い姿勢になるわかば、ふたば、いつは、むつは。だかしかし、みつばとよつばは
立ったまま。どうやら結べなかったようである。
「あらあら…じゃあ、もう一回、いってみようかしら。
あとの4人は他の結び方を練習してくださいな。」
「ねえ…どうしてこんなひものむすびかたやらなくちゃいけないの?」
「海軍軍人の基本のキ、ですわよ?もし運用員が全滅しちゃったら、他の人がやらなくちゃいけないでしょう?」
「ふねにはいっぱいひとがいるんだから、べつにあたしたちがやらなくても…。」
「こらこら。いけない子ですわね…。艦はみんなで動かしているんですわよ!たしかに分隊は分かれて、
仕事も違うけれど、同じ艦の上で命を共にする仲間なんですわ!」
「ぶぅ〜。よくわかんない…。」
「艦は一人じゃ動かせない、総員あってこその全能発揮ですのに…。仕方ありませんわね。
あの訓練を前倒ししますわ。体で覚えてもらいますわね…。」
講堂。猫たちには(短艇教本)が渡されている。
「なんだ?これは?」
「カッターですの。公園にある手漕ぎボートのでっかいやつ…違うけど、まあそんな感じですわね。」
「わけわかんなぃ〜。」
「どうも運用作業と総員あっての全能発揮が理解できない様子ですわね。あなたたち。それを
実地でやって、体で覚えてもらおうという次第ですの。」
「ぼーとだ☆ぼーとだ☆」
「で、あなたたちにはWAVE132分隊2班と勝負してもらいますわ。もちろん、賭けあり、ですわよ。」
「賭けるんですか?」
「ほぅ。おもしろい。」
「ま、今のあなたたちじゃぁ、とうてい勝てないでしょうけど?」
「なにを!生身の人間に我々猫耳水兵が遅れをとるというのか!」
「それはありませんよ。教官。」
「ないない〜。ないよ〜。」
「やれば分かりますわよ。そうそう、レースの内容は簡単ですの。スタート地点は漁港の灯台で、
ゴール地点は秋谷海岸。先に到着し、上陸したほうの勝ちですの。ちょっとだけ泳ぐから、
水着をわすれないように、ですわよ?」
「えっ!水ですか!」
「なにをおっしゃる仔猫ちゃん!元々あなた方は水に当たっても大丈夫という触れ込みじゃありませんこと?」
「でも…やっぱり怖いです…。」
「さぁ、お話はここまでですのよ!教務に入りますわよ!」
こうして、3日後の競技に向けて、猫たちの短艇教務が始まった。
ザザーッ…。
波の音だけが聞こえる、暗闇の海岸。微かに見えるのは灯台の閃きと、薄い星空。
そして六対の猫目。
水兵への調整後、数々のテストを受けた彼女達だが、まだ実際に海に入ったことが無かった。
そして約二名が、あの教官に不様な初体験の姿を見られるのを嫌がった。
「──という訳で、特訓だ」
「秘密特訓、素敵です」
「いせいせを、ぎゃふー言わせるのー」
「……」
「い〜や〜!海はイヤーっ!溶ける〜(泣)」
「溶けるか!」
波の音。服を脱ぐ音。波の音。砂浜を歩く音。波の音。
「…冷たい」
「海が綺麗…です」(暗視)
「すごい、ホントにしょっぱいよ」
「ねえねえ溶けてない? 溶けてない?」
「……吸血鬼細胞は安定しているな」
「これで我らはまた一つ、弱点を克服した」
──10分後。
「……よし、これ位でいいだろう」
波の音。砂浜を歩く音。波の音。服を着る音。
「……あの、膝までなら、服は脱がなくて良かったんじゃないですか?」
「ま、まあ泳ぐのは…今度……」
夕刻の図書館は彼女以外に人影も無く、深としている。僅かに差し込む夕日に照らされ
窓際は赤く染まり、立ち並ぶ本棚は黒い影。
あと30分ほどで夜勤の司書と交代だが、その前にもう一仕事しなければならなかった。
数冊の本を抱えて、分類ごとに本棚に戻してゆく。
最近の図書館は賑やかだ。まだ夏休みでもないのに、こんなに子供達が来るのは珍しい事だった。
……そういえば、今日は水上君がいつの間にか居なくなっていた。最近仲良くしている
あの子供達が帰った辺りからだ。一緒に遊びに行ってしまったのだろうか?
なんとなく寂しく思いながら、最後の本を棚に納める。そこで視界の端に足が見えた。
……彼女は本が好きだ。だから、ページを折る、本を開いて伏せ置く、食べながら読む等、
本を乱暴に扱う行為は許せない。雑に扱っていいのは雑誌だけだと思っている。
……けれど、本を枕に眠る事だけは今から許す事にした。
図書館の片隅で身を隠すように、本棚に寄りかかり眠る水上君。
いつも優しく素直で上品で繊細で……しかし決して隙を見せず、常に人と距離を置いているような
印象を受ける彼が初めて見せる年相応の、無防備な姿。
しかも両手で抱きしめている本のタイトルは『ともだちの作り方』
「は…う」
よろめく。その寝姿は彼女にとってクリティカルヒットだった。一撃で理性が砕け散る。
(……アヒャ……いや先ず写真!ビデオ?ビデオっ!)
ぶんぶんと頭を振り、妄想を消し去る。しなければいけない事は決まっている。
彼女は自分の眼鏡を外した。度は入っていない。表情を読まれるのが苦手なので掛けている伊達眼鏡だ。
震える手で、どこか儚げな寝顔に眼鏡を掛る。
「フフフ、これで完・璧」
水上君ぴんち(笑)
秋葉原には広大な地下空間があると言われている。
旧帝大医学部のある本郷から神田にかけて、何かを輸送するために使ったという通路だ。
通路は侵入者を迷わせるかのように入り組んでいて小部屋がいくつもあり、広大だという。
しかし、戦後から現在にかけて、その存在を知るものは過少である。そして、伝説を求めて
旅立ったものが帰ってきたという話もないという。地下鉄のトイレの奥から悲鳴と、笑い声が
聞こえたという人の話もあるが……
「で、2人は?」
「は、今身柄を拘束に向かっております。」
「あれは?」
「上で調整中との事です。ぎりぎりまでやってもらったほうがいいでしょう。」
「よろしい。」
薄暗い通路を進む2人。声が暗がりに反響する。
「試験場はここの1キロ四方。あとは閉鎖します。部屋の備品は撤去済みです。」
「天井が低くないかい?」
「跳弾ですか?それで片付くようなら失敗ですが…」
「……ふーん、2人とも五輪強化選手だったのかい…で、SAT…で、IGPKか…」
「人間性に問題があったと、資料にはあります。」
「人間性、か。」
ふふふ、と薄い笑いをこぼす。
「他の験体についてはもう拘束済みです。2人が到着次第始めます。よろしいですね?」
「うん、いいよ。ちょっと教授に挨拶にいってくるから後よろしく。」
右手を軽く上げ、薄い笑いを浮かべたまま彼は後ろを見せた。
>274
うわピンチ(汗
……もう少し様子を見てみようかな(笑
そして、決戦の日はやってきた。
猫耳水兵と132分隊2班の短艇競技は、いつの間にか海兵団全部のイベントとなり、
その日の教務予定は全面変更、司令以下海兵団の教官、海兵団の学生たち、
そして横須賀から武山までわざわざ見物にきた連合艦隊司令部の(暇な)参謀たち、
そのお付き、データ取りにきた菊水の面々やらで海兵団は異常な賑わいを見せていた。
「おい、お前らどっちに賭けますか?」「おお、あれが噂の猫耳セーラー、我が家にも
1匹欲しいハァハァ。」「おせんにキャラメル…」
すっかり祭の様相を呈している。
「あらあら。こんなに人が大勢集まるなんて、張り合いがありますわね。仔猫ちゃんたち。」
草色の第三種軍服をまとったいせ。ちゃんと海軍軍人っぽく見えてしまうから不思議だ。
「勝負は見えています。通常の人間が体力で我々に勝てるはずがありません。」と、わかば。
「あたりまえだにゃー。教官がなにをたくらんでるのかしらないけど、あたしたちがかつに
きまってるのー!」と、みつば。
「全く、やる前から見えている勝負ほど、つまらないものはないな。」と、むつは。
「どうかしら。やってみなくちゃわからない、ですわよ。ウフフ。」
そうこうしているうちに、132分隊2班が短艇を降ろすため、艇員調査を開始した。
『番号、長!』
『1!』『2!』…『11!』『12!』
『この編成をもって第1号カッターを編成する。第1号カッター降ろし方用意!配置に付け!』
「あら、始まったみたいですわね。見学させていただきますわよ。」
艇長がいせに対して敬礼する。ビシッ。いせは答礼する。バシッ。お互いキマっている。
「132分隊2班伍長、2等水兵、更級由希子です!志摩教官、本日はよろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしく〜♪ですわ♪」
初夏の日差しが暑い武山。
見物客をかき分けるように歩いてゆく女性が一人。
白い海軍将校の服。手には袋菓子がいっぱいとコーヒーポッド。
不釣合いな事この上ない。だいたい、彼女にはこの制服すら似合っていない。
「ふう、買いすぎちゃった。」
と、一息ついたとたんなぜか、自分の足にけつまづき、派手に転んだ。宙を飛ぶお菓子の山。
「ふえええ……」
慌てて袋菓子を拾い集める。
「あれあれ、またですか。」
彼女の前にしゃがみこむ少女。
「あ、ごめんねえ。どうもヒールってなれないのよねえ。」
「ヒールじゃなくても転ぶでしょうに…」
「あはははは、そうなのよねえ。」
笑う。一点の曇りもなく。彼女の皮肉を受けてすらいないようだった。
「もう、始まるから、さっさと行きましょう。」
女性は少女に引きずられるようにして連れて行かれた。
30秒後、その場にいた上島少佐は医務室に運ばれていった。
その一切を彼女達は見てすらいなかった。転んだ時に宙を舞ったコーヒーポッドが彼の脳天に直撃したのを。
そしてその凶器の持ち主にいたってはコーヒーポッドをなくしたのに気付くのに3日かかったそうである。
上島「……う、ウッタエテヤル…」ガク…
皆さんこんにちは。更級 美希子です。
今日は武山に、お姉さんの応援に来ました。何か競技に出場するそうです。
この前のお礼という事で、ひなぎくの方から車で送って頂きました。
最近、考える人になってしまった守屋 透くんも無理やり連れてきてみました。気分転換になるでしょうか?
お姉さんに会いに何度か武山に来たことがありますが、今日はまるで別の場所のようです。
こんなに賑やかだとは思いませんでした。
隊員C「さあ、こっちに席を用意しておいたよ」
守屋「……やっぱり僕は」
この期に及んで守屋君は元気がありません。仕方ないので私は腕を組みました。
守屋君はびっくりしています。もう片方で、ひなぎくの方の手を握ります。
「行きましょう」
変な数珠繋ぎで、人ごみの間を進みます。本当は少し恥ずかしいのですが、急がないと
お姉さんの競技が始まってしまいます。
……他意はありませんが「両手に花」の反対は、なんでしょうか?
>274,276
(きき、キッスで起こすのが基本よね?)
覚悟完了。顔を近付ける。その途端に水上君が目を開けた。眼鏡越しに見詰め合う二人。
たとえば黄色信号でアクセルとブレーキのどちらを踏むか?彼女はブレーキを踏む性格のはずだった。
「おね……うわ?」
アクセル全開で押し倒した。両手首を床に押さえつけ組み伏せる。
「ハァハァ、コワクナイヨー」
水上君は顔を僅かに背けただけで、抵抗らしい抵抗もしない。
(こっ、これは喰って可ってこと?)
自由な片手でシャツの襟首からボタンを外してゆく。手が震えて二つ目を上手く外せない。
(……ちょっと待って、私は何をしているの?)
ズボンのベルトを緩め、シャツの裾を引っ張り出す。
(いくらなんでも犯罪よ)
裾から手を潜り込ませる。
(ああ、でももう止まらない)
蝋のように滑らかな肌。柔らかい肋骨。そして──
「え……?」
指先が奇妙な感触を捉えた。恐る恐るシャツのボタンを外してゆく。露わになった少年の上体には、
幾つもの傷跡があった。消えかけた火傷の痕。赤く浮かび上がった刃物傷。まだ新しい痣。
残っていた理性の欠片が、それを理解する。……この子が何故こんな季節に長袖シャツを着ているのか?
何故いつも半日近くもこの図書館にいるのか?それはきっと……
「…おねえさん」
はっと顔を上げる。水上君はいつものように、優しく微笑んでいた。
「おねえさんも、僕にひどい事するんだね…」
彼女の思考は完全に止まってしまった。
@電波@
これ以上は無理よ〜(爆)
帝国海軍横須賀海兵団婦人練習員第132分隊第2班伍長、2等水兵更級由希子です。
もともとこの競技はもっとひっそりやるって聞いていたので、ちょっと驚いています。
でも平常心、きっといつもどおりやっていれば大丈夫です。絶対に勝ちます。
ところで、特別講習の猫耳さんたちが短艇の練習をしているのを一回もみたことがありません…。
志摩少尉は本当にやる気があるのでしょうか?別に自慢をするわけではありませんが、
私たちの班は海兵団の学生の中でもかなり短艇が速いほうです。練習無しで勝てるほど
弱くはないつもりです。ですが、あの教官からは勝とう、という感情が感じられないのです…。
志摩少尉は何をたくらんでいるのでしょうか…。私たちは、はめられたのでしょうか?
あ!ミキだ!見にきてくれたんだ!こういう時に妹が来てくれるというのは姉冥利に尽きます。
お姉さんはがんばるからね〜!ボーイフレンドも連れてきたようです。ほほえましいですが
ちょっとうらやましいです。私だって、海兵団を出たら…あ、いけません…私ったら…
これから艇を降ろすのに…集中、集中…。
>280
「おねえさんも、僕にひどい事するんだね…」
咄嗟の出任せだったけれど、司書のお姉さんの動きが止まった。……ちょっと危なかったよ。
内部で凄い葛藤しているみたいだね。お姉さんはマウントポジションを取ったまま、
瞬きさえ忘れて文字通り止まっている。僕も、お姉さんがこんなに大胆だなんて
思わなかったよ。──あれ?お姉さんの首の後ろに、丸い変なのがくっついてるよ。
(゚∀゚)レイープ!
……とりあえず刺してみよう(サク)
丸い変なのは、傷口から白い体液を吹き出しながら首から剥がれ落ちた。すると正気に戻ったのか、
お姉さんはやっと僕を開放してくれる。よっぽどショックだったのか、尻餅を付いたまま呆然としている。
(゚∀メ)ззз
「……お姉さんは悪くないよ。多分この変なののせいで、おかしくなってたんだよ」
逃げようとしていたそれを捕まえる。何処かで見たことがあると思ったら、昨日プチテレビで特集していた
珍獣と似ている。傷口から漏れる体液は甘酸っぱい匂いがする。舐めてみると、番組で言っていたとおり
ホントにヨーグルトの味がした。……教授にあげたら喜ぶかな?
僕はポケットから薬を一錠取り出して、お姉さんの手に握らせる。本当は口移しが基本なんだろうけれどね。
「これは睡眠薬さ。副作用で、飲んだら一時間くらい前までの記憶が消えるんだ。使うかどうかは、
お姉さんに任せるよ。……僕は、無理やりは嫌いだから」
立ち上がって服の乱れを直す。珍獣は足で踏んで押さえてるよ(グリグリ)
「じゃあね、司書のお姉さん。明日も来るよ」
ニュース性は低いが面白いイベントがあると聞きつけ、彼は一人こっそり武山にやってきた。
プライベートであったが、プロ用望遠カメラとプチテレビの腕章で完全武装していた。
いつ起きるかもしれない『事件』に備えて、彼の自家用ワゴンには常にプチテレビの撮影機器が積んである。
もちろん局の許可は取っているが、今回のように私的に使われる事も多い。
せっかく高級な機材を持っているのだから使わないのは損だと思っている。
公私混同ではあるが、その中からスクープ映像が撮れたりもする。特に彼は仕事=趣味な人であり、
一時期フリーのカメラマンだった経験もあるため公私の区別は無いに等しかった。マスコミという
業界自体が「知る権利」と「個人のプライバシー」を天秤にかけているのだから仕方ないのかも知れない。
──という感じで、彼の脳内では言い訳がされている。いざ出陣!
受付「本日は海兵団オンリーイベントですので、許可証の無い方はご遠慮下さい」
雄一「………」
なんじゃこりゃ・・・。
「もなこの学校でもうすぐ運動会があるのです。
なんでともえちゃんも一緒なのですか?ってかんぬきにおじさんにきいたら
今年から大きい人たちとも仲良しで一緒に運動会して、負けたほうが一つだけ
どんなことでもおねがい聞かなくちゃいけないっておしえてくれたのです。
やぁーん、もなこまけたくないのです〜!」
「次回、魔法内親王伝★もなこ、
『ハラハラ・パニック! 運動会はデットゾーン』
に、八紘〜★一宇っ!」
「……でっとぞーんっておいしいのですか?」
「今日はうちの艇も132分隊に降ろしてもらいますけど、ちゃんと見てないとだめですわよ!」
艇内作業員が艇栓を締め、由希子に『艇内よし!』を報告する。
『ストッパーかけ!』
「にゃ?あれはいったいなんにゃ?」
「ストッパーですわ。短艇索が一気に繰り出されるのを防ぐんですわよ。」
「いっきにでるとどうなるのー?」よつばが首をかしげながら尋ねる。
「艇が一気に落ちて、水面に激突しますわね。その衝撃で艇内作業員は当然怪我をしますわ。
最悪、死にますわよ。」
「やだー!しぬのはいやー!でも、ちょっと…おいしそう。」
『前部ストッパーよし!』『後部ストッパーよし!』
『短艇索、一巻きまで解け!』
前部と後部の短艇索員が、静かに、しかし確実に短艇索をクロスビットから解いていく。
その様子に、猫たちはしばらく息を呑んだ。
『前部短艇索よし!』『後部短艇索よし!』
『ストッパー解け!』『前部ストッパーよし!』『後部ストッパーよし!』
『降ろーす!』
由希子の号笛と手の動きに合わせて索が繰り出され、短艇が水面へと近づいていく。
『止め!』クライマックスは近い。
『安全止め解け!』『前部安全止めよし!』『後部安全止めよし!』
『短艇索、放し方用意!』『短艇索放し方用意よし!』
『は な て !!』
号笛から放たれる短一声と共に索が放たれ、バシャァンという軽快な水音とともに艇が着水した。
『艇内作業かかれ。』『かかります!』
「なかなか鮮やかな手つきだな…」といつは。
「まだまだあんなの手習いのうちですわよ。あれ以上にはなってもらいますわ。」いせが笑う。
「当たり前だ。我々が人間より劣ることがあってたまるか!」むつはがつっかかる。
「あら。頼もしいことですわね♪その意気やよし、ですわん☆」
>282
少し帰りが遅くなるけれど、教授のラボに寄っていこう。
「やほー、教授いる?」
「あははーっ! やほー水上君、セントウデスカ?」
「何それ? ちょっと教授に見て欲しいのがあるんだけど」
二重にした靴下の中に閉じ込めておいた、例の生き物を取り出す。
(゚∀゚)ヤア!キョウジュ、ヒサシブリー!
教授は壜底眼鏡を指で押さえながら、興味深そうに顔を近付けた。
「ほほー、醍醐蟲ですか。これは懐かしいですーっ」
「もしかしてって思ってたけれど、教授が作ったの?」
「関係ないとは言い切れませんねーっ。何処で見つけましたかーっ?」
僕は教授に、図書館での出来事を説明する。
「あははーっ! それは災難でしたねーっ。これは激しく増殖、合体、変形しますからっ、
多分その過程でそゆ風に突然変異したのですーっ」
「ふーん。とりあえず、これは教授にあげるよ」
「あははーっ! でわ物々交換するのですーっ」
教授は白衣のポケットから紙切れを一枚取り出した。
「……試写会のチケット?『劇場版どえら──」
手の中から、一瞬でチケットが消える。
「はわわ間違えましたーっ!こっちですーっ!」
教授は赤面しながら同じような紙切れを僕に押し付けた。
「今度の日曜日にっ、猫耳水兵がデビューするのでっ、見に行くのですーっ」
「この前、流水への制約を無効化したって言ってた子達だね?」
「しかもあの子達はなんと、アワビとサザエは食べても平気なのですーっ!」
「へえ……こだわりだね」
「ところで水上君、その眼鏡どうしたですかーっ?」
「あっ…」
〜電波〜
眼鏡外すの忘れてたよ(笑
実は動揺してたってことで。しばらく掛けておこうかな?
菊水霊的警護セクション、それは皇族を悪霊などから守り、時には皇族に
対する悪意ある霊やそれらに類するものを事前に粛清する菊水の特別組織
である。
もちろん、ここに配属されるものは霊能力者だけである。
「こ、こんなところだったなんて〜っ!」
霊的警護セクションに配属されてまだ三日目だというのに、“新井ちゆ”は
すでに後悔していた。
ちゆの能力は“霊視”、見えざるものを視る力である。
同じく霊能力があり、皇族関係者に知り合いがいる母の紹介でここにやってきた。
「すばらしい方たちばかりでしたよ。」
とは母のセリフである。
ちゆの目の前には猫の耳も持つ少女たちがいる。しかし霊視能力を持つちゆ
にはその内部に“鬼”が見えた。
おそらく西洋の鬼だろう。そんなものたちがそこかしこにうろついている。
「ああああ…、怖いよう…。」
(続き)
ようやく目的の場所にたどり着く。今日は菊水の先輩方からレクチャーを
受けることになっている。
「ふ、普通の人間に会えるのね…。」
扉を開ける。とそこには3人の男性が。
菊水A「はじめまして、菊水の狩谷長介です。」
菊水B「紫村ケンジっす。よろしくー。」
菊水C「武藤緑だ。」
ちゆ「はじめまして、新井ちゆです。よろしくお願」
ぱたり。
菊水A「おい、どうした、新井君!」
菊水B「気絶してるよ…。って、初対面で気絶される俺たちって…。」
二人がちゆを介抱していると、菊水Cがぽつりと言った。
菊水C「……おまえの左手じゃないのか? 教授に手術されたんだろ?」
菊水A「……どんな手術されたんだ−−−−!!」
デンパ〜
逝き合戦の前日の話です。
その後、なぜか異次元酒場で再会、そして>225へ(笑
暇さえあればこの酒場で一杯ひっかけていくという事が習慣になってしまった菊水'sの三人。
最近マスターが店を空け、サングラスをかけた大男が代理を務めている。
紫村「……海坊主?」
話の種は、彼らが研修を担当している新人菊水についてだった。
研修といっても、今回の新人は菊水霊的セクションへの配属が決まっているため、一緒に簡単な任務を
こなして現場に慣れさせるといった程度のものだ。最終試験である単独での『粛清』も免除されている。
「俺達も先輩とか呼ばれるようになったのか…」(しみじみ)
「ところで、その霊的セクションてどんな所なんだ?」
狩谷は紫村に問いかけた。菊水霊的警護セクションは、名無し菊水である彼らにはイメージで推測する
しかないほど、菊水内でも特に謎に包まれた機関であるのだが、紫村だけは一時期そこに在籍していた。
(だから第六感が優れ、時々電波を飛ばすのだった)
それが今回、彼らが教育係を任された理由の一つだろう。
「ん、悪いけど俺の口からは言えないな……まあ俺は結局、霊力が伸びなくて出戻りしちまったんだけど。
あの子は違うな。今はまだ霊視しか使えないみたいだけど、あれだけ強力なんだ、潜在能力は高いと見たね」
「しかし、お前がコナかけないなんて珍しいな」
武藤は紫村のグラスに酒を注ぐ。
「失敬な、任務は任務だ。それに可愛い後輩に良く思われたいのは当然だろ?」
酒を一気に飲み干す。
「あとで呪殺とかされたらヤだし」
「……そんな事まで出来るようになるのか?」(汗)
「というか、呪われるほど何をするつもりだ?」
292 :
異次元酒場:02/06/30 05:05
「海の男は港みなとに行き付けの店と女を持つものですのよ♪」
「みつばはおとこじゃないの〜。」
ガチャ。カランカラン。
「それにしても、他の仔猫ちゃんたちはどこへ行ったのかしら?」
「し〜らない(にげたよ〜。やすみまでいせいせといっしょじゃきゅうくつだもん)。」
ストッ。
「マスター。梅酒、ロックでお願いしますわ。みつばはどうしますの?」
「おさけきらい〜。それよりもおなかすいたよ〜。」
「この仔にはミルクと…ほっけでも焼いてくださいな。」
293 :
異次元酒場:02/07/01 00:10
ここは異次元酒場。時間も場所も因果関係も一切関係なく、自由にたむろできるドキュンなバーである。
酒は非常に種類が多く、ランチもなかなか。料金もきちんと明記されているので初心者にも安心(笑)
客層は何故か軍関係者が多い。新しいマスターも元傭兵だったらしい。
カウンターには常連の三人組がいる。(>291)
ガチャ。カランカラン。
そこへ女性が二人、海軍将校と水兵が入ってくる。水兵には猫耳と尻尾がついていた。(>292)
294 :
ひみつ☆特訓:02/07/01 00:15
もなこ様は頑張りやさんです。
もなこ「きょうは、まほうのれんしゅうをするのです。もなこがもっとじょうずに
まほうをつかえたら、みんなのやくにたてるのです」
ヤタ「良い心がけだぞゴルァ。じゃあ式神をやってみろゴルァ」
もなこ「えっ、もなこ しきがみはやったことないのです」
ヤタ「何事にもチャレンジだゴルァ」
もなこ「わかったのです。もなこ、がんばるのです。どうやるのですか?」
ヤタ「カンペ読めゴルァ」
もなこ「えっと……きゅーきゅーにょ?りつりょー?」
ヤタ「とっととやれゴルァ、という意味だゴルァ」
もなこ「そうなのですか?ヤタちゃんはものしりなのです。さっそくやってみるのです。
むー………きゅーきゅーにょ!りつりょーなのです!」
ボワン!(式紙が大きな天狗のお面に変わる)
式神?「ハァハァ、モナコタン、イイ!」
もなこ「……へんなのがでたのです」
ヤタ「もなこ、それは『暴れん坊天狗』のカードだゴルァ!」
式神?「ハァハァ、ハァハァ、ハァハァ」
もなこ「はにゃ〜ん!」
ひなぎく隊員「宮様が危ない!全員出動!」
宮城は今日も大騒ぎでした。
295 :
開始位置につけ:02/07/01 01:59
「1号艇!婦人第132分隊2班!艇長は更級由希子2等水兵!
2号艇!特別講習第88分隊!艇長は志摩いせ少尉!それぞれ開始位置につけ!」
ゆっくりと艇をスタート地点へと移動していく。折り返し地点の灯台が見える。
最初は秋谷海岸までのレースになる予定であったが、司令や参謀たちの観覧の
関係によって、元々スタート地点であった灯台を折り返し、先に戻ってきた艇の
勝利とルールが変更された。距離が短くなったとはいえ、過酷なことは変わらない。
バッシャアン!バッシャン!バッシャアン!バッシャ!バッシャアン!
「いやあ、猫耳セーラーたち、なかなか力強いオール捌きですな。これはもしかすると…。」
「…あれじゃ勝てんよ。この賭け、もらったぞ副長。」
「そうですかねぇ、司令。わかりませんよ?」
観覧席の海兵団司令と副長。こいつらも相当暇らしい。
『前へ!』『そーぅれ!』『前へ!』『そーぅれ!』『…!』『…!』
「こちらは綺麗なものですな…。」
「さすが、海兵団短艇競技の優秀班だけあるな。タイミング、オールの角度、見事だ。」
そして、艇が開始位置につく。岸壁から艇長に向かって索が投げられた。この索が
伸びきる位置で艇を停止させ、待機。競技開始の号令を待つ。
どことも知れない場所、どことも知れない時に其の酒場はある。
訪れる人とともにさまざまに呼ばれる其の場所は多くの時を得てもどこかにあり、
今は菊水’sたちの行きつけの場とたっている。いつもならば常に営業中の札がかかっているこの店だが
今日に限ってはなぜか準備中となっていた。その中で二メートル近い背の男がカクテルを振っている。
カウンターの内側にいることとぴっちりとサイズの合った礼服を着こなしていることから
店のマスターかと思われたがいかんせん其の頭に載せられた軍帽とサングラスが雰囲気を壊していた。
其の前にはすっかり長くなった自分の髪を手に持った店のオリジナルカクテル『レッド・スノー』を弄びながら
サマードレスを着た若い人物がいる。その二人しかいない店の中に『ヘッドライト・テールライト』が静かに流れていく。
…ちりん、…ちりん
バーの入口につけられた小さな鈴が涼やかな音を立て
カジュアル・スーツに身を包んだ背の高い女性が入ってくる。
「遅くなって申し訳ない」
振り返りもせずにカウンターの客がそれに答える。
「いいですけどね。ボクは、奢ってさえもらえば」
「いたしかたないな。今日は私が持とう」
苦笑しながらカウンターに座る女性の前にマスターがコップをひとつ置き
開けたばかりの『清酒 美少年』を注ぐ。女性が少々驚いたように軍帽をかぶったマスターらしき男を見上げた。
「こんな前のネタよく覚えていたな」
男は何も語らずただニタリと笑った
「これで人気があるんだから信じられませんね」
そういってのける若者を一瞥し女性が言葉を継ぐ。
「蓼(たで)食う虫も好き好きという。日常に疲弊した感性には刺激的なのだろうな」
ほめているように見せかけて、その実きっぱりと切って捨てた女性に今度は若者が苦笑する。
「…あいかわらずですね」
「性分だ。それ以上でもそれ以下でもない」
滑らかな口調でやりあう二人を片目に男もビールを自分の前にジョッキに注ぐ。
まるで待っていたかのようにほかの二人もそれぞれの飲み物を持ち上げる。
「何に乾杯します…きくまでもないですね」
若者が言いかけてやめ、三人の持つグラスのぶつかる音とともに声が唱和する。
「「「萌(もえ)に幸、多きことを願って」」」
再び店内に静けさが戻りそれぞれが自己のペースで杯を開ける。
いつの間にか男のジョッキは空になっており男は自己の職務に戻る。
サマードレスを着こなした若者がスーツの女性に問いかける。
「にしても、あなたのそんな姿始めてみましたよ。和服系以外も着れたんですね。で、今何してるんです」
「さて。何をしているのだろうな」
初めの杯を傾けながら女性が答えた。カウンタ越しに男が問いかける。
「自分のことだろう?」
女性は杯をカウンターに置き男を直視する。
「自分のことだからわからんのだ。元々、私は彼女の呪いを浄化する為に現れ其の目的に沿って行動してきた。
『ちゃい』の魔法が四皇女の公認をもって発動した現在、彼女は我々の知っている人物ではない。
なれば私はあの世界で何かをしているのだろう。為れば答えはひとつ。わからない。故に私は考えない。
つまりは気にするだけ無駄ということだ。まぁ、強いていうなれば、私はあの世界の続きをしているかもしれない。
それもまた一興かな」
若者と男は顔を見合わせ大きくため息をついた。そんな様子にお構いなく女性が返しとばかりに若者に問い返す。
「そういう貴殿は今何をやっているのだ」
「え…」
一瞬の週順の後、問われた若者は手をひらひら振りながらこたえた。
「無敵戦艦で国境突破の後、北極に飛ばされてせっかく帰ったと思ったら格闘大会あとで、
伝説のバナナ探している真っ最中」
「謎だな」
間髪いれずに突っ込んだ女性に男が大きくうなづいた。それを見て若者が小さく口をとがらず。
「ひっどぉい。そういえば何であなたがこんな所でマスター代理してるんです?店長はどぉしたんです」
カウンターの奥に立つ男が低い声で答える。
「店長は今、隠された珍酒を探して世界を歴訪している。その間の留守番を頼まれた」
胡散臭そうな目で見つめる若者の隣で二杯目を空けた女性が口を開く。
「おそらくはエプロンにつられたのだろう」
「…い、いや…そうではなくて…」
急にすっきりした顔で若者が言葉を重ねる。
「あぁ、MO-eちゃんのですか。もぉ、いい加減にしないと見た目で青少年保護条例に引っかかりますよ」
聞く耳を持とうとすらしない二人の前に男がウガウガと口ごもる。
落ち着きを取り戻した男がカウンターの向こうで静かにグラスを磨く。
「あの子はどうしているんでしょうね」
三杯目を空にした女性がまったく酔いを見せない口調で返答する。
「さて、わからないな。少なくとも我々が出会うことはないのではないかな。
あれで本質的にはたくましいからな。案外皇女殿下や九重殿の所のあたりにでも拾われているかもしれないな」
ほんのり赤みが差した顔で若者が返す。
「いいですねぇ。ボクとしては新井ちゆちゃんあたりとセットで『子連れ菊レンジャー』なんていうのもいいなぁとおもうんだけどな」
「イセ… フリル … セット …」
男のつぶやきに何かを思いついたのか女性がうなづいた。
「ふむ、セットか。為ればZeller殿の隣に猫さんスーツで餌いれ付というのはどうだろう?
可能であれば水上殿もセットにできれば素晴らしい」
ふと女性が隣を見ると若者がカウンターにつっぷし、男が落としてしまったグラスの割れたかけらを拾い集めていた。
其の二人にしれっとした様子の女性に男が返答する。
「萌えるが………外道だな…」
「あいかわらずですね………まじめそうに見せた腐れ婦女子っぷりが…」
「ほめ言葉と取らせてもらおう」
何時しかだらからともなく小さな笑いが聞こえしばらくのときがたった後でバーはまた静けさを取り戻した。
ひとしきり笑った若者が小さく息をつく。
「……ちょっと……さみしいですね。ボクたちがいなければ『呪』の設定も付きまとわない。
だからもうあの子に会うことはない。……偶然会ったとしてもあの子はボクたちのことを覚えていない…
…そして其の方が…」
男は何もいわない。女性が再び口を開いた。
「大人とは昔、子供であったモノだ」
二人が女性に注目する。
「モノは成熟とともに其の性質を安定する。だがそれと引き換えに不安定さが生み出す『可能性を淘汰』する。
子供は何時、大人になるのであろうか。私はそれは『境界を認識した時』だと考える。
ヒトは境界を越えようとすると同時に境界を作るものだ。そして何時しか自己のすべてに境界を敷き自己を完結する。
故に大人は子供に『無制限の幻想』を抱き尊び恐怖する。だからこそ素晴らしいのだ。
それは数少ない生きた『古の約款』でありヒトの生み出した純然たる文化だ。かの者は我々の境界の外に出た。
なればこそ私は思うのだ。『素晴らしい』と」
「…それが忘却と引き換えにしたものであってもか」
「死ねないものに明日はない」
若者が不意に席を立ち、二人にふんわりとした笑みを見せた。
「あなたらしいですね。久しぶりに会えて楽しかったですよ。じゃぁ、お元気で」
二人が軽く手を上げて答えたのを見て若者はそのままドアを開けでていった。カウンター越しに二人が残った。
「……で、今は何をしているんだ」
「可愛いパン屋さん」
女性の即答した言葉に男が動きを止め、再び沈黙が流れる。
「冗談だ。さて、今宵は実に楽しい時間をすごさせてもらった」
男が大きくうなずいた。
「では是にて失礼させてもらおう。難しいとは思うが機会があったらまた会おう」
そういうと女性は席を立ちそのまま店を出て行った。涼やかな音とともに男の呟きが響く。
「…………会計は?」
「それでは、司令、お願いします。」
「うむ。用意!」
司令が号令銃を天に構える。
ッタァーーーーーーーン!轟く一声!競技が開始された!
「負けませんよ!」「勝つのは私たち!」
「にゃぁー!」「にゅぅー!」
「行くぞ!」「はぁっ!」
それぞれに声をあげる猫耳たち。
「ま、せいぜい頑張りなさいな。あたくしは舵取りに専念させてもらいますわ…ウフフ。」
不敵な笑みを浮かべながら、いせは舵柄を捌くのであった。
みつば「さんびゃくげっと〜!ずさぁ〜!!」
ほっけを食べ散らかしながら叫ぶみつば。
いせ「あらあら、この仔ったら…仕方のない仔ですわねぇ…。」
302 :
異次元酒場@狩谷:02/07/01 23:30
>293,301
何やら妙な気配を感じた。好いものと悪いものが同時に在るような……例えるなら、
彼は猫好きだが、その猫が虎ほどのサイズだったら猛獣である。
そしてそれは、例えというか正鵠を射ていたりする。
振り返ると、顔見知りの猫耳水兵がいた。海軍将校の白い制服を着た女性の隣で、
足をぷらぷらさせながら、ほっけを齧っている。
狩谷「……奇遇だな」
向こうも気付いたようだった。椅子から飛び降りて、駆け寄って……転んだ。
みつば「さんびゃくげっと〜!ずさぁ〜!!」
照れ隠しか、謎の言葉を叫んでいる猫耳水兵を抱え起こす。
狩谷「おいおい、大丈夫か?」
いせ「あらあら、この仔ったら…仕方のない仔ですわねぇ…。」
近寄ってきた女性将校と向かい合う。お互いに軽い会釈をした。
いせ「この仔とお知り合い?」
狩谷「ええ、まあ同僚みたいなものです」
303 :
異次元酒場@狩谷:02/07/02 00:28
>302
みつば「こ〜こんにちはっ!」
狩谷「ああ、こんばんは」
どうやら二人の時間軸は少しずれているようだった。狩谷は猫耳水兵を床に下ろす。
猫耳は何故か少し恥ずかしそうに身体と尻尾を揺らしている。
みつば「……あした”れーす”するの〜」
いせ「○月×日の武山ですの。よろしければ応援に来てくださいな」
狩谷「悪いが、その日は任務があってね」
みつば「え〜」
狩谷「悪いな」(ナデナデ)
みつば「あうー……じゃあ、ちゅーしていい?」
猫耳水兵は自分の頭を撫でる狩谷の手を取って頬擦りする。
狩谷「……人前でそれはちょっと」
紫村「お前ら、いつの間にそんなカンケーに…」
武藤「……ついに手を出してしまったか」
ため息と共にボソリと呟かれた。海軍将校の目付きも厳しくなる。
狩谷「……誤解を解いておく必要があるようだな……していいぞ」
みつば「わーい」
猫耳水兵は勢い良く狩谷の手首に噛み付いた。動脈から血を「ちゅー」
紫村「そっちかよ!」
「ただいまー」
世話係のオネエサンが出迎えてくれる。……そろそろ”お姉さん”にしてもいいかな?
「ともえお姉ちゃんは?」
昨日までは青いサポータースタイルのまま、畳の上に突っ伏していたけれど。
「お帰り拓くん!」
今日は元気になったね。めげないのが、お姉ちゃんの良いところだよ。あっそうだ、
教授から招待されたボートレースの観戦に誘わなくちゃ。
「お姉ちゃん、今度──」
「今度の日曜日、学校の友達と世界シューキュー大会の決勝戦見に行くんだ!」
「…へえ、チケット取れたんだ」
教授には悪いけれど、同じ日なら当然シューキュに行くよ。確か、G国のGKは
元南朝のケンオウって人だったよね? 楽しみだなあ。
「ボクの地元の人達が送ってくれたんだ。……だけど、本当は拓くんの分もあったんだけど、
その、チケットの販売元がトラブル起こして、一枚しか……」
あれれ、また元気なくなっちゃった。
「僕はいいよ。シューキュー、あんまり好きじゃないから。同じ日に用事あるし」
「そう? ゴメンね」
僕は、お姉ちゃんが今みたいに楽しく幸せにしてるのが一番嬉しいよ。
部屋に戻って、机から久しぶりにあのノートを取り出した。表紙のタイトルは一生懸命消して、
新しく『しゅくだいノート』と書き直したのさ。
カキカキ。
『──バイロムって、悪の組織みたいな名前だね──』
………ショボン。
>295あたりに、武山に到着(苦笑
305 :
異次元酒場@紫村:02/07/02 01:55
>303
紫村「そっちかよ!」
女性海軍将校がクスクス笑っている。
「あ、どうも」
猫耳水兵に気をとられていて今まで気付かなかったが、かなりの美女だ。
しかも(視線を少し下へ)ゆったりめの将校服が歪むほどの見事な豊胸。
(……スゲエ、なんてチチだ)
大きいだけの胸なら何処にでもある。重要なのは質と量、それに形だ。全体のプロポーションを
崩してしまっては意味が無い。彼女のそれは、服越しの推測ではあるが完璧に思えた。
(故人曰く、巨乳+美乳=ボインちゃん……いや、まだだ。残る「質」も調べなければ完全ではない。
……ついに俺の”ごーるでんふぃんがー”の封印を解く時が来たのか?)
306 :
異次元酒場@紫村:02/07/02 01:57
天使(止めるんだ、初対面だぞ?)
悪魔(次また会えるとは限らない。ヤレ!)
天使(せっかく良いキャラになってきたのに、また堕ちるのか!)
悪魔(刹那に生きろ!)
天使(シスターを忘れるな!)
神様「……『もしかしてあのキャラでは』って閃いていたにもかからわず、
地球の引力に魅かれて『海坊主』などと言ってしまったNG君は逝ってヨシ!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
↓
紫村「……ああっ、いろいろ滑ったぁ!」(泣)
押し倒すような勢いで、海軍将校の豊かな胸を圧す。
(マシュマロっ! いやコレはプリンちゃん!?)
服越しで、いくらなんでも柔らか過ぎる。気付いた時には両手が胸に、肘まで沈んでいた。
そのまま身体をすり抜ける。
ガラガラ☆ガッシャーン!!
いせ「あら、ごめんあそばせ」
紫村「うう……どうせ、どうせ俺はイロモノさ……」(涙)
>>275 >>287 「どうも。」
ドアを開けると、白衣の少女(?)はビーカーを手にくるくると回っていた。
「さっき、『あの少年』を見かけたが、ここに来たのかい?」
「あははーっ、どおうぞー!」
くるくる回りながらソファーを示し、自分もふわっと飛び上がるように着地した。
「ええ、そうなのですよ?彼もこっちに戻ってきているのですよ?」
「ふうん…まあ、あの『悲運の姫君』の騎士としてはずいぶん立派になったものだね、かの島の連中より頼りになりそうだ。」
「あははーっ、そゆことは言わないほうがいいのですよーっ、それより、これみてくださいなーっ」
机にビーカーを置く。
(゚∀゚)ヤア!ヒサシブリー!ゲンキシテル?
「……おやおや、これは…君も業の深い身だねえ、その本体は望まないというのにその分身は
意思と関わりなく徘徊を続けるとは……」
「少年が拾ってきたそうですよーっ?どこかで封印が切れたようですねーっ」
「…『魔法』がかかったからな、そういうこともあるのだろうさ。特に問題はないのだろう?」
「ええ、もちのろんなのですよ?この六九式の霊的結界網は『こっち』でも有効なのですーっ」
笑顔でビーカーを弄ぶ。
「ならばよいだろう。こちらとしてはせいぜい楽しまさせてもらうだけだ。」
「あの子は調整中なのですよ?宇月ちゃんが調整してるから安心なのですーっ」
「教授は武山に?」
「そうなのです、そうなのですよ?水陸両用!ロマンじゃありませんかーっ?」
「理想形だな。陸海空全天候対応…基本だが、難しい。」
立ち上がり、手にしたタバコをくわえなおす。にやあり、と笑った。
「テストはこっちでやっておくよ。まあ、心配する事もないさ、問題ない、まったく問題ない。」
「最初に踊り出たのは2号艇、特別講習第88分隊です。さて対抗する優秀班、132の2班は
どうでるか…おっと!総員が構えた…あれは三段引きの体勢だ!」
「はい〜三段引きというのはですねぇ〜。タイミングよくかいを動かすことによってですね〜、
艇を急加速させるんですよ。いわばロケットスタートですな〜。」
更級由紀子「みんな、行くよ!三段引き用意!10枚!…せぇのぉ!」
「1・2・3!」「ハイ!」「1・2・3!」「ハイ!」
「1・2・3!」「ハイ!」「1・2・3!」「ハイ!」
「1・2・3!」「ハイ!」「1・2・3!」「ハイ!」
「1・2・3!」「ハイ!」「1・2・3!」「ハイ!」
「1・2・3!」「ハイ!」「1・2・3!」「ハイ!」
1号艇が急加速していく。そして、あっという間に2号艇を追い越していった。
むつは「馬鹿な!どういうことだ?お前たち!もっと力を入れろ!」
よつば「やってるよぉ〜!」
だがしかし、猫たちが足掻けば足掻くほどかいは水面を空しく叩くばかりであった。
わかば「どうして!こんなに力いっぱい漕いでいるのに?」
いつは「いや!お前たちの力はまだ弱い!もっとちゃんと漕げ!」
ふたば「ちゃんと漕いでいますよ?大体あなたたちCタイプこそ、
力任せに水飛沫を高く上げているだけで、全然艇の推進力になってないじゃないですか!」
みつば「けんかはいやぁ〜!みんなちゃんとこいでよぉ〜!」
いせ(やっぱり、こうなりましたわね…。さて、どこで手を出そうかしらウフフ。)
>308
「お姉さんガンバレーっ!」
水兵A「なあ…2号艇なんだけどよぉ…水しぶきは威勢良くたってるけどよ…遅くねえか?」
双眼鏡で覗く。
水兵B「そうだな…遅いっていうより、全然前に進んでないぞ(;^ ^ 」
僕は世話係のお姉さんの手に引かれて観客席に向かう。このお姉さんが車で送ってくれたんだけど、
スリル、スピード、サスペンス(?)を味わえたよ。……帰りは、お姉さんに一服盛って
僕が運転しようかな? お姉さん、今度は本当に人…轢いちゃうかも(汗
ひょっとして、僕のために無理してくれたのかな……。
それにしても人が多いよ。みんな海軍の人達みたいだけれど。
……同じ軍隊でも、水兵さんはそんなにキライじゃないんだよね。
水兵「こちらへどうぞ」
……なんだか来賓席みたいなところに案内された。ひょっとしてこのチケット、
教授への招待状だったんじゃあ………まあいいか。
あっ、ちょうどレースが始まったところみたいだよ。いちおう猫耳水兵達を応援しなくちゃね。
薄暗い研究室。
数人の白衣の姿が動いている。
青い光がガラスの向こうに見える。
こぽこぽと音を立てる水槽の中、女が浮かんでいた。
その姿は美しく、その頭に耳さえ立っていなければ誰もそれを人間と疑いはしないであろう。
「…ふう、これで大丈夫なはずだけどねえ……」
「おつかれさま、ウヅキちゃん。」
水槽に向かって溜息をつく女の顔は水槽の中の女の顔と瓜二つであった。
「しっかし、教授も悪趣味よね……あー、やだやだ。なによこの顔は…」
「でも可愛いわよ?ほら、あの胸のところのほくろなんてウヅキちゃんと同じ…」
「先輩!!」
どやしつけられた白衣の研究員はきゃらきゃらと笑いながら離れる。
「ったく!人がいないところでこんなの作ってくれちゃって…で、あたしがメンテするの?悪い冗談だわ。」
「『鈴』は準備できてるわ。いつでもどうぞ。」
「はあい……こんなことならMo-eの顔、教授のにしてやればよかった…」
ぶつぶつ言いながらマイクを手に取る。
「聞こえてる?今から『鈴』をつけるからおとなしくしててね。これが済んだらお食事よ。」
『はあい、お母様』
「おねがいだからお母様はやめて。あたしは未婚の母になるつもりはないの。」
吐き捨てるように言うとマイクを切った。
「最終調整に入ります。よろしく。」
313 :
異次元酒場@後藤:02/07/06 01:02
>305,306
(餌付けか…?)
猫耳水兵に血を吸わせている狩谷を横目で見ながら、冷酒を一口。水のような喉越しとは裏腹に、
アルコール度数はかなり高い。若い頃はそれに騙されて、きつい二日酔を味わったものだ。
苦笑する。一応、まだ二十代だ。性格的にはオッサンだとよく言われるが。
(……しかしアイツ、早死にしそうだな)
紫村が女性将校に不埒な真似をしようとして自爆する。
(……コイツもポックリ逝くタイプだな。いや、逆に長生きするかもしれん)
一瞬、将校の身体をすり抜けたようにも見えた。どうやら今日は少し飲みすぎたようだ。
(どのみち俺達は、一般人よりは死に近いところにいるんだがな……やれやれ)
後藤「そろそろ帰るぞ。マスター、お勘定」
マスターは無言で梅昆布茶を出した。外見と違い、気の利いた人物だ。新しいマスターは、
気の弱い客なら二度と来なくなりそうな、強面の大男だった。軍帽とエプロンのギャップが激しい。
勘定を精算し、狩谷と二人でノビている紫村を担ぎあげる。
狩谷「じゃあな、レースがんばれ」
みつば「カリヤ、バイバイ〜。ついでにゴトーとムラムラも」
紫村「……ムラムラって言うな」
後藤「しかも、ついでか」
猫たちの2号艇と由希子の1号艇との差はもはや確認する必要がないくらい広がっていた。
1号艇は灯台でのカーブに入る。
由希子「左、止め!右のみ、前へ!」
ザ、ザァ!左舷を軸にして艇が回転する。
由希子「全部一緒!前へ!」
更にリードを広げる1号艇。
由希子(普通なら、このくらい離していれば絶対に勝てる…。でも、相手は人外!容赦しないわ!)
ザブン!バシャッ!
相変わらず足並みの揃わない2号艇。
よつば「なんで〜!ぜんぜん進まないよぅ!」
むつは「どうなってるんだ…。あんな非力な女どもに、我々が遅れをとっているだと!」
いせ「疑問に思うんだったら、あの娘たちをよくご覧なさい♪仔猫ちゃんたち。あなたたちは
おばかちゃんじゃないでしょ?櫂用意。櫂組め。」
猫耳たちが櫂を置き、じぃっと1号艇を眺める。
いつは「…やはり非力ではないか…息も絶え絶え、やっと漕いでいる奴もいる…だが…。」
わかば「誰一人遅れることなく、また急ぐことなく櫂を動かし、前に進もうとしています。」
みつば「いきがぴったりあってるよ?まるでぜんぶおなじひとがこいでるみたい…。」
いせ「そうですわね♪あの中の誰か一人でも欠けたら、艇の速度は低下してしまいますのよ。
誰一人として欠けさせてはいけない、艦が全力を発揮するために。」
わかば「艦はひとりじゃ動かせない…」
いつは「誰一人欠けてはいけない、同じ艦の上の仲間、か。」
いせ「ウフフ。さ、まだあたくしは勝負を捨てていませんのよ。まだお休みなさるのかしら?」
みつば「いせいせ!あ、じゃなかった、きょうかん!ごうれいおねがいします!」
いせ「おやすいごようですわ♪ウフフ!元気出していきますわよ!櫂備え!」
「用意!前へ!」
「「「「「「そぉ〜れ!!」」」」」」
ザバァァァァン!!
こぽり、と泡が浮かんでいって消えた。
あたしの息。
薄い硝子一枚の向こうで『あたし』が不機嫌そうにモニターとあたしを眺めてる。
あーあ、たいくつだなあ。
想う。調整って言ってもなんのことだかよくわかんないし。
早く外に出たいなあ。
外に出たら…どうしようか。
裸じゃ恥ずかしいから服を買いに行こう。
髪も整えたいから美容院にも行こう。
おなかがすいたからご飯を食べよう。
ご飯は何がいいかなあ。
……うん、やっぱりお肉がいいな。
新鮮な、お肉がいい。
やわらかな肌を裂いて、溢れてくる真っ赤な血を啜って、桃色のお肉を噛みちぎって、白い骨を砕いて。
それはそれはきっと気持ちがいいんだ。
なによりも、なによりも。男と寝る事よりも女と寝る事よりも。きっと気持ちがいい。
あたしが満たされていくんだ。楽しくて、楽しくて、楽しくて。
ああ、早く外に出たいなあ……
そしたら、きっと楽しい事があるんだ。
部屋の照明はお月様みたいに蒼くて、あたしの目は血の色のように紅く見えた。
ねえ、『あたし』?あなたはどうなの?あたしは早くあなたに会いたいんだ。『あたし自身』にね。
ああ、おなかがすいたなあ………
>>294 ひなぎく隊員A「こいつ、結構素早いぞ!」
ひなぎく隊員B「飛び道具はだめだ、宮様に危害が及ぶ! 」
もなこ様が造り出したという式神が縦横無尽に飛び回る。
式神「ハァハァ、モナコタン、イイ!」
飛び回りながらも、その式神の視線は常に宮様に注がれている。
もなこ「はにゃ〜ん?!」
もなこ様は式神の動きにその場から動けないでいる。
ヤタガラス殿がいるとはいえ、このままにしてはおけない。
ひなぎく隊員A「こちらひなぎく、霊的警護セクション応答せよ。」
狩谷「で、この角度で撃てば体内に弾丸が残る。」
新井「は、はい。それなら、この場合関節の・・・。」
紫村「(おい、いいのか? こんなこと教えちまって・・・。)」
武藤「(いいんじゃないか? 知っておいて損は無い。)」
霊警隊員A「新人君、緊急事態だ。」
突然ドアを開けて入ってきたのは霊的警護セクションの先輩だった。
霊警隊員A「すこし遠くだが視えるか?」
新井「あ、はい。・・・・・・式神ですか?」
霊警隊員A「ああ、もなこ様がお呼び出しになったが、制御不能になっているようだ。」
新井「も、もなこ様が?!」
霊警隊員A「いくぞ。もなこ様の部屋の近くの中庭だ。」
狩谷「どうする?」
紫村「野次馬するに決まってる!」
「すでに1号艇は灯台を折り返しこちらに向かっておりますが…なんと2号艇は停止しております!
この圧倒的な差に勝負を捨てたのでしょうか!?」
「はい〜。やっぱりいきなり本日初めての短艇で勝負しようというのは、無理だったんでしょうね〜。」
「あ、2号艇、ようやく櫂を備えました。どうやら発進するようです!あっ!」
ザバァァァァン!!
「凄まじい水飛沫!先ほどまでの2号艇とは違う!何かがちがうぞお!!」
「漕ぐタイミングが合ってきてますな。はい〜。」
「猛ダッシュです!!2号艇が追撃を開始しました!!さあ!どうなるこのレース!」
「前へ!」
「「「「「「そ〜れっ!」」」」」」
(進んでいる!)(さっきまでとは…全然!)
「前へ!」
「「「「「「そ〜れっ!」」」」」」
(にゃ〜!すごい!)(はやいにゃ!)
「前へ!」
「「「「「「そ〜れっ!」」」」」」
(これが…団結というものか)(悪くはない!悪くはないぞ!!)
「仔猫ちゃんたち!水かきの角度!きちんと教えましたわよ!教えたとおりやってごらんなさい!
前へ!」
「「「「「「そぉ〜れっ!!」」」」」」
ザバァァァァン!
やっぱり来た!まるで水爆の茸雲のような水柱を巻き起こしながら、
2号艇がどんどん速度を上げてきます。
こうなったら…みんな、お願いします。
「みんな!!絶対勝つよ!三段引き用意!岸壁まで!…せぇ〜の!!」
「いっちにいさぁん!」「ハイ!」「いっちにいさぁん!」「ハイ!」「…!」「…!」
手の皮も剥け、お尻の皮も剥けています。頭がくらくらしています。でも!
由希子「私たちは、何分隊の、何班だぁ〜!」
艇員「「「「「「「「「「「「第132分隊の!2班でぇす!」」」」」」」」」」」」
由希子「そうだぁ〜!私たちは短艇優秀班!私たちの前を進む艇は!」
艇員「「「「「「「「「「「「存在しっなぁ〜い!!」」」」」」」」」」」」
由希子「そうだぁ〜!分かっているなら!突き進めぇ〜!!」
艇員「「「「「「「「「「「「おぉ〜!!」」」」」」」」」」」
「それ!」「いっちにぃさぁん!!」「…!」「…!」
勝つのは!私たちなのです!!
2つの艇が並ぶ。掛け声が渾然となる。
巻き起こる水飛沫。両者の櫂はぶつかるか、ぶつからないか。
ゴールへと直進していく。
ざ・ざ〜ん。
「勝者は…132分隊2班!」
最後には並んだものの、猫耳たちは結局由希子の艇を抜くことができなかった。
「お互いに、礼!」
ありがとうございました!
猫たちも132分隊に教えてもらいながら艇を揚収する。
「集団でなにかをするってどういうことか、少しはわかってもらえたかしら?ウフフ。」
にやりと微笑むいせ。大筋の目的は達成した。だが、
「しかし誤算でしたわね…逆転勝利は間違いないと踏んでいましたのに…罰ゲーム…。」
悩み始める。そして、2秒で開き直る。
「ま、しかたありませんわね♪猫ちゃんたち、それがすんだらこっちへいらっしゃいな♪」
132分隊の女の子(艇を降りたら女の子なのだ。一応)たちと歓談(?)していた
猫耳水兵を傍らに呼び寄せ、いせは短艇庫の裏に消えていく。
「ええええええええええ!そんなのいやだ〜!!」
「だまらっしゃいですわ!負け犬に吠える口もないのですわよ!」
「犬じゃありません!猫です!」
「むぅ!屁理屈こねない!さっさとやるんですの!」
「く、屈辱…。」
「くやしかったら、次勝てばいいじゃありませんの!」
わいわいがやがや。
……さあ!ごらんあそばせ!!
ばっ!草色の第3種軍服を脱ぎ捨てる。
たわわな胸、同じく豊満なヒップがまろびでる。
そして、申し訳程度、の黄色いビキニ。
いせ「うりうりうりうり〜♪もうどっからでも眺めるがいいですわ!!」
女豹のポ〜ズ!!クィッ、目線は上目づかいで!!
腕組みをして胸を強調!!使い古された感もあるが、非常に効果的、かつ適切である。
いせ「あたくしのぼでぃらいんの美しさを存分に堪能するがいいですわ!ウフフフフフフフフフ!(やけくそ)」
みつば「うぅう〜。はずかしぃよぉ〜。」
こっちは反対につるぺたすとんの3拍子。フリフリのピンクのワンピ。
裾を引っ張りながら、もじもじ、もじもじ。しっぽが、ぴくぴく、ぴくぴく。
よつば「にゃあぁぁ〜。」
わかば「なんで私がこんなことを…」
スタンダードに白いビキニ。腰にはオレンジのパレオ。
ビーチボールを持って。ちょこんと座ったそのトライアングルゾーンに。
屈めた体。自重で下がる胸。
ふたば「…次は絶対に、勝ちます…シクシク。」
いつは「……っ。ミセモンジャネエゾゴルァ」
整ったボディラインと紺色の競泳水着のミスマッチ。飾らない水着だからこそ
強調される胸、ヒップ。この機能的な水着において、唯一機能的でない、
この水着を選んだ者の趣味としかいいようがない、胸に縫い取られた名札。
むつは「はぁあああああああ…。アトデゼッタイブッコロシテヤル」
海兵団司令指示による罰ゲームは、水着撮影会であった。余談であるが、この日の売店のカメラの
売れ行きは過去最高を記録したという。また、厚木や館山、下総、果ては岩国、大村、那覇の写真班まで
ちゃっかり撮影にきていたということも追加しておこうか。
お姉さんの船が勝ちました!ハラハラしました。ギリギリでした。
「やったー!」
気が付くと、私はひなぎくの方と透君の手を取って飛び跳ねていました。
周りの方々から、少しひかれています。でも恥ずかしくなんてありません。
「やったー!!」
ミキ、お姉さんはやったわよ!あっ!いたたたた…。手の皮が剥けてる…。
うっ…やっぱりお尻も…剥けてる…。パンツが血でベトベト…。
この後は短艇後のお楽しみ、傷口の消毒が待ってます…あれはすごくしみます…。
冗談抜きで飛び跳ねます。絶対に妹には見られたくない姿です…。
ああ、でもミキったらあんなにはしゃいじゃって…お姉さんもうれしいわ…。
今日はこれから上陸できるらしいし、みんなで一緒にご飯でも食べに行きましょう?
姉妹で会うのは久しぶりだもの。お姉さんミキのお話色々聞きたいわ。
そう、そのボーイフレンドのこととか…ね。
327 :
菊水's@野次馬:02/07/08 19:15
>318
紫村「野次馬するに決まってる!」
三人は今にも走り出しそうな車の後部座席に乗り込む。
新井「ああっ!先輩方、来ちゃダメです」
霊警A「何だお前達は?」
狩谷「菊水甲指揮下の、チーム水曜です」
霊警A「……あの”猫耳兵士も喰わない”と噂の三人組か」
紫村「失敬な。俺達は『喰いたいランキング』のトップ3に入っているぞ」
「なんだそりゃ?」×3
紫村「専用端末見てみろ。新コンテンツ、猫耳兵士アンケートがあるだろ」
狩谷「……(操作中)……3位って……喜んでいいのか悪いのか」
後藤「まず、喜ぶな」
遠隔視ナビゲートにより、最高の効率で道路を進む車。あと数分で宮城に到着するだろう。
紫村「しかし、ちゆは遠隔視も使えるのか。もう少しで千里眼じゃないか」
後藤「あとは気絶癖をなんとかしないとな」
新井「言わないで下さいよ〜。これでも慣れてきたんですから。あっ、そこを右です」
紫村「霊視のコントロール不足だな。それとも眼球の方が特別製なのか?」
宮城へ到着。駆け出す五人。
霊警A「……『水曜』の協力には感謝するが──」
紫村「ああ、分は弁えている。あんた達の邪魔はしない」
狩谷「だが、いざとなったら宮様の盾になるくらいはするぞ」
後藤「とりあえず、基本どおり物陰にでも潜んでおくか」
>323,324
猫耳水兵、負けちゃったね。途中からすごく追い上げたけれど、残念だったね。
海兵団の写真班から、資料用としてディスクとフィルムを貰ったよ。
教授の代理って思われてるみたいだね。……何かに使えるかも。
せっかく海に来たんだから、日没くらいまでのんびりしていこう。海に沈む夕日は見れるかな?
少年、海はいいぞ〜。
薄暗い一室に拘束された人々が運び込まれてくる。
その中にはあの学校で生徒を銃撃したIGPKの2人もいた。
それぞれが顔を伏せ、互いの顔も見てはいない。ただ、それぞれが只者でない事だけは察していたようだったが。
全員が床に座らされるのを確認すると、正面の扉が開き2人が入ってくる。
「目隠しを取りなさい。」
甲の声が静かな部屋内に響く。
「ようこそ、諸君。」
皮肉っぽい笑みを浮かべた男がそこに立っていた。
「なっ……貴様は!……」
ざわつく被拘束者たち。それらを彼…代行は家畜の群れでも見るような蔑んだ目で一瞥した。
「…さて、早速だがここは帝都の地下で、その昔防疫給水部があった所であるという事を伝えておこう。
君達はそれぞれが有能な人物である事は理解しているつもりだ。そして、君達は何故我々に拘束されているかという事は
重ねて説明するまでもなく理解していただけると思う。同様に、君達同士に自己紹介などというものが不要である事も
認識しているので割愛する。」
つまりは有能であるが、毒でもある人物であるという事。そして、菊水に囚われるだけのことをしてきた者という事……
「本来であれば拘束などという手間をかけずに無力化されてしかるべき君達がなぜここにいるかという事について
説明をせねばならない。と、言ってもまあそれは単純な事なのだがね。」
男は唇の端を吊上げるようにして哂った。その表情には人に寒気をもよおさせるには充分であったろう。
さらに続ける。実に楽しそうにしている男と無表情に立っている女を彼らはただ見ているしかなかった。
「君達にはここで拘束を解かせてもらう。もっとも、ここの4方1kmは封鎖されているので厳密に言えば自由の身とは
言えないのだが、それでも牢獄よりはましだろう?」
「……俺達に何をしろって言うんだ?」
一人が不機嫌も顕に尋ねた。
「ふふ、察しがいい。ここで生き残ってくれればよい。君達の優秀な技能を惜しむのだよ、我々は。
それもたったの6時間だよ?もちろん生き残った者は自由の身だ。希望するものには菊水幹部の席を与えてもよい。
いい条件とは思わないかい?」
「クズが……偽善にもなってない……」
「そのとおりだな、まったく否定できん。ははは」
笑ってはいるが、目だけは極寒の冷たさを持って一同を凝視している。
「殺し合いでもしろというのか?あれで。」
一人が壁の隅にある棚を指す。そこには銃器や暗視スコープなどが置いてあった。爆薬はなさそうであったが。
「ちょっと違うな。君達が解放された後にね、一体の実験体をここに解放させてもらう。君達にはそれのテストに
協力してほしいのだよ。実験体を始末できればそれで試験は終了、君たちも解放だ。そのために武器だよ。遠慮なく使ってくれたまえ。」
「……ちっ、モルモットかよ……」
「ふふ、そう取ってもらっても一向に構わない。では、諸君らの健闘を期待させてもらうよ。では。」
言うと男は踵を返し、部屋を後にする。連行していた係の人間も後に続く。
「拘束具は10分後解除されます。その後の行動はご自由にどうぞ。『実験体』の解放は1時間後の予定です。
なお、脱走を計画される事は無意味である事を賢明なる諸兄には重ねて申し伝えておきます。では。」
甲が無表情に言い残すと、後は静寂だけが残された。
10分後時間どうりに拘束が外れると、彼らはそれぞれ武器を手に部屋を出て行った。
互いに言葉も交わさず、静かなままに。その表情はそれぞれであったが。
>326
ユキ姉さん、手は大丈夫ですか? えっ、お尻もなんですか?(真っ青)
……海兵団って、とても大変なんですね。
お姉さんとの食事、私も楽しみです。お勧めの店へ連れて行ってください。
ひなぎくの方がエスコートしてくださるそうです。はい、こちらは「ひなぎく」という
皇室警護の方です。彼は同級生の守屋 透くん。学校の生徒会長なんです。
……ボーイフレンド、ですか? 私は六年生ですから、英語は少しくらい判ります。
(ボーイ=男の子。フレンド=友達)
はい。二人は私のボーイフレンドです。……え?”ふたまた”って何ですか?
正確には、ひなぎくの方はアダルトな(=大人の)お友達です。
お姉さんは何故か突然転んでしまいました。ひなぎくの方が慌てて助け起こしています。
……あっ、ひょっとしてこれは”いい感じ”というのではないでしょうか?
ここは透くんにも協力をお願いして、あとで二人っきりにさせちゃいましょう。
〜電波〜
私は何故「エスコート」は知っているのでしょう……(笑)
(替え歌:原曲 シークレット カクレンジャー)
キクレンジャー
にんじゃ、にんじゃ?!
ライトアップのステージは
異次元行きのてんやわんやアドベンチャー
こっちとあっちのミステリー
つなげて見せてよ シークレットキクレンジャー
夕暮れ やっとあのこといいカンジ
そのとき シュワッと 風が切れ
ぶっとぶ シムラのあいだ すりぬけて
ヅコッとホールに消えたヤツがいる
★あ・れ・は
なんなんじゃ なんじゃ もんじゃ!
にんにんじゃ にんじゃ? (にんじゃ?!)
効くれんじゃ なんじゃ? もんじゃ!
爆笑戦隊 キクレンジャー
メトロラインのトンネルに
猫が踊って イカリヤのストレスジャー
帝都(まち)に散らばるストーリー
さがして見せてよ シークレットキクレンジャー
教えて ニンジャワライの奥の手を
変身(キグルミ) 物真似(わけみ)にお約束
あのこの ココロの在所(ありか)さぐるため
霊験(ききめ)があったら 子分になるからさ
☆だ・か・ら
なんなんじゃ なんじゃ もんじゃ
にんにんじゃ にんじゃ? (にんじゃ?!)
聞くれんじゃ なんじゃ? もんじゃ!
爆笑戦隊 キクレンジャー
★Repeat
☆Repeat
「しむら〜!うしろうしろ!!」
ゴイィィン
「だめだこりゃ」
336 :
菊水's@電波:02/07/09 21:26
>334,335
狩谷「不相応にも替え歌を頂けるとは……感謝」
紫村「と言うかオレ達、爆笑戦隊まっしぐらなのか?」
後藤「……何を今更」
「こちらポイントA。すべての準備を終了しました。」
「了解。時限式拘束具のタイマーを10分後にセット、速やかに退室してください。」
「了解しました。」
足早に去ってゆく白衣の研究員達。後には拘束具をつけられて立たされている女の姿がある。
「聞こえる?Zeller、テストは6時間だそうよ?」
「えー?そんなにいらないよー。1時間でじゅーぶーん。」
拘束されているのに彼女は何故か楽しそうであった。
「そうね、あたしも早く帰りたいからちゃっちゃと終わらせてほしいな。」
「はーい、ママ。」
「ママはやめて……」
「じゃ、マム?ママン?ムッター?オムニ?かかさま?」
「あたしを子持ちにするんじゃないわよ!!」
実験体とそのメンテ責任者とは思えないやり取りする二人を他の研究者達はあきれたように眺めていた。
否、もう一人。楽しそうな顔をしている男がソファーでタバコをくゆらせていた。
「あとさあー、この服なんとかなんなかったの?ダサくって着てられないんだけど。」
拘束されたまま黒のレオタードを示す。
「ぜーたくいうんじゃないわよ。どーせ汚すんだからそれで充分よ。」
「ふつーの猫達は可愛いの着てるのに?さべつー、さべつだー、えこひーきしてるー。」
「うるっさいわよ。そんなんだったらスク水着せるわよ!」
「ううっ、せめてぶるまあにして……」
漫才(?)をしている間に拘束具が音を立てて外れた。思い切り伸びをして、体を動かす『黒』。
「どう?調子は?」
「うーん、きゅーくつだったー。さ、おなかすいた!さっさといこ!」
Vサインをモニターに向ける。満面の笑顔だ。首につけられた鈴が光っている。
「はい、行ってらっしゃい。」
一言言うと、『黒』の目の前の扉が開かれ、彼女ははじかれるようにその奥の闇に向かって突っ込んでいった。
「拘束性術式五号まで解放。精神、肉体、頭脳、技術、能力ともに70%にて始動します。」
「楽しみにさせてもらうよ。」
「つまらないと思いますよ。」
宇月の顔は先ほどの『黒』の笑顔そのものであった。
ここは菊水本部の一角。他省庁、軍部、民間組織との調整を一手に引き受ける
菊水調整課である。で、私はそこの海軍係、田中彦一事務官(行(二))だ。
「おい田中!課長が呼んでたぞ!」
…今手がけているプロジェクト、猫耳水兵計画がなにげに忙しい。
「で、田中君。進捗状況を聞かせてくれ。防疫給水部の連中がうるさくてな。」
「はい課長。タイプA〜Cの猫耳水兵はある程度のばらつきはありますが、順調に海兵として育っています。
近日中に初等教育を終了し、次の段階へと移行する予定です。この間武山に行って連中のカッターレースを
見てきましたが、なかなか見事なものでしたよ。志摩少尉がうまくやってくれたようです。」
「そうか。それなら防疫給水部の奴らも喜ぶだろう。次の段階は、たしか艦船乗組、だったよな?」
「はい。TV「いせ」に臨時勤務させる予定です。勤務期間中に訓練が入ってます。
ま、それに合わせて選んだのですが。」
「ああ、「ひりゅう」の慣熟訓練だったか?けっこう大掛かりな訓練らしいな?」
「はい。TV「いせ」DD「たかなみ」DDG「ときつかぜ」そしてCV「ひりゅう」の4隻で
訓練を行う予定です。我が海軍の最新空母の初お目見えですから、C国、NK、SK国、R国も情報収集に
余念がないでしょう。きっとあの猫たちにとって楽しい航海になるのではないでしょうか。」
「…何も起こらなければいいがな。防疫の連中は何か起きて欲しそうにしてたがね…。」
「…そうですね。そうだ課長、この件で来週三◇長崎造船所に行ってきます。」
「儀装中のひりゅうの所か。防疫給水部の連中と一緒に行ってくるんだろ?」
「はい。あと海軍のメンバーと現地で合流する予定ですね。」
「ふう…。海軍までオカルトに手を出すんだから、世も末だな。」
「海軍さんも大変なんですよ。色々と。報告の方は以上ですが、まだ何かありますか?」
「いや。もうないよ。ご苦労さん。じゃあ報告書は俺の方から防疫に渡しておくから。」
「よろしくお願いします。それでは。」
あいつらの水着なかなか可愛かったな。現像終わってるだろうから帰りに写真取りにいってくるか。
あれぐらいの役得でもなきゃ、この仕事やってらんないよ。全く。防疫の連中と海軍の連中、
仲良くやってくれねえだろな…。ああ、胃が痛い。
>>294 >>318 (狩谷,紫村,武藤が物陰から中庭を覗く)
中庭で霊警隊員Aが式神?と退治する。
霊警隊員A「新井君、君はもなこ様を!」
新井「あ、はい。・・・もなこさま、こちらに」
もなこ「ぁぅぁぅ…ごめんなさいなのです…」
霊警隊員B「ここは私たちにお任せを」
霊警隊員A&B vs 式神?『暴れん坊天狗』
○霊警隊員A←ヤタの支援「マケンジャねぇぞゴルァ!」
霊警隊員Aの霊力が倍化した。
○霊警隊員A→式神?『暴れん坊天狗』「…オン・カカカビ・サンマ・エイ・ソワカ 」
地蔵菩薩の結界の発動:内向結界→対象の硬直:式神?「ハァハァ、ハァハァ、ハァハァ…」
○霊警隊員B→式神?『暴れん坊天狗』「…オン・マリシ・エイ・ソワカ 」
摩利支天の守護の発動:もなこ、新井の心理障壁が強化
○式神?『暴れん坊天狗』→式神?『暴れん坊天狗』「ハァハァ、ハァハァ、モェェェ」
召喚:条件反射自動発動:(゚∀゚)「ヤア!ヒサシブリー!ゲンキシテル?」
○融合:式神?『暴れん坊天狗』+(゚∀゚)→名称変更:改造萌人『テングーン』「ハァハァ、ハァハァ、ハァハァ」
霊警隊員A&B「!…な…」
○改造萌人『テングーン』放送禁止攻撃→霊警隊員A&B
改造萌人『テングーン』「ハァハァ、ハァハァ、ハァハァ……(ピーーーーーーーーーーー)」
霊警隊員A&B「ぐはぁ」
霊警隊員A&B……再起不能(リタイア)
ちゆちゃんぴんち?
340 :
菊水's@物陰:02/07/10 23:39
>339
紫村「式神ってのは大きく分けて2種類ある。呼び方は様々だが、紙などの形代(かたしろ)に呪力を注ぎ
まやかしの実体を与える『式紙兵』と、呪符で精霊や怪異を括(くく)って使役する『式鬼』だ。
あれは多分、式鬼のたぐいだな」
狩谷「さすがに詳しいな。で、どうやって止める?」
紫村「俺達には荷がかちすぎる相手だ。霊警に任せとこう」
後藤「……その霊警の連中、やられちまったぞ」
紫村「えっ、マジ?」(汗)
狩谷「しかもパワーアップしてるみたいだ」
人型となり、ハァハァ二割増し(当社比)で、ひなぎく隊員達を薙ぎ倒していく謎の式神。
狩谷「俺達が囮になって二人を逃がすか?」
後藤「むしろ新井を人身御供にしたほうが確実だ。新人とはいえ、霊警の端くれとしての責務だろう」
テングーン「ハァハァ、ハァハァ、ハァハァ」(じりじりと二人に接近)
新井「ひ〜ん!」(泣)
狩谷「…いや、さすがに可哀想だろそれ。嫁に行けなくなるぞ」
紫村「う〜ん……普通、式神ってのは善悪問わず術者に絶対服従なんだ。たとえばキョンシーみたいにな」
狩谷「ああ、あれも御札で制御するんだっけ」
後藤「……そういえば、さっきそこでコレを拾ったんだが」
思い出したように、ポケットから一枚の呪符を取り出しす後藤。一瞬の沈黙。激しくツッコミを入れたい
二人だったが、今はそんな状況ではない。紫村は手早く呪符を鑑定する。
紫村「……間違いない。あの式神の札だ。こいつを貼れば多分、止まる」
狩谷「よし、作戦は……(カクガクシカジカ)……だ。新人に手柄を立てさせてやろう」
341 :
菊水's@物陰より:02/07/11 00:23
狩谷は財布から小銭を取り出した。硝煙の匂いなど宮様に嗅がせたくはない。
「俺の攻撃が成功したらスタートだ」
「外すなよ」
「お前こそ」
硬貨を『左手』の指に挟み、式神?に狙いをつける。まだ命中精度が低いので、胴体を狙い、弾く。
キィン!
式神?の身体が”く”の字に曲がった。
「今だ!」
後藤と紫村は同時に飛び出した。後藤は霊警隊員Aを叩き起こしに向かう。
紫村はなけなしの霊力で呪符を新井に飛ばす。直接式神に貼り付けようとも思ったが、
彼の力では弾き返されてしまうかもしれない。高い霊力を持つ彼女なら有効に使えるはずだ。
呪符は狙いたがわず、名札のように新井の左胸に張り付いた。
「そいつを使って式神を制御しろ!」
指弾の援護射撃を受けながら、霊警隊員Bに活(ケリ)を入れる。
「起きろっ!それでも霊警か! 本当に再起不能なら、猫耳兵士に喰わせちまうぞゴルァ!!」
武山の港を一人ぶらぶらと散歩中。
猫耳水兵水着撮影会の“戦果”を現像していた業の深い人々は、
それぞれの暗室、DPEショップ、画像編集中のパソコンの前その他諸々で
皆一様に驚きの声を上げていた。
撮影に夢中になって気がつかなかったのだが……
猫耳水兵ではない、もう1人の女性が、モデルの中に混ざっていたのである。
二十歳前後の、白皙碧眼の白人女性。
なぜかきっちりと巻きつけた長いスカーフから、細く柔らかな金髪をこめかみにフワリとほつれさせて、
不思議そうな顔をして自分に向けられたカメラの砲列を見回している。
ポーズをとろうともせずに、オドオドと恥らう外人らしくない初々しさ……
まるで、まるっきり状況のわからないまま、撮影会に巻き込まれたかのようだ。
白人では有るものの、険の無い日本人好みの柔らかな顔立ち。背もそれほど高くない。
肌も、まるで十代前半のように染み一つ無く透き通り、健康的な血色を透かせてホンノリとピンク色。
しかしその体型はやはり日本人離れした見事なもので、
その道の達人の目測によると、B108・W72・H96……との事。
その後、イベント事務室にあれは誰だとの問い合わせが殺到したものの、
それに答えることのできるスタッフはいなかった……
「はあ……また失敗してしまいましたわ」
シスター・モエリアは、水着の上に羽織ったパーカーの前をかき合わせながら、
とぼとぼと武山の港を歩いていた。
どこで連絡が行き違ったのだろう? それとも、自分の誤解だったのだろうか?
「武山でイベント」「水着着用の事」「もなこ様もご臨席される」
等々、耳にし目にした話から、
「もなこ様がいらっしゃるなら私もお付き添いしなければ」と武山にきたのだが、
もなこ様の姿は無く……
気がつけば、なぜか水着撮影会が始まっており、自分もモデルにされていた。
「何が起こってもおかしくないですわね。本当に不思議な国ですわ……」
>>341 「起きろっ!それでも霊警か! 本当に再起不能なら、猫耳兵士に喰わせちまうぞゴルァ!!」
「ぐ……きもちわるい…」
後藤にけりを入れられた霊警隊員Bがうめきを上げる。
「きもちわるいじゃない。霊警だろうが、お前たちは!」
ふらつく頭を振りながら霊警隊員Bが青い顔を後藤に向けよろめく。
「ぉぃ!」
後藤に支えられながら霊警隊員Bが苦々しくつぶやく。
「…すまん……先程の……で………ぐはっ………これ……を………」
霊警隊員Bが後藤に巻物を手渡した。
「これは?」
「……ナウマク・サマンダ・ボダナン………アビラウンケン…シベイテイ・シベイテイ・ハンダラ・バシニ・ソワカ!」
巻物が淡く光る。
「……白衣………観音経だ………至近距離で巻きつけて………退去のために…結界を再度、清別…………」
後藤があわてて霊警隊員Bの体をゆする。その後藤の肩を霊警隊員Bが強く掴んだ。
「まて!俺は素人だぞ!お前らの仕事だろうが、これは!」
「…いいか…奴が放送禁止用語時に絶対目を見るな……拳………スィート……使役は…別に…武山の69式様に………」
霊警隊員Bが再びぐったりと地に崩れた。
式神の身体が“く”の字に曲がるのとほぼ同時に、呪符が飛んで私の胸に張り付いた。
「そいつを使って式神を制御しろ!」
志村先輩の声。
「そ、そんな大役・・・・、」
そう言いかけたが、目の前の状況が視界に入った。
倒れていく霊警の先輩、
式神に立ち向かう菊水'sの先輩、
傍らのもなこ様。
・・・・・私だって、菊水の一員。
手はまだちょっとだけ震えている。
でも、動けないわけじゃない。
「もなこ様、すぐに終わりますから。」
それは、もなこ様を安心させるための言葉というだけではなく、
自分への約束でもある。
「・・・参る!!」
テングーンの体が“く"の字に曲がったが、式神に物理的な攻撃はあまり効かないことが多い。やはりダメージはほとんど無い。体勢を立て直すところへ、ちゆは走りこんだ。
(習ったばかりだけど、これでいいはず!)
掌底に霊力を込めて、下腹部に一撃。
再び、“く"の字に曲がった。今度は膝を突き、手で腹を押さえている。
「今だ!」
呪符をテングーンの頭に貼り付けた。とたんに動かなくなるテングーン。
「止まった・・・・?」
なにかがおかしい。単なる勘ではあるが、まだ終わっていないという予感がした。
集中して視てみるとやはり様子がおかしかった。
「こ、この呪符、暴れん坊天狗用で、テングーン用じゃない!」
はらりと落ちた呪符はちゆの足元へ落ちた。
テングーン「ハァハァ、ハァハァ……」
(・・・・とにかく、もなこ様を!)
再びもなこ様のもとへ駆け寄ると、ちゆは“結界”を張った。
これも、習ったばかりだ。どれくらい持つかわからない。
と、突然、
ヤタ「融合ヲ解除スレバイインダゴラァ!」
「ゆ、融合を解除?!」
潜入ルポライター野間義文の場合。
壁を背に、一歩づつ、慎重に歩く。
手にはカメラではなくマシンガン。重い。アフガンで持った事はあるが、自分が使う事になると思うとひとしおだ。
しかし、まいった。この不肖野間が度重なる死地から生還してきたとはいえ、これはまずい。
まず、逃げ場がない。そして猟犬はおそらく猫耳の新作だろう。銃なぞ持たされても戦って勝てるわけがない。
『菊水潜入!秘密組織の裏を激写!』なんていう編集長の言葉にたぶらかされた自分を悔やむ。
ばれずに潜入出来ていると思い込んでいた自分の慢心にも腹が立つ。おかげで俺は今こうして程なくやってくるだろう『死』から
逃げ続けているというわけだ。まったく、おめでたい。
ここは防疫給水部の地下だという。とすれば、おそらくはあの言い伝えは本当であったという事になるのか。
壁は古く、補修もされていないのでぼろ。蛍光灯も申し訳程度だ。部屋を2、3見てみたがどうにも役に立ちそうなものはない。
地下のせいだろうか、空気が重い。湿気はそれほど感じないが、さっきから寒気がする。
「くそ……」
悪態をつく。が、状況が変わるわけはない。銃が重い。空気が重い。カツーンとどこかで音がした。
物音のしない地下通路は怖い。緊張感に押しつぶされそうになりながらも足を進める。どこか、隠れる場所を探さないといけない。
自分の呼吸が荒くなってきている。かすかな物音にも敏感になっているという事。非常に、まずい。こんな調子では6時間なんて持たない。
「……それ以前にそんなに長く生きていられるのか?」
自問して思わず苦笑した。なんだ、俺はもうあきらめてるじゃないか。もう2度とお日様は拝めないのだ、と。
でも死ぬのはごめんだ。死ぬのはイヤだ。戦場の空気は好きだが、自分が主役になるのはごめん被る。
死にたくない、でも逃げられない。いつかはやってくる。6時間以内に。俺は殺される?いやだ、いやだ、いやだ!
空気が重い。恐怖心に足がすくむ。いつ、どこから、どんなかたちで、どんなやつが、この、おれに、死を死を死を死を死をしをしをシヲシヲシヲ
あああああ、与えにににににににくるって、来るって、繰るって、狂って、クルッテ、いうんだだだだだだだだだだ……
「みつけた。」
死神の声は唐突に、背後から、それこそ何の前触れもなく現れた……
>>348 「あ………」
その声は若い、女の声だった。透き通るような声が静かな通路に染み渡る。
自分の背中が汗でびっしょりになって、凍りついたように冷たくなっている事に気付く。
動けない。一歩も動けない。いや、動きたくても動けない。
何をされたわけでもなく、ただ声をかけられただけ。しかも、明るく。しかしそれだけで自分の体はもう言う事をきいてはくれなかった。
全身が硬直し、氷点下の汗が流れる。手にした銃の重ささえ感じる事は出来なかった。
間違いなく、背後にいる。振り向いたところに、『死』が、存在している。逃れられぬ、『死』が。
「……………」
喉が干からびていく。息をする事さえままならない。まばたきもしていない。ただ、細かく、自分の意思とは無関係な震えがある。
足音がしない。しかし、近づいてくる。ゆっくりと、獲物を、いたぶるように眺めている。ゆっくりと、死がやって、来る。
この俺が…死ぬ!?
逃げろ、振り返りざまにぶっ放すんだ!奴はまだ俺の銃が見えていない!
そんな思考が一瞬、頭を走った。死にたくない。ならば、殺せ。殺せ、殺せ。殺せば、殺せる、殺せ!!
死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない!!!!!!
困難な息を吸い、手にした銃を確認する。そして、振り向きざまに撃つ!撃つ!撃つっ!!
「うわあああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
バン!!
長い、静寂が破られる音が地下に鳴り響いた。
短艇競技も終わり、既に日は傾き始めた。競技中の喧騒が嘘のように静まり返っている。
海は穏やかで、潮の香りが心地よい。岸壁に腰掛け、夕日を眺めている少年。
「あら、どうしたんですの?一般開放はおしまいですのよ?」
「もうちょっとだけ、こうしていたいのさ…。」
「ま、キザっ子ですのね…。隣りよろしいかしら?」
ぼんやりと、二人で水平線の向こうを眺める。漁船が港へ戻っていく。
「さっきは残念だったね、お姉さん。」
「あら、ご覧になってましたの?もうちょっとイケると思ってましたのよ。」
ざざ〜ん。波の音。
「…あまり会話が弾みませんわね…フフ。」
「初対面だもの、しょうがないよ。」
女が胸ポケット(第三種に着替えた)から紙を取り出す。ペンでサラサラとサインして、
シャチハタをつく。
「時間外の面会証ですのよ。これがあれば正門から出るときに文句も言われませんわ。
日が落ちるまでゆっくりしていくといいですわ♪」
「ん…ありがとう。僕はもう少しここにいるよ、お姉さん。」
「ええ、ごゆっくり、ですわ。あたくしは志摩いせ少尉ですの。あなたのお名前もお聞かせ願えるかしら?」
「今は言えない…といいたいところだけど、言わないのも失礼だね。僕は水上拓だよ。」
「こんなところで会ったのも何かの縁ですわね。またいつかお逢いしましょう、水上さん。」
「志摩少尉も、お元気で。」
「きょうか〜ん!おっすっし!おっすっし!はやくいこうよ〜!!」
「よつば…一応教官と学生ですのよ…もう少し言葉づかいをなんとかしなさい…ですわ。」
いせは立ち上がり、隊舎の方へと姿を消した。日が落ちるまでは、まだ少し時間がある。
>>349 俺は振り向きざまに銃をぶっ放した…はずだった。
おかしい。なんで、俺の両手はないんだろうか?両肘の先、白い骨が覗いている。血が、びゅくびゅくと、溢れて…いる。
壁を見る。血の跡。叩きつけられた肉塊が2つ。金属片。銃、だった物と、俺の両腕だった…物?
さっきの音は…銃が壁に叩きつけられて壊れた音……
目に前にいるのは…女。黒いレオタード。なかなかいかしたプロポーション。セミロングの黒髪。首には金の鈴、さっきからちりんと云いもしない、鈴と、
頭に立っている黒い耳……色黒な肌、白い歯(牙?)瞳も黒い。笑っていると結構かわいい……20歳くらい…か?
両手は血が点々として…爪が伸びて、蛍光灯の光が怪しく…血が、血が、そういえば俺の両手は?
「うがああああっーーーーー!!ーーーーーあああーーー!!!!」
忘れていたように痛みが来た。思わず叫ぶ、のたうつ。ああ、これで俺は一生カメラが持てない。何故かそんな事を思った。
痛みにのた打ち回る俺の足を取ると、そいつはまるでおもちゃのバットでも振るかのように俺を振り回した。
壁に叩きつけられ、右ひざから下が猛烈な熱さに襲われる。背中を強打したせいで、息が止まり、苦しい、暑い、痛い。痛い。痛い。
「うーん…イマイチ。」
女の声がして、思わず見上げる。『そいつ』は「俺の右足を持って、膝から流れ出している血を飲んでいた」
女の顔に血がしたたり、顔を濡らす。それを自分の舌で舐めると、俺の足をゴミのように捨てた。
呆然と眺めるしかなかった。痛くて、痛くてどうしようもないのに、なぜかその姿が官能的に思えた。血の気が失せてゆく自分の体。
どうかしてしまったらしい。俺は殺されようとしているのに興奮している?こいつに陵辱されたがっている?食われたがって…いる?
首をつかまれ、持ち上げられる。とんでもない力だ。息はさっきから出来ないので、さほど苦しくない。が、骨のほうが耐え切れていない。きしむ音がする。
ぼたぼたと、血が流れ落ちる。もう、抵抗すら出来ない。女は笑顔のまま、口を開く。白い、血に染まった牙が見えた。喉に、歯が、突き立て、られ、る。
「が…は……」
ぶつり、と切れる音がした。何か、決定的な何かが切れる音。感覚のすべてが消失してゆく。壁が、血に染まって…行く?………
ああ、これが……死…って…や…………
ブキ…ミチ…ミチ………ゴキャ。
「ぐ・・・あ・・・!!」
肉が千切れ、骨が砕かれる音が鈍く響く。目の前で容赦なく展開される悪夢。俺は…何故此処に居るんだ?
目が離せない。暗闇にギラギラ光る目が、次の獲物を物色しているのが分かる。
「おおおぁぁぁああぁぁあああ!!」
ダダダダダダダ!!!!!!!!!
張り詰めた空気に耐えられなくなった男が一人、ろくに照準も定まらないままに手にした銃を乱射する。
そして…気がつくとそこにはもう、捕食者の姿は無かった。
「あは、は、はははははハハハハハハハハ!!!」
ズシャ・・・ズシャ・・・ズシャ。。。
閉鎖された地下に響く笑い声、そして肉を裂く音。暗視スコープの隅に移っていた人影から、一つ、また一つと
分断され飛び散ってゆく塊。まるで一人でダンスを踊っているかのように、滑稽に崩れていく影。
ほんの数秒、風船から空気が抜けるような音が微かに聞こえた。あれは…?破れた気管から…
ゴト……。
そして、沈黙。動けずにいる俺をあざ笑うかのように、あちこちから水滴の落ちる音だけが聞こえる。
「…ハァ………ハァハァハァ……ゥグガッ…!!!」
前方から強い衝撃。頬に食い込む爪から、鋭い痛みと共に、舐めるように首筋に落ちて来る生暖かい液体…。
「…グ…ムグッ!!…ンーーーー!!!」
目の前には顔半分を黒く染め、牙を剥いて邪な笑みを浮かべた女。暗視スコープを通した色の乏しい世界で
俺の瞳だけが、最早脳に届く事のない情報を、偽り無く絶望的な現実を映していた。
ねえ、聞いてる?
白い壁って好きなんだ。
真っ赤にね、こうやって塗ってあげるのが楽しいから。
体が火照って暑いなあ。運動するとやっぱり汗はかくよ。うん。
ごくごく。ああ、おいしい。でもちょっとニコチン臭いのがいやだなぁ…
やっぱり血はかーわいい女の子の血じゃないと。でもガマンガマン。せっかくのお食事なんだし。
むしゃむしゃ。むしゃむしゃ。ごり、ごき、ぼきぼき。
固いなあ……どうして簡単に死んじゃうくせに、肉が固いのかしら。筋張ってるし…脂身少ないし…
むー、聞いてないし。
あー、もういいよ。次探すから。
次はもうちょっとおいしいかもしれないし。
とにかく喉が乾いたのはなんとかなったから後はおいしいものをゆっくりと楽しみたいな。
でも、女の子はいなさそうだなぁ……ママったら自分だけおいしい思いして…
ここから出られたら絶対ママの所に行くんだから。それまでは、ね。
しっかし、筋張ってる肉ばっかだけど、遊んでくれるってのは悪くないよね。
どきどきするし。どきどきするのって、楽しいし。すぐ死んじゃうのがつまんないけど。
あー、いた。今度はもうちょっと楽しめるかな?ねえ!遊ぼうよ!
354 :
菊水's@紫村:02/07/12 02:23
>347
新井ちゆが決死の一撃を決め、見事テングーンに呪符を貼り付けた。
紫村「やったか!?」
しかし動きが止まったのは一瞬。呪符は剥がれ落ち、ちゆは慌てて後退する。
そしてテングーンの反撃。その両目が妖しく輝く。霊警達を一撃で倒した”あれ”をやるつもりだ。
ちゆの張る結界(LV1)では恐らく凌ぎきれない。紫村は咄嗟に放送禁止攻撃の射線上に立ちふさがる。
一か八かの賭けだった。
テングーン「ハァハァ、ハァハァ、ハァハァ……(ピーーーーーーーーーーー!)」
紫村「あぼーん!」
なんの変哲もない奇声に、攻撃そのものが”削除”される。
ちゆ「す、すごい!」
紫村「ふっ”世界”のルールを知っていれば容易い事だ。人間の最強の武器は英知」
眼鏡も無いのに、指でフレームを押し上げる真似をする紫村。少し得意げだった。
紫村「……放送禁止攻撃は言霊(ことだま)だ。ならばより強力な言霊で打ち消せばいい。
放送禁止用語に”あぼーん”コレ最強。しかしこれを使うと次から怖い人にマークされる
という危険を伴う諸刃の剣。素人にはおすすめできない。まあ、ちゆは──」
ちゆ「先輩うしろうしろ!」
もなこ「なのです〜!」
ゴン☆!
355 :
菊水's@後藤:02/07/12 02:28
>345
最後の霊力を込めた巻物を後藤に託し、再び気を失う霊警B。
「……お前は漢(オトコ)だ。あとは任せろ」
後藤は気配を忍ばせながらテングーンに接近しつつ、注意深く仕掛けるタイミングを計る。
ちゆが呪符で動きを止める。──まだ遠い。
紫村がテングーンの攻撃を無効化する。──まだ早い。
テングーンが何故か敵に背を向けた紫村を殴りつける。──今だ!
戒めを解き放つ。白く発光し、まるで生き物のようにテングーンを締め上げる巻物。
巻物の一端を掴んだまま、後藤は片手で専用端末を操作し、助言どおり武山の菊水へ連絡する。
「こちらチーム水曜。現在宮城にてレベルC発生。そちらに六九式@黒二重羽織&黒手甲殿は居られるか?
…………六九式@白衣&壜底眼鏡殿の代理?……それでいい、代われ」
『──はい、かわったよ?』
端末から聞こえてきたのは、どことなく聞き覚えのある子供の声だった。疑問を感じないでもないが、
巻物の輝きが徐々に薄れてゆく今、悠長な事は言ってられない。簡潔に事情を説明する。
『ああ、それなら簡単さ。その変な生き物を取り除けばいいんだ。多分一匹目が、そのシキガミさんに
すでに取り憑いていたんだよ。二匹目を呼んで合体、変形したんだろうね』
「そうか、礼を言う」
取り除く手はある。文字通り”手”だ。問題は何処にいるかだが、偶然にも”眼”も揃っている。
「新井、霊視だ! コイツには異生物が混ざっているはずだ。位置の特定が出来るか?」
後藤「新井、霊視だ! コイツには異生物が混ざっているはずだ。位置の特定が出来るか?」
ちゆ「は、はいっ!」
眼に霊力を集中させる。
ちゆ「?! 視えない・・・ああっ! 白衣観音経が妙な干渉を起こしている・・・。」
パニックになりかけたが、気を取り直して冷静に考えようとした、その時、
ヤタ「ゴニョゴニョゴニョ・・・・ダゴラァ」
ちゆ「え? 言霊ですか?」
ヤタ「イイカラサッサト言エゴラァ!」
ちゆ「は、はいっ!」
ヤタ「威勢良クナ」
一歩前へ出ると大きく息を吸った。
ちゆ「俺のヨーグルトをなめろ!!!」
(゚∀゚)「ガッチリガーター!!!」
腹に浮かび上がる(゚∀゚)の顔。
ちゆ「せ、先輩!! お腹、お腹ですーーーー!!」
さっきのは、なんだったんだろう?
空気が澱んでいる。息苦しくて暑い。壁にもたれてぜいぜいと息を荒げている。
蛍光灯の鈍い光に照らされた地下道。白い壁は赤いペンキで落書きだらけ。廊下にはゴミが散乱している。
塵だらけ。ひどい臭い。空気が死んでいる。ゴミが散らばっている。ペンキの臭い。赤い、ゴミ。
ほんの1分前。ここを黒い風が通り抜けた。声もなく、嬲ることもなく、ただ正確に、我々を通り抜けていった。それだけ。
暑い。暑い。寒い。暑いのに寒い。腕が、足が、腹が、頭が、焼けるように熱くて、寒い。
こうして座っているだけで力が抜け落ちて行くようだ。とても、眠い。目がかすむ。床が濡れていて気持ちが悪い。
寒い。寒い。寒い。熱い。視界が赤くて、気持ちが悪い。なんでこんなにも、見えているものすべてが赤いのだろう。
毒々しいまでに、粘りつくような、赤、赤、赤。気持ちが悪くて吐きそうなのに吐けない。体がいう事を聞かない。
それは、楽しむ事さえしなかった。淡々とそれが義務であるかのようにそいつの『解体』は目の前で行われた。
どうしてこんなにも体が重い。指一本動かせない。ひどい臭い。ゴミの臭いが耐えられない。赤い、ゴミ。
白いものが覗く赤いゴミ。さっきまでは動いていた、赤いものをぶくぶくと沸き溢れさせている人の塊。肉のゴミ。
流れる。流れる。染み込む。瞳は緋を映し。吊り上る。突き上がる。目を剥いて。行進する。紅い、炎の波。
気付く。世界が紅に染まったのではない。自分が緋に染められているということに。
静か。静謐という言葉ではなく。ここに生きているものは存在しないという静寂。自分の呼吸すらもう聞こえてはいない。
ゆっくりと、世界が黒と赤に飲まれて。死が、空間を満たしてゆく。無様に。抵抗し続けてきた自分が。抵抗する間も無く。
抵抗し得ない死に飲まれてゆく。肉の中から吹き上がる毒。毒の中から迸る闇。闇の中に落ちて堕ちてオチテ……
いせ「ひと月って早いものですわね〜♪ちょっと前までしょぼしょぼだったあなたたちも、今は結構水兵の
おかおになってますわよ♪」
むつは「褒めているのか?それは?」
いせ「さ、最後の修業式、ばしっとキメてきなさいな♪」
夏服の白いセーラーが眩しい猫耳水兵たち。帽子のペンネントは「横須賀海兵団」から「練習艦いせ」に。
わかば「私たち、特別講習第88分隊は本日横須賀海兵団を修業し、練習艦いせに乗組みます。教官方には
時には厳しく、情熱のある御指導を頂き、真にありがとうございました。敬礼!」
バッ!6体の猫耳の一糸乱れぬ敬礼に、司令はじめ職員たちがほぅ…と溜息をつく。
「特別講習第88分隊の学生が修業する。総員、見送りの位置に整列。」
よつば「すごい、ぐんがくたいだ〜!」
ふたば「行進、気張っていきましょう!」
タクトが上がる。横須賀軍楽隊の演奏による海軍儀礼曲「軍艦」が始まる。
軍楽隊の先導を受け、行進を開始する猫耳たち。
司令、副長、教育部長、教官、職員に敬礼。
司令「引き受けた時はどうなるかと心配したが、とりこし苦労であったようだ…。」
わかば「分隊、止まれ!」送りのバスの前で停止する。軍楽隊の演奏が「蛍の光」に変わる。
「帽振れ〜!」
帽子を振り、海兵団に別れを告げる。たったひと月ではあったが、大隊とは趣の異なる日の光と潮の香りの
中での訓練は猫耳たちの印象に残るものであったに違いない。
「帽元へ!」
わかば「敬礼!回れ、右!」
バスに乗り込む。そして、バスが出発する。
みつば「ねえ…みおくりのとき、いせいせいなくなかった?」
いつは「最後まで憎たらしい奴だ…自分の学生だろうに。」
ふたば「ちょっと、冷たいですよね。」
よつば「くんれんきびしかったし〜いぢわるなんだよ〜あいつ〜。」
バスは一路横須賀港へ。
「さぁてぇ、あたくしも行きますか。う〜ん!お艦に帰るのはとっても久しぶりですわね♪」
草色の第三種軍服が、するりと白いドレスに変わる。
「実体化、おふ!」
359 :
菊水's@狩谷:02/07/13 16:58
>341
(やっぱり経費で落ちないんだろうな……あとで回収しよう)
小銭を全額(\830)撃ち尽した狩谷は、せこい事を考えながら
より有利な位置を得るために物陰から物陰へと移動してゆく。
式神に物理攻撃が効くか心配だったが、怪人化し実体を持った為か衝撃で動きを牽制する事は出来た。
しかしダメージ自体は微少のようだった。『左手』が物理的な力以外に指弾に特殊な効果を
与えてくれる事を少しは期待していたのだが、やはり間接攻撃では無理のようだ。
だからといって直接攻撃が効く確証も無いが、何故か確信はあった。
(ここまでは作戦通りだ)
ただ彼の『左手』がオーバーヒート気味になっていた。赤く変色し、熱で陽炎が発生している。
痛みこそ少ないが、心臓の鼓動が重い。長時間使うのは不可能のようだ。
今はまだテングーンと戦う同僚達の加勢をする事は難しい。回復を待ちつつ、万一に備えて
もなこ様の傍らの茂みに隠れる。
(まさか、これほど宮様の間近にこれるとは……)
もなこ様は魔法のステッキを握り締め、心配そうに戦いを見守っている。
(猫耳、撫でたいな。いや、尻尾も捨てがたい。きゅっと握って「ふにゃあ?」とか言われたら……)
疲労で少し妄想が入ってしまった。しかし抱いて逃げなければならない可能性は高い。
(……くっ、トキメクな俺の心。影よりお支えすると誓っただろ!)
息の荒い理由は疲労なのだが、物陰から御姿を覗きながらハァハァしている姿はかなりヤバ気だったりする。
360 :
菊水's@狩谷:02/07/13 17:00
>356,359
ちゆ「せ、先輩!! お腹、お腹ですーーーー!!」
後藤「聞こえたな狩谷! お前の『手』でそいつを式神から引き剥がせ!!」
反射的に茂みから飛び出した。背後からの物音に、ちゆが驚いてもなこ様を庇う。
うまく視界を塞ぐ形になった。異形化した手を見られたくはない。
一直線にテングーンに走りより、鉤爪を振り上げる。が、怪人の腹部の(゚∀゚)が引っ込んでしまう。
(ならばっ!)
かつて遊撃猫耳Aが一度だけ見せた、爪を伸ばすイメージを思い浮かべる。指先に激痛が走った。
斬ッ!!
白衣観音経ごと、テングーンの胴体ほとんど全てを薙ぎ払う。振り抜いた大爪には、神経のようなものを
伸ばした(゚∀゚)が二匹ひと塊になって絡み付いていた。
同時にテングーンの姿がぼやけ、本来の姿に戻る。式神にはもはや怪しい様子は伺えない。
361 :
菊水's@退場:02/07/13 17:03
狩谷「やれやれ」
その場に座り込む狩谷。隣でノビている紫村の頬を軽く叩く。
狩谷「おい、起きろ」
紫村「……ムフフ。シスター、ソンナミダラナ……アヒャ」
狩谷「ダメだこりゃ」
二人で紫村を担ぎ上げ、もなこ様に一礼。
狩谷「新人…いや新井ちゆ殿。後は頼んだ」
後藤「これは君の手柄だ。かわりに俺達の事は内緒にな。とくに代行殿にバレると色々不味い」
紫村「……アヒャ」
(゚∀゚∀゚)モナコタン、バイバーイ
そそくさと退場する三人の背後で小さな足音。
もなこ「ありがとうなのです」
三人には十分すぎるご褒美だった。
わ、私の手柄って、そんな、私なんにもしてないです・・・。
ヤタガラスさんや霊警の先輩の援護とか、第一とどめをさしたの狩谷先輩だし、
あ、行っちゃった・・・。
もなこ「ありがとうなのです」
もなこ「でも、もなこのせいでみんながけがをしてしまったのです。ぐす・・・」
もなこ様、泣かないでください〜。
ちゆ「も、もなこ様、そんなふうに考えないでください。もなこ様は誰かを傷つけようとし
たわけじゃないんですから。」
もなこ「で、でも・・・。ひっく・・・」
ちゆ「そ、そうだ! 後で御見舞いすればいいんですよ!」
もなこ「おみまい、ですか?」
ちゆ「そうですよ! みんな、喜びますよ!」
もなこ「・・・もなこ、おみまいにいくのです!」
怪我した隊員「(よくやったぁ! 新人!! もなこ様の御見舞いハァハァ・・・。)」
もなこ「うしろ、うしろのひとのところにもいくのです!」
精神疾患者 琢磨勤の場合
琢磨は高揚していた。興奮が収まらず、全身の血が沸き立ったままの状態であった。
彼は、はっきりこの状況を楽しんでいた。
手にした大振りのナイフ。さっき「食い残し」で試し切りをしてみたが、悪くない切れ味だ。
長い事人の肉なんて切っていなかったから没頭しそうになって慌てて止めた。
目的はあの猫女だ。あの体を切り刻めると思うと堪らない。あのきれいな顔を、豊かな胸を、長い腕を、
むっちりとした腰を、白い足を、肌を破いて、肉を裂いて、骨を剥き出しにして…内蔵を啜り出す…
彼は、裁判では精神異常の判定を受けた。間違いなく、彼の精神は常人のそれからは外れていたであろう。
でも、あいつに比べたらましじゃあないのかと彼は思った。
ナイフを手にゆっくりと歩く。物陰であの女はまるで幼女が戯れに人形を壊すかのように人間を破壊して、
なおかつその肉を喰らっていた。その姿に、彼ははっきり、欲情を感じていた。全身が、歓喜に震えた。俺と同じだ、と。
覗く。女は楽しそうに、血を飲んでいる。一面の血の海。すさまじい死臭の中で笑っている女。美しい。
この角から出れば、女までは5m。1歩で到達できるだろう。その上、女は彼に背を向けた格好であった。
絶好のポジションである。もとより、同じ殺人者としての勘が彼に「まともに殺しあったら勝てない」と告げていた。
1歩で接近し、致命傷を与える。お楽しみは無力化してから…冷静に判断を下す。
女はこちらには気付いていないようだった。「食事」に夢中になっているせいだろう。殺人者としてはいいが、兵士ににゃぁ向かないな。
と、思う。後ろががら空きだ。狙いをつける。黒いレオタードから浮き出て見える肋骨の左上、心臓を一突き。無駄なく仕留めて、
あとはあの体を…そこまで考えると突き抜けるような快感が走る。もう、我慢出来そうにもない。
右手のナイフを逆手に持つと、息を止める。足音を潜めて女の後に立つ。顔が緩み、涎が垂れそうになる。そのまま、ナイフを振り上げる。
(さあ、楽しもうぜ)
女は、まだ気付かず、死体の腕をかじっている…
>>363 ナイフを突き立てる。無防備な背中に。1回、2回、3回。血が吹き上がる。
この上ない快楽が彼を包む。思わず射精していた。しかし、体の熱は収まらない。
「ひひひっ、ひひっ、ひひゃあっはっはははははははっ!!」
奇声を上げ、涎も垂れ流し、なおも突く。女は屈んだ姿勢のまま動かない。時折、びくんと体を震わせる。
肉を裂く感覚、刃渡り20センチの刃は時折突き抜け、胸の先から突き抜ける。
肩を掴み、こちらを向かせると、乳房めがけて血に染まった刃を振り下ろした。それは柔らかな乳房を裂き、血の花を咲かせる…
…はずだった。
「!?」
刃は女の手で掴まれている。びくともしない。思わず見た女の顔は笑っていた。赤い瞳に思わず吸い込まれそうになっていた。
「だめよ。焦っちゃ。まだ食事中なのよ?」
ぞくん、と汗が流れるのを感じていた。もしかしてこいつは、気付いていたというのだろうか……
ばきん、と音がしてナイフは砕けた。女の手は血塗れだ。しかし、それはさっきの「食事」の返り血だ。切り傷すらない。
「うふふ、あなたも、楽しい人なんでしょう?いいわ、遊んであげる。」
妖しい笑顔。琢磨は思わず飛びのいていた。背中に手を回し、もう1本のナイフを抜く。
(こいつは、やばい。やばすぎる)
ゆっくりと立ち上がる。血が流れている様子もない。ダメージすらないようだった。
「やっぱり、銃って味気ないと思うよね?嬉しいなあ。同じ考えの人がいて。」
本当に嬉しそうな女。爪が少し伸びたように見える。あれが凶器であることはその殺気を感じるまでもなかった。
「ひひ、ひひひ、ひひゃあひゃひゃああっ!!」
「うん、そうこなくっちゃ!楽しもうよ!」
血の海の上、2人の殺人狂の刃が交錯する。言葉にならない、命のやり取りという会話。
きぃん、という音が、通路に響いた。
>>364 一瞬で勝負はついた。いや、勝負になど最初からなってはいなかったのだ。
琢磨の腹には直径5センチの穴が開いた。崩れ落ちる琢磨。
「あら、もう終わりなの?」
血に染まった手をぺろりと舐める。笑っていた。楽しそうに。
「ば…ばけもの……め……」
「ふふ、ありがとう。」
どす、と音がする。体にもう一つ穴が開く。ごぼり、と琢磨の口から血が溢れた。
「これでもね、ちょっとは痛かったんだからね。おかえし、してあげる。ダメよ、すぐ死んじゃ。」
ナイフを拾うと容赦なく突き立てる。どす、どす、どす、どす。一撃一撃が体を貫通する。
「ご、げ、ぎぎ、ごふ……ぐ…」
血が溢れていく。琢磨は痛みよりも、快楽を感じていた。ああ、こういうのも悪くないじゃないか…
興奮している体と、途方もない放出感。新鮮すぎる快感。キモチイイ……殺されるってのもいいじゃあないか…
「うふ、うふふ、ふひゃ、ひゃはは、(゚∀゚)アヒャーっひゃっひゃっひゃーっ!」
笑っていた。きっとこの女の体にも快感が突き抜けているのだろう。顔が緩み、狂ったように笑って。
男の体に馬乗りになり、ナイフを振るい、血に塗れてゆく。官能的な姿。
ざく、ざく、ざく、ざく、ばきん、どす、どす、どちゅ、ぐちゃ、ぐちゅ、ぐちゃり。
ナイフは折れ、素手で体を突き続ける。既に上半身と下半身は離れ。肉塊と化した琢磨の意識は既になく。
それでも女は足りぬとばかりに琢磨の体を殴り続けていた。ぐちゃり、ぐちゃりと肉が飛び散る。
血の海の中。女の笑い声だけが狭い通路に響いていた。
>350
海に夕日が沈む。
ダレモイナイ、ナキゴトイウナラ、イマノウチ…
「……ツライヨウ」
なんてね、嘘嘘。……さあ帰ろうっと!
ああカンヌキ、やっと会えたね。ほらお姉ちゃんも……あれ、どうして怒ってるの?スク水だし。
「水龍召喚!」
微かな来訪音、鳴り響く咆哮。天空を舞い西朝の守護神、水龍が現れた。
「ふぁいなるべっとおぉぉっ!!」
ともえお姉ちゃんは全身を霊気で包み、高く高く跳躍し、
頂点でムーンサルトをして飛び蹴りの形をつくった。
背後には螺旋を描き追従する水龍。大きく顎を開き、氷のブレスを吐く。
「早く助けろバカンヌキーっ!!」
大気との温度差で白く爆裂する冷気をまとい、お姉ちゃんの生足キックがカンヌキに炸裂した。
ドゴゴ・ゴ・ゴ・ゴ〜ン!!!!
いくつもの氷塊が生まれ、砕け、煌く。押えつけられた白い冷気は放射状に地面を広がり、
立ちつくす僕の足にも打ち寄せる。視線を戻すと、そこには見事な氷山が出来あがっていた。
氷山の下敷きになったカンヌキが、息も絶え絶えに呟いた。
「もうだめぽ…」
>367
「うああっ!?」
僕は飛び起きた。心臓がドキドキしている。
「……???」
「拓くんどうしたの!?」
ともえお姉ちゃんが部屋に飛び込んできた。そんなに大声を出してしまったのかな?
「ううん、なんでも無いよ。ちょっと変な夢見ただけ…」
なんだか凄い夢だったなあ。……実現できそうでコワイし。
思想運動家 浅沼宏、箱田哲也の場合。
あの男の歪んだ笑顔がちらつく。
「楽しみにしてるよ。君達には期待しているんだからね。」
地下を逃げる。あてもなく逃げている。ドタドタという音が反響する。逃げるのには慣れていた。
昔からこんな事はしていたから。しかし、今逃げているのは官憲なんてぬるいものではなく掴まれば死を意味する殺人者
という事が違いではあったのだが。手には一度は捨てたはずの銃を持っている。あの部屋を出る時、
「こんなもの使わせて人殺しをさせようとしたってそうはいかんぞ!貴様達の思うようになどならん!!」
と叫んで、銃を床に叩きつけたのも昔の話。
「お前達軍隊の存在がアジア諸国の反発を買っているということを何故理解せん!日本の贖罪はまだ終わってもいないのだぞ!」
と壮語したのも遠い昔の話。
ほんの数分前。血と、肉と、脳漿と、内臓と、骨と、悲鳴と、狂笑と、苦痛と、快楽と、死が満ち満ちたそれを見た瞬間、すべては吹き飛んだ。
非戦主義、共和主義、世界平和、媚韓、媚中、軍隊反対、謝罪外交、有事法制反対、左翼思想、天皇制反対、その他いろいろ。
すべて忘れて逃げていた。あの、血の海に立って哂っていたあの黒猫耳。恐怖が2人を支配していた。転がっていた銃を思わず拾っていた。
歪んだ笑顔で男は言った。
「非戦主義、大いに結構。対立思想がないというのは私みたいな戦争狂を飼っている国家としては危険だからね。私は君達に質問がしたくて
ここに来てもらったのだよ。いいかな?『話し合いの通じない相手がいる。さて、君達はどうする?』」
「馬鹿を言うな!この世に話し合いで解決できぬ事などない!」
「貴様のそういう好戦的思考が諸外国からの警戒心を煽るのだ!右翼は国を滅ぼすぞ!」
「ふふふ、国が腐るのとどちらがいいのか…まあ、私はどちらでもいいがね。」
とにかく逃げている。さっきから後ろを付けてくる気配がある。いや、あれは「意図的に足音を鳴らしている!」
息が上がる。ぜいぜいと、苦しい。追いつかれたら、殺される。間違いなく。疑いようもなく。逃げなくては。
死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない!!
「ふうん、では君達が戦わないと死ぬといわれたらどうするんだい?」
「その時は自害するさ。手を血に染めるなんておぞましい事できるか!」
「話し合って解決すると言っているだろう!」
走る、走る、とにかく早く。走って、走って、走って、逃げる。逃げる。逃げる。死から、戦いから、恐怖から。
後ろにひたひと、足音。楽しそうな黒猫の顔が一瞬見えた。その両手は血に染まって。笑顔の歯からは血が滲んで。
やがて、通路は行き止まりになる。見つけた部屋に飛び込む。やりすごせる…はずもなかった。
何もない部屋。身を隠す場所もない、殺風景な部屋。一面の白い壁と蛍光灯の無機質な光。ぎい、と音がして黒猫が現れた。
「さて、主権が侵されようとした時。どうするんだい?君達は。」
声が、した。それはいつかの幻影。目の前には絶望という名の現実。
浅沼が前に出る。銃を捨てて、両手を挙げる。
「ま、まあ、待ちたまえ。なあ、我々に敵意はないんだ。な、見逃してはくれないか?君もこんな事好きでやっているんじゃないだろう?
これ以上人を危めてはいかんよ。我々が君達を自由にしてあげる。いや、きっとだ。軍隊が解散されれば日本はきっとよくなる。
君みたいな子がこんな人殺しの道具にされる事はないんだ。強制されてやっているのだろう?我々は非常に気の毒に思っているんだ。
な?これ以上の殺人は誰も望まないよ。実験は終了して、我々を見逃してはくれないだろうか?な?…そうか、分かってくれるんだな。
いやあ、そうだろうとも。君みたいな美人がこんな陰惨な事をしてちゃあいけないよ……」
説得は続く。一世一代の大論陣。呆然と立ち尽くしている黒猫。
うまくいったと、彼女の肩に手を置こうとしたとたん、浅沼の背中から手が生えた。
「な‘‘あっ……」
ごぼりと口から血が溢れる。開いた口にさらに手が差し込まれ、引き抜く。ぶちんという嫌な音がして、浅沼はもんどりうって転がる。
驚愕する箱田。浅沼の舌が、抜けていた。血が口からどんどん溢れる。息が出来ないのだろう。苦悶の表情を浮かべ、脂汗を流し。
「おじさん、うるさい。」
猫耳は吐き捨てるように言った。のた打ち回っていた浅沼はだんだん動きが鈍くなっていく。舌はちぎれると縮んで喉に詰まる。
出血の為ではなく、窒息で、死んでゆく。箱田は呆然と眺めているほかはなく。ものの1分もなく、浅沼は動かなくなった。それで現実に戻る。
話し合いの通じない殺人鬼と2人きり。足元には銃。逃げ場はない。殺される。死にたく、ない。
思わず、銃を拾った。それは彼自身の敗北を意味している事など、もう彼には気にしている余裕すらなかった。
「そうだよ!君。戦争というのはそういうことさ。自分の主権が侵されたくないのなら戦って守るしかないだろう?分かってるじゃあないか!
命を守りたいなら撃ちたまえ!そして戦争を存分に味わってくれ!ははははははははは!」
笑い声が、聞こえたような気がして、引鉄を引いた。彼の中で何かが終わり、ほどなく彼の主権も終わりを告げた。
静かになった部屋の壁、彼らの血で黒猫は落書きをしていった。真っ赤な血でそれは、彼ら自身をも哂っているようだった。
『Ich bin ein Defatist.』
「ふにゃあ……うつなのです」
もなこ様はお勉強に身が入らないご様子……暗くうつむいて、溜め息ばかり。ずいぶんと叱られていらっしゃいましたものね。
シキガミとか言うモノがどうかしたとやら……私には、何の事かサッパリ判らなかったのですが……
もなこ様の警護の者が何人か怪我を負ったとの話。私は、もなこ様に怪我が無かったというだけで、ホッとしてしまったのだけれど……
さっきから、よく判らない事を呟いて、焦点の合わない目をさまよわせている……コレでは勉強になりませんわ。
「仕方がありませんね……少し休憩にしましょう。お茶を淹れましょうね」
「ふみゃあ……かいせんきってつってくるのです……」
「おいしいチョコレートもありますよ。ベルギーの修道院が送ってくださいましたの。いかがかしら?」
ちょっと濃い目に淹れた紅茶にロシアのジャムを落して……ベルギーの純粋チョコレートを2つ、3つ摘んだら、きっと元気になるでしょう。
「このチョコレート、おいしいのです!」
「そう、良かったですわ。ウフフ……本当によく効く事……」
「……え、エヘヘ……」
ほっぺたにチョコレートをくっつけて、照れくさそうに笑うもなこ様……
両手でカップを捧げるように持ち、ちょっと冷めた紅茶をコクンと飲む。
「……もなこ様は、ベルギーという国の事、どれくらいご存知ですか?」
「知っているのです! ベルギーにも王様がいるのです。おじい様と仲良しなのです。ひいおじいさまが亡くなられた時も、いらっしゃったと聞きました」
「そう、その方はボードワン1世陛下ですね。9年前にお亡くなりになられました……現在王位にあらせられるアルベール2世陛下のお兄様です」
「お兄様なのですか?」
「そうですよ。お子様がいらっしゃいませんでしたから……
そのために、スペイン王室から嫁がれましたフォビラ妃様は、一時は王妃の座を退かれようとなさいました。
ですが、ボードワン1世陛下は、「私には弟も甥もあり、後を継ぐものは大勢いる。しかし、妻はあなた1人だ」と言ってお引止めになられ……
お亡くなりになるまで、深く愛し続けました」
「ボードワン1世陛下の葬儀の際には……他の全ての列席者が黒い喪服を着ている中で、
フォビラ王妃はただ1人、陛下が生前最もお好きだった白い服で参列されたと言います。」
もなこ様はちょっと不思議そうな顔をしている。こういった話はまだ早かったかしら。
でも……もなこ様の表情を見ると、理屈はわからないにしろ、何かを感じ取っているようにも思われる。
そういえば、もなこ様のお父様とお母様も、もなこ様がお産まれになるまでは、同じようにご心労を重ねておられたのでしたっけ。
「ボードワン1世陛下は、亡くなられてもう10年にもなりますが、未だに国民から慕われております……世界史に残る名君です」
真に、愛する事に長けた人格をお持ちでした……その対象が多くの国民であっても1人の妻であっても、同じ事。
おそらくは、その人を愛するという力が、よい君主になるためには、何よりも必要なものなのでしょうね」
「……そうなのですか? もなこはよく判らないのです……」
「まだ判らなくても当たり前ですわ。ただ知っておいてください。いつか、判るべき時が来れば、その時には必ず判りますよ」
「でも……判らないと、力をどうつければいいのか判らないのです……よい皇女になれないのです……」
ああ……ちょっと口を滑らせてしまったかしら?
もなこ様は、ほっぺたにチョコレートをくっつけたまま、またうつむいてしまった。
つと手を伸ばして、そのチョコレートを指先で拭い取る。柔らかなピンクの頬……
「大丈夫ですよ。もなこ様のお父様やお母様……お祖父様やお祖母様も、その優れた資質をお持ちです」
「すぐれたししつ……」
「そう。もなこ様を愛していらっしゃいます。それはおわかりでしょう? だから、きっともなこ様も、愛することが出来るようになります」
「どうしてですか?」
「愛する力を身に付ける、一番いい方法は、愛される事なのですから」
「……んー……」
「まあ、そんなに難しい顔をなさらないで。考えて判る事ではありませんよ」
「そうなのですか? でも、だったらいつ判るのですか?」
「そう、いつか……貴女が心から愛したいと思う人が現れた時に判る事でしょうね……
そのとき、どう愛せばいいのか判るために……もなこ様、よく覚えておいてください。
もなこ様のお父様やお母様……お祖父様やお祖母様が、どのようにお互いを愛し合っているか……国民を愛しているか。
もなこ様のお父様やお母様……お祖父様やお祖母様……そして私が、どのようにもなこ様を愛しているか。
もなこ様、あなた自身が、どのようにお父様やお母様を愛しているか。
どんなに小さな愛も、見逃さず、無視せず、疑わずに……これはとても大変な事ですけれど……よく覚えておいてください」
「ん……覚えておくのです……」
ちょっと大げさな話をしてしまったかもしれない……チョコレートを盛った皿は空になった。ティーポットも冷えてしまった。
それでも、もなこ様は何か考え込んでいるようで、ジッと空になったカップを見詰めている。
「ああ、そういえば……もなこ様、去年のことですけれど、ベルギーの王様にもお孫さんがお産まれになったのですよ」
「え? そうなのですか?」
「お父様はフィリップ皇太子、お母様はマチルド妃……エリザベト・テレーゼ・マリ・エレン王女様。
最初のお子様ですから、もなこ様と同様、将来は王女様ですよ……もちろん、今はまだ1歳の赤ちゃんですけどね」
「会ってみたいのです! きっと、仲良くできるのです!」
「そうですね、きっと良いお友達になれますわ……ひょっとして、もなこ様はお姉さんって呼ばれるかもしれませんわね」
「もなこ、お姉さんなのですか? うわあ……」
「ウフフ……でも、叱られて「ふにゃあー……」なんて言っているお姉さんではね……ウフフ」
「むーっ! もなこ、いつまでもそんな事言ってないのです! 先生っ、勉強するのですっ!」
ちっちゃな鼻の穴を、プクンと膨らませて、ふんっ、ふんっと鼻息を噴きながら勉強机にドスンと座る。
……もなこ様、お行儀が悪いですよ。
プチテレビの女子アナ、撫子は気だるそうに自分のデスクに突っ伏している。
「はあ〜」
暇だった。別に仕事が無いわけではない。珍獣(゚∀゚)の追加特集や国防軍への取材、
特番のための複数の宗教団体への取材中でもあり、それらの資料が彼女のまわりに山積みだった。
ただ、今日は暇だった。
系列のフヂテレビが世界シューキュー大会の「ひいき放送」で2チャンネラーに抗議を受けているそうだ。
『24時間TV愛は地球を巣食う』でゴミ拾いの前にゴミ拾いされていたり、
ライブ映像として放送したネズミーランドの花火を録画だと暴露されたり。
自業自得なので、別にどうでもいい事だが。
「……最近カメちゃん見ないけど、どこ行ってるのかしら?」
有能なカメラマンである亀雄 雄一は、彼女と違って毎日ひっぱりだこだった。
先週の休日はシューキュー大会の決勝だった。日頃の無茶に付き合ってくれるお礼も兼ねて
チケットを取っておいたのに、一人で武山にボートレースの観戦に行ってしまった。
「……む」
別に特別な感情があるわけではないが、女として何か納得できないものがある。
「……はあ、まあいいか」
再びデスクに突っ伏す。充電にはもう少しかかりそうだった。
「敬礼!直れ!2等水兵菊水わかば他5名!平成△X年○月□日付、練習艦いせ臨時乗組を命ぜられ、
横須賀海兵団特別講習第88分隊を修業し、只今着隊しました!よろしくお願いします!敬礼!直れ!」
「私が艦長をやっている安達大佐だ。短い間ではあるがこの艦の中で目いっぱい学び、遊び、
本隊へ帰った時の糧としてくれ。」
艦長への挨拶が済むと、分隊長が士官への紹介を行う。
「ええと、菊水わかば、菊水ふたば、菊水みつば、菊水よつば、菊水いつは、菊水むつは。
この6名は本日付、横須賀海兵団特別講習第88分隊を修業しました。彼女たちは本来、
皇宮警察に所属しているのでありますが、人材交流ということで特別に海軍に籍を置いています。
当艦での乗組が終了した後は…、…、未定、ということです(汗)」
みつば(ねえ、こうきゅうけいさつってなに?)
むつは(菊水は秘密組織だからな。外部に対してはそういうふうに紹介している。)
みつば(しらなかったよ〜。)
ふたば(実際、隠匿しきれてないんですけどね。最近結構活動派手だし。)
そんなこんなで、猫たちの新しい生活が始まった。
質問「今日の刑法において唯一死刑が明記されている犯罪はなにか?」
テレビのある部屋。モニターは本部に繋がっている。
「むーっ、なっとくいかなーい。」
持たされたマイクに向かって文句を言う。言わなきゃやってられないわ。
「しょうがないじゃないの。文句言わずにやんなさいよ。」
「だあってぇ、こいつら臭いんだもん!こんなの喰いたくないよ!」
あたしの足の下には2人の獲物。二人とも足は折ってあるから逃げられないけど。時折それでも逃げそうになるから、うっとおしい。
この2人は捕まえたら報告を入れる事なんて要望が最初からあった。なんでか知らないけど。
しっかし、こいつらにんにく臭い……ニダニダうるさいし…
「なぜニダ…吸血鬼といえば大蒜が苦手なはず…」
「十字架が……わが教団の十字架がなぜ効かない…アイゴー…」
ああ、うるさいわねっ!大蒜は臭いから嫌いってだけで退治出来るわけないでしょ?十字架は神父が持って退魔の法を使うから意味があるんであって、
ただ持ってるだけの、しかも教義のキの字も知らないエセ宗教家が使ってもただのお守り以下なの!判る?
「ただ殺すだけじゃダメ?うざいんだけど。こいつら。」
「だめ。こいつらはね、無力化じゃなくて、消失させないといけないの。」
「こいつらの血、臭うのよ。ぜったいにおいしくない!」
「好き嫌い言っちゃいけません。」
むー、学校の先生みたいな事言う……こんなのを2人も食うの?絶対に嫌……
「はっはっは、ご機嫌斜めだね。」
「おじさん誰?」
「……(泣)……セメテオニイサント……ゴホン、ええとね、実はこいつらの罪状がこれなんだ。で、君にちょっと無理なお願いをしたわけさ。」
モニターに映し出される2人の資料を見て、あたしは(゚Д゚)ハァ?と……こいつらって……
ぶつり。あー、スイッチ入ったわ、うん。
>>377 『金村正男。密入国。ネズミーランドへの不法滞在、萌宮殿下への邪なる目的での接触を画策。
安城恨男。日本国籍所得者。金村密入国の手引き。帝国軍事情報の漏洩及び、半島への資金調達を担当。
2人には萌宮殿下の拉致及び、K国への移送の計画あり。』
血の海。生ぬるい表現だ。その部屋にもう、誰がいたのかは判別など出来ないだろう。
肉片一つに至るまで切り潰され、骨の一片たりとも原型は留めていないのだから。
「……これでいいよね!?」
「……………」
あーもう、臭いがこびりついちゃう……不愉快だわ…とっとと出る。もう出る!シャワー浴びないと…
返事はない。ってことはいいって事。さっさと出ようっと。
「すご……」
「……いやまったく……」
モニタールームは茫然自失。さっきまで繰り広げられた光景を信じられない様子であったそうな。
〜その後の某日外務省にて〜
「ウリの息子が外国に出かけて帰ってきていないニダ!チョパーリは責任を感じて全力で探す事を要求しる!」
「と、言われましても日本で行方不明になったのなら探しますが、入国管理所には届けがありませんが何か?」
「日本に行ったという情報があるニダ!所在を教えて帰国させるニダ!不当に監禁しているに決まっているニダ!」
「情報ですか…我々のところにはうちの娘がK国の船にさらわれた…っていう情報なら山とあるんですがねえ…」
「アイゴー!チョパーリの陰謀ニダ!謝罪と賠償と技術供与と食糧援助を要求するニダニダ!!」
「じゃあ、お好きなだけ探してくださいよ。その代わり我々も情報の確認をさせていただきますがよろしいですよね?」
国を売る奴は死ねってことね。もなこたんを連れ去ろうなんて不貞な奴はこれでも足りないわ。ったく。
答え「外患誘致」
>343
峰 不二子様のスリーサイズがB99・W55・H88。
小柄なシスターがB108・W72・H96のはずが無い。再測定を要求する!!
いやオレが直に測定しなければ信用できんっ!そのためには修道服の上からでは不可ッ!!
シスターなら特別に慎ましい胸でも可!「……恥ずかしいですわ」……ハァハァハァ。
う。モエリア様、そのすりーさいずはかなりふくよか…
もとい、ドムでいらっしゃいます(泣)
モエリア様に限って、そんなはずは、そんなはずはない!!
Wは66(これでも洋服はLサイズ。ちと太め)として、ヒップは94〜96ぐらい。
バストは、アンダー75のHカップとして、102cmぐらいかと予想。
さあさあ紫村さん、確認をお願い致します!!
猫耳水兵の原隊復帰手続きの一環として、
小学校の夏休み前のイベントとして、
その他諸々の理屈をつけて、
関係者一斉健康診断・身体測定の実地を提案いたします。
あ、原隊復帰じゃなくて、新規配属になるのかな?
383 :
異次元酒場:02/07/17 23:49
カウンターで独り寛いでいる後藤。待機中なので、さすがに酒は呑まない。
マスターは彼の正面で寡黙に佇んでいる。表情が怒っている様に見えるが、あれで素らしい。
二人はなにやら以心伝心していた。
「……ふ」
「……む」
「……ぬ」
「……いや、知らん」
そこへ狩谷が帰ってくる。先日負傷した紫村の様子を見に、菊水総合病院へ行っていたのだ。
「おやっさん、オレンジジュースを──」
「……どうだった?」
「頭に異常は無いそうだ。ただ、電波を飛ばしっぱなしでな……煩いから今は個室に隔離されている」
「そいつは重傷だ……いつもの事のような気もするが」
「同室だった霊警が、式神もどきに殴られた際に霊障を受けたのだろうと言っていた。
まあ特に害は無いらしく、二〜三日で正気に戻れる見立てだ」
「そうか。ところで…もなこ様が病院へお忍びで見舞いに来られるという情報があったが?」
「あ…ああ。来られていたよ…」
「その分じゃ、逃げてきたようだな?」
「……ダメなんだよな。もなこ様と普通に接したいとは思うんだが、同時に
粛清とはいえ何人も殺してる俺みたいな者が触れられるわけが無いと考えてしまう」
狩谷の両腕に圧されたカウンターが、ギシリと軋んだ。
「二律背反ってやつか。お前も意外と業が深いな」
「俺は、御言葉を頂けただけで十分だ。そういえば、お前に預けておいたアレ、どうした?」
「ああ、アレは──おやっさん」
マスターは無言で、一本のボトルをカウンターに置いた。
\酒/
│皿│
/ \
│〜〜〜│
│ │
│(゚∀゚) │
│ (゚∀゚)│
└───┘
>374つづき
机に向かい、いくつか問題を解いたものの、しばらくすると……
「……」
もなこ様は、えんぴつを握り締めたまま考え込んでしまっておられるご様子。
「……どうしました? もなこ様……解らない問題でもございましたか?」
「そうじゃないのです……」
「……まだ何か気になる事がございますの?」
「……んー……」
叱られた事をまだ気にしているのでしょうか? でも……
「もなこ、嫌われちゃったのかもしれないのです……」
話を聞いてみると、怪我を負った警護の方々をお見舞いに、お忍びで病院へ向かわれたのだけれど、
>383
肝心の相手は個室に隔離され面会謝絶、あるいは不在でお会いになる事ができなかったのだとか。
「もなこ様……そんなに悲しい顔をなさらないで。
その方々が、自分の怪我も省みずもなこ様を護ったのは、もなこ様に辛い思いをさせたくないからでございましょう?
なのに、もなこ様がそんなお顔をなされていては、その願いがムダになってしまいますわ」
「でも……しんぱいなのです」
「怪我そのものは、それほど重いものではないとうかがいましたが……」
「だったらいいんですけど、でもそれならどうして会ってくれないのですか?
やっぱり、もなこがダメな皇女だから、嫌いになってしまったんですか?」
もなこ様は、また泣きそうになっている……どうしたものか。
「考えすぎですわ、もなこ様……病院と言う所は、いつだって万が一を考えて、用心深くするものですよ。
それに……もなこ様がまだ小さくて、上手く出来ない事がたくさんあるのは、みんな解っています。
私や、警護の方々がおそばについているのは、そもそもそのためではありませんか」
「うー……だけど、だけど、しんぱいなのです……」
「……じゃあ、今日は予定を変更して、家庭科の授業にいたしましょう」
「ふぇっ? かていか、なのですか?」
「その方々は、お怪我でしたら……食べるものは特に気をつけなくてもよろしいのでしょう?
また明日、もう一度お見舞いに行ってみましょう……美味しいものを持ってね」
「……はい、なのです!」
もなこ様と一緒に、調理場に向かう。
突然調理場に現れた私たちを見て、当番の厨房係の方はちょっと驚いていたが、
家庭科の授業に使うと言うと、快くその一角を開けてくれた。エプロンを2つ借りる
もなこ様にはぶかぶかだったが、腰のあたりを思い切り巻き上げて、後ろで縛ってなんとか格好はついた。
「先生、何からはじめればいいのですか?」
「まず、手を洗って。それから、20センチ角のバット、ボールを3つ、はかりと泡立て器を用意してください」
厨房係がしたくしようとするのを制して、もなこ様に準備してもらう……これは授業なのだから。
「卵4つとグラニュー糖、生クリーム、ラム酒、カカオパウダー……あ、ケーキスポンジはあります? 分けていただけますか?
マスカルボーネチーズとエスプレッソのボトルは、私のとっておきが冷蔵庫に預けてありますから、それを……」
厨房係に質問しながら、両手に道具や食材を抱えてチョコチョコと広い調理場を走り回るもなこ様。
「んー、重いのです」
「一度に抱え込む事はありませんよ。慌てないで! 食べ物を扱う所で、バタバタと走り回ってはいけません」
1つめのボールに、卵黄とグラニュー糖。2つめのボールに、卵白。3つめのボールに、生クリームとグラニュー糖……
グラニュー糖は少な目がいいでしょうね……男性にはあまり甘過ぎるのは喜ばれませんから。
「ではもなこ様、こちらを泡立てていただけますか?」
「は、はいなのです」
その間に、バットをもう一つ用意すると、ケーキスポンジを薄くスライスして、エスプレッソに浸す。
本当はフィンガービスケットを使うのだけど、こちらの方が口当たりがいいでしょう……
「んしょ、んしょ、んしょ……」
もなこ様はビールのケースの上に立って、調理代の上に顔を出し、
赤くなったホッペにクリームをくっつけて、泡立て器を握り締め、一抱えもあるボールと格闘している。
「先生……これでいいですか?」
「ん……ダメです。固く角が立つまでね」
「んしょ、んしょ、んしょ……先生、これくらい?」
「まだまだ……シッカリと腰のあるクリームができるまで、手を休めてはいけません」
「ふええ」
「あら、もなこ様? 入院している方が心配だったのではありませんの?」
「それは、しんぱいなのです……でも……」
「だったら、美味しいものを食べていただかなくてはね。このケーキは、クリームの口当たりが、美味しさの命なのですから……」
「わ……わかったのです。がんばるのです」
ようやく満足のいくクリームとメレンゲが仕上がった。
マスカルボーネチーズとちょっと多めのラム酒を加えて溶き上げた卵黄に加える。
ここはさすがにもなこ様には任せられない。念入りに、クリームとメレンゲと卵黄をゴム箆で混ぜ合わせる。
エスプレッソに浸しておいたケーキスポンジを、バットに敷き詰めて、その上に混ぜ合わせたクリームをまんべんなく塗っていく。
「もなこ様、こんな感じにもう1段、スポンジを重ねて、クリームを塗ってくださいな」
「あ、はい、やってみるのです」
もなこ様はビールケースの上で爪先だって、バットを覗き込みながら、ちょっと危なっかしい手つきで、
エスプレッソのしみこんだスポンジを重ね、クリームを塗っていく。
「ん……お上手ですわ。その調子で、もう1段……できれば2段、作ってください」
「はい……うふふ、美味しそうなのです……」
「頑張ったかいがありましたわね。そう……ええ、一番上に残りのクリームをタップリと盛って……
ココアパウダーを、薄く振り掛けてね……はい、これで出来上がり」
「完成……なのです!」
バットに完成したティラミスは、多少デコボコしていたけれど……初めてにしては上出来だ。
厨房係からも、小さく拍手が響く。
「よくできました。あとは冷蔵庫に入れて、一晩寝かせてあげれば、もっと美味しくなりますよ。
きっと皆さん喜ばれますわ……明日、持っていく直前までよく冷やしておきましょう」
「……んー……」
冷蔵庫にしまわれるパッドいっぱいのティラミスを、ちょっと残念そうな目で見詰めるもなこ様。
まあ、無理もありませんわね……
余った小さな1切れのスポンジケーキに、クリームをちょっと塗って。
「はい、もなこ様。これは内緒ですよ」
「えへへ。お行儀が悪いのです……先生、半分こしましょう」
「まあ、もなこ様ったら……うふふ……」
……今日は結局、予定の授業は出来なかったけれど、それ以上に良い授業が出来たようだ。
あとは、明日のお見舞い次第。皆さんは喜んでくださるかしら?
……なんか食べ物で釣ってばかり。そんな教育でよろしいのでしょうか。
それにこんなネタばかりでは、シスター=ドム説がさらに説得力を増してしまいま……
こないだのサイズ? あれなし!
間違い! 確定データではない!
だからっ……ノーカン! ノーカン!
書いてる奴が女に縁が無いだけ!
もちろん……登場する女性キャラの中では最強のプロポーション
(でも修道服に隠れてる)という設定は、ちょっと譲れませんわ。
出来れば峰不二子よりもさらに凶悪なほどに。
だって、イタリア女が日本人にダイナマイトバデーで負ける訳には。ウフフ。
>>378 「あーもー!臭いったらしょうがないじゃないの!」
ぶつぶつ言いながら歩いている黒猫。血まみれの手、足、顔。破れているレオタードも血まみれ。
もっとも、すべて返り血で、自分の血はない。手足をごしごしこすりつつ歩く。もちろん、臭いなど取れないのだが。
憮然とした表情のまま地下を進み、とある部屋のドアを開ける。
「んー、お湯は出るっていってたけど…」
部屋の扉には『シャワールーム』とあった。鼻歌交じりに部屋に入ると、ロッカーを漁る。
「着替えってあるのかしらん?これ、破れてるから着替えたいんだけどなあ…」
戦場の緊張感など、彼女にあるはずもなかった。なぜなら、彼女は「狩猟者」であり、「兵士」ではないのだから。
猫である以上、水は得意ではないのだが、彼女にはそれ以上に臭いが耐えられなかったのであろう。シャワーを要求したのだった。
「むー、なによ、これ……ろくな服がないわねえ…誰の趣味?」
ロッカーにはいろいろな服が残してあった。が、なぜかその服の数々は趣味的でもあった。
メイド服、ナース、セーラー服、スク水、ブルマー、割烹着、婦警……なぜかボンテージまであった。
「ま、あるだけましか。いいや、出てから考えようっと。」
さっさとレオタードを脱いでしまうと、個室に入り、カーテンを引いた。シャアアと、水の流れる音がし始める。
………
その一部始終を見ていた影が2つ。部屋の外で、(;´Д`)ハァハァ していた。
「…ミ、ミタカ?」
「ウ、ウヅキタソ…シャワーツカウ?(・∀・)イイ!」
「(;´Д`)ハァハァ ……ヤ、ヤルカ?」
「……ノゾーキ!ノゾーキ!」
「…デモ、ナンデガッコノセンセイガココニイルノ?」
「シラナイ。デモ、(;´Д`)ハァハァ デキルナラナンデモ(・∀・)イイ!」
……そう、逝き合戦において、守屋少年を誤射し、後に加也に捕獲されたIGPKの2人組であった。彼らは河井の策謀により、
IGPKの存続と引き換えにここに連れてこられたという事を知る事はない。そして、今シャワーを使いに行ったのが、学校にいた先生「宇月」ではなく、
自分達を殺すために動き回っている「黒猫」だという事も知らない。彼らにとっての命がけの(;´Д`)ハァハァ が幕を開けようとしていた。
>388
”一般的に”イタリア女性は若い頃はスリムで、年をとるにつれて豊かな体型になられます。
だからドムでもおかしくは無いのですが……。
慎ましい生活をされていたであろうシスターがナイスバデイなのは、きっと神の御業です(笑)
>388
謙虚なシスターが、主張を譲らないほどのないすばでぇ、とな。
では、グラビアモデル並としてデータを予想してみましょう。
ウェストはくっきりくびれた60cm前後。
ヒップはぱんっと張り出して、90cm前後。
で、注目のバストは、アンダー70cmのHカップで98cm…む、三桁にならん!
ではアンダー70で、Iカップ。これならトップバストは100cmぐらい!!
これでどうでしょうモエリア様!!
…ウェストとバストの差が40cmか…30cmあれば結構なナイスバディだと言うのに。
乳が邪魔で、下が見えねえぞ、きっと。ああ、うらやますぃ御身体だ…
みんなオッパイ星人かよっ!(三村マサカズ風)
分隊長に今日から日記をつけるように言われました。日記は「お前たちの派遣元からの書類に入っていた」
そうです。分隊長は定年間近の准尉さんです。私たちに対する敵意はないようです。艦長は、安達大佐と
いうおばさんです。おばさんですが、引き締まったスタイル、標準以上の容貌を備えているために実年齢より
かなり若く見えます。とりあえず、艦の中は狭いです。寝られません。一体私たちがこの艦で何をしたらいいのか、
何をするべきなのか全くわかりませんが、皇統のため、国家のため、任務を果たしていきたいと思います。
ついげき
なんでこの艦の名前がよりによって志摩教官と同じ名前なのでしょうか?
みつばだよ〜。にっきをつけるね。きょうはふつかめ。ここもかいへいだんといっしょで、らっぱで
あさおきるの〜。それで、あさからたいそうをやって、ごはんをたべて、それからみんなはしごと、
なんだけど〜。みつばたちにはしごとがないの〜。ぶんたいちょうにきいたら、きょうはちょうど
かんぱんのはくせん、しろいせんだね。をとそうしているから、てつだってきたらっていわれたの。
ぺんきのにおいはきらい〜。くらくらしたよ。
ついげき
きょうぺんきをぬっていたら、となりのふね「たかなみ」のますとのうえにおんなのこがいたの〜。
ますとのうえ、てっぺんに。すごいよね〜。よくみるとほかのふねのうえにもいるの。でも、
この「いせ」にはいないの〜。とってもふしぎ〜。
紫村「マジでもう大丈夫ですって」
医師「いいや、あと一日は安静にして貰うよ」
後藤「……別に異常なところは見当たらないが?」
狩谷「初日は凄かったんだぞ。一体何人の看護婦さんを泣かしたことか」
医師「しかもバスト84以上の看護婦限定でだ」
狩谷「まあ、そうとは限れないでしょう?」
医師「いいや、間違いない。実に興味深い症状だ」
狩谷「……そうですか」
後藤「今日はしばらく付き合ってやるから、大人しく先生の言う事を聞いてろ」
紫村「…ちぇ」
シャアア……という水の音がしている。
キイ、というかすかな音を立てて更衣室の扉が開かれる。
2人は息を潜め、全神経を集中させつつ部屋を進む。物音を立てぬように、気取られないように。
更衣室は薄暗く、長い事使われていなかったせいか、埃をかむっている部分もある。
「?」指差す。
「!」見つける。
ロッカー。着替えを探したのだろう、いろいろな服が散らかされている。
「(メイドフク!ナース!セーラーフク!)」
「(ブルマー!スク水!エプロン!)」
声にならぬ声を上げ、その服たちを手にとって悶える2人。
「(…ド、ドレガイイ?)」
「(……ガ、ガーターベルト、(・∀・)イイ!)」
ひとしきり服達を見ると、次は脱衣籠に飛びつく2人。黒のレオタード!そして黒の下着!しかもこれは85のDカップ!
血と、埃と汗に塗れた匂いつきの肌着が目の前に。歓喜する2人。ただし、気付かれないように。
(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ
(・∀・)イイ!スゴク、(・∀・)イイ!(゚∀゚) イキソウ!(;´Д`)ハァハァ (;´Д`*)モー、シアワセ!セイーリチュウ?(・∀・)イイ!(;´Д`)ハァハァ
1、匂いを嗅ぐ→(゚∀゚)アヒャ
2、かぶってみる→(゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャ
3、食べてみる!→(゚∀゚)ア-ッヒャッヒャヒャヒャ!
音もなく転がりまわる2人。部屋の奥でシャワールームの扉は閉められたまま、水の音が流れていた。目を移す2人。
薄暗い更衣室からだと、シャワールームの向こうにはっきりと人影が映し出されて見えていた。摺り硝子の向こう側で水の音がしている。
肌に水のはじける音。優美なシルエットが映し出され、服の持ち主がシャワーを浴びている……裸身が硝子一枚の向こうで踊っている…
2人の視線はもう、釘づけ。見えそうで見えない摺り硝子が2人を掻き立てて。そして、ゆっくりと立ち上がる…
>395
紫村「──暇だ」
手札を放り出す紫村。役はフルハウスで彼の勝ちだが、もうどうでもよさそうだった。
同僚に顔馴染みの医師を加えた四人で、もう何時間もトランプばかりしている。
紫村「つーか、なんで昼間っから野郎とポーカーばかりやってなけりゃならないんだ」
後藤「至極まともな意見ではあるな」
医師「ふむ……ゲーム中の心理状態を観察していたのだが、どうやら安定しているようだ。
これで萌宮様との面会を許可できる」
狩谷「えっ! 本日も来られるのですか?」(汗)
医師「うむ。先日帰り際に、お供のシスターがそう言っておられた」
紫村「シスターって、シスター・モエリアさん? ヤッター♪」
狩谷「あ、アイタタ、急に頭痛が」
医師「……診ようか?」
狩谷「いえ、大丈夫です。隣、空き病室ですよね? しばらく休ませて頂けます?」
返事も待たずに逃げ出す狩谷だった。
医師「ふむ……頭痛で腹を押さえるとは、よほど動転しているようだな」
後藤「……根性無しめ」
紫村「まったくだ。強引に対面させちまうか?」
>395
狩谷「初日は凄かったんだぞ。一体何人の看護婦さんを泣かしたことか」
医師「しかもバスト84以上の看護婦限定でだ」
(ドアの外で)
私、初日に御見舞い行った・・・。
でも、ぜんぜん普通だった・・・。
うわあああああん!!
呪ってやるぅぅぅぅぅ!!
(ダッシュで退場)
___
|_|
|Д`) ミンナ オパーイノハナシニ ムチュウ・・・
|⊂ モナコサマ テヅクリノ てぃらみすニ
| モエルナラ イマノウチ
__
♪ / _/|
♪ |__|/ モナコサマ モナコサマ
ヽ(´Д`;)ノ てぃらみす ツクル モナコサマ
( へ) ダブダブノ えぷろんデ
く 「んしょ、んしょ」ナンテ カワイスギ
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♪ |\_\
♪\|__| モナコサマ モナコサマ
ヽ(;´Д`)ノ モナコサマノ てぃらみす
(へ ) モナコサマト シスターノ
> テヅクリ てぃらみす セカイデヒトツ
>>399 宮様手作りのてぃらみすに萌えている不貞者発見!!
直ちに処理します!
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__ __l_o____| OO)∩,,) OO)∩,,) し| |し )
__l_o____| OO)∩,,) し| |し ) し| |し ) ||_|_||_|
OO).n ) し| |し ) . ||_|_||_| [|_T___[] [|_T___[]
し( し [|_T___[] [|_T___[] |__||__ | |__||__ |
/ \ じ じ じ じ (___(___] (___(___]
…本当は俺達だってうらやましいんだぞ!くそ、誰だ?あれを「あーん」させていただく栄誉を受ける果報者は!
我輩は猫耳兵士(退役軍人)である。12,3才の外見とは違い、現在の猫耳シリーズ(CLAMP系)としては
最古のグループに属していた。その部隊で生き残っているのは、今は我輩だけである。寂しい事だ。
「♪スイカっ、スイカっ」
数多の戦いで傷つき疲弊し、年をとり過ぎた我輩の体は、戦士として役に立たなくなっていた。
再調整も叶わず、もはや野良か処分かというところを引き取ってくれたのが、前の御主人である。
「♪さくっさくー」
その御主人も"殉職"され、今は妹様に面倒を見て頂いている。妹様は強くて美人で料理も上手い。
我輩に去勢処置さえされていなければ「我輩の子を生んでくれ」と熱く迫るところだ。
「御主人サマー、スイカ切りました〜」
我輩は妹様と一緒に縁側でスイカを食べる。
暑苦しい蝉の声。涼しげな風鈴の音。どこまでも続く青い空。遠くには白い入道雲。
「──夏だねえ」
「……はい」
我輩は幸せである。
あらゆるフネの上にいつも女がいる。ほとんどの水兵はそれに気がついていないようだ。しかも、
その女には実体がないようで、作業をしている水兵の体を通り抜けている。一体あの女たちは
何者だ?気になって仕方がない。無駄だろうとは思うが、ハゲに尋ねてみることにした。
「分隊長、たかなみのマストの上に女がいるようにみえるのだが。」
「菊水、お前にも見えるか…。気にするな、お前さんも疲れているんじゃろうて。ワシも疲れていると
いろんなものが見えるぞ。白いワニとか、ピンクの象とかな。」
…やはりこの男ではだめだ。なにも知らないようだ。
「…あれは船魂。ふねのたましい、じゃ。あらゆるフネに宿り航海と乗員の安全を祈っておるのだ。
ワシは実際あれと話をしたことがある。」
…と、思ったら、知っていた。人は見かけによらぬものだ。
「分隊長には見えるのか。」
「ああ。言ったじゃろう。いろんなものが見える、と。お前さんたちの中にいる「鬼」もしっかり、
見えておるぞい…。」
本当に見かけによらないハゲだ。
「あらゆるフネと言ったが…このいせにはいないように見えるのだが。」
「お前さん気がつかないのか。幸せな奴じゃ。自分の教官の名前、よく思い出してみるがよいぞ。」
ハゲはどこかへいってしまった。教官?あのいけ好かない女か。志摩いせだったか?
いせ?マストを見る。そうか…あの女、この艦の…。
「自分の艦をほっぽらかして、何をやっている…本当に無責任な奴だ!」
「なに〜いつは、どしたの?」
「急に大きな声、びっくりしました。」
「ああ、実はな…」
「ええええ〜!」
>361
菊水所属新井ちゆ殿
暴走せし式神を撃退、皇女萌宮もなこ陛下をお救いせし功により、
貴君には2級土筆一文字勲章が授与される。
受勲式は後日、萌宮もなこ陛下御立席の上行われる予定。
また、式神撃破袖章1組の使用を許可する。
>376
2等水兵菊水わかば他5名
水兵徽章の使用を許可する。
(でんぱ)
2級土筆一文字勲章=旧独逸の2級鉄十字章並み?
式神撃破袖章=これも旧独逸の戦車撃破章みたいなもの?
水兵徽章=パイロット章とか降下兵章とかの類?
……ごめんなさい。軍装関係さっぱり解りません。誰か詳しい人論功行賞やって下さい。
ちゆたんを無意味に偉くしてイヂメるとか。
(でんぱ)
ぱっぱか〜♪
「かかれ!」
艦旗掲揚が終わったあと、当直水兵がサイドパイプを(ほひ〜ほ〜♪)と、鳴らして、
「(ぶん)た〜いっ(せいれつ)!」
分隊整列の号令をかけた。各分隊ごとに整列して、朝の示達が行われる。
「みんなおはよう。分隊長から。休め。先日からいっこたちが我が分隊で勤務しているわけだが、
彼女らの派遣元の皇宮警察から徽章着用の許可が出たので紹介する。わが海軍の水兵と区別するための
特別の徽章だそうじゃ。しかもこの娘らが第1号。いっこ、にこ、さんこ、よんこ、ごこ、ろっこ、前へ。」
菊水に錨をあしらった真新しい徽章が胸に光る。
「と、まあ、わしらと区別するための徽章なんじゃが…。仕事の上で区別する必要はないぞい。みんな、
いままで以上にこの娘らを使ってやろうじゃないか。わはは。」
「ぶんたいちょぉ〜ひ〜ど〜い〜の〜。」
「以上で紹介を終わる。そうそう、ワシからもお前さんたちに渡すものがある。」
「真っ赤な腕章?なんですか?これ。」
分隊のほかの水兵たちがああ、あれか、おれもやったよ、懐かしいななどとうなずいている。
「初任水兵教育中の腕章じゃ。それをつけている間はな…」
「間は、なんだというのだ?」
「上陸止めじゃ。わはは。」
「うわぁ〜、ほんとぉ〜にひどいの〜!」
「水兵なら誰でも通る道じゃ。いさぎよくあきらめい。分隊長からは以上。じゃ、次先任頼む。」
…示達が終わり、兵たちは持ち場に着いた。練習艦いせの一日が始まる。
>403
ちょちょちょっとまってください私に勲章ですか?
そんな私活躍なんてしてないですあれは菊水の先輩
ってこれは内緒だったばれちゃったらきっと大変な
ことにでももなこ様を守ったのはホントのことだし
それならプラマイゼロでお咎めなし?てゆうか私の
方こそ何にもしてないのに貰っちゃったらそれはそ
れでおおごとの様な気もするしなによりも実力も無
いのに変に出世なんかしちゃったらそのほうがいろ
いろとやばいような気がするだいたい私なんて霊力
は多いほうだけどコントロールが上手くできないし
第一現場に出たらすぐに緊張したりパニックにおち
いったりでろくに動けないし式神退治の時は霊警の
先輩が心理障壁強化してくれたからこそあれだけ動
けたわけだし私なんてとりえも胸も無いんですって
胸は関係ない胸はなんで胸の話が出てくるのそもそ
も活躍と言っていいのは結界(以下小一時間続く)
>403
〜酒場〜
某名無し菊水Aの証言
「私なんか小銭投げ付けただけですよ。はは、全然効果ありませんでした。
最後は新井隊員が霊視と言霊で式神の急所を暴いたのが決め手でした」(虚言無し)
某名無し菊水Cの証言
「私はただサポートをしただけでした。倒れた霊警隊員を介抱して、
指示に従って巻物投げたり電話したり、その程度です」(虚言無し)
〜病院〜
某霊警隊員A,Bの証言
「我々は式神に不覚をとってしまい……ウウ、キモチワルイ……よく覚えていませんが、
萌宮を護り活躍していたのは、我々霊的警護セクション隊員の新井ちゆであります」
某名無し菊水Bの証言
「ええ、昔は霊警にいましたけど──いえ、式神に対抗する霊力など持ってません。
式神に打撃らしい打撃を与えたのは、あの発展途上胸だけです──ええ、発展途上です(虚言無し)
きっとあと少しくらいは大きくなりますよ。こんな風に揉んでれば──ごーるでんふぃんがー!」
(看護婦にアタック)
むにゅむにゅ「きゃああああ!?」バチーン☆!
夏真っ只中。本格的になってきた暑さは、宮城の庭とて免れるものではない。それでも、楽しげに水を撒いている
侍従が一人。
シャーーーーーーーーー……
「フンフーン♪」
「ふっ、相変わらずだな。」
何気ない事だが、こんな性格の彼女が結構気に入っている。最後に会って半年近く経つだろうか。久しぶりの対面。
気の知れた友人と会うのは、彼の過ごす日常の中で、随分と気の休まる時である。
「よう、千早さん。久しぶりだな。」
「あら御影さん、元気そうね。」
にっこりと微笑みかける千早。何だか帰ってきたんだなと、しみじみ思う。
「仕事帰りでな。ちょっと遠出したから、お土産持ってきたんだ。」
そう言うと懐から包みを取り出し、千早に手渡した。
「どうも有難う。いつも悪いわね、そうだ、お茶でも飲んでいかない?」
彼の仕事柄、部外者に話せる仕事内容は少ない。そこを弁えてか、それとも天然なのか、とにかく無用な問いを
投げかけない所も彼女の良い所だ。
「いや、すまんな。あまりゆっくりもしてられなくてね。」
「そう。また気が向いたら遊びにきてね。」
「ああ。それじゃ、またな。」
そして御影は踵を返すと、宮城を後にした。
千早は先程御影から受け取った包みをもって、自室に帰った。
「さーて、今回は何を持ってきたのかしら。」
ガサガサと包みを開けると、これまた妙な物が姿を現した。何かの動物に見えなくもない。…木彫りのトカゲ?
だが随分と丸く、配色も黄色や赤の混じった珍妙な物だ。
「ふふ。相変わらずヘンな趣味してるわね。」
コトリ、と棚の上にそのトカゲのようなものを置き、再び部屋を後にする。部屋の隅に置かれた棚。そこに幾つも
並ぶ置物は、どれも御影がお土産に持ってきたものだった。
くねくねと曲がった槍を持つ、どこかの部族を現したようなもの。鮭ならぬ西瓜のような物を口一杯に咥えた熊らしき
物。他、色々…。一体、毎回毎回何処へ行っているのだろう。。
「そうだ、あいつの顔も全然見てないな。」
宮城を後にした御影は、ふと思いつき、行く先を変更する。
「キ---!!待ちなさーい!!」
「やーなこったぁ!待てと言われて待つ奴なんか居るもんかーい!」
ドタドタドタ…シタタタタタタ………スパーン!ドス…ガラガラガシャーン!!
「ぁ痛て!」
見上げると、そこには冷たい視線で彼を見つめる、鬼の姿が…
「鬼の姿が…」
「…だーれが………鬼だって〜〜〜!!!」
知らずと、口に出してしまったようだ。。
「はぅ、しまったぁ!!!!」
ドス!バキ!ゴス!パンパンパンパン!!
………………
「…元気そうじゃないか。」
女生徒に袋叩きに会い仰向けに倒れている所へ、見知った顔が上から覗き込む。
「…ハハ。ちわ、御影さん。」
「全く。女性というものはな、こう優しく愛でてやりつつ、油断した所を…」
「そうなんだけどさ、もう油断してくれなくなっちゃってさ。」
「…おお、そうか。」
隆史は痛む首をさすりつつ、起き上がって、また座り込んだ。
「あいつら加減ってもんを知らないからなぁ…イテテ…」
隆史が悪の道(笑)に踏み込んだのも、まぁ御影の影響である所が少なくない。
「ふん。あの程度の動きを避けられないお前ではあるまい。あえて攻撃を受けちまう所がまた、お前らしいっつうか。」
「それより、随分久しぶりだね。また悪い事して地方送りにでも…」
「するか!俺はだな、仕事となるとそりゃ真面目にだな…。」
「はいはい。」
そして暫く雑談すると、御影は中学校を後にした。
「そろそろ、戻らないとな。」
「ふぃ〜。肩こるなぁ。」
菊水本部へ戻り、一通り報告を済ませた。この瞬間が一番苦手だ。
今回の任務は、そう大したものではなかった。頭のイカレタ馬鹿宗教家の本部へ乗り込んで、平和的に(ちょっと
コズいたりして)改心させたり。陛下についての誤った認識を、優しく(ナイフを首にあてたりして)説明して
やったり。そして、教祖の言う事を聞かない馬鹿信徒を、少しばかり(死なない程度に)教育してやったり。
いやはや、大人しいもんだ。(をい
「だーれも、死んじゃいないからな。」
確かに、菊水にしては大人しい処置ではあった。
「それにしても、猫耳増えたな。最近えらく激増してるんじゃねえか?」
昔は、そうそう見ることもなかったような気がする。しかし、今では5分おきくらいに猫耳兵の姿を見る事が出来る。
「戦力増強、か。戦でも始めるのかね。……ん?」
御影の視線の先には、ちょっと度が過ぎるくらい砕けて雑談している猫耳兵の姿が。
「まったく。質より量ってのはどうかと思うぞ。。」
溜息をつくと、瞬時に御影の気配が消え失せる。最早、目に入ったとしてもそれが人であるか気付く事はあるまい。
「んで、ボクもお買い物行きたいってね!」
「うんうん。その通りだにゃ。」
「…楽しそうだな、俺も混ぜてくれるか?(ボソリ」
「んに゛ゃ!!!(ビクリ」
「……な、な、何にゃ!?」
突然背後からかけられた声。動揺のあまり尻尾を逆立てて振り向く猫耳達。
「い、いつの間に…」
「そんな。ボク達に気配読ませないなんて…」
「それだけお前らが弛んでるって事だ!ほれ、さぼってないでさっさと訓練行け!」
パァン!2人(二匹)の背中を叩くと、にこやかに手を振る。
「精進しろよ〜。」
「「は〜い。。。」」
2人の背を見送ると、そろそろ自室に戻るべく方向を変える……と、そこに興味深い人間が映った。
「お、こりゃ有名人だ。」
ちょっとほおっておくのは勿体無い。近頃の彼等は、評価が飛びぬけて上がっている。ここは一つ話しをしてみるのも
悪くないだろう。
「よぅ、最近頑張ってるんだってな。調子良いみたいじゃないか。」
声を掛けたのは、3人一組で行動をすることが多い菊水の人間。菊水'sなんて呼ぶ奴も居るみたいだ。
大きなクーラーボックスを手に、もなこ様が飛び跳ねるようにして前を行く。
「あらあら……もなこ様、お気をつけて! あんまり振り回すと、崩れてしまいますわ」
クーラーボックスの中は、保冷剤のドライアイスと、パッドごと冷蔵庫から移したティラミス。
これから、もなこ様を護って怪我をしたという、警備の方々へお見舞いに行くのだ。
……私からも、よくお礼を言って……それから、お詫びもしておかなければ。肝心な時に、馬鹿々々しい失敗でいられなかったのだから……
ティラミス、気に入ってくださればよいのですけど。
相手が男性と言う事もあり、甘いものは口に合わないだろうけど、もなこ様と一緒に作るとしたら、やはりコレしかなかったし……
「モエリア先生? どうしたのですか?」
「あ、いいえ……ごめんなさい、何でもありませんのよ」
「……先生」
もなこ様は、何か言いたそうだ。私が考え事をしていたせいで言い出せずにいたのだろうか?
そんな気を遣う事はないのに……やはり、宮城と言う場所、内親王という立場が、
こんな幼いもなこ様にも枷になっているのだろう。
「なんでしょう、もなこ様? 何か気になる事がありますの? 私に遠慮などなさらないで下さいな」
「今度、こうむ≠する事になったのです。もなこを助けてくれたおねえさんに、くんしょうをあげるのです」
「まあ、それは素敵な事ではありませんか。きっと上手くできますよ……」
「……でも、もなこを助けてくれたのは、そのおねえさんだけじゃないのです……
これからお見舞いにいく、お兄さん達もがんばったのです。それで怪我を……
だから、もなこは、みんなにくんしょうをあげたいのです」
……初めての公務で緊張しているのかと思ったら、そんな事を考えていたのか……本当に、もなこ様は素晴らしい資質をお持ちだわ。
「でも、もなこ様。怪我をした方も、承知の上の事なのでしょう?」
「そうです。でも、よくわからないのです……どうしてお兄さん達は、
くんしょうは、あのおねえさんだけに上げてください≠チて言ったのですか?」
「そのお姉さんは、もなこ様にどんな事をしてくださったのですか?」
「ずっと、そばにいてくれたのです。もなこの手を、ぎゅって握っていてくれたのです」
「まあ……それならば、他の方々がそう言うのも、当然のことですよ。そのお姉さんは、一番大事な事をしてくださったのですから」
「一番大事な事……ですか?」
もなこ様は、立ち止まって、何の事だかわからないとでも言うように、首をかしげている。
「そうです。もなこ様……それが一番大切な事なのですよ。
絶望している人に希望を与える事、傷ついた人を癒す事、それがなければ、たとえ戦いに勝ったとしても、悲しみしか残らない。
だから……もなこ様、一番大切な事は、そばにいてあげる事。そばにいてあげられなくても、その人のために思う事。祈る事……」
「……それだけでいいのですか? そんな簡単な事なのですか?」
「もなこ様、一番大切な事だから、いちばん簡単なのですよ。信じる事、希望を持つ事、愛する事……それは、
どんなにお金や力がなくても、独りぼっちでも、たとえ死に瀕して指1本、声一つ上げられないような時になっても、
いつでも、どこでも、誰でもできる……
なぜなら、それこそ人間が人間であるために必要なことなのですから」
「……んー……ちょっと、難しいのです」
「難しくなんかありませんよ。現に今、もなこ様がなされようとしている事がそうなのですから。
お見舞いに行って、ほんの少しの間でも一緒にいてあげる事……それは充分に素晴らしい事ですよ」
まだもなこ様はよく判らないというような顔をしていたけれど……
病院に到着する頃にはようやく吹っ切れたのか、いつもの笑顔に戻って、病院の玄関に向かってかけていった。
……もうちょっとで、ティラミスがグシャグシャになるところでしたわ!
※デムパ
お見舞いのシーンはお任せします。シスターは自由に動かしていただいてかまいませんので。
※デムパ
>>396 慎重に、慎重にドアに手をかける。
「(ノゾーキ!(・∀・)イイ!)」
「(ノゾーキ!ノゾーキ!)」
ゆっくりと、隙間を作ったところで、脳内ハードディスクに永久保存するべく目を凝らす。
湯煙の向こうに褐色の肌が動いている。背を向けているそれは紛れもない肢体。
「((;´Д`)ハァハァ )」
「((・∀・)イイ!)」
女は気付いていないのか、体を洗い続けている。ボディーソープの匂いが2人を刺激する。
「……(ヤ、ヤル?ヤッチャウ?)」
「(レイープ!レイープ!)」
地下室。邪魔者はいない。助けも来ない。2人を自制させる要因などここにはなかった。
シャワールームにはあまりに無防備な女が一人。押さえつけてしまえばこちらのモノだ……
もう、迷うはずもなかった。勢いよくドアを開け放ち、女の手を取って押さえつける……
はずだった。
ドアを開け放って2人が見たのはシャワールームにたたずむ黒猫の姿であった。
思わず目を疑う2人。水の流れる音と、ボディーソープの匂い…と、黒猫?
「にゃあ」
一声鳴く猫と目が合う。金色の瞳が光る。その目に引き込まれるように動けない2人。
後ろで扉が閉まったような音がした。水が流れ続けている。シャボンの匂い。猫の瞳。
……………
>>416 気付くと2人は誰もいないシャワールームに2人きりでいた。
扉を開けようとするが開かない。持っていたはずの銃は扉の外に置いたまま。
水が流れ続け。いつしか、排水溝から溢れ出して来る。天井からは白い粉が降ってくる。
「!?!?ミズ!ミズガ!」
「ゴホッ!コレッテ、セッカイ?ゴホゴホ!」
慌てふためく2人。降り注ぐ石灰と、溢れてくる水。どんどん足元が水浸しになり、石灰で固められてゆく。
「タスケテ!」
「ナニコレ!ドウナッテルノ?アケテ!」
扉はびくともせず。シャワーの栓も言う事を聞かない。ついには腰まで石灰水で埋まる。
濃度を増す石灰水は2人の動きを鈍くさせ、下半身を完全に固めてしまう。
「ウゴケナイ!ウゴケナイ!」
「ナンデ?ドウシテ!?タスケテ!!」
悲鳴を上げる口にも石灰は入り込み、全身の動きはさらに鈍くなってゆく。
シャワーの水はどんどん溢れ、ついには顔の辺りまで漬かってしまい、2人は完全に固められてしまった。
悲鳴を上げることももう出来ない。口を開けば水が流れ込んできて呼吸が出来ない。ぎりぎりの水面。
そこで水はぴたりと止まった。しかし、それは彼らにとって幸福であったのだろうか。
身動きは完全に封じられ、呼吸もままならず、声もあげられず、ただ意識だけがある状態。絶望的な状況下。
2人の神経をその状況はあっさりと破壊した。
「(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク 」
「(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク 」
全身を硬直させたまま、2人は耐え切れず発狂した。
>>417 ゆっくりと、バスタオルを手にシャワールームから出る女。
シャワールームには2人の男が放心している。目は何も映さず、呆然と天井の明かりを眺めている。
「ったく。この非常時に覗きってのはいい神経してるわよね。」
バスタオルで体を拭きながら独語する。2人の方を振り返りもせずに。
……2人は黒猫の「魔眼」を受けたのであった。黒猫の魔眼は「幻視」。この世ならざるものをこの世のものとして定着させる。
また、この世のものに対しては強力な幻覚作用をもたらす。まともに喰らえば精神崩壊さえ招くほどの……
「どうしよっかなあ……着替え。」
バスローブ姿のまま、黒猫はまるでデートの服を選ぶかのようなうきうきした顔で服を選び出した。
30分後。
和服に割烹着という格好で黒猫は部屋から出てきた。あまり納得はしていないようだったが…
シャワールームには脱ぎ散らかされた服たちと、2人の抜け殻になった男が残された。
ちなみに彼らはその数分後、思い出したかのように戻ってきた黒猫によって惨殺された。
2人は覗きに対する復讐とばかりに目を抉り取られ、耳を削がれたうえで、壁に叩きつけられ…
その合間にも2人の意識がこちら側に戻ってくる事がなかったのはおそらく彼らにとっては幸福だったのかもしれない。
>412
「──よぅ!」
フレンドリーに呼び止められる。
「最近頑張ってるんだってな。調子良いみたいじゃないか」
20代後半の美丈夫が、なにやら楽しげに近付いてくる。見覚えがある──あるはずだが、
記憶に靄がかかっているようで、よく思い出せない。
「…………誰?」
「…おいおい。確かに俺は最近こっちへ顔を出してないが、冗談きついぞ」
怒ってるのか笑ってるのかわからない奇妙な苦笑を見て、ようやく思い出す。
「御影…さん?」
それは本名ではない。菊水隊員のトップスリーである甲、乙、丙配下の名無し菊水とは別に、
主に単独で特殊な任務を行うエージェントには、その能力に見合った権限とコードネームが与えられる。
某国の秘密諜報員のようなイメージが近いかもしれない。大抵の名無し菊水が目指す地位だ。
彼は自分が菊水へ入隊した時には既に”御影”と呼ばれていた。自分の最後の訓練であり最初の任務と
なった”粛清”は彼が見届け役だった。それ以来の付き合いだが、自分が今のような性格になったのも、
彼の影響である所が少なくない。
「……ここは、菊水本部ですよね?」
「はぁ? 何言ってるんだ?」
「私は病院にいたはずですが……」
「ああ、そういえばチームの奴が入院したんだってな」
「……病院でアイツとケンカしてたらヤツが乱入してきて、アイツとタッグを組んで私を吹っ飛ばして、
気が付いたらココに……」
引きつった顔で一歩引く御影。
「お前、電波飛ばすのは止めろって。以前より酷くなってるぞ」
「……シスター」
夢遊病者のように、勝手にフラフラ歩いて行く。
御影は怪訝そうに暫くその後姿を見送っていたが、肩をすくめて歩き出す。
(…………ん? 入院してるのって、あいつじゃなかったっけ?)
振り返ると、そこには誰もいなかった。
「……まあ、いいか」
わりと大雑把な性格のようだ。
待ちに待った、もなこ殿下非公式お見舞いの時間が来た。
霊警A&B「「ヤッター!」」
だが霊警A,Bのお見舞いシーンは省略。
霊警A「──そんな!」(ガーン)
霊警B「ひどい!」(泣)
コンコン。
医師が病室の扉を開く。紫村と後藤はその場で素早く敬礼する。二人共さすがに緊張の色は隠せない。
「こんにちは、なのです」
「失礼致します」
もなこ様と、その背後に従うようにシスター・モエリアが入ってくる。
「らくにするのです」
「はっ。本日は私のような者の為に、光栄であります」
後藤と医師はアイコンタクトを交わすと、さり気無くベットの左右に移動した。それぞれハリセンと
麻酔注射を後ろ手に隠し持っている。念のためだ。
もなこ様はしごく真面目に、甘い香りの漏れ出るパッドを差し出した。
「ごくろうだったのです。ケーキをたべるのです」
「えっ…こっ、これはまさか…」
「ええ、もなこ様と私とで作りましたのよ。皆さんの分もありますから、ティータイムに致しませんか?」
穏やかに微笑みながら、シスターはバスケットから簡易ティーセットを取り出す。
「おお、それは凄い」
「人生最良の日か…」
自分が作ったケーキで感動に震える男達を見て、もなこ様は嬉しそうに尻尾を揺らしていたが、
少し真面目な表情で紫村に問いかける。
「…くんしょうは、いらないのですか?」
紫村はちょっとだけ考え、答える。
「もなこ様は、このティラミスと勲章、どちらが良いですか?」
「もちろん、てぃらみすなのです!」
「そうでしょう? 誰に訊いても、絶対そう答えますとも!」
梅雨も終わり、からりと晴れ上がった青空の下を、麦藁帽子を被った少年が歩いている。
手には虫取り網と虫篭。そう今は夏休み。子供にとって一年で最も楽しい時間の始まり。
「……まあ、僕にはあんまり関係ないんだよね」
説得力の無い格好で呟く。別に遊んでいるわけじゃないよ。最近ちょっとしたアルバイトをしてるのさ。
(でもニホンちゃん達とは遊ぶ約束をしているんだけど)
「やほー教授」
「あはははーっ、やほー水上くん。今日の成果はどうでしたかーっ?」
「まあまあだよ。今日は5匹」
僕は教授に虫篭ごと(゚∀゚)×5を渡す。
「でわ5千円ですーっ。おまけにオヤツを付けるのですよ?」
「うん、ご馳走になるよ」
葛切りはシャーレに山盛り。冷たい麦茶はビーカーで。
「これはですねー、吉野本葛なのですーっ。黒蜜も京都から取り寄せたのですーっ」
教授はスポイドでドクロマークの付いた壜から黒蜜を吸い出しながら解説する。
僕はピンセットでシャーレから葛切りを一切れとって口に運ぶ。美味しいけど…。
「……やっぱり見た目も大切だよね」
「あはははーっ。この六九式の隠しオヤツを分けてあげるのですよ?特別なのですよ?」
「はいはい。でも、あの虫を集めてどうするつもりなの?」
「もちろん解剖してっ、実験してっ、改造してっ(略)あはははーっ」
嬉々として語り続ける教授。教授がマッドな事、すっかり忘れてたよ。
「……ええと、あっそうだ”師匠”はどうしてるかな?(汗」
僕のナイフ投げの師匠は、猫耳兵士なのさ。
「ほえ? ああ猫耳遊撃Aのことですか? あの子は今、ひみつ☆特訓をしてるのですーっ」
「へえ珍しい。師匠は猫耳兵士で一番強いんだよね?」
「確かに白兵戦では1,2を争う実力なのですーっ。ただあの子はとても気まぐれさんなのですが、
最近強力なライバルが現れたので精進しているのですーっ。良い傾向なのですーっ」
「ふーん}
久しぶりに指導して欲しいし、ちょっと見に行ってみようかな?
「・・・・・・一体、何時になったらこの仕事は終わるんだぁーーーーっ!!」
その頃、貫大人は書類の山に埋もれて悲鳴を上げていた・・・・・・
大帝国海運所属、某国船籍タンカー「とっとり丸」が天然ガスを満載し、帰国の途に着く。
わが国へはもうすぐ。船員たちも心なしか嬉しそうである。
「船長、あとすこしで日本ですね。」
「ああ。そうだな。とっとと帰って、酒でも飲むか。」
海は非常に穏やかで、月の綺麗な夜であった。
「船長!レーダーに高速で接近してくる物体!」
「な!」
ウイングに出る。物体?暗闇の中を、オレンジ色の尾を引いて近づいてくる物体。
テレビで見たことがある。
「ミサイルだ!!」
ミサイルはとっとり丸の上空で大量のアルミ片を撒き散らして爆発した。
「レーダーが使用できません!」
「一体何者だあ…日本近海でこんな無茶やるのは…!NKか?Cか?それともRか?」
「右舷に飛翔体!目視でき…もうだめだぁ!!」
ミサイルは直前で方向を変え、どこかへ飛び去っていく。
「なんなんだぁ…。」
「お答えしましょう。これは海賊行為です。」
透き通るような女の声。見事なプロポーションを包むチャイナドレス。
「この船は我々が制圧しました。あなた方の身の安全は保障しましょう。
速やかなる下船をお願いいたします。」
女の後ろには小銃を構えた兵士。続々と出てくる。このブリッジにいる人間では勝ち目はない。
「本当に、安全は保障してくれるのだろうな?」
「お約束しましょう。」
30分後、とっとり丸乗員は総員、救命筏に乗って下船した。船に残ったのは海賊たち。
「小姐。今回もお見事です。」
「当然です。さあ、はやくこの船を引き渡してしまいましょう。」
海賊たちに操船され、とっとり丸は進む。
「小姐!発光信号です!マツシマヤ、アアマツシマヤ!」
「こちらも信号。マツシマヤ、トリニクギンザニタカシマヤ。」
とっとり丸の周りを軍艦が取り囲む。独特の艦影。R国の艦艇だ。
「(いやあ、えろうすんまへんなあ。いつもおせわになっとりやす)」
R国の士官が乗船してきた。
「(今回も我が国にとって必要な物資の調達、ほんま、感謝、感謝ですぜ。)」
「(次席、金が指定の口座に振り込んであるか確認しなさい。)」
「…(小姐、確かに振り込んであります。)」
「(そういうことですわ。では、この船はもらっていきますわ。)」
「シャオチェ!別方向から発光信号!ナツクサヤ!」
「返答。クサヤクサイカ、ショッパイカ。(どうやら私たちの方も迎えが来たようです。
では、ごきげんよう。)」
R国艦艇を押しのけて、とっとり丸に接舷する一隻の軍艦。メインマストに、赤い旗。
胴体の2つある、奇妙な形をした艦。
「(またたのんまっせ!)」
R士官が女に敬礼する。女も敬礼で返す。その敬礼は…見事な陸軍式であった。
「(残念ですけれど。海賊稼業はもう終わり。私たちの皇女が帰ってくるのですから。
次に会う時はあなたは敵です。さようなら。)」
「(ちょっと、まってぇな、冗談きついわ〜姐さん!)」
R艦隊に護衛され、とっとり丸は闇に消えた。軍艦のブリッジで、主のいない艦長席を
見ながら女は感慨にふける。
「…我らが騎士様は無事に殿下に会えたのでしょうか?あの間抜け騎士ではやはり少々不安…。
やはり、この私が行くべきだったのでしょうか?どう思います、水兵A?」
「小姐…どっちもどっちだと思います…。ダイタイナンデチャイナナンデスカアノヒトトイイアナタトイイ。」
>420
病室の床に広げたナイロンのシートの上で、少し遅めのティータイムが始まる。
シスター・モエリアのレシピによるティラミスは、当然ながら本格的なイタリア風で、
材料にも使われているエスプレッソは今まで飲んだ事のない美味しさであった。
何より、もなこ様とシスターが手ずから作ったそれはまさに究極の一品といっても過言ではない。
「むむ、この味は…!」
「おいしいのです」
「エスプレッソのお代わりは如何ですか?」
「あっ、頂きます」
「もなこも、えすぶれっそがほしいのです」
「宮様はミルクの方が宜しいかと。夜眠れなくなりますよ?」
「へいきなのです──(ごくん)」
目を閉じて、きゅーと眉を寄せるもなこ様。その余りにも可愛らしい仕草に、男達の時間が止まる。
「あうう、にぎゃいのです。おとなのあじなのです」
「まあ、ふふふ」
「──あ、そういえばアイツの事、すっかり忘れていたな」
紫村と後藤は顔を見合わせ、そしてニヤリと意地悪げな顔をする。
「宮様、実は隣の病室に意気地なしの同僚が引き篭もっているのですが、そいつも式神退治で
少しは頑張ったので、このティラミスお裾分けしたいのですが」
「いくじなし、ですか?」
「はい。そして宜しければ、宮様の御手で渡してやって欲しいんです」
「わかったのです。もなこがもっていくのです」
今日は食堂でおいもの皮むきをやりました。補給科の皆さんはいい人たちです。
いつもならつめでしゃき〜ん、ってやっちゃうんですが。皆さんが口に入れるものですから、
きちんとペティナイフで皮むきをしました。ちょっと指を切ってしまいました。
テレビを見ると、海賊のニュースをやっていました。みんな、緊張して見ていました。
分隊長がやってきて、「近いな。なにもなければよいのじゃが…」とかいかにも
突っ込んでほしそうにしていたので、突っ込んであげました。
「近い、どういうことですか?分隊長?」
「おお、にこか。いやな、次のひりゅうの訓練支援、ちょうどあの辺りの海域なんじゃ。」
「そうですか。私たちもちょっと退屈していたところです。なにもなければいいですね。にゃぁ。」
「…たのもしいやつじゃ、わはは。」
この単調な生活が終わるなら、海賊も大歓迎です。ああ、早く出港しないかな。
三◇重工業から海軍への引渡しが無事終わったひりゅう。その艦橋に、明らかに場違いな人影が3人。
一人は、菊水調整課の田中。もう一人は、白衣を着た研究員。そしてもう一人は、
ふりふりな服を着た幼女。
「ようやく完工しましたね。海軍さんと何もなくって、本当に良かったです。」
田中が研究員に言う。
「…それは我々防疫給水部が常に他と何かもめているような口ぶりだな。実際その通りなのだが。」
フンッと鼻で笑う研究員。
「だが、海軍は本当に何を考えているんだ?人艦一体?真の全能発揮?まったく分からんよ。
まあ、あとはお前、調整の仕事だ。おれは帝都に帰る。九州は熱くてたまらん。」
「帰っちゃうのぉ?お兄ちゃんにもあたしのかっこういいとこ見て欲しかったなぁ〜☆」
幼女が口を開く。
「あたしねぇ、楽しみなのぉ☆あ〜あ、早く戦いたいなあ…他の国のおふねが沈むところ、
あたしとおんなじ女の子が苦しみながら消えていくところをたっぷりたっぷりた〜っぷりみていたいなぁ〜☆」
フリルスカートをひらりと翻して、くるっと回る。その足元には影がない。
「空母ひりゅうの船魂が、こいつだとはな?一回帝国海軍の艦全部見てみたいもんだな?田中?」
「そうだな…はは…。ひりゅうちゃん、今度のは訓練だからね、艦を沈めちゃダメだよ。」
「うん☆あたし我慢するよぉ。でもね、でもね、敵が仕掛けてきたら、撃ってもいいよね、いいよね☆
っていうか撃つね☆叩くね☆引きちぎって海の底に沈めるの☆屑鉄に変えてやるの☆やるったらやるのぉ〜☆」
攻撃本能旺盛なひりゅう。呆れて頭を垂れる田中と研究員であった。
〜傭兵 朽木三郎の場合〜
耳を劈く銃声。火薬と血、油と埃、汗の臭い。死と隣り合わせの緊張感と一瞬が永遠にすら思えるほどの緊迫感。
耐え切れなくなった奴から死んでゆく。終わりの見えない戦い。補給もなく、逃げ場もなく、絶望が前途を阻む。
死にたくなければ撃つしかない。生き延びたければ奪うしかない。
音符はすべて強拍。楽譜は血で書き込まれ、銃声がffでとてつもない速さの旋律を歌い、救いの見出せない葬送曲を自分達で奏でてゆく。
「はは、楽しい」
自嘲気味に。手は休むことなくUZIの反動を押さえつける。はっきり言おう。俺はこの状況を楽しんでいる。
久しぶりの戦場。理不尽な暴力と、絶望的な状況と、血と鉛玉と、火薬の匂いに満ちた戦場に帰ってきたのだ。
国に帰ってきたからというもの退屈しきっていたこの俺に「あいつ」はなんと素晴らしいプレゼントをくれた事か!
こんな事ならもっと早く帰って来るべきだった。ゲリラやテロにうつつを抜かす時間がもったいなかった!
が、一つだけ、違う事がある。それが俺にさっきから違和感を与え続けている。
相手はいつも、人間だった。恐怖と怯え、正常と狂気、不安と激情、怒りと悲しみ、快楽と絶望に満ちた人間。
戦場は常にそうだった。しかし、今俺たちの前にいるのは何だ?あのふざけた格好をした化物は!
ひたすらに撃つ。そうしていないと理性が飛びそうになって不安になる。いや、命に関わる。
机や椅子で作り上げた即席のバリケードの向こう、悠然と立っているあの、ふざけた女。
黒の留袖に割烹着。まるで華族の家の女中のようなその姿。亜麻色の髪に耳を生やし、浅黒い顔をしたあの悪魔に。
たった20分前。俺たちの目の前に唐突に現れて一人の首を捻り潰し、微笑みさえ浮かべやがったあの化物に。
そして、俺たちが反撃の態勢を整えるまで余裕でそいつの死体を喰らい続けた吸血鬼に!
あいつ一人のために俺はかつてないほどの死線を感じ、脳の全機能が「奴はやばい!」と告げているのだ。
銃声が鳴り響き続ける。「奴」になんで当たらないんだろう?素早くマガジンを変える。熱くなった薬莢が転がり、
数秒と間をおかずに銃声が再開する。銃口の向こう、「奴」は哂っていた。口の周りを血に染めて、俺たちを嘲笑っている。
「ちくしょう!なんだってんだ!あいつは!」
誰かが叫んだ。
>>428 風が逆に吹いた。と、隣でイングラムをぶっ放していたそいつの顔が吹き飛んだ。血飛沫が俺のところまで飛んで、体が倒れていった。奴は自分が死んだ事さえ理解できなかっただろう。
向き直る。奴が何か投げたらしい。壁を見る。笑うしか、なかった。
石ころ程度のものが奴には45口径のマグナム弾の代わりになるらしい。冗談にもなりゃしない。言っても誰も信じやしないだろう。
近づいてくる。何てことだろうか、奴には銃弾が止まって見えるのか。全部避けていた。これも悪い冗談だ。夢なら覚めてほしいがどうもこれは現実らしい。
それでも撃つ。しかし、俺の勘は「当たっても無駄だ、逃げろ!」と叫んでいる。おそらく、それが正しい。また一人、「ただの石」に頭をぶち抜かれて逝った。
ここまで来るとはっきり、奴が微笑んでいるのが見えた。ああ、奴は楽しんでいる。俺と同じように。
しかし、奴は「戦場が楽しくてしょうがない」俺とは違う。「人を殺す事が楽しくてしょうがない」のだ。
おそらく奴にかかれば、日曜日の公園でさえ死地になるのだろう。殺人鬼。人のことは言えた義理ではないが、奴は間違いなくそれだった。
3つ目の石が3人目の腹を打ち抜いたとき、俺は迷うことなく撤退を選択した。奴には勝てない!
俺が後方へ下がった時、最前線にいた奴が捕まった。頭を掴まれ、釣りあげられる。
哀れ、そいつは恐慌した他の奴らの銃撃によって蜂の巣にされた。肉片が飛び、腕が落ち、頭がなくなってもそいつは「奴」の盾にされた。そして、胴体に大きな空洞が出来た時、「奴」の姿はそこにはなく。
「上だ!」
天井に、赤い目が光る。思わず叫ぶが、遅かった。銃口を向けるのよりも早く、舞い降りた「奴」は、血に染まったその手を振り回した。
目にも止まらぬ恐ろしい速さ。黒い閃光が狭い通路を跳ね返り続ける。
「うふ、うふふふ、ふふっふひゃ、ふっふっひゃはは、ふくっ、くきゃきゃきゃひゃひゃはははっ、あひゃひゃひゃひゃひゃっ」
笑っている。俺は黒い渦を目前に呆と立ち尽くしていた。俺だけではない。他の奴らも…
>>429 黒い渦の中から笑い声と、悲鳴と、血飛沫が巻き上がり、降り注ぐ。いや、俺たちには見えていた。渦の中、抵抗らしい抵抗も出来ないままに素手で切り刻まれてゆく
戦友たちの姿を。ひたすら笑い続けている「奴」の姿を。圧倒的な、あまりにも圧倒的な暴力を。
数秒……だったのだろう。それですべてが終わった。渦が消えたとき、そこに残っていたのは無数の肉片と骨のカケラと真っ赤な床。割烹着を赤く汚して立っている「奴」の…姿。
「はは、はははは。」
すごい、すごいぞ。俺はこの状況でもまだ楽しいらしい!なんてことだ。陵辱され、蹂躙され、追い詰められてなおかつ俺はこの瞬間を熱望しているとは!
立ち尽くしていた一人が「奴」に首を跳ね飛ばされる。頭が消えた首からは噴水のように血が吹き上がり、その足元に砕けたスイカがゴトリと音を立てて落ちた。
誰かが銃を撃つ。黒い風が吹き抜けて、そいつの体は右側が無くなった。
奴…女は笑っていた。あの割烹着で、なんて早さだ。どうやったのかさえ、俺には見えなかった。あんなの、どうやって殺せっていうのか。
体中を駆け抜ける歓喜を実感しながら。UZIを撃ちまくり、後退する。距離をとらないと。接近戦はまちがいなくまずい。
殺し合いならもう何度と無く経験してきた俺が、ただ圧倒されている。
また一人。胴体にでかい穴を空けられて崩れ落ちる。床が血に染まり、ずるずる滑る。もうここにはまともな人間なんていない。
「バケモノ…だな。」
妖怪なら、俺の出番じゃない。銃弾は銀の十字架を溶かして。聖典を武器化して。黒鍵を持ち込まないと。エクソシストは俺の仕事じゃあない。
ふと、気付くともう、生きている奴すらいなかった。目の前に「奴」が立って笑っている。こうして見るといい女じゃないか。はは、どうかしてる。
「楽しかった?」
ああ、楽しかったな。こういうのは悪くない。戦い、追い詰められ、蹂躙されて、死ぬ。悪く……ない。
「そう、あたしも楽しかったよ。」
いい笑顔で笑う。俺も笑顔を返す。右手はホルスターに伸び、パイソンをゆっくりと女の額に持ってゆく。
「じゃあね。」
引き金を引くのと、女が俺の喉元に口付けるのはほぼ同時だった。あまりにも情熱的なそのキスは俺の意識と命までも奪ってゆく。
…はは、戦場で、女の胸の中で死ねるなんて、最高じゃないか………
「ふっ……!」
短く息を漏らし、静止状態から一気にトップスピードで駆け出す。人の目にはとても
捕らえられない速さ。しかし…
「チガーう。。」
元居た場所から20メートルほど離れた場所で立ち止まり、落胆の表情を浮かべる。
そう、相手は人ではないのだ。ちょっとくらい常識外れのスピードを出した所で
何の役にも立ちはしない。
こうして思い出したかのように動き、立ち止まっては悩み、かれこれ3日ほど経つ
だろうか。一面草で覆われていたはずの地面は至る所で土が剥き出しになっており、
周囲の木々も倒れたり深い傷が刻まれ、この数日行われた訓練の凄まじさを物語って
いる。だがしかし、彼女はまだイメージすら固まらない訓練に苛立ちを覚えていた。
自分の手を眺める。少し爪を伸ばしてみる…引っ込める。この現象自体が、自然界
に起こり得ないものだ。これは黒猫の技。実際目にするまで考えもしなかったが、
自分にも出来る事だったのだ。ここから得た教訓、それは自分を知る事。そう、
まずはイメージを際限無く膨らませる事が必要だった。
「とは言っても、ねぇ?」
例えば…腕を伸ばしてみる?でも伸びた所で大して役に立つとは思えない。
宙に浮く事が出来れば?逆にスピードを殺してしまいかねないような気がする。
「はぁ〜〜〜〜…。」
とさっ。大きく溜息をつくと、そのまま仰向けに寝転がった。
「なーんかーいーあいであーないかなー」
草の上をコロコロ転がる。コロコロコロコロ………
「ちょっとー木陰でーひと休みーー」
コロンコロンコロコロ………
その頃、帝都にある仮のオフィスでは―――
書類の山を片付け、死んだように机に倒れ付す貫大人の姿があった。
「と―――ともえ様―――もう少しですからね―――」
うわ言のように呟くと、そのまま鼾をかいて爆睡した。
>425
「では、いくのです」
もなこ様はお盆を持って慎重に歩き始める。後藤が先導してドアを開け、護衛兼サポート要員として
そのまま付き従う。さすがに御一人で行かせる訳にはいかないし、なにより面白いものが見れそうだった。
ドアが閉まると同時に、紫村は脱力してベットの側面に寄りかかる。
「はー、緊張した」
天井を見上げながら、思わず微笑む。あの硬度10が皇女と対面した時にどんな反応をするのか楽しみだ。
出歯亀に行ってもよかったが、まあ、あとで後藤に訊けばいいだろう。シスターとお近付きになるほうが
優先事項なので我慢する。どうやって口説こうかと思案していると、彼女のほうから話しかけてきた。
「…あの、人違いでしたら申し訳ありませんが、以前カフェバール(カフェ&バーの店)で
お会いした方ではありませんか?」
「えっ、覚えててくれたんですか? 嬉しいなあ。また会えるなんて、きっと神のお導きですね?」
軽口で言ったのだが、シスター・モエリアは真摯に頷いた。
「きっとそうですわ。ぜひもう一度お礼をしたいと思っておりましたの。あの時励まして頂いた
おかげで私の決心が揺らぐ事はなくなりました。務めも少しずつですが順調に果せておりますし、
宮城での暮らしにも慣れてまいりました。本当に感謝しております」
紫村は妙に照れくさくなった。
「あ、あの……ケーキもう一ついいですか?」
「ええ、どうぞ」
いい雰囲気のところへ、看護婦がやってくる。B88の彼女は、少し赤い顔で紫村を睨みながら、
部屋の片隅ですっかり忘れ去られている医師に急患を告げた。
「すぐに行く。"何かあったら"すぐにナースコールをしてください」
医師は紫村の病状は完全に回復したと判断していたが、シスターに念は押しておく。
「ええ、お任せ下さいドットーレ(医師、先生)」
意味が微妙に違うのだが、もちろんシスターに判るはずもない。
医師を見送ってから、二人きりになってしまった事に紫村は気付く。すると急にドキドキしてきた。
単に二人でいるだけだというのに、変に意識してしまう。今までこんな風になった事はない。
(……もしかして、マジで惚れてしまったのか?)
ティラミスを頬張りながら、紫村は真剣に考え始めた。
ハゲの話によると、出港が近いらしい。それで各分隊急に忙しくなってきたわけか。
とりあえず今日は生糧品搭載、まあ食べ物の積み込みか。をやった。
…なんだこれは。岸壁のトラックまで乗員で長い列を組んで、バケツリレー方式で
冷凍の魚やら肉やらを積み込んでいく?これが帝国が世界に誇る最新鋭の海軍か?
と思っても、仕事は仕事だ。ほい、ほい、ほい、ほい、ほい、ほい。時折妙にデカくて
軽い奴(中身は削り節だった。)があって拍子抜けする。ほい、ほい、ほい、ほい。
で、それが終わったと思ったら…弾薬搭載だ。…これもバケツリレー方式で弾薬庫ハッチ
まで運搬する…鬱だ。頭数がそろっている時しか出来ないから、今日やってしまうことに
したらしい。勘弁してくれ。こういう単調な作業が一番嫌いなんだ。
朝の課業整列。今日は飛行甲板でなく、食堂。スクリーンが用意されている。
「諸君、おはよう。艦長から今後の本艦の行動について説明する。本艦とたかなみ、ときつかぜの3艦は
第2護衛隊群の指揮下に入り、空母ひりゅうの訓練を支援する。というのが、今回の行動の目的である、が。
先日、P−3Cが哨戒飛行中に未確認艦を発見、追跡したという情報が入った。その他にも哨戒行動中の
潜水艦も当該海域での未確認艦を発見している。写真を見てほしい。」
スクリーンに写真が映る。そこに移ったのは、軍艦。フェーズドアレイレーダを搭載し、前部には砲が
1門、甲板にはVLS発射機も見える。だが一番目を引くのはその船体が双胴になっていることであった。
「さて、昨今世の中を騒がせている海賊事案、皆も承知のことと思う。この海賊に遭遇した船舶の乗員の
目撃談とこの写真を我が情報部が照合したところ、同一のものである可能性が高い、と判断された。」
バン!机を叩く。
「出港後、第2護衛隊群と本艦、たかなみ、ときつかぜ合流後、第2護衛隊群に連合艦隊司令部より極秘
指令が発せられる予定だ。(第2護衛隊群は我が国船舶の安全を脅かし、経済に多大なる影響を与える不埒な
海賊船を、陛下と帝国海軍の名において無力化せよ!(ついげき)できれば捕獲が望ましい(はぁと))
…今度の出港は長くなる。出港までの1週間、総員必ず休暇をとるように。艦長からは以上。」
我が艦にとって初の実戦、私にとっても久しぶりの実戦。しかも相手は明らかに重武装のシステム艦。
「…あの艦ならひりゅうよりもむしろタイフーン戦隊の方が適任なのではないか?」
ぶつぶつ。
菊水本部の裏手には、大きな森がある。ここは猫耳兵士達の憩いの場になっていて、基本的には
人が入ったら出て来れない。少し離れた「最後の大隊駐屯地」には立派な訓練施設があるそうだけど、
猫耳遊撃Aはよくここで自己流の修練をしている。僕の訓練もここで受けた。師匠の”縄張り”は広くて、
そこから森に入れば、他の猫耳兵士には襲われる心配はないのさ。
僕は気配を抑えて森の中を進んでゆく。10分くらい歩くと、少し開けた場所に出た。
(コロンコロンコロコロ………)
僕と同じくらいの年恰好の猫耳少女が、草の上を気持ちよさそうに転がっている。
あれが秘密特訓かな? 確かに可愛さ2割り増しだけれど。僕は上から師匠を覗き込む。
「やあ、師匠。元気にしてた?」
僕の影が顔に落ちて、師匠は目を開けた。僕の気配にはとっくに気付いていたみたいだね。
「元気だよミズカミ。久しぶりだね。どしたの?」
>436続き
「うん、ちょっと指導をして欲しいんだけど、邪魔だった?」
「んー、いーよ。ボクも気分転換したかったし」
師匠はもう一回りして立ち上がり、パンパンと服を叩く。
「それにしても、師匠がここまで特訓するなんて珍しいね」
「まーね…」
広場を見渡すと、まるで小さな竜巻でも通り過ぎたように滅茶苦茶になっている。さらに良く見ると、
訓練につき合わされたらしい猫耳兵士達がボロボロになって倒れていたり。……あれは遊撃猫耳Bかな?
「ヒドイニャー」
「…イツカ ナカス」
「……あの子達、全員遊撃タイプだよね? あそこまで圧倒できるのに、まだ足りない相手なの?」
「あー、知ってるんだ? うーん、アイツは反則なくらい強いんだよねー」
師匠は僕に黒猫の事を説明しはじめる。内容はグチや泣き言ばかりで、時々身体を小さく震えさせる。
でもそれは武者震い。師匠の顔は楽しそうに笑っていた。ちょっとコワ可愛い。
僕と師匠はいつの間にかまた座り込んでいる。
「ふーん、同じ猫耳兵士なんだ。でもそれだけ体格が違うと、大人と子供だね。同じくらいの能力と
条件下でなら、普通は勝てないよ。僕が軍隊のオニイサンと正面から殴り合いをするのと同じようなものさ。
自分が相手より勝っている部分を使って、むこうの弱点を攻めなきゃダメだよ。師匠は強いから、
今までそんなこと考える必要もなかったかもしれないけどね」
「……なるほど。たしかにそれは…でも……」
「まず、師匠はその黒猫に勝ちたいの? それとも黒猫より強くなりたいの?」
>433
「ご馳走様でした。実に美味しかったです」
「Prego.──喜んで頂けて幸いですわ」
「もう、天にも昇る気持ちです」
「ふふ、tirar mi suは”私を天国につれていって”という意味なんですよ」
紫村はシスター・モエリアの横顔をまじまじと見詰める。イタリア系としては珍しい、金髪碧眼の美女。
整った顔立ちは穏やかでありながら彫りが深く、目が大きく、睫が長い。そのプロポーションは
カソックに隠され、彼でさえ正確には判らない。のだが、実は同僚からの見舞いで彼女の水着写真を
ゲットしていたりする。典型的なイタリア女性の体型だった。日本人と同じくらいの身長、体格だが
手足が長く、頭は小さく、ヒップが短い……良いとこ取りではある。
「…どうかされました?」
「い、いえ」
思わず目の前のシスターに水着姿を妄想してしまっていた。紫村の内で、また天使と悪魔が騒ぎ始める。
だが彼にとって彼女は、もはや性的な対象というよりは、もなこ様と同様に萌えを捧げる存在として
昇華されつつある。今回は例の”神”が降りてくる要素も無く、天使(良心)が勝ちそうだった。
──(゚∀゚)ノアヒャ?
「うっ!?」
突然の頭痛。思考の中に何かが割り込んでくる。
──(゚∀゚)シスター タベタイ! タベタイ! タベタイ! タベタイ! タベタイ! タベタイ! タベタイ! タベタイ! タベタイ! タベタイ! タベタイ!
「ぐ…電…波……やめ……ダメだ悪魔が…シスt…逃げテ……ぐああぁっ!?」
「Ce problema! 大丈夫ですか? Dottoreをお呼びしましょうか?」
頭を抱えて呻く紫村を、シスター・モエリアは慌てて支え励ます。だがもはやそれは逆効果でしかない。
布越しに感じる柔らかな肉体。微かな石鹸の匂いと溶けあったシスター自身の甘い香りが鼻腔をくすぐる。
最後まで抵抗していた彼の良心は、残らず吹き飛ばされた。
ナースコールを押そうとした彼女の手を紫村は掴んだ。悪魔で優しく。
「………………いえ、大丈夫です……ところでシスター、あなたにお話したい事があるのですが」
@解説@
かつて紫村達が調伏した改造萌人テングーンは、両手で触れたり殴ったりしてその能力を発現させるタイプの
スタンド(?)であった。殴られた相手は煩悩エネルギーを注ぎ込まれ、萌えが暴走する。
紫村はシスターに一冊の紙ファイルを渡す。それは後藤が菊水のデータベースからプリントアウトし、
見舞い代わりに持ってきた『武山水着撮影会』のファイルであった。
「付箋紙の貼ってあるところ、見て下さい」
言われたとおりにページを開いたシスターの頬に、さっと朱が差す。それは自分自身の水着写真。
平然とポーズでもしてればいいようなものの、オドオドしている姿は更に恥ずかしい。
「で、ここのコメントを──」
『──その道の達人の目測によると、B108・W72・H96──』
「ノ、ノ!違います!嘘です!デマです!ゴショクです!これはママンのサイズです!」
「ですよね。これは私の属する機関のデータに記録されているものです。ですから私がデータ修正の
手続きをしますので、すみませんがスリーサイズを教えて頂けませんか?」
「そ、そんな事は申し上げられませんわ」
ぷいと顔を背けるシスター。だからその時、紫村の顔に不気味な影が揺らいでいた事に気付かない。
もちろん、オッパイ星人と化した紫村は、既に水着写真から彼女のスリーサイズを割り出している。
目的は、それを羞恥ぷれいでシスター自身の口から言わせることだ(ココ重要!)
「神に仕える身でありながら、偽りを持ってしまって良いのですか?」
「……それは」
「さあ先ずは上から、順番に」
>437
「まず、師匠はその黒猫に勝ちたいの? それとも黒猫より強くなりたいの?」
ミズカミが問い掛けてくる。ううむ。
「わっかんないさ!(大イバリ」
腰に手をあてて、エッヘンとでも言わんばかりのポーズで答える。
「わ、わっかんないの!?」
「あいつ一応仲間だしねー。それに黒猫より強くなっちゃったら、またつまらなくなるし。
でも勝ちたくない訳じゃないし・・・。。同じレベルにたどり着くのが最低条件でさ、その先は
まだよく分からないよ。」
今度は困ったような表情で、ニガ笑いを浮かべる。
(+++ 今日のワンポイント!(核爆)+++
猫耳少女の苦笑い。とりわけ遊撃Aのように普段元気が良く自信に溢れているような者のそれが
周囲に与える破壊力は半端ではない。その昔、あまりの衝動に耐え切れず無謀にも頬擦りをしよう
とした菊水が居た(過去形)とか・・・。
だが水上の心には"ともえお姉ちゃん"が強く刻み込まれている為、さほど影響は受けないのだろう。
追撃:アホな説明…)
「さーて、話それちゃったね。ナイフの訓練しよっか?」
>433
狩谷は追い詰められたような表情で、病室の空きベットの上に正座していた。
目の前には、彼が萌えを捧げた御方がケーキとコーヒーを載せたお盆を持って立っている。
それから後の事は、狩谷はよく覚えていない。
──ごくろうだったのですたべるのですおいしいですか?もなこがつくったのです
おかおがあかいのですだいじょうぶですか?ふるえているのですさむいのですか?
おむねがいたいのですか?ああっないちゃだめなのですよこになってやすむのです
すぐにおいしゃさんをよぶのですがんばるのですもなこがついているのです──
気が付くと、夕方になっていた。どうやら寝てしまっていたようだ。
「……夢、だったのか?」
ベットから身を起こす。視界の端で何かが床に落ちた。腕を伸ばし拾う。
それは折り紙で作られた、勲章のようだった。
>441の時間経過は気にしない方向で。
モニタールームはほう、という溜息に包まれた。
大スクリーンではたった今、最後の犠牲者が肉塊と化した所だった。
「1時間58分。シャワー浴びてなけりゃ1時間20分ってとこか。」
「事前情報無しでもあそこまで探索が可能ってことは収穫ですね。」
「しかしケタが違いすぎるなあ…『杓子』は限定空間での使用例もなかったのにあっさりと…」
白衣の研究員達がモニターを見ながら口々に話す中、ソファーに座った男の拍手が響く。
「いやあ、これはすごいね。うん、すごい。申し分ないよ。」
正面の三つ編みメガネの研究員……宇月は男のほうを振り返りもせずに、モニターを見つめていたが、
はっと我に返ったようにマイクを取る。
「Zeller?聞こえる?今ので全員よ。帰って来なさい。」
『えー、もーう終わり?つまーんなーぃ。』
緊張感のない声。
「ぜーたく言わないの。終わりったら終わりなの!」
『はーい…ちぇ。』
マイクセットを置き、ようやく宇月は男のほうに向き直った。
「以上です。一応、制御は受け付けるようになったと判断できます。後は随時の監視を行っていれば何とかなるでしょう。」
「うん、ご苦労様。お目付けの人選については教授に相談するとしよう。それじゃあ、失礼。」
立ち上がり、片手を軽く挙げると男はモニタールームを後にした。
それを見送り、ふう、と椅子に座り込む。
「ふう、なんとか終わったわ……あとは『鈴』の最終調整とモニターか…誰がやるのかな、モニター。ねえ?」
周囲を見渡すと苦笑している研究員達。無理もない。『鈴』の効力を見るためのモニターは約1年近く黒猫と至近距離で生活しなくてはならないのだ。
そんなの誰が好んでするものか。そんなの引き受けさせられるのはよっぽど運のない人間だ……
……2日後、防疫給水部に呼び出された宇月は与えられた指示書を見て愕然とする事になる……
>439
柴村が、眼に異様な光を称えて見詰めていたシスターの形の良い唇がゆっくりと動いた……
「……困りましたわ。実は、自分でもよく分らないのです」
「へっ?」
キョトンとする柴村に、シスターは続ける。
「計ったことがございませんもの。修道院内の健康診断では、そんな検査はいたしませんし……
修道服は、院より支給されたものですし、私服も……バザーの余り物の中から、適当にサイズの合うものを分けていただいておりますの。
ええと、あの、この写真に写っている水着も、以前勤めておりました南米の孤児院の子供たちを海に連れて行く時に
教会にきていた女性信徒の方からお古を譲っていただいたものですから……」
……なるほど、シスターがこんな大胆な水着を持っているなんておかしいと思ったが、
自分で選んだものではなかったわけだ……
普通の若い女性が、シスターと同じナイスバディだったら、そりゃあ思い切り派手な水着を選ぶだろう。
「……ですから、ここ数年、体のサイズなど測ってはおりませんものですから、本当に分りませんの」
シスターはちょっと困ったようにかすかに目尻を下げながらも、いつもの優しい微笑みを浮かべて言葉を切った。
まるっきり邪心はない。真実を言っているのである。
見事に肩透かしを喰らって、白目をむいてポカーンと口をあけている柴村……
「あら、どうなさいましたの?」
「あ……いや……困りましたね。このデータは必要なのです。
貴女が、もなこ様の家庭教師という重要な職務に就かれている以上、
貴女と言う人物についてのデータは、どんな些細な事であろうとも、正確に詳細に把握されていなければならないのです」
「まあ……そうなのですか? どうしましょう……困りましたわ……」
気を取り直して、一気にまくし立てる柴村。
シスターは赤らめた頬に指を当てて、どうしましょどうしましょと首を小さく振っている……
柴村の眼が、再びキラーンと光る……
※選択肢※
1.「よろしければ、今この場で測らせていただけますか?」
2.「よろしければ、退院した後に私のオフィスまで来ていただけますか?」
3.「よろしければ、今度もなこ様の学校で行われる身体測定に参加していただけますか?」
>398
・・・って、紫村先輩の御見舞いだけじゃなかったんだっけ・・・・。
ちゆ「せんぱーい、大丈夫ですかー。」
霊警A「・・・鬱だ死のう・・・。」
霊警B「・・・激同・・・。」
ちゆ「いったいなにがあったんですか?」
霊警A「・・・省略されたんだよ・・・。」
ちゆ「はい?」
霊警B「もなこ様の御見舞いシーンが省略されたんだよ!!」
ちゆ「はぁ、そうなんですか・・・。」
霊警A「おまえこそさっきうわああああん!とかいって走り去っていかなかったか?」
ちゆ「え? いや、その、あれは・・・。」
霊警B「なにがあったんだ?」
ちゆ「・・・・聞きたいですか?」
霊警B「(け、血涙?!)い、いや、いいよ・・・。(汗)」
霊警B「ところで、おまえ勲章もらえるんだってな?」
ちゆ「あ、はい、2級土筆一文字勲章っていうらしいんですけど・・・。」
霊警A「それなら、霊的警護セクション最深部への立ち入りが許可されるぞ。」
ちゆ「最深部?」
霊警A「ああ、“教授”の秘密施設や実験場があるところだ。」
霊警B「だから、一度教授に挨拶していったほうがいいぞ。」
ちゆ「そうなんですか・・・。わかりました。」
ヒゥ〜ン。P−3Cが飛んでいく。
「お姉さま、またいつものやつです。」
「帝国海軍、必死だな(ワラというところですか。」
萌菜小姐がガラス張りになった艦橋から海を見渡す。
「なるべく派手に、目を引くように、我らが騎士様の要請です。では、派手に行かせて貰いましょう。」
くすっ、と笑い、その後にぱちん、と指を鳴らす。
「上空より未確認機2機!?」
真っ赤に塗られたその機体。Su−33!P−3Cの周囲を飛び回る。
「フランカー!なんであんなもんを海賊が持ってるんだ?本当に海賊かこいつら?」
「帝国空軍のF−15J、スクランブル発進してきました!」
F−15Jが上がってくるとSu−33はどこかに飛んでいってしまった。
「なんということだ、あの海賊は航空機まで持っている…まさか、空母まで…んなこたぁーない、と信じたい。」
「お姉さま、イーグルが引き上げていきますわよ。」
「これで、帝国空軍も我々に眼を向けざるを得なくなりました。私たちの役目は彼らの眼を引きつけること。
とにかく派手に。その目的は唯一つ…。はやくお逢いしたいものです、殿下。」
艦橋から空を見る。もう交代のP−3がやってきたようだ。
「そうです。私を見なさい、見ていなさい。」
くすくすっ、と2回笑って、萌菜小姐は麦茶を啜るのであった。
その日、第13ラボ(通称「黒猫研」)は緊張に包まれていた。その当事者である2名を除いて。
実験体「Zeller」の同調及び最終調整実験の始まりであった。一歩間違えば帝都が血の海となる危険な実験。
「どう?気分は。」
三つ編みメガネに白衣を着込み、生体モニターを見ている女と。
「うん、バッチリ。ぱーっと乱交したい気分。」
半裸でベッドに拘束され、寝かされている黒い肌の猫耳。
「な、何を言ってんのよ!ダメ、ダメに決まってるでしょ!」
2人は肌の色の違い、メガネの有無を除けば奇妙なくらい同じ顔であった。しかも互いに緊張感がない。
「えー?つまーんなーい。」
「あーもー!そゆこと言ってると出してあげないわよ!」
「ちぇ…カタイなあ…」
白衣の女が寝かされている女に鈴を取り付け、モニターをもう一度確認する。
「正常……ね。ま、当然か。」
「あったりまえじゃない、おねえちゃんが作ったんだから。」
「………ま、まあ、許したげる。」
白衣の女が自分の腕に鈴を取り付け、モニターを確認するとpassを入力する。
「さて、これで名実共にあたしとあなたは運命共同体って訳ね。」
「よろしくね、ママ。」
「殺すわよ。」
「イヤン。」
拘束具が解かれ、2人は軽い笑みを交わした。
「さて、とりあえず服を選ぼうか?その間に名前も決めないと不便だしね。」
〜第774号秘匿実験〜
実験体Zellerの制御に関し、生体リングを使用する。
1:『鈴』使用による、2者の同調。
2:親機着用者の生命、精神的優位性の確認。
3:精神調整にも対応可能である事は前実験より確認済み。
4:2者の波長の一致は確認済みであるため、エラーはありえないとの報告あり。
5:距離、時間などについても確認。
6:なお、すべての実験の主席は「教授」の名により執り行われるものとする。
研究員A「どういうことなの?これって」
研究員B「つまり、あの子と黒猫は精神維持装置である『鈴』によって繋がれてるってこと。」
研究員C「じゃ、あの子が死んだら黒猫もってこと?」
研究員B「うーん、そういうのとは少し違うの。あの子の波長によって黒猫が制御を受けるってことなのよ。」
研究員A「じゃあ、あの子が目を光らせてる限り黒猫は勝手な事が出来ないって事なのね。」
研究員B「そゆこと。でも、それには精神の波長がどんぴしゃで適合しないといけないはずなんだけど…さすが、同じ顔ね(笑)」
研究員C「2人って、ホント似てるよね。鏡見せ合ってるみたい。」
研究員その他「まったく。いいコンビだよね(笑)」
>440
わっかんないのかあ。師匠らしいけど。
僕は僕らしく、いつか師匠や教授と敵対するかもしれない可能性を考えているよ。
そうならないことを祈るけれど、カンヌキは菊水嫌いだろうから。
教授の場合は「皇統」の障害にさえならなければ問題ないと思う。猫耳兵士は強いけれど、弱点も多い。
向こうから見れば、人間なんて弱点の塊だろうけれど。
「ミズカミー、集中して」
師匠が木の枝で打ち込んでくる。僕はナイフで受けて、避けて、避けて、斬る。師匠が身軽にかわした
着地点を狙って投げる。かわされる。素早く次のナイフを取り出して構える。試しに、頭上に落ちるように
軽く放ってみる。師匠の視線が一瞬逸れた瞬間に両手で抜き投げする。二本とも木の枝に弾かれ、
最初に投げたナイフは半歩動いてかわされる。
「うん、今のは良かったよー」
落ちてくるナイフの柄を空中で掴みつつ、それを使って走りこんできた僕の突きを受け流す。
キィイン──ポクッ☆
「あうっ」
枝に頭を叩かれて、ひとまず終了。
「あはは、上達したねー」
「……師匠が相手だと、ぜんぜん実感わかないよ」
「ありゃ、ミズカミ、コブできちゃったねー。」
そんな強く叩いたつもりはないんだけど、力加減間違えちゃったかな?
なでりなでり。
「あ、や、やめてよ。へ、平気だよ。」
「いいこいいこー。あはは♪」
この少年が僕の所に来て、どれくらい経つだろう。意外にしっかりしてて、
それでも何処か危うげな感じのする男の子。なんとなーく、気になっちゃう
んだよね。"師匠"なんて呼ばれるのも初めてだったし。
「…どうかした?師匠。」
さっきまでちょっと顔を赤らめて撫でられてたはずのミズカミが、いつの間
にか僕の顔を覗き込んでいた。
「んーん。何でもないよ。」
人ではなく猫耳を師匠に選んだ、変わった少年。この子が僕の所に来る限り
は、力になってあげよっか。
「?」
「何でもないったら。ほら、訓練再開だよー」
「んじゃ、いっくよー!」
掛け声と共に、木の枝を持って間合いを詰める。ある程度の距離に来たところで、
ミズカミはナイフで突いてきた。
「ほっ…と」
後方へ飛んでかわすと、彼は避ける方向に向けてナイフを2本投げつけてきた。
うん、人が飛ぶスピードよりもナイフのほうが確実に早いからね。正解ー。
僕はそれを、後方に飛んでる最中に体をよじって方向転換する事でかわす。
「あ、ずるいや!」
「ごめーん。この避け方は参考にならないかー」
回転により広がるスカートの裾を、両手で押さえつつ着地。さて、今度は僕の番かな。
少しスピードを上げて、右肩、左腕、右腕、頭の順に攻撃を加える。
「よっ…とっ……くっ…」
辛うじてだけど、ナイフでその攻撃をさばく。うん、まあまあかな。
「ほら、避けてばっかじゃ駄目だよー」
「そ…そんな事言ったって……うわっ?」
更に二撃、三撃と攻撃を加えたところで、ついに彼はバランスを崩し後方に転倒した。
ドッシーン!……ストっ。
「いててて…。」
「うん、こんな所かな。なかなか巧くなってるけど、今度は防御面を強化しないとね。」
「……うん。」
なぜか言葉数が少ないミズカミ。
「地味だけどね、走りこみなんかするとイイよー?」
「そうだね。…あの、師匠?」
「なーに?」
「その、そろそろ離れてくれると…」
仰向けに転がったミズカミのお腹の上に、馬乗りになっている遊撃A。
「なーに?嬉しくないのー?(微笑)」
「ななな、何言ってるのさ!?(赤面)」
「あはは。じょーだんじょーだん♪」
>444
紫村は、電波で選択肢をキャッチした。即、解析を始める。どれもなかなか魅力的な提案だ。
しかも選択肢なんて、なんだかエロゲのようではないか(ハァハァ)
選ぶとすれば1だろうか? 2では秘密組織である菊水へ呼ぶという、懲罰ものの愚行を犯すことになる。
自分専用のオフィスなど持ってないし、それにシスターが後で自分で測ってサイズだけ送ってくる、
なんてオチがつきそうだ。3は、まだあるかどうかさえ判らない。もしあったとしても測るのは身体測定の
看護婦だから意味が無い。状況が状況だけに警護もサミット並みの規模となるだろう。
第一、日を置くと同僚や見鬼の使い手に正体を見破られる可能性がある。次元の彼方に吹っ飛ばした
良心も戻って来るだろうし、選択肢2と3は端から問題外であったようだ。
だが何より、欲しているのはスリーサイズではなく、悪魔でシスターの身体なのだ。彼女が想像以上に
天然系だったのには一瞬戸惑ったが、それはそれで都合が良い。だが時間をかけて楽しむ暇も無い。
「──というわけで、選択肢は4番」
「はい?」
きょとんとしているシスター・モエリアの背後に回る紫村。その姿が再び揺らぐ。
まるで違う何かに変わろうとしているかのように。
「シスター、肩に糸屑が付いてますよ」
トン、と手刀で首筋を打つ。あっさり気を失ったシスターを背後から抱き締め、ニヤリと笑う紫村。
「4番、今この場で食べちゃう」
紫村(悪)は気を失ったシスターをベットに放り出し、覆い被さろうとする。その時──
????「ちょっと待ったー!」
バン! と勢い良くドアを開け飛び込んできたのは、遠く菊水本部まで飛ばされたはずの紫村(善)だった。
紫村(善)「キサマ、オレのシスターに何をするッ!」
紫村(悪)「早っ!? 当分戻って来れないはずだぞ!」
紫村(善)「それはな……大人の事情だ!」(血涙)
血の涙を流しながら(悪)に殴りかかる(善)しかし(悪)はカウンターを合わせてくる。
☆ゴッ☆
全く同じダメージを受け、のけぞる(善)と(悪)
のけぞったまま、腕をビシリと天に掲げる紫村(善)その掌が黄金に輝く。
のけぞったまま、拳をダラリと地に堕とす紫村(善)その掌が暗黒に輝く。
紫村(善)「ごーるでんふぃんがー!」
紫村(悪)「だーくねすふぃんがー!」
☆☆バチッ☆☆
紫村(善)「意識を奪って無理やりとは言語道断! それでもオレか!?」
紫村(悪)「既成事実をつくっちまうんだよ! 彼女は俺達とは住む世界が違う! 欲しいんだろ!?」
☆バチッ☆(゚∀゚)☆バチッ☆
物音に意識を取り戻すシスター。目の前では二人の紫村が手を発光させながら殴り合いをしている。
「……Buona notte.」
再び気絶するモエリアさん。
☆バチッ☆バチバチッ☆バチッ☆
紫村(善)「くっ、さすが自分自身」
紫村(悪)「お互いに知り尽くしてるって事か。だがこっちが本体だ。しかもオレにはコイツがいる!」
(悪)の腰にベルトが浮かび上がる。バックルの部分には(゚∀゚)のマーク。
紫村(善)「……おいコラ、まさか…」
紫村(悪)「まあ、お前を殺るとオレも死んじまうからな。動けない程度に痛めつけてやってもいいが、
──なあ、折角二人に分かれたんだ、シスター使って3Pしようぜ?」
紫村(善)「そ、それは…………却下だ!」(ドキドキ)
紫村(悪)「そうか。じゃあ仕方ない──変態っ!」
「変態っ!」
(☆∀☆)アヒャヒャヒャヒャー!
紫村(悪)の掛け声と共に腰のベルトが奇声と光を放った。紫村(悪)の身体は霧散するように一瞬ぼやけ、
全く異なる姿に再構築される。赤い複眼と硬質の仮面、鋼の肉体を持つ、いろんな意味でキケンな姿。
だが紫村(善)は慌てない。この怪現象の正体が判った時点で、勝敗は決していた。
紫村(善)「おいダイゴ蟲、お前は『男と合体』しているんだぞ!」
Σ(゚Д゚)…ヒイィ!
言霊というかトラウマを突かれ、ダイゴ蟲は紫村(悪)からあっさり分離する。
同時に変身も解除された。怪現象の根源から切り離された(善)と(悪)が一つに戻る。
紫村は姿がまだ二重にダブった状態でありながら、更にたたみかけた。
(善&悪)「「お前は次に『シスターと合体』と叫ぶ!」」
(゚∀゚)シスター ト ガッタイ!──ハッ!?
「エロは消えろ!『18金(禁)はんまー』!!」
ついげきの言霊を乗せた紫村のチョッピングライト(右打ち下ろし)が、ダイゴ蟲を叩き潰した。
>>451 とっくんを終えた2人は汗を流すべく、シャワールームに向かう。
「運動したらクールダウンとマッサージは必須なんだってさー。」
「理にかなってますけど、師匠が言うと違和感ありますね。」
「あはは。受け売りだからねー。」
と、師匠の足が止まる。顔が緊張して(そうは見えないんだけど)いる。
「……なんで?」
「どうしたんです?師匠。」
廊下の向こうを見るけど、人影すらもない。人の気配もしない?と、師匠の後ろに人影が立っていた。
師匠の後ろは壁だったはずなのに。…そういえば、一瞬なにか風が吹いた気がしたっけ?
「ひっさしぶりじゃなーーーーい!」
その人…濃紺の和服に白のエプロンという給仕さんスタイル、色黒で、大人タイプの猫耳。
なんとなく理解した。この人が、「黒猫」なんだ。……なんか、イメージ違う…
「な、な、な……」
師匠が慌ててる。めずらしい。いや、それ以前に師匠がなすすべもなく後ろを取られるなんて初めて見た。
なんてこと考えてる間に、師匠は黒猫に押し倒されてほお擦りされてた。
「うーん、やっぱりこの感触よねえー!ぴちぴちして、最高ッ!」
……ほっとくと、なんか、まずそうな気が……
「たすけてえー……ミズカミぃ……」
「(゚∀゚)アヒャ!いい匂い!(;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ 」
……なんか、やらしい……
いつまでもほっとくと本当にコトに及びそうだったので、止めに入ろうとする僕と、彼女の目が合った。いや、合ってしまった。
「ねえ、だれ?この美少年クン。」
ぞくん、と汗が流れる。ああ、それは本当に勘弁して欲しい。絶対に。でも…その目は完全にロックオンしちゃってる…かあ…
案の定、ナイフを抜くヒマさえありはしなかった。師匠がなす術もないんだし、当然か(溜息)
押し倒されて、匂いを嗅がれて、ほっぺを舐められる。ああ、本当に嫌だ。
「うーん、Aちゃんもいい趣味してるぅ。こーんな美少年飼ってるなんて♪」
黒猫の力はその細腕からは想像もつかないくらい強くて、片手で行動を制限されてしまってる。
で、僕を弄びながら師匠に話しかけてる。余裕ありすぎだ。これは師匠が本気になるのもわかる気がする。
「うーん…でもあたしはやっぱ、Aちゃんの方がいいなあっ!」
次の瞬間にはまた師匠が押し倒されていた。もう、何がなんだかわかりゃしない。何だって、こんなのが兵士でいられるんだろう?
黒猫の手が師匠のスカートに伸びて、ついに18禁モード突入かというその時、向うの方で声がした。
「こらーっ!!楓!ぬわぁーーにしてるのぉーーっ!!」
女の人が走ってくる。黒猫はそれに気付くと師匠を放して立ち上がり、和服の乱れを簡単になおしつつ
「うーん、残念♪邪魔が入っちゃった。また遊ぼうね!」
言うなりまた姿が消えた。いや、違う。すごいスピードで走り去っていったんだ。
で、女の人がこっちに来た時、僕たちは2度びっくりする事になったわけで。
「ごめんなさい、楓が迷惑かけちゃって……」
丁寧に頭を下げて、師匠の服の乱れを直して、僕の顔を拭いてくれる。
「い、いや、あのその……」
「もう、しょうがない子なんだから!待ちなさい!こらーっ!」
メガネに白衣、三つ編みのその女研究員の顔はさっき走り去って行った黒猫と瓜二つの顔をしていたんだから。
「……えーと…なんだったんだろう?」
「…たぶん、気にしないほうがいいと思います。師匠、忘れましょう。」
正直、なんといっていいか分からなかったし。
「本当は初任水兵教育中だから、上陸はさせないのじゃが、艦長から総員2日以上の休暇をとるように
との命令じゃ。上陸を特別に許可する。CPO行って上陸札替えてこい。まあ、存分に楽しんでくるがいいぞい。」
うっさいはげ。もう〜かれこれ1しゅうかんずっとせまいふねのなか、せまいベッドでねられないし〜。
やっとおそとにでられるよ〜。うれしいな〜。
「にとうすいへいきくすいみつば、じょうりくしょうのこうかんにまいりました、よろしくおねがいします。」
「ああ、さんこちゃんか。休暇だね。分隊長から聞いてるよ。存分に遊んでくるといい。」
はいはい、せんにんごちょう。はやくはやく〜。
「はい、上陸札。なくしちゃだめだよ。ああ、それから、その腕章は置いていきなさい。」
ああ、あかわんしょう?いらな〜い。
「せんにんごちょう、ちょっと〜?なんでみんなたのしんでこいとかあそんでこいとかばっかりいうの?」
「…さんこちゃん、それは、次がないかもしれないからだよ。」
「つぎがない…?どゆこと?」
わかんな〜い。まあいいや。どこいこうかな〜。そうだ、ていとのちょうさんにあいにいこう。
こんどしゅっこうするんだよ〜って、いってこよ〜っと。ほんぶにもいってこよかな〜。
なんだかてんきもいいし〜たのしみなの〜☆
出口付近。
>>445 「うわ、ここはじめてくるけど…緊張する…」
おそるおそる入る。通行章持ってても何か、入りづらい…この研究室特有の薬の匂いも苦手だ…
え?誰か走ってくる?
どすん。と派手にぶつかって倒れる二人。いや、勢いの分、押し倒される格好になった。
体の上には和服に割烹着の黒猫耳が……いた。訳が分からない。
「あ、ごめーんねぇ。」
笑って、ひょういっと体を持ち上げて立たせてもらう。と、拍子に黒猫の手が胸に当たった。
「?」
怪訝な顔をする。体は持ち上げられたまんま、黒猫の顔が胸に埋められる。
「きゃあっ!な、な、何?」
「…やっぱ、女の子よね。一瞬わかんなかった。」
「へ、へ?」
「これくらいの年だともーちょっとあったほうがおいしいと思うんだけどなっ♪」
ぽん、と叩かれる。…な、何を…言って…
「でもこれはこれで萌えっ!つるぺたマンセー!じゃあねっ!」
ぽいっと捨てられて、走り去ってく。呆然としてる所にさらに人がぶつかって来て。
「きゃああっ!」
どすーん、と豪快に転んでやっぱり体の下。白衣の下にはずいぶんいいモノがあって、顔の上に乗っかって。
「ご、ごめんなさい!お怪我ありませんか?」
「…大丈夫…です……」
「本当にゴメンなさい!」
走り去って行った女の人はさっきの黒猫耳と同じ顔で。で、立ち尽くしていて。胸の感触が顔に残ってて……
「つるぺたって!つるぺたって!!そこまでひどくないやいっ!!!!!。・゚・(ノД`)・゚・。」(ダッシュで退場)
「なのだよ!なのだよ!なのだよ!」
「はいはい、なんですか、元帥。」
「今も昔も、軍隊が一番必要としているモノ、それは何かね!」
「は…?」
「そう!それは人!兵なのだよ!どんなに兵器が発達しようとも!それを動かすのは人間!
だが我を省みるに、なんなのだ、この充足率の低さ!」
「まあ…少子化ですし?しょうがないんじゃないですかね。」
「そこで私は考えた!人を必要としない!自律兵器の可能性!」
「どうしてそこにdじゃいますかね…。」
「しかしいまいましいのがあの大将だ!わかるか!兵士を造る?はん!それであの秘密警察から
借り物をしてきたというのか!」
(はあ。もういいかげんにしてくれよ…結局派閥争いかよ…。菊水からの技術提供はあんたも受けてるじゃん…。)
「だが、もうすぐ私の夢の第一歩がその姿を見せる!そう、半自律型空母「ひりゅう」なのだよ!」
「(もういいよ…どうでも…。疲れるよ…毎日、毎日…。)元帥、お時間です。」
「うむ。」
>455
「シスター、シスター。起きてください」
ベットに寝ているシスター・モエリアをの肩を優しく揺らす。もう夕刻になっていた。
「……私は一体」
上体を起こし、戸惑い気味のシスターに、紫村は済まなそうに微笑んだ。
「貴女は御自分の水着写真を見て、気を失われてしまったんですよ。そんなに恥ずかしい事だったとは、
配慮が足りず申し訳ありませんでした」
「? そんなはずありませんわ。あなたの機関が私のス、スリーサイズの情報が必要だからと…」
「はい? 指紋や遺伝子情報ならともかく、どうしてスリーサイズなんですか?」
「それは……」
シスターは考え込む。そういえば二人の紫村が対決している、非現実的な光景を見たような気もする。
しかし病室には超常現象が起きていた気配など微塵も無く、夢と現実の境界が判らない。
「それにしても、シスターの寝顔は可愛いかったです」
「えっ!?あの…それは…?」
「フフ、それに寝言は二ヶ国語混じっていて、見ていて飽きませんでした」
「あのっ?あのっ?え、え〜っ!?」(赤面)
パニックを起こすシスター。どうやら上手く誤魔化せそうだった。本当に素直で、
疑うという事を知らない人だ。
おねむのもなこ様を抱き抱え、後藤が戻ってくる。
紫村とシスターが何やら良い感じ(に思えた)であった。
「シスター、そろそろ面会時間が終わります」
「玄関に車を呼んでいます」
もなこ様を抱えたまま、シスターと並んで病院の廊下を歩く後藤。
「……」
見送る紫村の表情が妙に穏やかだった事が、少し気にかかった。
シスター・モエリアも、何処となく落ち着きがないように思える。肩を落としているのも、
バスケットを持っているからという訳だけではなさそうだ。
(……当たって砕けたのか?)
そう結論付けた。退院したら自棄酒にでも付き合ってやろう。
「シスター、今日は我等と我等の殿下のために御心使い頂き有難うございました」
「…ご存知でしたの?」
「察しはつきます。貴女のような方が殿下の御傍に居られる事は、大変僥倖です」
「私は、言われるほど大した事はしておりません」
「それで十分でしょう。もなこ殿下は、転んでも御自分で立ち上がれるお方です。生まれついての高貴な魂は
もちろん、これまで出会ってこられた多くの人々の生きる姿、生きた言葉がその御心を支えています。
醍醐団長然り、善行少将然り。シスターも、その一つとなるでしょう」
「……光栄ですわ」
送迎車の前でカソックを摘み御辞儀するシスター。後藤はもなこ様をシスターの隣、後部座席に
そっと寝かせる。
「それではお気をつけて」
車が見えなくなるまで見送る後藤。専用端末で護衛の引継ぎを指示すると、病院内へと戻る。
「やれやれ。偉そうに語るのは性に合わん」
あとは、天国と地獄に逝っている同僚達を、現実に引き戻してやらなければ。
ふと立ち止まる。
「……ひょっとして、今回俺が一番役得だったか?」
「ここがきゅうじょうなの〜。ここにへいかが〜。」
水兵帽を取り、45度の最敬礼を行う。実際、こんなに間近に宮城を見るのは初めてである。
「すごいの〜…けっかいが。」
十重二十重に巡らせた結界が見える。一切の霊的存在を遮断する防壁。触れたらひとたまりもないだろう。
で、門の前に来ると、ヒッキースタイルでへたりこんでいる女がいる。
「デンカ〜シスタアトオフタリデドコヘイッテシマワレタノデスカ〜イセハイセハサミシイデスワ〜」
ちょっと頭の可哀想な人だろうか。ぶつぶつ独り言を言っている。
「おそれおおくもへいかのきゅうじょうのおんまえでるんぺんなんて〜(ふけい)なの〜!めっ☆」
女の頭をちょん、と小突く。
「板。あら〜♪あなた〜♪みつばですの?」
ぴくん、とその言葉尻に猫耳が反応する。
「ですの?ですの?まさか?いせいせ!」
「やっぱりみつばですの?どうしてこんなところに?まだ初任水兵教育中じゃありませんこと?」
「いせいせこそなんでるんぺんしてるの〜!いせいせはふねのたましいなんでしょ〜?」
「あらあら、誰が喋っちゃってくれましたの?あたくしが船魂だって。」
「はげたいちょうよ〜。」
「ああ、あの分隊長ですの。まったく余計なことをしてくれましたわね。」
「で、なんでいせいせはここにいるの〜?」
「あら、好きなお方のお傍に少しでも長くいたいというのは至極当然ですわ?これ以上の説明が必要ですの?」
「ぜんぜんわかんない。でね〜もうすぐしゅっこうするんだって。いせ。だからあそんでこいって、はげが。」
「そうですの…出港、ああ、いい響きですわね!そうなるとあたくしもお艦に帰らなきゃいけませんわね!」
「(ぼそっ)しごとしろ。(ぼそっ)」
「よろしいですわ!あなたの上陸、この志摩いせが引率して差し上げますわ!」
「イラネーヨ!」
「そんなこと言って、本当は嬉しいのでしょ、みつば♪もう、この仔ったら、本当にかっわいい仔ですわね♪
殿下ほどじゃありませんけど、あたくしハァハァしてきちゃいましたわよ☆」
「ホントニイラネーヨ!」
「アア・カワイイ・カワイイ☆さあ、行きますわよ♪」
「ソラネーヨ!」
ジョンベラを掴まれて、みつばはいせに引きずられていった。一体どこへいくのだろうか。それは誰も知らない。
「シゲミハイヤナノ〜セナカチクチクスルノ〜!」
>457
今のが師匠のライバルかあ……。訊いたのとイメージ違う。痴女だってのは合ってたけど。
ライバルというよりは、一方的にセクハラ受けているだけのような感じ……。あの性格と強さで、
おまけに僕にさえ気配が掴めないなんて、襲い放題だろうね。貞操の危機を感じて特訓始めたのかな師匠?
「………」
僕には全く動きが見えなかった。多分僕だけじゃなくて、人の認識を超える速度で動けるんだろう。
でも、どんなにハイスペックマシンでも、OSがあれなら付け入る隙は十分にある。
「ねえ師匠、僕がさっきの黒猫さんに勝てる、悪くても相打ちに出来るって言ったら、信じる?」
「えっ、ウソ?……じゃないよね。ミズカミはその手の冗談言わないから」
「うん、弱点を十個くらい見つけたよ。確実なのは、そのうち三つくらいだけれど。聞きたい?」
「いーよ。楽しみが減っちゃうから」
「言うと思った。それにこれは師匠向きじゃないしね。どれも準備が要るし、ズルイ方法だから。
絶対に関わり合いたくない相手だけれど、でも万が一にも黒猫さんが──ううん、猫耳兵士が
僕の周りの人達に牙を剥いたら、僕が守らなくちゃ」
だから僕は、教授に師匠を紹介してもらった。強くなるために、そして猫耳兵士に対抗する力も得るために。
本当の事を知ったら、師匠は怒るかな? ゴメンね、非力な僕にはこんな方法しかないんだ。
ナイフのように、この身を削って、削って、鋭い刃を手に入れるしか。
>464続き
「あのね、ミズカミは考えすぎ。絶対そんな事ないって。ちょっとおかしいよ?」
でも今の菊水は、代行さんが支配してるんだよね? 何度か見かけただけだけれど、あの人は怖い人だよ。
性格は把握したつもりだけれど、何を考えているのか底が知れない。
「僕って意外と好戦的なのかな?……そうだよね。そんな事ある訳ないよね。──でも一応確認」
僕はナイフで自分の指の先を突くと、師匠の口に突っ込んだ。
「にゅぷ?」
「おいしい?」
「んー、おいひーよ」(チュー)
「そう? 良かった。僕の血は汚れてるかもしれないから、少し心配だったんだ」
滲み出す血を見ながら呟く。これなら”エサ”として囮になれるよね? みんなの役に立てるよね?
「ミズカミ…」
「あっ、チガウチガウ。ほら、僕って教授の作った薬とか飲んでるから」
指を吸って絆創膏を張る。(菊水専用の携帯救急セットを持っているのさ)
ふと気が付いて、僕は師匠に悪戯っぽく笑いかける。
「あ、間接キスだね」
「あーもう、わっかんないよミズカミー」
>462
紫村は病室のブラインド越しに、夕闇の中に走り去る送迎車を見送る。
「…はあ」
ため息を一つ吐き、ベットに腰を下ろす。仰向けに倒れ、拳を天に掲げる。
「ごーるでんふぃんがー」
…………何も起こらない。あの発光現象は、善悪分裂時のみの現象のようだ。
うつ伏せになり、シーツに頭を突っ込む。ベットの中にはまだ、シスター・モエリアの匂いと体温が
残っていた。だが紫村はハァハァしない。己の中のシスター萌えの殆どを、捨ててしまったから。
壁|∀゚)…イイノカ?
少し上部の凹んだ、半透明のダイゴ蟲が物陰から顔を出す。紫村は身動きせず、目を閉じたまま答えた。
「──ああ、これでいい。もうシスターに迷惑はかけたくない」
あいつは俺の一面だし、俺は基本的にエロだからな。お前がいなくても、いつかはああなっていたさ。
「だが、次は無いと思え。その俺の萌えを持って、さっさと消えろ」
壁|∀゚)……ナニカアッタラ オレヲヨベ
ダイゴ蟲は溶けるように宙に消えてゆく。紫村はもう一度だけ、ため息を吐いた。
後日、シスター・モエリアの元に、名無しさん名義で新品のカソックが届けられた。
測ってもいないのにサイズがぴったりだった事は、言うまでもない。
うだるように暑いがカレンダーとしてはまだ夏とはいえないある日のこと。
学校のプール開きを3日後に控えた職員会議室でその発言はなされた。
「なんですって?」
立ち上がる教員もいた。クーラーを早めに入れた会議室の室温が少し上がったようだった。
「ですから、申し上げたとおりです。本年度はプールの使用は差し止めです。」
苦々しい表情で繰り返す教頭。
教員達に動揺が走る。同席していた宇月はあきれ返っていた。
先日の騒ぎで、プールはヨーグルトで埋め尽くされた。ヨーグルト自体は除去されたのだが、
配管にそれが詰まってしまい、で、水を流したとたんに腐ってしまっていたヨーグルトが水と共に逆流してしまったのだ。
とんでもない臭い。そして、配管にいまだにこびりついているヨーグルトと変な蟲。
業者を呼んでみてもらった所、修理に200万、期間は2ヶ月かかる。よって、夏のプール学習は無理、というわけ。
「子供たちは楽しみにしているんですよ!?」
「んな事言ってもしかたなかろう!」
大体、この学校、なまじ歴史がある校舎なために空調が全フロアにいきわたっていない。教室は…言うまでもないだろう。
生徒達はこの暑さの中、うだるような気分で授業を受けている。プールの時間はそりゃあもう、期待大であった。
それなのに、この始末。一番納得がいかないのは実は教員達なのかもしれない。
「とにかくだ、学校のプールが使えんのだ、仕方あるまい。」
絶望的だわ…宇月は心底うなだれた。この暑いのに生徒達にプール使わせないで外で遊べっての?はあ……
「先生方にはその旨、生徒さんたちによく伝えて置いてください。」
まとめにすらなっていない校長の発言で、会議は強制的に終わらされた。
教師達はそれぞれ、絶望的な気分でそれぞれの教室に向かった。落胆するであろう、生徒達の顔を思い浮かべつつ。
教室は予想通りというかなんと言うか、暑かった。生徒達は残らずうだっていて、
宮様までもが「ふにゃぁ…」という顔をして机で脱力している。
宇月はというと、短パンにキャミソール、髪は垂らすと暑苦しいからアップにしてポニテという
まあ、教師というにはあまりにもあられもない格好をし、うちわ片手に教室に入ってきた。
HRの礼もそこそこに、宇月は皆を見渡して、口を開く。
「ゴメンね。えっとね、プール壊れちゃったんだって。なんで、プール開きはちょっと無理みたい。」
「えーーーー!!!?????」
ある種の怒号に包まれる教室。できるだけさらっと言ってみたがやっぱりこれだ。
宮様までもが口を尖らせて不満そうにしている。まあ、無理もないか。この暑さだし。
宇月は正直、途方にくれてしまっていた。
ていうか、自分自身が学校のプールの時間にちょっと期待していただけに落胆も大きかったのだ。
ざわめく教室内。見回すと汗だくで抗議している男の子や、机に伏せて一切の気力を無くして
しまったかのようにしているコもいる。
「もなこちゃん、今年プール駄目なんだって。」
「むー。およぎたいのです!」
「だよねぇ。」
汗でプリントも濡れてしまうこの季節。はじめっから教室内の授業は気力半分、プールへの
楽しみが唯一の救いであったというのに。
「先生も楽しみにしてたから、とっても残念なのは分かるけど。プールの修理は随分かかって
しまうようなのよ。ゴメンね。」
先生の声に、落胆の色を深める生徒たち。ちぇーとでも言わんばかりの表情でプールの方向
を眺める生徒、最早話を聞かずにうちわで扇ぎあいをする生徒、蒸れるスカートの中を下敷き
で扇ぎ始める生徒、反応は様々だが、みんな投げやりなムードでイッパイだ。
加也も同じく、あまりの事態に動揺を隠せずにいた。暑さのあまり緩く一纏めにしていた後ろ
髪の先を指で弄びながら、もなこと話をしている。
「ひどいなぁ。何とか治らないのかなー。…先生にあたってもしょうがないけどねぇ。でも納得
できないよー。」
「何か手はないの?プール楽しみにしてたのにー。」
口々に言う生徒達。
って、言ったってねえ…あたしだって楽しみにしてたわけだし。だからってヨーグルトの臭い漬けになるのは
いやだし。困ったわよねえ…
「もなこちゃんのおうちってプールないの?」
「むー。ないのです…いけはあるけど、およげないのです…」
加也ともなこの会話が聞こえる。
さすがに宮城のお堀で泳ぐのは無理よね。うーん、なんとかできないかしら…でも、この場はなんとかしないと…
「はいはい、先生、考えるから静かにして。約束するわ、先生がなんとかしてあげる!」
ドンと胸を張る。生徒たちのどよめきと拍手が響く。
「さっすが、先生!」
「期待してまーす!」
…なーに安請け合いしてるのよ、あたし!何か考えあるの?安請け合いしてどうすんのよ!
町に出て買い物中。
「主よ贅沢をお許しください。やはり慎ましい水着が必要なようです……」
これから夏にかけて、もなこ様とともに行動するためには不可欠だろう。
だけど、デパートの水着売り場には派手なものばかり。
マネキンを見るだけで、あの写真を思い出して真っ赤になってしまい、とても正視できない……
意を決して女子店員に声をかけてみるけれど、
サイズを測った店員は……
「こんなスリーサイズをお持ちになりながら、
地味な水着をお望みになるお客様はいらっしゃいませんものですから……」
皆溜め息を吐きながら首を振るのだった……
『公海付近を偵察中の空軍所属のP−3Cが、
R海軍所属と見られるSU−33二機と遭遇した事件について、
R国国防省は7日、付近にはR国所属の空母は付近には展開していない旨の声明を発表しました。
それに付いて外務省は―――』
そこで、貫大人はテレビのスイッチを切った。
「動きましたな――此方も、そろそろ動かないと不味いかと――」
傍らの部下の進言には答えず、彼は窓の外を見る。
今年は猛暑が続き、緑も心なしか濃いように思えた。
「それは俺も同じ考えだよ――だがな――
やろうとしたらいらん仕事増やして動けなくしてるのはお前さんがただろうが!!
そう思うんだったらさっさと水上君の居る場所、1日の行動のパターン、出没場所をさっさと探せ!!」
怒声に慌てふためいて部下たちは部屋を出て行く。
その様子を嘆息交じりに見送ると、再び窓の外を見た。
「どうせなら、世界で一番暑い夏にしましょうや。もう少しで会いに行きますよ、殿下。
それまでは、暑い帝都で待っててくださいね」
>>459 ・・・・・ともかく、教授との面会です。
東朝で最大級の霊力を持ち、霊警の影のトップとして君臨する、謎の人物。
母が言うには、ただひたすらに皇族の方々の身を案じる真面目な方だとのことです。
“工房”入り口に設置されたカードリーダーに許可証を読み込ませると扉が開きました。
ちゆ「し、失礼します!」
教授「あははーっ、ちょうどいいところにきましたーっ。」
くるくると回りながら白衣の女性が近づいてきました。こ、このひとが教授?
教授「はーいっ、これに乗ってくださーいっ。」
教授が指し示したほうには、3メートほどの大きな鎧のようなものがあった。
ちゆ「えっ、あ、はいっ、・・・・・・これ、なんですか?」
教授「これはーっ、霊力で動く巨大甲冑ですーっ、“○武”とかの類似品に注意してくださいねーっ(謎)。」
この大きいのが霊力で動く・・・? す、すごいです・・・。 こんなのが配備されればこないだの式神騒ぎだっ
てあんなおおごとにはならなかったかも・・・。早速乗ってみました。
ちゆ「こ、これでいいですか?」
教授「じゃあーっ、いきますよーっ。ぽちっとなっ。」
ばしゅうううううっ!!
ちゆ「きゃああああああっ!」
垂直カタパルトによって天井の穴から一気に地上へと移動しました。
そこは、菊水本部裏手の、大きな森。
ちゆ「はううううう・・・。」
いきなりかかったGに目を回していると、教授の声がスピーカーから聞こえてきました。
教授「それではーっ、実験開始ですーっ。とゆーか自動的に始まりますーっ。」
どうゆうことですか、と言いかけて、無数の視線に気づきました。
そういえば、この森、人が入ったら出て来れないだとか言われてましたが・・・。
猫耳兵士「に゛ゃ゛ー!!!」「ふぎゃー!!!」
ちゆ「な、なんか殺気立ってますー!!」
教授「縄張りを荒らされればーっ、怒るのは当たり前ですーっ。」
ガキンッ! 猫耳兵さんたちの攻撃が始まりました。
でも、流石です。この甲冑はびくともしません。
ガラン。甲冑の腕がもげて落ちました。
教授「あははーっ、まだ未完成でしたーっ。」
・・・・・ギニヤーーーーーーーー!!
;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
\/| y |)
照りつける太陽、眩しい砂浜。波の音が静かに響く、真昼の海岸。
待ち合わせ場所に集合した五人の猫耳少女は、おもむろに服を脱ぎ始める。
残念ながら全員、服の下に水着を着ていた。以前、武山の水着撮影会で支給されたものだ。
一「…お昼の海も素敵です」
二「よつば、みつばはどうしたんですか?」
四「しらないの〜」
五「まったく、今日は息継ぎの練習をすると、あれほど言っておいただろう」
四「おなじタイプだからって、しらないものはしらないの〜」
六「……仕方ない。みつばは後でシメるとして、我々だけで始めよう」
(……イチ、ニ、サンシ、ニ、ニ、サンシ……)
準備運動を終え、波打ち際に並ぶ少女達。
五「さあ、まずは腰の深さまで入るぞ」
四「めんどくさいの〜。えーい!」(ザブザブ、バシャー!)
五「あっコラ!」
一「…わたしもー!」(ザブザブ、バシャー!)
よつばに誘発されて、ひとば、ふたばまで海に飛び込んで遊び始める。
五「お前達、自由時間は後に割り振ってあるだろう!プログラム通り、ちゃんと練習しろ!」
四「しきりやさんはー、こ〜なのっ!」(バシャー!)
五「……」
四「あははー。ネコさんなのに、ぬれネズミー」(バシャー!バシャー!)
五「……(ぷちっ)」
いつはは無言で片足を上げた。猫耳兵士の筋力で、力任せに水面を踏み破る。弾き飛ばされた水の壁が
みつばを呑み込み、ひとばとふたばに尻餅を付かせた。いつはは俯いたまま呟く。
五「…ワタシ ダッテ、アソビタインダ」(ボソ)
四「フ、フギャー!? ミミニ、ミミニ ミズガー!」
六「馬鹿者! 水に入る際は耳を伏せるか水泳キャップをつけるよう、注意されただろ!」
二「うー、やったなー!」
一「ケンカは、ケンカはダメです!」
(バシャー!バシャー!バシャー!バシャー!ザッパーン!!バシャー!バシャー!ザッパーン!!)
数時間後、結局死力の限りを尽くして遊び倒した五人は、打ち上げられた漂流物のように砂浜に寝転んだ。
五「……海はいいなあ」
>>470 この一連の光景を目撃していた人物が一人、いた。
潟Eォーターランド営業部大磯並木である。
ウォーターランド。それはバブル末期に計画され、オープンにこぎつけたはいいがその経営は
散々であると評判な(?)多目的リゾート。150mのスライダーと200mの流水プール。
そしてプールに入りながらイルカのショーが見られるという(?)画期的な施設…であった…
彼はこの日、隣接するホテルの営業に駆り出され、学校廻り(慰安旅行狙い)をしていた。
当然ながらそうそう旨く話は運ばず、肩を落として学校を後にしようとしてこの話を聞く。
(キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!! )
彼の頭に何かが走る。そのまま社に戻り、社長決済を取るべくペンを走らせた。
2日後。
宇月宛に郵便物が届く。中にはウォーターランドの招待券が1クラス分入っていた。
「宮様とその御学友様をご招待いたします」
「どうかなぁ?」
「地味ー!ジミー!却下ー!」
「そう?こう、後ろなんてイイと思うんだけど…」
「えー?おねえちゃん、それで男が寄ってくるとでも思ってるの?甘い、甘すぎるっ!」
宇月の自室。同じ顔した二人が手持ちの水着を部屋中にぶちまけている。
背中の大きく開いた青いワンピースを着てくるりと回る亜美。そしてそれに批評を入れる黒猫…楓。
「うーん、いいとおもうんだけど…」
言いつつカーテンの向こうに引っ込み、着替える。その間楓はというと、散らかされた水着の匂いを嗅いで(;´Д`)ハァハァ していた…
「どうだっ!」
赤のビキニ。なかなかに刺激的なライン。
「悪くないけど、インパクトに欠けるなあ…」
「えーっ?これでもかなり頑張ったほうだよ?」
「だって、おねえちゃん、結構いいプロポーションなの自覚してるでしょ?だったらもっと主張しなきゃ!
男供に見せ付けなくてなんのためのカラダよっ!もっと露出を!もっと(;´Д`)ハァハァ を!」
パチンと太ももを叩き、水着をさらに漁る楓。
「ったいわね。だいたいあんたはプールは入れないのに何水着選んでるのよ?」
「え?行っちゃいけないの?せーっかくもなこたんのスク水姿拝めると思って…」
「あんたね…あたしと同じ顔して子供たちの前で(;´Д`)ハァハァ しないでよ……」
「えー、なっとくいかないぞー。あたしだってプールいきたいんだー!…あ、おねえちゃんこれ(・∀・)イイ!」
「え、何…って馬鹿!!こんなの着れる訳ないでしょ!」
奪い取ったそれは「2年C組 宇月」と書かれた中学校時代のスクール水着だった。
「大丈夫!ぴちぱつな水着!窮屈に押し込められた肢体!ああ、萌え!これよ、これしかないっ!!」
スクール水着を抱きしめて転がりまわる楓。それを見てあきれる亜美。
「……ったく…いいから今度は無駄毛の処理手伝ってよ。」
「はぁーい。ああ、(・∀・)イイ!ぴちぱつ!萌え!これでビーチの視線は独り占め!」
「奇異の視線って言うのよ、それは。」
女が水着に着替えるまでは結構準備が必要なようで……
いせがみつばを抱きかかえ、帝都の上空を滑る。
「あれが帝都タワーですのよ〜♪」
「へえ〜。」
「あれが都庁ですのよ〜♪」
「ふ〜ん。」
「あれが、あれが…」
「いせいせ、てきとぉにそのへんみていってるでしょ〜?あんないするとかいっといて、
じつはていとのことぜんぜんしらないんでしょ〜?」
「ぎくっ!!そんなこと…ありますわよ!ありますわよ!はいはいどうもごめんあそばせ!」
ふわり、と着地する。
「ねえ〜なにかおもしろいところないのぉ〜?」
「いったでしょう?あんまりしらないって。あ、そうだ。」
「ん〜?」
「学校いきますわよ、学校。」
「なんで〜?」
「あなたも一応菊水なのでしょう?でしたら、お守りしている方のお顔を見ておくのも
悪くはないことだと思いますわよ?」
「んん〜?よくわかんない?」
「それでは、いきますわよ。よろしくて?」
二人は再び宙に浮き上がり、学校の方向へと飛んでいった。
「…海賊の情報をまとめます。太平洋側、小笠原付近の海域ですが、確認されているのが
揚陸艦2隻、駆逐艦1隻です。続いて九州近海、朝鮮半島との間で確認されているのが
駆逐艦1隻です。なお、九州の駆逐艦は現在行方を眩ましております。また、我がP−3や
帝国空軍からの情報によるとこの九州近海ではR国製艦上機も確認されており、R国が一枚噛んでいる
可能性もあります。さらに、津軽海峡、関門海峡にて未確認の潜水艦を発見したとの情報もあります。
どうやら奴らは海賊と言うにはいささか規模の大きな相手のようです。」
「どうしたもんかね…。ああ、そうそう、元帥のおっさん言ってたな、ひりゅう横須賀に回航するって。」
「なんでも航空機の受領の関係とかいってましたけど…眉唾ですね。」
「よっぽど可愛いのかね〜。すっかり私物化してるよな、我が国の最新空母を。」
「本当に、どうしたものですかね〜。」
「どうしたもんだろね〜。はぁ〜。」
「はぁ〜。」
長崎を出港し、一路横須賀へ向かうひりゅう。
その艦橋で、艦長の傍らに辺りとは不似合いな幼女。
「ねぇ、だり〜ん?あたしもぉっとはやくはしれるんだよぉ☆もっともっと!とばして!ね、とばしてぇ!」
「…えぇ〜い!艦がそういってるんだからしょうがねえ!第4戦速!」
「だいよんせんそ〜く!」
ビシビシビシビシ!艦が起こす風で艦橋のガラスが揺れる。
「きゃはははははは!きもちいいねぇ!すっごくつめたくて!みずがばしゃばしゃ〜って!きゃははは!」
「やだよ〜なんで艦の精霊なんか見えるようになってるんだよ〜おまけに口まで聞けるようになってるし〜
おい菊水さんよ〜なんとかならんの〜!」
田中である。この艦が横須賀まで行くというので、同乗することにしたのだった。旅費がロハになるし。
「精霊である彼女に艦内の各種センサーを直結し、真の人艦一体を目指すというプランのテストケースらしい
ですよね。これ。でもお話を持ちかけてきたのは海軍さんですよ?なんていいましたっけ、なんとか元帥さん。」
「あの法螺吹きか〜もうだめぽ〜」
「どうしたの?だり〜ん?あたしのこときらい?ね、きらい?」
「…そんなことはないよ、大好きだよ、ひりゅうちゃん。」
「ならよし!ねえ、もっともっとあたしはやくはしりたい!最大戦速にして!ね!おねがい、だり〜ん!」
「…よしきた!最大戦速!」
「さ、さいだいせんそ〜く!」
慣れていない田中は既に立っていられないので、腰掛けに座る。脈動するエンジンの振動が艦橋にも伝わってくる。
「…まあ、結果はどうあれ、調整とるのがおれの仕事さ。後は知らん!横須賀の猫耳水兵たち、元気かなあ?」
ちょっと船酔い気味の田中であった。
「じゃーん!どう?」
「うわー、かわいいのですー。」
「えへへー。」
目の前で繰り広げられるファッションショーを微笑ましく見守る千早。今度のプール
の授業は、学校の外で行われるらしい。一度駄目になりそうだった反動もあってか、
2人ともいつにも増して大喜びだ。
「でもでも、こっちのも捨てがたいんだよねー。」
加也は胸元にリボンの付いたタンキニを手に取り、嬉しそうに困っている。
「かやちゃん。これなんかどうですか?」
もなこは足回りにフリルの付いたピンクのワンピースを着て、くるり、と一回りする。
「うわ、似合うよー!いいなぁ、もなこちゃん何着ても可愛いよ〜。」
「そんなこと、ないのです……」
僅かに顔を赤らめ、はにかんだ笑みを浮かべるもなこ。
「2人とも、よく似合ってるわよ。」
部屋中に脱ぎ散らかされた水着を少しずつ畳みながら、千早が声をかける。お世辞でもなんでも
なく、本当に似合っている。
「ほら、こっちの水着なんてどう?」
「それもいいなぁ。うん、着てみよっかな?」
言うなり加也はパステルブルーのワンピースを脱ぎすて、千早に新しい水着を着せてもらう。
「どうかな〜?」
「うん、とっても可愛いわよ。」
「もなこも、もなこもこっちのみずぎをきてみるのです!」
「はいはい、ちょっと待ってね。」
そうして繰り返し繰り返し、沢山の水着を着てはきゃいきゃいはしゃいでいた2人
だったが、数時間ほど経過した後、今度は水着のままお喋りを始めた。
「日焼け止め塗っておかないと、お母さんが怒るんだよねー。」
「かきごおりがたべたいのです。」
「珊瑚がとってもきれいなんだよね。あー、見に行きたいなー。」
うん?
「すいかわりをするのです。」
????
何かおかしい気がする。
「ねぇ、今度のプールには珊瑚とか砂浜とかがあるの?」
不思議そうな顔で問い掛ける千早。加也ともなこは一瞬顔を向き合わせると、
笑い始めた。
「あははは、そんなハズないよー。」
「こんど、うみにあそびにいくときのはなしをしていたのです。」
あれれ。更に頭の上に?マークが浮かび上がる千早。
「えっと?今日の水着選びは、プールに行く為に選んでたのよね?」
「ううん、プールの時はね、すくーる水着を着ていくよ。だって授業だもん。」
「はい、すくーるみずぎをきるのです。」
ねー!と声をそろえる2人。
「プールのお話が出たから、なんとなーく水着を着てみたかっただけなんだ。」
そういう事か。確かに今度のプール用なんて言ってなかったわね。
「なーんだ、勘違いしちゃった。でも、折角水着選んだのに勿体ないわね。
うーん。。……それじゃあ、これからお庭で水遊びでもしよっか?」
「あ、さんせーい!」
「はい、そうするのです!」
>473
僕はトレーニングを終え、教授のラボに戻ってきた。教授はいない。また何処かへ仕事に行ったのかな?
何気なく周りを見回す。真っ先に目に付いたのは、ゲーム画面を移したモニター。
「あっ、”凶箱”だ」
真っ黒な箱に緑の×印の付いたゲーム機。ゲイツの凶箱といえば、A国の国柄を反映したような
大雑把な精密機械として有名だよね。
「……見たことないソフトだよ」
モニターにはフルポリゴンの森が映っている。葉っぱの一枚一枚まで表現されているのに、
テクスチャが荒くて少し見づらい。デモ画面らしくて、勝手に動いている。リプレイの映像かもしれない。
下の方には各種パラメーターとエネルギーゲージのようなものがある。ゲージは20%くらい減っていた。
画面が突然赤く光った。警告音と共に画面の端に鎧甲冑の略図のようなものが現れて、ダメージを受けた
箇所を示した。自機だと思われる鎧甲冑は、すでに腕が片方壊れている。
攻撃を加えたのは、ポリゴンの猫耳兵士だった。慌てたように画面が激しく動く。よく見ると森の中の
いろんな所に猫耳兵士がいる。全員こっちを向いて警戒している。飛び掛ってきたり、弾を投げてきたり。
……ゲームだから、当たり前だよね。なまじ猫耳兵士を知っているだけに、変な気分だよ。
これ、やっぱり教授が作ったのかな?
「取説は……無いよね」
純粋にゲームとしては面白そうだった。でも僕は人のものを許可無く勝手に触ったりはしない……多分。
どうやらクリアかゲームオーバーするまで続くみたいだし、夕方まで暇だから、
教授が戻ってくるまで画面を見ていよう。
「そういえば、もう下校時刻過ぎてるの忘れてましたわ…。」
「(ぼそっ)いせいせのあほ。(ぼそっ)」
「しかたありませんわ…またあの酒屋さんでもいきましょうか、みつば。」
「うん〜。もうゆうがただし〜、びょういんもはいれないしね〜。」
「病院?ああ、あのお兄さんたちですの?」
「うん〜。あ、そうだ、きょうはだいたいにとまるのわすれてた〜。」
「大隊?」
「みつばのげんたいだよ。べっどかしてってでんわしたの〜。いせいせもくる?」
「みつばの原隊、ちょっと興味ありますわね。いきますわ〜♪」
超低空飛行で宮城の上を飛び去っていく、2重反転プロペラのヘリコプター。
大量のビラを撒いていく。そのビラには「もえでんか、いただきます」。
・
・
陸軍「おい!空軍お前らなにしてんだ!宮城の上を海賊が通っていったというのに!」
空軍「いや〜あれだけ低空だと捕捉も難しいかと〜…。しかしあれですね。派手好きな海賊ですね。」
海軍「海賊め!我が国の通商路を寸断するだけでは飽き足らず、次は萌宮殿下をいただくだと!虚仮にしおって!」
警察「でもこうなると、他の部署を裂いてでも萌宮殿下の周辺の警護を厳にする必要がありますかな…?」
・
・
・
「小姐、Ka−50ヘリコプター着艦いたしました。」
「ご苦労様でした。パイロットにもご苦労と、それから冷蔵庫にケーキが入っている、と伝えてください。」
「お姉さま、諜報員からさきほど入った連絡によると、横須賀に空母が入港したそうです。艦名は…ひりゅう。」
「九州から私たちを追ってきたのですね。彼女にもご苦労様と伝えたい気分です。ケーキはあげませんが。」
真っ赤なチャイナの裾を払って立ち上がる。すらっと伸びた足がスリットからのぞく。
「いいでしょう。帝国海軍に思い出させてあげましょう。私たちがかつてどう呼ばれ、恐れられていたか。
海の西朝の名前を。」
で、また座って足を組みなおし、麦茶を啜る。
「お姉さま、この前から疑問だったのです。チャイナ〜なのにどうして麦茶なのですか?」
「ミネラルが体にいいのですよ。(にっこり)」
ミズカミとの訓練から、更に数日後。随分と長く続く猫耳遊撃兵Aのひみつ☆特訓。
猫らしからぬ根気の良さだ。そして、そんな訓練現場に偶然通りすがる御影。
「ありゃあ、何やってんだ?」
少しばかり動き、悩み、動き、そんな事ばかり繰り返している。しかしその動きには
目をみはる物があった。通常の猫耳兵達とは次元が違うようだ。
「へぇ。あんな猫耳兵も居たのか。」
普段ならそのまま立ち去る所なのだが、ちょっとした好奇心が首をもたげる。
数分ばかり様子を眺めていた御影は、ちょうど休憩を取るらしい彼女の元に
歩み寄っていった。
「よお、何やってんだ?」
木の下で寝転ぶ猫耳兵に向かって話し掛ける御影。
「…んー?ちょっとねー。」
猫耳は面倒くさそうに薄目を開くと、こちらに目を向ける様子も見せず、ただ細く
光を通している頭上の木の枝を眺めている。
何と言うか、"らしい" 仕草だ。そんな反応を楽しみつつ、言葉を続ける。
「何かの訓練をしているように見えるが…。お前ほどの能力を持つ奴が、この上何を
身に付けようというんだ?」
まともな答えなど返ってくるまいと思いつつ投げかけた問い。だがその問いに、
まさに思いがけない返答が返ってきた。
「わっかんないよ。でも"もう十分"なーんて領域は無いの。現状に満足してたら
そこで成長止まっちゃうでしょ?」
そして、これ以上語る事は無いとでも言うように再び目を閉じる猫耳。
だが御影はそうではなかった。
(こいつは、久しぶりに楽しい奴に出会ったぞ)
近頃にしては珍しく興味を惹く存在だった。まじまじと猫耳兵を見つめる。
少女のような愛らしい外見、決して筋肉質ではないしなやかな四肢、お世辞にも
強そうには見えないこの兵士の持つ能力は、例えどれだけ屈強な兵士であろうが
まともに相手をする事など出来ない。
まったく何処にそんな能力を秘めているのか。猫耳兵全般に言える事では
あるが、こいつはその突出した力を更に高めようとしている。…面白い。
「なあ、手伝ってやろうか?」
その言葉に、ピクリ、と耳を動かす遊撃A。
「だめだめ。全然役に立たないって。…それとも、君は僕よりも強いっていうの?」
目を閉じたまま、答える。こんな身の程知らずを相手にしてる暇は無いとでも言うように。
しかし男が去る気配は無い。
「どうだろうな。試してみるか?」
かちん。
「馬鹿な事言ってると、死んじゃうよ?」
「確かに、殴り合いで勝てるとは思わんよ。だがな…」
…ぴき。
「あーもう!君に何が出来るってのさ?」
まったく、今日はなんて日だろう。普通の人間が僕の邪魔するなんて……普通の人間?
なんでココまで来れてるんだろ?
彼女の思考を遮るように、御影が話し掛ける。
「もしお前に"これ"が出来るようなら、俺は完全に役立たずだ。だが、お前は強い。
それだけに、からめ手を身につける必要はなかっただろうしな。」
「…からめ手?」
「こういう事だ。」
次の瞬間、唐突に男の気配が消えた。
「あ……あれ?」
そこで遊撃Aは目を開き、つい先程まで声のした場所を見た。だが、誰もいない。
驚きのあまり上半身を起こすと、辺りを見回してみる。それでも、何も目には
入らなかった。
「なんで?いつの間に…そんな時間経ってないのに…」
最早完全に立ち上がると、周囲をキョロキョロ見回す。…居ない。どこにも。
一瞬のうちに、木の上にでも登ったのだろうか?いやそれこそ無理だ。早く動くと
いう事は、それだけの力で地面を蹴らなきゃいけないはず。何より、木の枝が軋む
音さえしなかったのだから。では、何処に?
ありえる筈の無い出来事に困惑する遊撃A。そんな彼女の頭に、ポン、と軽い衝撃
が加わった。
「どうだ?」
そっと声のする方向に向き直す。彼女のすぐ隣には、自分の頭に手をおきニコニコと
笑みを浮かべる御影の姿があった。
木々の隙間を心地良い風が通り、空からは鳥の囀りが聞こえてくる。きつい日差しを
木の葉が遮り、暗すぎず明るすぎず微妙なバランスで光を落とす。まるで夏のこの時が
一年で一番気持ちの良い季節であるかのように思わせてくれるそんな森の一角で、
御影と遊撃Aは向かい合って話し込んでいた。
「こいつはな、己の存在を無にしてしまう技術だ。そう、技術。修練次第では誰でも
覚える事が可能だ。まぁ一般レベルだと、髭が真っ白になる頃に覚えられれば上等
だろうがな。どれだけ早く身に付けられるかは、そう、才能次第だ。」
「僕は出来るだけ早く覚えたいなー。ねぇ、どうかな?どのくらいかかると思う?」
「なに、お前なら大してかかりゃしないだろう。遅くとも数年って所だろうな。
「そんなかかるのー?えー…。」
「そう焦るなって。数年ったって本来あり得ない程の速さなんだぞ?大体俺ら人間と
比べるなら、どっちかって言うとお前ら猫耳の方が覚え易いんじゃないか?獲物を
狩る時に殺気全開の猫なんざお笑いだ。そうだろ?」
「んー。いぢめて弄ぶ時以外はねー。」
その日、遊撃Aと御影は日が落ちるまで会話を続けた。
…………
……
遊撃A、たまーに技の発動が可能になりました(笑)現在の確立は20%未満。
御影「色々制限付きだ。完全にモノにするまで実戦では使わんほうが身の為だぞ?」
猫耳兵士の縄張りって、どうやって作るんですか?
やっぱり木の枝とかにニオイの強い部分を擦り付けたり(ハァハァ)
まっまさか……ほ、ほうにょ
「「にゃー!にゃー!にゃー!にゃー!にゃー!にゃー!」」(怒)
(ボキッ!ブチブチ、ボリボリボリボリボリボリボリ…)
>491
む(怒) あ、食べられちゃったね。当然だよ、そんな想像れでぃに失礼だよ!
危険を察知して回避出来るヤツじゃないと生きていけないんだから。
気配とか、爪痕とか、話し合いとか、戦闘跡とか、臭いとか。そんなので判断するんだよ。
縄張りの境界は結構アバウトだけど、大抵中心部に縄張りの主がいるね。
まーきんぐの方法?…懲りないね……死にたいんだね?(微笑
当日、朝。
ウォーターランドには少し距離があるために送迎バスで向かうこととなり、
学校前では少々興奮気味の生徒達の声が上がっていた。
「うわー、えんそくみたい!」
「楽しみだねえー。」
同行は副担任の宇月といつもの速水。現地では別に警護チームが配置しているという。
運転は送迎バスの専属運転手。なんでも、このバスが出来た時から運転し続けて20年。
「こいつとおれとは一心同体よ!他の奴らにゃぁ任せられねえ!」
とまで公言する男、加藤大輔であった。
午前8時。バスは学校を出発。
山を越えた向こう、ウォーターランド目指して、順調なスタートを切る。
「♪おかーをこーえーゆこーおよーくち^−ぶえーふきつーつーつー」
子供たちの歌声。談笑している宇月と速水。いい天気。気持ちのいいドライブ。
バスは峠の山道へ差し掛かる。
一本トンネルを抜けて。霧がかかったようなそのトンネルを抜けると遠くに海岸が見えた。
子供たちの歓声が上がる。誰も気付いてはいないのだが、トンネルを抜けた時、そのバスの天井には
一面に(゚∀゚)が取り付いていた。そして、山の林からバスを見下ろす人影が一つ。
「くっそー、置いていくなんてひどいことしてくれるわね…ぜーったい付いてくんだから!」
>493
児童A「……行っちゃったね」
児童B「いいなー。僕たちも行きたかったなー」
児童C「大人のジジョウってやつさ」
児童D「今日も暑いんだろうね〜」
一同「「ね〜」」
先生「コホン。さあ皆さん、ホームルームを始めますよ」
一同「「は〜い…」」
ショワショワショワショワショワショワショワショワ…(蝉が鳴き始めた)
(ナレーション)菊水は皇統に仇なす者達を排除する秘密警察である。その本部は帝都千代田区某所に、
一般の人間から秘匿され存在しているのだ!
「ということで〜。いせいせ、ここがほんぶなの〜。だいたいはもっとおくなんだけど〜。」
「ただの企業ビルにしか見えませんわね。みつばの原隊はネロス軍団ですの?」
「なにそれ。さ、いこいこ。」
正面から入り、受付へ。愛想の良さそうな受付嬢が「受付でございます、御用はなんでしょうか?」と
にこやかに聞いてくる。
「そんなことよりきいてくれよおねえさん、きんじょのきちのやいったんですよ、きちのや。」
「はい、了解しました。それではこちらのカードを胸につけて入場ください。」
「みつば、今の符丁ですの?」
「そだよ〜。きょうはだいたいにとまるからよろしくっていったの〜。」
「なんだかすっかり勝手知ったる我が家って感じですわね♪」
「うん〜。やっぱりふねよりこっちのほうがすき〜。」
(ナレーション)菊水本部の深部、地下に建設された森の中に猫耳たちの居住区があるのだ!
「ここは森じゃありませんこと?ベッドを借りたんじゃありませんの?みつば。どこにもそれはなさそうですわよ?」
「べっどっていうのはもののたとえだよ〜。ちょっとだけ、ばしょをあけてもらったの。みんなのなわばりが
あるからね〜。」
「縄張り?」
「そう。みんなじぶんのなわばりをもってるの〜。でも、みつばはいまなわばりをもってないから〜しれいぶに
いってちょっとばしょかりたの〜。かってになわばりにはいるとね、みんなこわいんだよ〜。」
「普通のお猫さんと変わりありませんのね。あたくしも気をつけようかしら。」
「いせいせはしなないからだいじょうぶでしょ〜?」
「それもそうですわね。実体化おふしてしまいますわ。でゅわ。」
「でもね〜、じったいかおふしてもみつばたちにはみえちゃうんだ〜。しってた〜?」
「まあ、あなたたちもあたくしたちも同じようなものですものね?でもちょっと困ったことに人間でも見える人は
見えるのですわ♪みつばも気をつけなさいよ?あたくしが会った中では分隊長…あとそうですわ…貫大人ですわね。」
「くわん?だれそれ?」
「ラーメソマソですわ♪」
つくつくつくつく…森の奥の方へ、“回廊”(縄張りの空白部分。お互い攻撃しないのが暗黙のルール。)
を通り進んでいく。
「でもへんなの〜。だれもいないなんて〜。おかしいよ〜。」
ギニヤーーーーーーーーーー!!(>473最後の方)
「ぎにあですって、みつば。なにか御存知ですの?」
「しらな〜い。でもなんかへんなの〜。いってみよ、いせいせ!」
「どうでもいいですけど、教官殿に対してすっかりタメ口ですのね、みつば♪」
「だっていせいせもぐりでしょ〜?」
>496
あらら行っちゃった。田中さんから話は通ってるから、部屋を用意しておいたのに。
ちなみに最後の大隊駐屯地には、猫耳兵士用にちゃんとしたベットがありますよ。
猫耳兵士は森の方が好きだから、仕方ないか。
きっかけは1台の車であった。
ハチロクパンダトレノが、バスをあまりにも華麗に抜いていく。そしてその後姿を彼は見逃さなかった。
「奴は…拓海?」
年齢こそ重ねているが、その車、そのテクは高橋にとって忘れようもない、記憶。
自分の最速理論を破られたあの屈辱……忘れるはずがない。あのドリフトは…奴だ。
--------背中に何か降りたような気がした?-----------------
「ふふ、いいだろう。この年になってもやっぱり貴様は貴様のままか。うれしいね。」
一人、笑う。没落し、愛車のRX-7は売られ、バスの運転手として生活する事20年。
密かに編み出したこのバス最速理論、白い彗星はまだ衰えてはいないぞ!
目の色が変わる。その事をまだ乗客は誰も気がつかない。
「行くぞ豆腐屋!」
バトルの合図を意味するパッシングライトの3回点滅。そして、アクセルを踏み込む。
ガクン、という音がして急激にスピードが上がる。
トレノの運転席の男が振り返る。その男の顔は笑っているようで。
「久しぶりだな、高橋。」
と言っているように見えた。
峠は下りに差し掛かり。
トレノからOKのサインであるテールランプが3回点滅された。
「さあ、楽しもうぜ。」
数日前の事である。
IGPK本部の作戦室に、IGPK隊長と小隊長達が集まっていた。誰もが無言で、ある報告を待っていた。
待つこと数十分。重いノックの音が響く。
「失礼します」
隊員はIGPK隊長に敬礼すると、一度深呼吸する。
「良い情報と悪い情報がありますが、どちらからお聞きになられますか?」
「……悪い方から訊こうか」
「はい。菊水に引き渡された例の二人ですが、先ほど両名とも死亡が確認されました」
室内に溜息と、微かな呻き声が混じる。分かっていた事とはいえ、やはり気が滅入る。憤りは隠せない。
堪えきれずに小隊長の一人が立ち上がり、叫ぶ。第一撮影小隊の隊長であった。
「あんまりだ!我々のした事は命を以って償わなければいけないほどの事なのですか!
我々は下らない取引の材料にされ、犬死する為に飼われているのですか!」
第二撮影小隊長、特殊支援小隊長も頷く。
「私も同意見です。我等は捨て駒である事は十分承知しています。しかし、これでは余りにも…」
「第五旅団は既に形骸化してしまっています。旅団長は隠居同然、副総長は金の亡者。
兵の質、萌え共に低下し、実質各部隊長が辛うじて旅団の機能を維持しているのが現状です」
クーデターでも起こしかねない雰囲気であった。……いや、起こそうとしているのかもしれない。
「隊長殿、ご決断を!」
「……お前達、歩を弁えろ。我等はIGPKだ。我等は我等なりのやり方で旅団に貢献すればいい。旅団長殿は
もなこ殿下に第五旅団の全権をお返ししているだけ。副総長殿は、毎度の馬鹿騒ぎで発生する大量の出費を
工面しておられるのだ。旅団内部が澱んでいるというのなら、我等が掻き混ぜてやればよいではないか」
「しかし隊長殿!」
「主人に牙を剥いた飼い犬は、始末されるものだ。仮に上層部の粛清に成功したとしても、
次は我等が粛清される番だ。大掃除には丁度良い機会とばかりにな……命を粗末にするな」
今は待て、という言葉は呑み込み、IGPK隊長は論議を打ち切った。
「さて、良い情報とは何だ?」
>499続き。
「はい。もなこ殿下のクラスが、ウォーターパークから招待を受けたとの事です」
「確かな情報か?」
「……撮影のチャンスではありますが」
「児童たちには嫌われているだろうからなあ」
「さすがに今度ばかりは自重するべきだろうか」
ほんの先程まで、極度に物騒な話をしていた連中とは思えない、気弱な発言であった。普通逆だろ?
IGPK隊長は暫し黙考する。
「……今回は搦め手から攻めてみるとするか。確かウォーターパークは最近経営難と聞いたが?」
「調査します」
「プチTVの大和 撫子さんに御協力願おう。経営難ならばTVの取材を拒みはしないだろう。
そこへ偶々もなこ様が居られた、と言う事だ。テープの検閲は我等の役目であるから、その際に
必要な映像を頂けばいい。我らの望む映像が手に入る確立は低いが、まあ何もしないよりはマシだろう」
「ニャー!」「フギャー!」「フーッ!」
ガチャン!かきん、ぱきん、こきん!
「ギニヤーーーーーーーーーー!!」
「機械化鎧かしら?前時代的というか、アナクロな装備ですわね。みつばのとこの装備ですの?」
「ううん。はじめてみた。」
ばきん、ぼきん、すかかかかかかか!ゴイン!ゴイン!
「あの鎧さん、結構激しく攻撃を受けてますわね。」
「たぶん、なわばりになんかわけのわからないのがはいってきたからみんなきぃたってるの。でもね、
あんなのがでてきたぐらいでとりみだしてるようじゃ、へいたいとしてまだまだなの〜。」
「あら、「みつばはあいつらとはちがうの〜」って口ぶりですわねぇ♪」
「みつばもね〜せーらーにかいぞうされるまえは、そこそこなまえのしれたねこみみだったの〜。
こたいばんごうがね、すうじじゃなくてあるふぁべっとだったんだから〜(えっへん)。」
「アルファベット?」
「そう。ねこみみへいし“いぇ〜が〜”なの〜!すごいでしょ〜?」
「すごいんですのね。よくわからないですけど?で、あの鎧さん、どうしますの?なんだか
反対の腕ももげたみたいですわよ?」
「う〜ん。あんなところでぐちゃぐちゃになられてもねざめがわるいし〜。…いせいせ、すいへいぼう
ちょっともっててほしいの。」
水兵帽をいせに渡して、腕を一回転。反対の腕も一回転。屈伸も行う。
耳がぴくん、と動く。尻尾も上機嫌を示して直立している。水兵服のジョンベラを一回手で払って
「てっぽうがないの〜。ま、だいじょうぶか。うう〜ん、うでがなるの!」
駆け出していった!
>>498 峠の下り。バスとはいえ、中身は高橋によって改造されまくっていて別物である。
重いはずの車体を軽やかに操り、スピードはどんどん上がる。
そして最初のS字。
「見ろ!このバスの自重を生かした慣性ドリフトを!」
ギャギャギャ!!という音。ハンドルを思いっきり切る。
バスがガクンと揺れて、さすがに皆、異常に気がついた。
「な、何?」
あわてて席につかまる子供たち。
「何をしてるんですか!…ってうわああ!」
運転席に向かう速水が見たのは、バスの前を押さえ続けるトレノと、血走った運転手の目。
スピードメーターはとうに100を越えている。
「ふふ、さすがに乗客を乗せていると慣性ドリも効きが違うか…」
「違うだろお!!やめんか!宮様が乗っておられるんだぞ!」
押し止めようとしたタイミングはS字の出口。シートに掴まってすらいない速水は横Gに耐えられず、吹っ飛ぶ。
ごーん……
頭を打ってのびてしまう。
悲鳴を上げる女子。なんだかよく分からないけど興奮している男子。
>>502 HAHAHA!気をつけな!舌噛むぜ!
 ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
____________
___(゚∀゚)____/____/ \______(゚∀゚)_________
┏┳━━━━━━┳┓| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ___________________.|
┃┃水の楽園逝き┃┃|___...┏━━┳━━┳━┓/_______┏━━┳━━┳━━┳━┓ |
┣┻━━┯━━━┻┫|| ̄|| ̄||┃最速┃ ┃ ┃|| || || || ||┃ ┃ ┃ ┃ ┃ |
┃. ∧∧ .| ∧∧ ..┃|| || || ┃ ┣━━╋━┫|| || || || ||┣━━╋━━╋━━╋━┫目|
┃(゚∀゚ ). | (゚ー゚*) ┃|| || || ┃ ̄ ̄┃ ┃ ┃|| || || || ||┃ ┃ ┃ ┃ ┃目|
┃⊆⊇⊂..| ⊂| ∪ ┃|| || || ┗━━┻━━┻━┛|| || || || ||┗━━┻━━┻━━┻━┛ |
┣━━━◇━━━━┫|| || ||| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ . .|| || || || || 赤い太陽自動車 .|
[|□| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| [] || || || ロ || || || || || / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|_|_(゚∀゚)_ _|__|..|| || ||_,/⌒ ヽ_________.|| || || || ||/ /⌒ ヽ.. |
|ロロロ|┌―┐.|ロロロ .||| || ||_| (゚∀゚)|___________|| || || || ||___| (゚∀゚)|────── .|
| ̄ ̄...└―┘  ̄ ̄ ̄_|||___||_||_| ∵ | .|| || || || ||___| ∵ | |二〕
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ゞゝ ̄ノ ̄  ̄ ̄ ゞゝ___ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ゞゝ_ノ ゞゝ___ノ ̄ ̄ ̄ ̄
_____∧__________
笑い事じゃないでしょう!! 大丈夫?速水君!
↓
___⊂⌒~⊃。Д。)⊃___(はやみはきぜつしてる)
>>503 「ちょっと!やめなさいよ!」
「ふふふ、このエンジン音、タイヤの軋み、そしてG!ああ、俺は帰って来た!
スピードこそ命!ドリフトこそ魂!峠バトルこそ萌え!もはや俺を阻むものはぬわああいっ!」
ハンドルを切る。長い車体が大きく振られて後部座席から悲鳴が上がる。
「子供たちが乗ってるのよ!?危険な目にあわせないでちょうだい!」
「ああ、この感覚を理解してくれないとは悲しいね。これこそ男のロマンだよ!」
「なに言ってるのよ!」
完全に向こうの世界に行ってしまっていた。
「ううう、どうしよう…」
---------バスの上------------------
(゚∀゚*)「ふーん……あんたたちかぁ…急にスピード上げたと思ったら…」
(゚∀゚)「コウブツハ、デンカ!デンカ!」
(゚∀゚*)「あたしを置き去りにしようったってそうはいかないわよ!」
(゚∀゚)「ドリフート!イイ!」
体勢を低く、4つんばいになった楓の目が紅く光る。その目にはバスの上いっぱいに取り付いている
(゚∀゚)の姿が映し出されていた。
(゚∀゚*)「もなこたんのスク水はあたしのものよーっ!!」
----------車内--------------------
身震いするもなこ。
「どうしたの?」
「な、なんかどこかでよばれたようなきがして、どきどきしたのです。」
「ふーん…って、きゃあああーーーーっ!」
高速で駆け抜けて行くバス。止めようともしない運転手。焦る宇月。
「ええい!!」
∧_∧ ∧_∧
( *゚ー゚) ( ゚∀゚ )
三(⌒), ノ⊃ ( 高橋) スピードは・・
 ̄/ /) ) | | |
. 〈_)\_) (__(___)
∧_∧ .∧_∧
( *゚ー゚) (゚∀゚ )
≡≡三 三ニ⌒) 高橋.) 控えめにって
/ /) )  ̄.| | |
〈__)__) (__(___)
∧_∧ ,__ ∧_∧
( ´)ノ ):;:;)∀゚)
/  ̄,ノ'' 高橋 ) 言ってるだろうが
C /~ / / /
/ / 〉 (__(__./
\__)\)
ヽ l //
∧_∧(⌒) ―― ★ ―――
( ) /|l // | ヽ ヴォケがーー!
(/ ノl|ll / / | ヽ
(O ノ 彡'' / .|
/ ./ 〉
\__)_)
で、やってしまってから気付く。運転する人間がいない事に。
状況確認。
速水>気絶中。
運転手>今自分がKOしますた。
車>ほっとけば3秒でガードレール。
自分>免許取ったのは3年前。当然2種免許なんてなし。てゆーかオートマ限定。さらにペーパー。
現状>運転できる人間はほかにいない!
慌てて運転席に座り、ハンドルを取ると、思いっきり切る。
タイヤが悲鳴を上げ、バスの後部がガードレールを擦って、そのまま滑る。
激しい金属音。揺れまくりの車内。
「くをのおおっ!い・う・こ・と・を・き・き・ぬ・わ・さーーーーいっ!!!」
歯を食いしばってハンドルを押さえつけ、アクセルを踏み込む。
グオン!と音を立て、いきり立ったバスは峠をさらに進む。
「うわ、どうしよぅ!止まらない…てか、どうやって止めるの?うわああ!!」
2人は足元でのびたまま。子供たちはきゃあきゃあ騒いでいて。
止める方法すら分からないまま、バスはさらに加速。直感のみでカーブを抜けてゆく。対向車がいないことが幸運であったことは言うに及ばず。
その走りには理論を無視した何かがあった。
「ふっ、高橋もやるじゃないか。理論にこだわらず、攻めてくるとは…あなどれん」
トレノの男は一人、笑った。
速度と揺れを増したバスの上…
人
ピョコン ノ\ /o゚ \ /ヽ
〜(っ゚∀゚)っ c(O ゚∀゚ )っ c(゚∀゚c)〜 ピョコン
(/(/ ∪∪ νν
。 ゚ 人 ゜ρ
ブクブク ノ\σ/o゚ \/ヽ ゜
~(っ゚∀c(O ゚∀゚ )゚∀゚c)〜 。ブクーリ
(/ (∪∪ν∞ν
。
゜ 人
゜ ノ/o゚ \ヽ゛ ゜
。=i((O゚∀゚ )つ)゜
(( (⊃。(⌒) ))
 ̄¨…¨ ̄
.人ヾ プルル
プル ''/o゚ \
(O゚∀゚ ) アヒャ?
〜(∪ ∪)
∪ ∪
(゚∀゚*)「…やる気?いいわよぉ…」
バスの中、宇月の戦いが始まるのと時を同じくして、屋根の上でバケモノ同士の戦いが始まった。
>>507 楓の爪が(゚∀゚)を切り裂く。と、その端から合体し、元に戻る。
「むー、なまいき。」
「(゚∀゚)アヒャ!」
何かを投げてくる。素早く避けると、そこには(゚∀゚)の分身が潰れてへばりついている。
それはずるずるとひきずられるように本体へ戻っていく。
「……にイ…」
再び突っ込む。(一応、高速運転中のバスの上だが)そして瞬時に本体ごとばらばらに切り裂いた。
が、やっぱり元に戻ってしまう。
「むーっ」
不愉快そうな顔をする楓。切り裂いた時に左足に(゚∀゚)がくっつけられて取れなくなっていた。
「(゚∀゚)イイ!」
ニヤリと笑う本体。動きを止めた事で完全に優位を意識しているようだった。
4つんばいの体勢のまま、睨みつける楓。(゚∀゚)が投げつけられるのをなんとか避けるが、やはり動けない。
「ん!」
決断は早かった。楓は固定されている自分の左足首をあっさりと切断した。そして、そのまま突っ込んでゆく。
しかし、その直線的過ぎる攻撃はすでに読まれていた。体を分裂させ、攻撃をかわすと、瞬時に合体した…楓の体ごと。
「(゚∀゚)イタダキマース!」
ぐにぐにと音を立てて形を変える。大きい体をものともせず、咀嚼しようとしている。楓が中で暴れる。
屋根に残された足首も、本体へと戻り、やがて、ごり、ごりという音を立て始めた。
>>506 「このーっ!」
女の腕には少々重たいハンドルを切る。
そのたびにバスはとんでもないGで揺られる。
「ブレーキ!ブレーキっ!こっちでしょ?このっ!」
と言ってさっきから踏んでいるのはアクセル。
スピードメーターは120kmを越え、宇月自身にももうなにがなんだが分からなくなっていた。
「すげーっ!」
「ジェットコースターみたい!」
「先生、がんばれー!」
無責任に煽る子供達。状況を無視して楽しそうだ。
「うう、(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク なのです…」
もなこは加也と2人で座席にしがみつき、
「神よ、我らを…」近衛は神に祈り出す始末。
そして何度目かのS字。バスはアウトから入り込むと、トレノを囲い込むようにして前方をふさぐ。
「くっ!」
思わずブレーキを踏むトレノ。それが命取りになる。
バスは常軌を逸した速度のまま、車体後部を切り返し、カーブを曲がろうとする。
「まがれえええええええっ!!」
左前ランプを擦り、右テールランプをガードレールに当てながらもバスは曲がりきった。
「信じられん……」
勢いあまって左のテールランプもぶつけつつ、なおもバスは疾走してゆく。
「何人たりともこのあたしの前は走らせねえーっ!」
叫ぶ。緊張と興奮のせいか、どこかがイッてしまったのか。宇月の暴走は峠を下りきるまで続いた。
トレノは抜かれたS字の所で車を止め、降りる。
「高橋だとばかり思っていたが…女か…ふっ、俺ももう年かな…豆腐屋に専念するか…」
>>508 ごり…ごり…ごおり…(゚∀゚)の咀嚼音がだんだん小さくなる。
「(゚∀゚)イイ!」
満足そうに声をあげる。その口から、腕が突き出た。
ずちゅん!という音。
それは、腕であった。赤く染まった、爪を突き出した腕。それだけ。肘から上が、ない。
口から血ともペンキとも何ともつかないものが噴き出る。そして屋根の上に広がってゆく。
(゚∀゚)の体に紅いものがまとわり付き、あるいは中から溢れ、バスの屋根いっぱいに。
本体が分裂して逃れようとする。しかし、そのすべてから爪が突き上がり、赤が噴出す。
「ア、(゚∀゚)アヒャ…」
なおも弾け、屋根の上で分裂し続け、赤い手が(゚∀゚)の一つ一つを掴む。
やがて、屋根の上に金色に光る目が、2つ。本体を睨みつけている。
「…おねえちゃんの理性が切れ掛かってて助かったわぁ…」
『どこ』がしゃべっているのか分からないが、声がする。
「でなきゃ、ここまで容赦なくはできないものねぇ……」
局所結界。自らの血を媒介とする「領域」。この血の縄張りも彼女が持つ能力の一つ。
(まあ、完全に対バケモノ用だが)
「さて、しかえしの時間…よね?」
>>510 赤い屋根が哂う。
「じゃ、噛みにくくて不味そうだけど。」
いつしか、そのすべての(゚∀゚)が赤い手に掴み取られていた。いくつもの小さい口が、赤い屋根に浮かび、牙が光る。
「イタダキマース!」
がぶ、ぐちゃ、ぐに、ぞぶり、ぐにゅぐにゅ、ごくん。
すべてが赤に飲み込まれてゆく。完膚なきまでに消滅させると、ゆっくり赤は人の形へ戻っていく。
そして、屋根には楓の姿だけが残されていた。足や服まできちんと再生されて。
「あはははは、ふひゃひゃひゃはははっ!アーッヒャッヒャッヒャッヒャ!!ひひひひひひひひひっ!」
哂う悪魔のような黒猫だけがそこに残されて。
愉快でたまらないというように笑い続け、バスの上に立ち上がろうとして。
吹っ飛んだ。
S字を130kmで曲がろうっていう時に屋根の上で立ってたら、そりゃあどうやっても無理だ。
だから戦闘中はずっと4つんばいだったというのに。ハイになりすぎて忘れていたのだ。
「ひゃあああああああーーーーーーーーーっ!!!!」
猛スピードで走り去るバス。宙に浮いた黒猫はそのまま後ろへと飛ばされ、地面に投げ出された。
着地して、見ればバスははるか遠く。
「しまったあ……まってよー!置いてかないで〜!」
半泣きになって楓は車道を走る。
この日、峠には新たな伝説が2つ出来たという。
「バス最速伝説」
「和服の女(幽霊?)が峠をとんでもないスピードで走る」
という伝説が。しかし、それを確かめられた人間はおらず、真偽の程は定かではないという……
>>509 峠を抜けたころ、ようやく目を覚ました速水によってバスはなんとか止められた。
なんとか、パーキングエリアに停めて落ち着く。
「……い、いきてる…」
放心する宇月。
「た、たすかったぁ…」
胸をなでおろす速水。
「あー、おもしろかったー」
まだ分かっていない子供たちと。
「あ、あははは、た、たすかったね…もなこちゃん…」
「そ、そうなのです…ね…あ、あは、は…」
笑い顔で引き攣っている2人。
「さすがは、俺が見込んだだけのことはある。見事だ。俺のバス最速理論を実証してくれてありがとう。
どうだ?俺と組んで峠のスピードキングを目指さないか?」
いつの間にか運転手が立ち上がって笑って手を差し出していた。
「……ずっと、見てた…の?」
「ああ、あのS字は見事だったぞ。あのテクの前ではさしもの拓海もどうすることもできんかっただろうな、あっはっはっは。」
笑う運転手に対して宇月の顔は引き攣っていた。
「あ、あんたねえ……」
「ん?どうした?大丈夫、この俺の理論と君の腕が合わされば怖いものなどどこにも……」
>>512 _ _ .' , .. ∧_∧
∧ _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ ' ( )
, -'' ̄ __――=', ・,‘ r⌒> _/ /
宇月 / -―  ̄ ̄  ̄"'" . ’ | y'⌒ ⌒i
/ ノ | / ノ |
/ , イ ) , ー' /´ヾ_ノ
/ _, \ / , ノ
| / \ `、 / / /運転手高橋
j / ヽ | / / ,'
/ ノ { | / /| |
/ / | (_ !、_/ / 〉
`、_〉 ー‐‐` |_/
「ざっけんじゃないわよっ!!!!」
閃光のような右ストレートが芸術的なまでにヒットした……
その後、運転は速水が変わり、高橋は座席に縛り付けられたまま、プールに向かう。
宇月はというと、その道のりすべてを疲れきった体を休めるかのように眠り続けた。
子供たちはというと、相変わらず元気にはしゃぎ続けていたのだが、宇月には相手をする余裕すらなかったのであった。
その鎧は両腕が落ち、動力伝達系統がやられてその動きを止めている。
「に゙ゃ゙〜ん!」
止めを刺すべく、一匹の猫耳がナイフを突き立てる。ガン!ガン!ガン!がっ…
「そこまでなの〜。」
手首を掴んで放り投げる。
「ぐきゅっ!」
木に激突して気を失う猫耳。
「こんなぽんこつがいっぴきまよいこんだぐらいで、がたがたさわぐんじゃな〜いの、(ぴ〜)ぼうども!」
鎧の上に立つ水兵服。一瞬躊躇うものの、新たなる敵の出現に殺気立つ猫耳兵士たち。
「にゃ〜!縄張りを荒らす奴は許さないにゃ!撃つにゃ!撃つにゃ!」
銃弾!ナイフ!投石!一斗缶!それぞれの猫耳が得意とする武器がみつばを襲う。
「お、そ、い、の!」
銃弾をかわし、ナイフを払い、石を受け止め、一斗缶を頭で潰す。次の瞬間、石を投げ返す!がっ!
「きにゃ!」
また一匹猫耳が倒れる。
「ぜんぜんだめなの〜。まだやる?みつばはもうせいふくよごしたくないの。どうするの?」
白いセーラーの裾をぱたぱた。へそが見えている。ぱたぱた。
「ぐぐぐぐぐにゃ〜!だったら、白兵戦にゃ〜!あの新入りに痛い目見せてやるにゃ!とつげき!」
「もう〜。これだから(ぴ〜)ぼうは…こまるの。」
手にコンバットナイフを持ち、飛び掛る猫耳兵士たち。
「キェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!にゃ!」
「うるさい!!」
突き出したナイフを飛び跳ねてかわすと、猫耳兵士の背後に着地、蹴り!落としたナイフを拾う。
「どうしてもやるの。そ〜お。じゃ、みつばもほんきになるよ?」
「にゃ〜〜〜〜!」
飛び掛ってくる猫耳兵士のナイフをナイフで受け止め、足を払う。転んだ猫耳兵士の腹に蹴りを一撃。
「ぐぶっ!」
>500
「500げっとおめ……テレビ局って電波強いのね」
最近知り合いになった第五旅団のお偉いさんから、頼まれ事をされた大和 撫子。
知人の経営するウォーターパークが経営難なので協力して欲しいとの事。
軍とのパイプを繋ぐチャンスだし、涼しそうな取材は願ったりなので引き受ける事にした。
局のロッカールームでタイトなスーツを脱ぎ捨て、半ズボンとワイシャツというラフな服装に着替える。
一応、服の下には最新デザインの白いビキニを着けている。
ロッカールームの外には既に相棒の亀雄 雄一が待機していた。
「ちゃんとチケット来ましたよ」
十枚近い招待券の入った封筒を見せる。行くのは二人だけなのだが、余った分を返す必要は無いだろう。
「じゃあカメちゃん、運転お願い」
「ひどいにゃ!もう許さないにゃ!」
シュッ、繰り出してきたナイフをまたしてもナイフで受け止める!だが、今度は片手。空いている手で
猫耳兵士の手首を掴み、別の猫耳の方に投げ飛ばす。
「ぐべ」「にきゃ」「ひぐぅ」
変な声を出して気を失う猫耳兵士たち。
「まだくるの?みつばはまだまだよゆうだよ?」
倒れた猫耳兵士が肩に下げていた小銃を拾い、着剣する。
「うぐぐぐぐ!…お前たちは下がっていいにゃ!ここはこの縄張りを仕切っている、
猫耳兵士57が相手になるにゃ!」
「そう、おまえがここのぼすなの?だったらむれのしつけぐらいしっかりやっとくの!もう、ゔぁかかと。」
「言わせておけば…!ぶっ殺すにゃ!」
「こい!」
ぱららららららららららら!銃を撃ちながら突進してくる猫耳兵士57。
そこへ突進して行くみつば。
「だんまくがぜんぜんうっすいの!だんまくになってないの!もういっかいようせいじょいけなの!」
一気に57の懐に潜り込み、銃剣で突き立てる!ザクッ!!!!
「ぎぁああああああああゃに!」
「べつにしにゃあしないの。あんしんするの。」
ひゅ〜ひゅ〜息をしながら倒れている57。それを抱えるようにして猫耳兵士が寄り添う。
「そいつによ〜くいっとくの。むれのしつけと、それからとれ〜にんぐをしっかりやっとけって!いい?」
「わ、分かったにゃ。だから、もう勘弁して〜。」
気絶した猫耳、負傷した猫耳を引っ張りながら、群れは森の奥に消えていった。
「うわ…すいへいふくべとべとなの〜。いせいせ…りねんいこ。」
「みつば、なかなか強いじゃありませんの。いつは、むつばより強いんでなくて?」
「どうだろ?わかんない。はやくりねんいって、せんたくしてもらお〜。」
「そうですわね。リネンはどちらかしら〜♪」
「こちらなの〜♪」
「あの…すいません…」
鎧から声がする。
「あら?この鎧さん喋りましたわよ?」
「ここから出られないんです…助けてください…シクシク」
「こんどはなきだしたの。」
……あれ? おわっちゃった。
エネルギーはまだ半分くらいあるけれど、装甲が持たなかったみたいだね。
ふーん。このエネルギーを攻撃、防御、回復に割り当てて戦うのか。
……教授おそいなあ。注文していたナイフはまだ出来てないみたいだし……今日は帰ろう。
今度これ、凶箱ごと貸してもらおうっと。
>516
バキン!
みつばが胸部プレートを開くと中には人間がいた。
「あ、ありがとうございます・・・・。」
「いえいえ、お安い御用ですわ〜。」
「たすけたのはみつばなの。」
人間は新井ちゆと名乗った。
「いったいなにがありましたの?」
「実は教授さんにかくかくしかじかで、こんなところに放り出されて・・・。」
「やっぱり、ろくなことしないにゃ、あのおんな。」
「あら、みつばさんは、猫耳水兵にさせられたの、嫌だったんですの?」
「あたりまえにゃ。」
「猫耳水兵になって私やみんなに出会えたこと、嫌だったんですの?」
「え・・・・?」
「嫌だったんですの〜?」
「・・・・・・・・・わかんないにゃ。」
「そうですか〜。ふふ。」
などと話していると、言いにくそうにしていたちゆが不意に口をひらいた。
「あ、あの、人間・・・じゃないですよね?」
「あら〜、ばれてしまいましたわ。」
「・・・おもいだしたにゃ。れいてきけいごせくしょんのせいふくにゃ。」
「霊的警護・・・? それで、ばれたのですね。」
「でも、自然のものではないですよね。人工物ですか?」
「そのとうりです、私は船魂なのですよ。あなた、なかなか優秀なのですね〜。」
「そ、そんな、私なんて・・・。」
不意に携帯が鳴った。
「はい、新井ちゆです。え? 明日ですか? ・・・・・はい、了解しました。」
「どうかしたのですか?」
「もなこ様のの警備に借り出されることになったんです。」
「もっもなこ様のっ?!」
「はい、もなこ様の学校の特別授業で、民間のプールに出かけるそうです。」
「・・・それはいいことを聞かせてもらいましたわ〜。(授業ってことはもしかしてスクール水着?)」
ちゆはいつかの式神と似たような波動を感じ、おもわずあとずさった。
「はぁはぁしはじめたらだれにもとめられないのにゃ。」
真っ暗な部屋の中、机の上のパソコンの、スクリーンセーバーだけが動いている。
トコトコ歩く三頭身もなこ。何も無いところでパタッと転ぶ。
元気良く走り回るともえ。画面の右端から左端へ。
画面の中央で人間椅子に座るもえみ。優雅にティータイム中。
ふっ…と現れる萌夜叉姫。ふるふると首を振り、ふっ…と消える。
画面の左端からイルカに乗ったともえ。もえみを跳ね飛ばす。
星になるもえみ。再び現れる萌姫。ニヤーと、微かに口元が歪む。
やっと立ち上がるもなこ。つくしんぼステッキで大人に変身。ヤタガラスと飛んでゆく。
闇の中から男が現れ、パソコンの前に座った。スクリーンセーバーは途切れ、
画面が切り替わる。某オークションのコンテンツをチェックしているようだった。
─────────────────────────────────────
出品名:「夏休みアニメフェスタ」特別招待券(ペア)
入札額:\2000→\3500(入札者4人)
残時間:5日
注意等:
・会場で特製「どえらもん人形」か「ヤタガラス目覚まし」貰えます。
*************************************
出品者:名無し草
出品名:式神「火星神将」(開封済み。ほぼ新品)
入札額:\690000→\690000(入札者0人)
残時間:30分
注意等:
・火が出せます。
・ハトが出せます。
・呼ばれて飛び出せます。
・使わない時はコムパクトに収納できます(高級漆小箱付)
*************************************
出品者:名無し三等兵(新規)
出品名:DVD「魔法内親王伝 もなこ」第一巻(開封済み。美品)
入札額:\1500→\2000(入札者3人)
─────────────────────────────────────
???「む、これは……」
んー!よく寝たね。
ラジオ体操行ってこよっと。おーい、たっくん…あれー?いないや。
おーい、スタンプもらえないぞー。スタンプ全部揃わないとMドナルドのポテト貰えないよー?
…帰ってきてないのかな?しょーがないねえ、一人で行ってこよっと。
たっくん最近、夜更かしが過ぎるからなあ…ちょっと叱ってやらないとね。
30分後。
さて、と。今日もバイトだ!がんばろう!みんな元気してるかな?
「おっはようございまーす!」
「あ、ともえちゃん、おはよう。今日もよろしくね。」
「はーい。」
ノースリーブのシャツに短パン姿で出迎えの人に挨拶する。
迎えの車にはウォーターランドと書かれていた。
チヨダパレスの門前に、男が一人立っている。精悍な顔つきで、歳は二十代半ばくらいであろう。
通行人達は皆、男に注目する。理由はただ一つ。この暑い最中、真っ赤なロングコートを
着込んでいることだった。
女子高生A「うわあ、あの人暑くないのかな?」
女子高生B「今年の夏は暑いから」
女子高生A「そういえば、この前も変な人いたよね〜」
男は突然、壁のパントマイムを始める。本当に壁があるとしか思えないような巧みさで、パレス内に
向かってやっている事を除けば、非常に上手かった。それを見ている通行人達やパレスの門番も、
どう対応したものか困惑気味であった。芸が終了すると、一応ぱらぱらと拍手が起こる。
「さすが……見事な結界……」
男は一人呟きながら、満足気に何度も頷いていたが、ここで初めてギャラリーの存在に気付いた。
「………」
男はおもむろに、懐から白い鳩を取り出した。ギャラリーに反応は無い。一匹目を肩に乗せ、2匹目、3匹目と
次々に取り出してゆく。鳩の数が20匹を超えたところで、ギャラリーの一人が感嘆の声をあげた。
すると男は、コートの合わせ目を大きく広げた。そこから怒涛の勢いで何十匹もの鳩が飛び出してくる。
白い鳩達は赤コートの男を埋め尽くさんばかりに渦巻き、やがてひと塊りになって空の彼方へと飛び去った。
女子高生A「うわ〜びっくりした。凄いパフォーマンス」
女子高生B「あの人、大道芸人だったんだね。あれ…いない?」
観客達が鳩の群れに気を取られた隙に、男の姿は忽然と消えていた。
リネンにて、先ほどの受付嬢がやってきた。
「ちょっとさがしました。田中さんから伝言を預かっています。ひりゅうで横須賀に入ったそうですよ。で、
2人分のベッドを調整部宿舎の方にとったそうですから、今日はそちらでお休みくださいとのことです。」
ニコリと笑う受付嬢。
「では私はこれで。ごきげんよう〜。」
「田中?ああ、あの男ですの?忘れてましたわ。」
「いせいせ、べっどだって。いせいせはべっどのほうがいい?」
「そうですわね…まあ、折角とってもらったんだから使いますわ。そういう優しさもあるものですわ(謎)」
「そうだね。じょうげにひとにいないべっどってひさしぶりなの。」
「お艦は3段ベッドですものね♪あたくしの中は公室のスペースを確保するために居住区が割り喰ってますものね。
みつばはお艦ではあんまり寝られなかったのかしら?」
「じつはそうなの。うえのやつはうるさいし、したのやつはくさいし、さんざんだったの。」
「ウフフ…ま、我慢することですわよ。」
調整部宿舎にはテレビと冷蔵庫(中には何本かの飲み物が入っていた。)が置いてあり、普通のベッドが2基
設置してあった。おそらく職員用の空き部屋なのだろう。テレビをつけると、いま話題の海賊事案について
特集が組まれていた。
「あの艦、ただものじゃありませんわね。くわばらくわばらですわあ。」
「いせいせ〜。みつばたちね、しゅっこうしてこいつらとたたかうんだよ〜。」
「へぇ〜。すごいんですのね…って、あたくしが?嫌ですわ!お肌が荒れてしまいますわ!」
「しゅっこうがなければたいくつだってとびだすし…しゅっこうすればいやがるし…まったくいいかげんにするの〜。」
一泊し、玄関からでる。なぜか受付嬢がついてくる。
「あら、みつば、忘れ物でもした?ちゃんとスリップつけてますの?おパンツ履きましたの?」
「(ぱっ)すりっぷ…うん。(ぱっ)おぱんつ…うん…って、なにやらすの!」
「いいえ、忘れ物はされてません。御心配なさらずに。田中さんからちょっと頼まれごとをいたしまして。お二人を
ウォーターランドに送ってくれと頼まれたんですよ。どうせ止めても、菊水の任務車両に忍び込んででも行くだろうし、
それなら最初から送ってしまった方がトラブルも少なくていいだろうとおっしゃられてました。」
「田中、案外鋭い男ですわね…ちょっと侮れませんわね…ま、送ってもらえるならお言葉に甘えますわ。」
「では早速行きましょう。車両はこちらに用意してあります。」
「ねえ、うけつけのおねえさん、おなまえはなんていうの〜?」
「あ、失礼致しました。私、更級真紀子と申します。菊水ネームは秘密ということで…。」
えと、もえみやもなこなのです。
きょうは、しゅうせんきねんびなのです。
もなこがうまれるずっと、ずっとまえのおはなしなのです。
えっと、いろいろあったそうなので、もなこ、まだよくわからないのです。
でも、このくにやこのくにのひとたちのためにいっぱいひとがしんだそうなのです。
にいがたのときよりもっとおおく、ひとがしんだりけがしたそうなのです。
けんかはやっぱりかなしいのです。
もなこはせかいじゅうのひとがわらってたのしくくらせたらいいのにとおもうのです。
もなこ、みんなにおねがいしていいですか?
きょうはおひるにみんなでおいのりするそうなのです。
もなこもおとうさまやおかあさまといっしょにおいのりするので、
みんなもおいのりしてほしいのです。
みんな、なかよくくらしていけますようにって。
僕は朝帰り〜。何をしていたのかはヒミツなのさ。
家では出来るだけ良い子にしてるんだけどね、仕方が無い時もあるんだよ。
お姉ちゃん、今日は朝からバイトでよかった。
洗面代に向かう。鏡には、これといった特徴のない、普通の子供が映っている。
疲れ果てた表情で、目つきが少し荒んでいる。それを見ると急に疲労が押し寄せてきた。
「……酷い顔してるなあ。お姉ちゃんには見せられないや」
バシャバシャと、水を飛び散らしながら顔を洗う。
「はあ……クスリ、飲まなきゃ」
(ザラザラ……トクトクトク……ゴクゴク)
目を閉じて一気に流し込む。教授が処方した、運動神経を高める薬とか、頭の良くなる薬だよ、念のため。
他に何か入っているかもしれないけれど、好き嫌いはいけないよね?
「ええっと、あとは……今日はお祈りしなきゃ…ね」
……ダメだ。もう部屋まで行く気力が無いや。……縁側が気持ちよさそう。オヤスミ……
夏休み真っ只中ですが、今日は全校登校日です。ホームルームの後に、体育館で校長先生の
長い長いお話がありました。みんな貧血でバタバタ倒れて逝きます。最近の子供は軟弱です。
見通しが良くなって、萌宮さんのクラスだけ人がいない事に気が付きました。担任の先生だけが、
一人ぽつんと寂しそうにしておられます。副担任の宇月先生が居られないという事は、
今日がウォーターランドに行く日だったようです。私達は学校のプールが使えないので、
近所の川や、市民プールを借りている状態です。夏休み中だった事が不幸中の幸いでした。
「──黙祷──」
目を瞑ります。すると、すうっと浮き上がるような……(ぱたっ)
はじめてのひんけつは、とてもきもちがよかったです…。
この国には、五稜郭が三つある。函館に一つ。長野に小さいのが一つ。そして新潟に一つ。
前記二つの五稜郭は国の文化財として一般にも公開されているが、新潟のそれは現在、東朝と呼ばれる
組織の拠点となっていた。また、東朝が運営する宗教法人、蒼天教の本願地でもある。
東朝の目的は、皇室の血を引く萌姫(正式には萌夜叉姫)を正統な皇女(の一人)として認知させ、
今は肩書きだけの存在である『東朝』を正式な皇統として復興させる事である。
他の三朝から見れば東朝は意外なほど規模が小さく、私兵団さえ持たない傍流、異端の血統ではあるが、
幹部達は皆が”萌術”の使い手、萌能力者であり、実際に奇跡を行う宗教という、
他とは違ったアプローチで勢力を広げつつあった。
だが現在、東朝は存亡の危機に立たされていた。
数ヶ月前、北朝の萌宮もなこ内親王が「ちゃい」の魔法を発動された。その力は全世界に及び、あらゆる
事象、因果に影響を及ぼした。大抵は良い方向へ進んだが、全てが完全に上手く行くとは限らないものだ。
五稜郭の一角で眠り続けるもえひと殿下には、残念ながら「ちゃい」の影響が確認できなかった。
(もえひと殿下は、現在東朝の一員である菊十字団の面々が奉る”可能性の皇子”である。現在昏睡状態)
萌姫に及ぼされた影響は、その幼き御身に背負わされた巨大な怨念の消失という、素晴らしきものであった。
それは怨念の一部を負担していた幾人もの”係”達によって、感知だけはされている。というのは、
それと同時に萌姫が行方知れずになってしまったのだ。萌姫失くしては東朝の存在意義が失われてしまう。
しかし幹部達の大半は楽観的な反応であった。怨念が消失した今、萌姫が幸せになれればそれでいいと。
五稜郭の敷地内には、小さな武家屋敷が幾つかある。五稜郭本体の維持費を少しでも抑えようと、
東朝の居残り組みは、そこを改装して住居としていた。
「♪六っ甲颪にぃ 颯爽とぉ〜」
自己流にアレンジされた六甲颪を口ずさみながら、元気良く障子に叩きをかけている割烹着姿の女性。
「♪蒼天翔ーけるっ 日輪のぉ〜」
──ビリ。
「ありゃ、またやっちまった」
和紙にツバを付けて誤魔化す。風でも吹かなければバレはしないだろう。
♪ピンポーン
「む。はーい、ちょっと待ってけれー」
何処の方言か小一時間問い詰めたくなるようななまりであった。ばたばたと玄関に向かう。
玄関には誰もいなかった。ただ見慣れぬ紙袋が落ちている。
「なんだべさ?」
紙袋の中には黒い箱と、丁寧な文字が書かれたカードが入っていた。
「なになに──加藤様、お買い上げ有難うございました?」
<都内某所>
(薄闇に包まれた室内には円卓が置かれ、其処には幾つかの人影があった)
「問題は皇統では無い。皇統を用いて自らの利益のみを追求する、君側の奸臣と呼ぶべき者どもだ」
「……我が国の本当の主人、国民が蔑ろにされている現状は……」
「…“菊水”闇にありて人を狩る皇統の守護者。だがその恐怖にうち勝って………」
(口泡を飛ばして現体制を批判する男達)
(多くの者が大声で罵っている最中、只1人の男は口元を弛めたままに、だが一言も
口を開く事無く座っていた)
(そして、男達が北朝と文民政府への罵りに疲れた頃に漸く口を開いた)
では、計画始動に対する最終合意は成されたと判断して宜しいわけでしょうか?
(さして大きな声では無かった。だが、一つの方向性が与えられた議論は急速に収束する)
「私も、そう認識する。既に問題は実施するか否か、その一点のみであろう」
「いや同意は既に形成されているのではないかね?」
「同意する。残るには意志の表示、それだけだ」
(婉曲に、殆ど本能的と良い態度で自身の責任を曖昧にする形で同意していく一同)
(だがそれらの行為の全てを断ち切るように、男は口を開いた)
宜しいのですね?
(動く口元。だが目元は薄明かりを反射した眼鏡によって遮られていた)
(選択を突きつけられた議長と思しき男は、溜息と共に言葉を押し出す)
「ああ、そう判断してくれ。宜しく頼むよ」
ええ。全ては日本国の為に
(言葉は空疎なものの様に、闇へと吸い取られていった)
(歯車がゆっくりと動き出す)
と言う訳で今の北朝と文民政府に代表される体制が崩れる事を希望する皆様、或いは
争乱を望む方々、予算と機材に関しては在る程度ご協力出来ると思いますので勇志ある
場合にはご一報下さい。
>>528 資金的に余裕が無いのでしたら、貴方の所のような宗教法人に対する融資を扱っている
金融機関をご紹介いたしましょうか?
或いは、我々からでも良いのですよ。
ええ。
皇統に対する奉仕は、国民の名誉ある義務ですから。
(意図の見えない微笑。目元は歪んでいない)
余り意図はありませんので、軽くご要望下さい。
側近で200億までは動かせますので。
金利ですか?
気にしないで下さい。
必要ありませんので。
>531
ど、どうして今ウチがビンボーだという事が(笑)
……侮り難し国家公務員(警戒)
>>532 財務省が把握している納税額だけでも、その程度は読みとれますよ?
(微苦笑)
それに私はしがない、何の権限も持たない一介の厚生省所属の公務員ですので、そんなに
警戒しないでください。
世の中には善意と萌とが満ちあふれている…そうではないのですか?
>533
今時は、そんな物言いする者ほど信用ならない、世知辛い世の中です。
どうぞお引取り下さい(ニッコリ)
あ、一応ケータイの番号は聞いておきましょうか?
>>534 では代わりに名刺を置いておきますよ。
何かありましたらご一報下さい。
(慇懃な態度で差し出された名刺)
(其処には名前と厚生省の名、そして一個だけ電話番号が書かれていた)
ええ。
お電話はいつでもお受けしておりますからどの様な些細な事でもどうぞお掛け下さい。
(電話に向けて)
ええ、噂に違わず少しばかり難物のようですね……
いや構いませんよ彼等に対する妨害工作等、現段階では。
それよりも支援をすべきですよ?
信頼に足る皇統が増えると言う事は、翻って北朝に対する牽制にも使えますからね。
では、今から戻ります。
今日は諸事情で各地に散った東朝の幹部達が集まる週、その初日である。大広間は何故か少しだけ
雰囲気が険悪であった。この手の組織には珍しく、幹部達は殆ど全員が若者である。ただ一人だけ、
上座に強面の大男が座っている。冷たい視線は彼に向けられているようだった。
上座と下座の間に、意匠は無いが高級そうな漆塗りの小箱が置いてある。蓋を留める紫色の飾り紐には、
取扱説明書と書かれた紙が挟まっていた。
「で、これが六十九万円もしたという式神セットですか、加藤さん?」
「ろっ、ろくじゅきゅう!? カトちゃん何ばしょっとね!」
「ただでさえ台所事情が厳しいのに」(シクシク)
「やっぱり、このまえ来た厚生省の役人って人の話、考え直した方がいいのでは?」
「さあ、それはどうでしょう? しかし南朝、西朝からの支援が事実上ストップしている今、
70万もの無駄遣いは万死に値しますね」
その若者は非常(非情)に爽やかな笑顔のまま言ってのけた。
「むう……萌姫様の行方は?」
加藤と呼ばれた大男は僅かに冷や汗をかきつつ、話を逸らす。かつては魔人とまで言われた
男だったが、随分と丸くなったものだ。
「そちらこそどうなんですか? あの酒場は人探しには最高の場所でしょう?」
「そんなに心配する事は無いと思います。あの怨念が消失した以上、姫様の霊的加護は
万難を排するはずです。そのうちひょっこり戻ってこられますよ」
「そうですね。星に悪い兆しは出ていませんし。僕たちの萌術で行方を探れないのは、
姫様がそう望んでいるからかもしれません」
「それにしても、こんなあっけない形で目的の半分が達成されてしまうなんて、
僕等のこれまでの苦労は一体なんだったんでしょうね……」
>537続き
「あのですね、貴方達、萌姫様を何歳だと思っているんですか? お隠れになられて
もう二ヶ月なんですよ? はじめての一人旅にしてはグレイト過ぎです」
「萌姫様の一人旅って、なんだか萌えだなあ。今頃だと、精霊流しに混じって小船で流れてたりして」
「ああ、萌えですねそれは」
「あ・ん・た・達はーっ!」(怒っ)
「コホン。怨念が去ったとはいえ、姫が長きに渡り怨霊に苦しめられてきた事実も、肉親を失った過去
までもが消える訳ではない」
加藤の隣で空いたままの、小さな赤い座布団を見詰める東朝の幹部達。
「……姫様の不在を知り、信者達が別の教団に流れ始めています。特に信濃町教団。あそこは一見
まっとうな宗教団体に思えますが、どうにも胡散臭い」
「今更信者達を放っておくことも出来ませんよね? もえひと殿の事もありますし」
「皆様、ありがとうございます」
「そんな、藍前さん顔を御上げ下さい。もえひと殿も菊十字団の方々も、とっくの昔に仲間じゃないですか」
「うぅ。うれしいこと言ってくれるだべさ」
「とにかく、各支部の責任者は、十分注意されて下さいね」
「さて、それはそれとして、加藤さんへの罰ゲームは何にしましょうか?」(ニッコリ)
「……これは、いいものだ」(汗)
「式神だったら御自分で創られるのでは?」
「──なんだ、騒がしいな」
「ああ葛城さ〜ん、加藤さんがヤホークでまた衝動買いを」
「……ほう……これはまた面白い物を手に入れたな」
車の中だよっ。迎えに来てくれたのは社長のおじさん。
ウォーターランドのおじさんはね、昔下関にいたころからでボクたちの支援をしてくれてたんだ。
で、今はこっちでプールの経営してるんだけどボクがこっちにいる間ボクのイルカを預かってくれてるんだ。
「あの子達、元気してる?」
「ええもちろん。ともえちゃんのイルカに粗相はできねえですよ!」
「よかった。今日も楽しみだなあ。」
「イルカショー、好評ですよ。ともえちゃんの勇姿のおかげで客足倍増!今日もよろしくお願いしますよ!」
うーん、その割にはあんまりお客って多くない気がするんだよね。正直。
でも、「もうかってますから、お礼です!」っておこづかいいっぱいくれるんだ。
時たま、桁を間違えて振り込まれるからびっくりするんだけど。ま、いいかなって。へへへ。
「ともえちゃんにはがんばってもらわないとね!」
「うん、ボクがんばるよ。おじさんのためにも、ね。」
「うれしいこと言ってくれるねえ。お、そうそう、今日はお客にゲストがいるんだ。楽しみにしててよ。」
「ふーん…だれだろ、いいや、ついてからのお楽しみ、でしょ?」
「そう。察しがいいねえ。」
「ふっふーん、スルドイでしょ。」
誰だろ?ボクの知ってる人かなあ?うん、なんかいい事ありそうな予感。ちょっとはりきっちゃおうっと。
雲ひとつ無い夜空。煌々と輝く満月の下、風吹き抜ける夏の草原。
月明かりが全てを包む世界にただ一人、少女が佇んでいる。月光に映える萌葱色の着物。
髪は闇よりも深く黒く。病的なまでに白い白い肌。夢現を彷徨うような瞳。そよ風に髪が揺れ、
結わえられた金色の鈴が、ちりんと澄んだ音を立てる。萌姫である。
少し背が伸びただろうか?髪も長くなった。表情は以前と変わらない。だが今、少しだけ
微笑んだような気もする。
萌姫は草原を歩き始めたが、少しして立ち止まった。ちょこんと座り、ふう…と小さな溜息をつく。
もう疲れたらしい。病弱なのは相変わらずのようだった。
「…りくごう」
呼びかけに応え、何処からともなく冷気を纏った白い犬が現れる。寄り添ってくる犬の顔に触れると、
ふかふかなのに、ひんやり冷たい毛並。萌姫は爪先立ちをして、腹這いになった獣の背へ腰掛けた。
「りくごう、ゆけ」
白い犬はゆっくり起き上がると、月明かりの下、少女を乗せて何処かへと歩き始めた。
彼等もどうやら内側に幾つか問題を抱えているようですね。
(呟きながら盗聴器(
>>537-538)のイヤホンを外す)
「宜しいので?」
構いませんよ。
この世知辛い世の中で人の善意だけを盲信する様な幸せな人間では利用する価値が
ありませんからね。
それよりも問題は東朝のみならず西朝、そして南朝までもが機能不全に陥っている
と言う事でしょうか。
芝村次官を喪った国防軍芝村派も行動力を低下させていますが、それでも英雄である
善行将軍が動けば雷同する輩は続出するでしょうからね。
(眼鏡をゆっくりと押し上げる)
如何にして国防軍を団結させないか……それが問題ですね。
「では………やはり」
いえ、現時点で血生臭い行動には及びませんよ。
手がない訳では在りませんが、それには時間が掛かりそうなだけです。
それに、なまじ速い時点で善行将軍を排除していた場合、残った烏合の衆でも仇討ちを
旗印に団結する危険がありますから。
そうですね。
もう少しばかり善行将軍には東北で血と汗とを流してもらいましょうか。
(素早い動作で懐より財布を抜く)
表の自販機でコーヒーを。
砂糖とクリームは増量で。
「はい」
明かりもつけない深夜の執務室の中、大きく開かれた窓から差し込む、
月明かりを背にした大柄な漢が複数の人形を並べてニヤリと笑った。
「これだけみると怪しい人ですね」
「これだけ見なくても真実だな」
漢が驚いて後ろを見ると妙齢の若者とスーツを着た女性が其処に立っていた。
「…ぅがぁ…」
恐ろしく静かなときが流れる。其れはまるで思春期の少年が母親に
何か見られたくないことを目撃されてしまったときのような間のわるぃい沈黙だった。
「『この世界』でまでおやくそくしなくてもいいんですよ」と若者がにっこり微笑む。
「其れは酷というものだろう。ヒトには持って生まれたサガというものが在る」
二つのシルエットに向かって漢が空しい抵抗を試みる。
「…ぐぅ…こ、これは…最近でてきたばっかりの九重兄妹や楓たん、もえりあたん、菊レンジャー等のオプション下着、洋服フルセットが揃った大幸技巧人形で…」
「税抜き69万」
若者の一言に漢は撃沈した。
撃沈した漢にははお構いなく女性つづける。
「だが実際に面白いモノだ。その値段の示す数字に心当たりは無いだろうか」
「…(>473)霊警の影のトップ。そしてこの世界における『この世界』における
親皇教団成立の実行者で在るあのヒトですか」
「そうだ。厳密にはわれわれと同様に、『旧世界』のかの人物とは別人だろう」
「でしょうね。よりによって貴方が学校の先生になっているなんてはっきり言って悪夢です」
そう言ってのけた若者に女性がまるで他人事かのように頷く。
「そうだな。恐らくは『ちゃい』が発動したことによって遠き太古における『要素』が変質したのだろう。
つまりはここは分岐した『別宇宙』とよぶこともできる。そうで在るのなれば私が現在ヒトとしてここに存在する理由も、存在を示す名が元の『一子』から『和子』に変質しているわけも、かのじょの鈴が銅である事も説明が可能だ」
「あぁ、それで僕たちには『二つの人生の記憶』が在るんですね」
「そう言うことだ。恐らくは『旧世界』は、こことはまた別個の歴史を歩んでいるだろう。其れに伴い『旧世界の記憶(旧設定)』はその約款を失い消えゆき『この世界の記憶(設定)』が有効になる。それはそれで素晴らしき事とも言える」
「で、記憶が変わろうがどうなろうがこのひとはかわらない、っと」
大きな漢が身をすくめてしょんぼりする。
「で…信濃教団だそうですねど…どう思います」
「しらんな。そもそも、かのじょの幸福にとって教団は必要条件ではない。むしろ無いほうが幸福な道も在るだろう。その為に教団をもえひと殿に引き継いでもらったのだ。特に害悪が無いのであれば知る必要も無い」
「…淡白だな、相変わらず」
「でもないでしょう。本当にそうだったらもえひとさんを消失させて其れを口実に教団を解散して後腐れ無くします。僕だったらそうします」
漢が軽く首をすくめ女性が苦笑いをした。
「…で、もえひと殿の残りは今何処に」
「恐らくはかのじょの、すぐそばにいるだろう」
「やっぱりの一人旅って萌ですね」
「あぁ、萌えだな」
「僕的にはやっぱり記憶の無い不思議系少女の一人旅を押しますね」
「…真夏のプールサイドでなぜかバイトの手伝いをしていてエプロン…」
二人が盛り上がっているそばで女性がぼそりと一言を追加する。
「やはり、なぜかプールサイドでバイトの手伝いをしていた萌葱色の着物の上にエプロンをつけた病弱そうな少女が周辺の騒動に巻き込まれてプールに落ち、助けられた後で泣きそうな瞳で周囲をじっと見つめる。萌えだと思うが」
盛り上がっていた二人が突っ伏す。
「あ、あなたってひとは…」
「…外道だな」
涼しい顔で女性が受け流す。
「気のせいだ。さて、心ユクまで楽しんだことだしこの辺りにしよう」
「ですね。あぁ、人形遊びはほどほどにしないとつかまりますからね」
二人が去った後にはとどめを刺された漢が残されていた
「ふーん、どう思いまス?参謀長」
「そんなに人材が欠乏しているのか、といったところですか。」
某戦隊司令室。久しぶりの登場なのでちょっと緊張した面持ちで通達書を見つめる男が2人。
「いやはや、こちらが東北で牽制なんていう事をやってる間に帝都はこのありさま…やれやれ。」
「別に司令がいたからといってどうなるとも思えませんが。」
「…まあ、そうなんですけどネエ〜…」
本部からの通達には「現在横須賀に向っているひりゅうは補給後、懸案の海賊討伐に向う予定である。
補給の一環として貴戦隊には、オペレーターの人員供与を希望するものである。なお〜…」とある。
「つまり、ひりゅうは兵力不足で、前線である我々からオペレーターを徴発しないと海賊退治にもいけない、と?」
「笑止デスネ。同時に我々の状況について正鵠をついてもいますがネ。」
「今のところ陸戦部隊以外出番ありませんしね。ひまそうなのがばれたんでしょうか?」
薄く笑う2人。まあ、確かに暇だったのだけれど(爆)
「日本海なんですし、我々が行くっていう手もあるとは思わないんですね。」
「まあ、我々はR国への備えですし?芝村派でもありますし?彼らのメンツってのもありますしね?」
「ひりゅう…あの元帥ですか。」
溜息をつく参謀長。
「半自律型空母…どうなんでしょうね…船魂って、私はみた事ないですが。」
「萌え…らしいですヨ?あすかにもいるんでしょうかねエ…」
「たぶん、ドイツハーフで「あんたバカア?」とか言うんだと思いますよ。」
「違いないですネ。」
「で、どうされます?」
「半命令ですからネエ…逆らうのは得策じゃないでショ。我々の立場も危ういですから。出すしかないかナと。」
「…嫌ですけどね…で、人選は?」
「星野君に行って貰います。」
「……司令も意地悪ですね…」
2人の顔が意地悪な、いたずらを企んでいるような笑みに変わる。
「情報は得ておくにこした事がありまセンから…あと、もう一人。彼女も。」
「!!……ひりゅうの艦長に心底同情しますよ……」
「何を言うんデスか。これであの船は沈まないことが約束されるんデスヨ?これ以上の人選はないでしょう!」
「……悪魔…ですな。」
それは、異次元酒場からの帰り道のことだった。
烏龍茶を飲みながらマスターと話をするのが最近のちゆの日課になっていた。
「明日はプールの警備か〜。」
などとつぶやきながら異次元の通路を歩いている。
ふと、立ち止まって辺りを見回す。
「・・・・こんなに長かったっけ?」
いつもは数分とかからず宿舎に着くはずだったが、やけに時間がかかっている。
おもわず霊視を試みる、するといつもは一本道のはずの通路が網の目状になっているのが視えた。
「こ、これは本格的にやばいのでは・・・。」
冷や汗がにじむ。
(戻ったほうがいいのかな? それとも下手に動かないほうが・・・。)
ちりん・・・・・・・ちりん・・・・・・・。
しばらくの間思案していると、ふいに鈴の音が聞こえてきた。
「鈴・・・? ・・・誰かいるの・・・?」
思わず振り向くが、霊視でも何も視えない。だが、悪意のようなものは感じられない。
意を決してその方角へ歩き始めた。
ちりん・・・ちりん・・・・。
音がだんだん大きくなっていく。
網の目状だった通路は次第に数本の絡みあう通路になり、そして一本の道になった。
そしてその先には異次元と通常の次元との境目、すなわち出口。
まだどこに出るかはわからないが、ここよりはましだとばかりに踏み出した。
「こ、ここは・・・。宿舎?」
ちゆは霊警の宿舎へと戻ってきた。
(あの鈴の音は・・・・。)
疑問は残りつつも、どうやら助けられたらしいと自分を納得させた。
その鈴の音はか細くはあったが、あまりにもやさしい音色を奏でていたから。
「志摩さんは海軍少尉さんだったんですね。私の妹も海軍にいるんですよ。この前海兵団を出て横須賀のたかなみ
という艦に配属されたといってました。」
「さらしな?さらしなって…もしかしてゆきにゃん?」
「あら、みつばさんは由希子を御存知ですか?」
「うん。かいへいだんではおせわになったの。たかなみにのりくみなの?じゃあこんどあえるかもしれないの〜。」
「ウフフ。楽しみが一つ増えましたわね、みつば。」
車は進む。ところどころガードレールが凹んでいる。
「事故でもあったのかしら?この辺りは走り屋が多いので有名なんです。困った人たちですね。」
「あらあら、あそこなんか、ガードレールがなくなってるじゃありませんの。本当、陸の上は物騒ですわね。」
「陸の上だなんて面白い言い方ですね、志摩少尉。艦での生活が長いんですか?」
「(びくっ)ホホホ…いせで結構ですのよ。ええ、陸の上より海の上にいることのほうがおおいですわね。」
それからしばらく走るとようやくウォーターランドが見えてきた。
「(殿下の)ミジュギ・ミジュギ・ミジュギですわ〜♪るらるら〜♪」
「そうそう、レンタル水着の種類も国内最大らしいですよ。楽しみですね。」
「みじゅぎ・みじゅぎ・みじゅぎなの〜♪」
「じゃあ私も、こほん。みっずぎ・みっずぎ・みっずぎですよ〜♪」
「「るらるら〜♪」」
「うーん、ひさしぶりの陸ねえ。」
「この前の武山以来ですからそうでもないでしょう?」
「ん?そうでしたっけ、忘れちゃってた。中尉は頭いいなぁ。」
「あなたが忘れっぽすぎるのだと…」
「あはは、そうね。」
某港。2人の女性仕官が制服のまま談笑している。
1人は背が低く、物静かな少女の面持ち。
1人は常に笑っているような明るい女性。
2人ともに制服を着ていなければ海軍属の人間は絶対に見えなかったであろう。
「横須賀まで電車で…2時間…遠い…」
「うん?あたし、実家からヘリ呼んだんだけど…乗りません?」
「ヘリぃ?わざわざそんなの呼んだの?」
「だって、切符の買い方分からないから。」
あきれる少女。あぜあきれられているのか、女は分かっていない様子で笑っている。
「もうちょっとしたら来るから。一緒に行きましょ。」
「ええ……」
「そうそう、横浜におしゃれなカフェができたんですって。ちょっと寄っていきましょうよ。」
「………」
少女は「これは任務だと…」と言い返そうとしたが、バラバラバラという音を立ててヘリがやって来たのでやめた。
これから2人は横須賀に向う。ひりゅうの補充乗務員として。
少女の名を星野ルリ中尉、女の名は蛯原御幸准尉。ともにタイフーン戦隊の火種と恐れられた女傑(?)であった。
試験/情報管制艦「ウチの司令ってホンットに馬鹿よね!(
>>545)何て、言っちゃって」
汎用護衛艦「そう。良かったわね」
試験/情報管制艦「ったく、アタシは純国産だってぇの……
まぁ美少女ってキャッチフレーズはアタシにピッタリだけどね」
汎用護衛艦「そう。良かったわね」
試験/情報管制艦「ああもう、何で碇一佐はアタシではなく、幼なじみっていうあの女を選んだのかしら!」
汎用護衛艦「そう。良かったわね………やっぱり萌よりも生身だったのね」
試験/情報管制艦「そう、あったまに来ることに、その女って、名前がアタシと同じ明日香って言うのよ。こんな事許せる!?」
汎用護衛艦「そう。良かったわね」
試験/情報管制艦「こっちはまだ二十歳にもならない美少女だってぇのに! 左遷させた善行が悪いのよ!!」
汎用護衛艦「でも艦齢15歳を越えた艦って高齢って言えるわ。そう、お婆さん……婆さん用済み(クスクス)」
試験/情報管制艦「……喧嘩を売ってるってぇのアンタ?」
汎用護衛艦「ええ。今頃気付いたの?」
試験/情報管制艦「ムッキー!!(怒)」
「うわぁ、又、本艦と綾波とのNCWシステムが異常です! コンピューターが今度は綾波に敵性判断下してます!?」
「馬鹿野郎、何でそんな結果が出る。貴様、何をした!」
「只の、情報リンクを開いただけです(涙)」
「航海長! 綾波から電信。綾波、突如としてFCS起動、本艦に主砲の照準がされたと言う事です。
回避を要請が出てます!!!」
「何で本艦と綾波の相性は此処まで悪いんだぁーー!!!」
タイフーン戦隊の誇る試験/情報管制艦あすかと新型汎用護衛艦綾波。
その相性は極端に悪かった。
星野中尉が絶妙な調整を行わなかった日には、確実に交戦寸前の事態へと陥っていた。
今日も今日とて調整官らの悲鳴が鳴り響く。
「星野くーん速く帰って来ておくれぇ(涙)」
酷い言われようデスネェ♪
私は心から、ひりゅうと第2護衛艦隊の方々の事を思って星野中尉と蛯原君を派遣した
のデスよ?
海上護衛総隊として、連合護衛艦隊に対する含む所なんて在る筈が無いじゃ無いデスカ。
同じ帝國海軍なのにぃ♪
参謀長「司令、口とは裏腹に顔が笑ってますよ?」
イイ!
イイ!!
凄くイイ!!!
手を叩く。
はあい、みんな静かにねー。
今日は一日こちらでお世話になります。
みんなごあいさつしてね。
「よろしくおねがいします。」
はい。
じゃあ、これから着替えて、お昼まで自由時間です。
お昼は地図のここね、ここに集合してみんなで食べます。
午後は3時まで。いるかのショーとかもあるから見に行ってみるのもいいかもね。
先生はここにいるから何かあったらすぐ連絡して。
速水さんも巡回しているからね。
あと、泳ぎを教えてほしい人はこちらにインストラクターの先生とか、
イルカショーのお姉さんとかいるそうだから教えてもらうといいわ。
はい、じゃあみんな怪我とかには気をつけてね。
お昼には必ず集合するのよ。
じゃ、解散。
相変わらず。パクリの殿堂だな(藁
五稜郭の朝は早い。
男に与えられた最初の仕事は、五稜郭の一角に新築されたカテドラルの掃除だった。『お掃除係』の
指導を受けながら、床にモップをかけ、台を拭き、窓を磨く。次にカテドラルから正門までの通路を掃く。
さすがにお掃除係達は手馴れたもので、全工程は30分強で終了する。
男が最初に『新人教育係』から教えられた事の一つだが、東朝の役職は全て”係”とその補佐の”お手伝い”
で構成されているらしい。彼は今のところ『お手伝い見習い』と言ったところだろうか。
因みに一番偉いのは『お財布係』で、次に並んで『蒼天教主係』『戦羅統括係』 ete…と続くそうだ。
「…あの、ヒカミさん?」
「………………はい、何か?」
本来の名前は呼び難いので、火神 将(ひかみ しょう)という名前を付けられた事を一瞬、忘れていた。
「あの、暑くないんですか?」
お掃除係の一人が、そう問いかけたのも無理はない。まだ日の出前とはいえ、夏真っ只中に
赤いロングーコートを着ているのだ。髪も赤いが、こちらは涼しげな短髪である。
「はい。吾…私は人と”つくり”が違いますから」
そう言うと火神は、右手の”まやかし”を解いてみせる。手も服の袖も、丸ごと数枚の呪符に変わった。
「あ、ああ。そういえば式神でしたね貴方。しかし……とてもそうとは思えない」
「かたじけない」
深々とお辞儀をする。
「私は次の仕事がありますので、これにて」
そのまま炊事場へと向かう火神。炊事場では朝食の用意が始まっている。
>553続き
今日の食事当番は、東朝一の元気っ娘として親しまれている葛之葉であった。式神である火神に対しても
唯一、初日から全く物怖じなく話しかけてきた女性である。
「葛之葉殿、お早う御座います」
「おっはー! あっ、ひーやん、ちょうど良いとこに来たにゃあ! 火ぃ貸してけれ?」
言いつつ、八重歯の少女はチラリと太ももを見せたりする。[火神MP+5](MP=萌えポイント)
「……葛之葉殿、昨日も説明したとおり、そのような事なされなくても小さな火なら起こせますから」
指先から火種を弾き出し、竈に撃ち込む。火神の身体を構成する呪符には『萌え』を『燃え』に変換する
言霊回路が組み込まれている。(1MP=茶碗一杯分の御飯が炊けるカロリー)
「さんきゅー!」
「それにしても、今時釜で炊飯されるとは雅ですな」
「にゃはは…節約でガス、止められちった……」
気まずい空気が流れる。火神はいきなり土下座した。
「も、申し訳ありませぬ! 私が愚かにも自らに高値を付けたばかりにっ!」
「ひーやんは悪く無いにゃあ。悪いのは加藤のアホだべさ」
「……あの、葛之葉殿。つかぬ事をお伺いしますが、御出身はどちらで?」
>551より1時間ほど遅れてウォーターパークに到着。
「カメちゃんって、運転も亀なのね」
「安全第一です。それにこのワゴンに積んでいる機材って、全部でン千万もするんですよ?」
大和 撫子は駐車場を見回す。駐車スペースの約半分は埋まっているようだ。
「なんだ、結構お客いるみたいじゃない。繁盛してるって程じゃないけれど」
「微妙な車の数ですね」
「とりあえずこの辺撮ってから、オーナーに挨拶しにいきましょう」
おじさんの部屋だよっ。
「おつかれさま。ショーは昼からだからそれまでゆっくりしてていいですよ。」
「そう?でもちょっとあの子達の様子も見に行きたいし、ちょっと遊んでおきたいし。」
せっかく、プールに来てるのに泳がないでおく手はないよね。
「そうかい、じゃあ、着替えとか…」
「いいよ、用意してきたもん。ご飯もプールサイドのお店で食べるから。」
「用意がいいねえ…で、食事もいいのかい?ともえちゃん。言っちゃなんだけど…」
「え?ボクは好きだけどな、あそこの焼そばって。」
そう、なんかキャンプで作ったみたいな。こう、外で食べることに意義があるって主張してるような。
コッペパンなんかが一緒に売られているあたりがボク好み。焼きたてを挟んで焼そばパン!これが(・∀・)イイ!!
「そうおっしゃるんでしたらいいんですけど…」
「じゃ、12時くらいには控え室に入るからねっ。」
水着を手に部屋を飛び出したとき、テレビカメラを抱えた人とすれ違った。
テレビ取材か何かかな?イルカショーも映ったりして。うーん、イルカに乗った美少女…あは、スカウト来るかも。
「まずいなあ、その気はないんだけど。」
イカン、顔が笑ってる。これじゃ怪しい人だよ。
まいいや。さ、泳ごう!
「うがあああああああああああああああああ」
公道を駆け抜ける一陣の風。
見えるものにはそれが割烹着を来た和服の女であることに脅威を覚えたであろう。
汗ひとつかかず、常人にはありえないスピードで走る。
「もなこたーーーーん、待っててネエええええええ」
バスの残した匂いをたどり、延々と走る。
車を追い越し、バイクをかわし、歩行者を跳ね飛ばし。
嬉々たる表情を浮かべた暴走が続く。
途中、
>>547を追い抜く。
「うをりゃあああああああああああああああああああ」
「……い、今のは?何だったんでしょう…」
「さあ…陸の事はよくわかりませんわ…ホホホ…(汗)」
「…うう、なんか嫌な物見た気がするのにゃ…」
>556
「今の子、凄く可愛かったですね」
「そうね……(何処かで見たような?)」
「水着持ってたけれど、ここで泳ぐのかな……(何処かで見たような?)」
亀雄は未練がましく少女の後ろ姿を目で追い続ける。
「(むっ)へー、そーゆーシュミがあったんだ」
「いや、あのですね、被写体に対するプロ目というか(汗)」
「ふーん、別ニイイケド(冷たい目)」
「はい、三本で450円でーす。」
何をやっているのかというと、屋台で売り子をやってます。
学校のあの件のこともあり、あまりあからさまな警備をしないことになりました。
他の方もマスコットキャラクターの着ぐるみ、プールの監視員、お客としてそれとなくもなこ様やご学友を警護しています。
「熱いから気をつけてねー。」
売り子をやりながらっていうのも結構大変です。
おっと、もなこ様たちに動きがあるようです。報告しなければ。
「こちら、フランクフルトB、もなこ様ほかご学友二名はウォータースライダーへ、八名が流れるプール、そのほかはここに残る模様です。」
「おばちゃん!! フランクフルト2本!!」
「お、おばっ・・・・はい、二本で300円でーす。(泣)」
フランクフルトに式神降ろしたろか。
(電話中)
殿下がウォーターパークにですか?
確か彼処の所長は西朝のシンパとして検査をしていた筈ですね………いえ、その可能性は
低いでしょう。
『………』
………そうですね、貴方の意見を採りましょう。
但しハウンドは駄目です。
錬成途上ですし、何よりこの手の任務には向いていませんから。
それより公安から来ている特殊情報収集班がありますので、それを一個、貴方に預けます。
但し発砲その他は呉々も謹んで下さい。
ええ。
殿下の御前に関してのみです─それ以上の判断は現場の指揮官に一任します。
私の期待を裏切らないで下さいよ?
『……』
そのように。
では、宜しく。
(受話器を戻しそれから別室、在る人物を待たせている部屋へと行く)
失礼しました。
多少緊急時でしたので、ご無礼をお許し願いたい日村首都警長官殿。
(人懐っこさすらも感じさせる笑み。だが目だけは別物のように鋭く細められていた)
>>559 今日の水着は競泳用!体にジャストフィットだよ。ガシガシ泳ぐぞっ!
おっ、出てる出てる。屋台、いいよね。
朝ごはんまだだったし、ちょっと食べてから泳ごうかなっと。
ん?いつもと売り子さん違うなあ・・・なんか若いし、バイトかな?
うーん、あの芸術的な味に仕上がってるのかな?ここの焼そばに関しちゃちょっとうるさいよ?あたしは。
「焼きそばくっださいいなっ!あとパンもね!」
ウォーターパークの流れるプールを、浮き輪に乗って萌夜叉姫が流れている。
何らかの力が作用しているのか、その姿に誰も気付かない。身に付けているのは銀の鈴と、
沐浴用の木綿の浴衣のみ。白い浴衣は水に濡れて、少し透けていた。
萌姫は時々足を動かして方向を変えるだけで、あとは流れに任せ漂っている。
「……」
「……」
「……」
「……」
ニヤーと、ぎこちない笑みを浮かべる。どうやら御機嫌のようだった。
ぶくぶく・ぷふぁ〜っ!ぶくぶく・ぷふぁ〜っ!ぶくぶく…
「水の中では息を鼻で吐いて、顔を上げるときに口から一気に肺の中の空気を吐き出すんですのよ。
全ての空気を吐き出せば自然と空気は肺の中に入っていきますわ。これ息継ぎの極意。よろしくて、みつば。」
ぶくぶく・ぶふぁ〜っ!げほげほげほ!
「ば、ばながいだいの〜。みずがばいったの〜。」
「ウフフ。まあゆっくりとやることですわ。それに飽きたら流れるプールでもいきましょうか。」
「いせさん、みつばさん、ここにいたのですね。ちょっと探しましたよ。」
淡いピンクのビキニを着て、脇にビニールのバナナ、頭にメンパとシュノーケルをつけた真紀子が
立っていた。
「水泳の練習も結構ですけれど、ここはレジャー施設です。もっと楽しく行きましょう!」
「まあ確かに、水泳の練習は基地でもできますものね。そうですわね♪流れるプール、スライダー、
波の出るプール、いい響きですわ〜♪」
ぶくぶく・ぷふぁ〜っ!ぶくぶく・ぶくぶく・ぶくぶく……ぷか〜ぁ
「!? みつば?あらあらこの仔ったら溺れてるじゃありませんのぉ。」
「笑い事じゃありませんよ、いせさん!早く、人工呼吸をぉ…(ぽっ)」
気道確保!すぅ〜…ふぅ〜…、すぅ〜…ふぅ〜…
「ウゥ…それなり容姿の人がやると絵になるものですわね…百合の香りですわ♪」
「もう!からかわないで下さい!」
げぼげぼっ!水を吐き出し、みつばが意識を取り戻す。
「おはなばたけがみえたの…。おねえさんが「まだこっちへ来るのは駄目」っていってたの…。」
「ちょっと無理しすぎましたわね、みつば。ゆっくりとやることですわっていいましたのに。ウフフ。
あっちに休憩所がありますわ。少し休みますわよ♪」
「そうするの〜。ちょっとつかれたの〜。」
「それにしても、殿下はどこにいらっしゃるのかしら?ミジュギの殿下…エヘヘヘ。」
「…いせさん、私なにか飲み物でも買ってきますね。休憩所で待っててください。」
「ええ、あたくしはお任せしますわ。みつばは?」
「やっぱぎゅ〜にゅ〜でしょ…ガクッ。」
「あらあら…よいしょっと。じゃあ真紀子さん、お願いいたしますわ。」
みつばを抱きかかえていせは休憩所へ。真紀子はジュースの屋台へ。
「へぇ、今日は屋台なんですね。いつもの装備はどうしました?」
「装備?あんた何者…!?あっ、壬さん!こいつは失礼しました!」
「敬礼は省略でよろしい。かえって怪しいですからね。今日は一般客に紛れて、どんな連中が
いるか分かりません。引き続き警戒を続けてください。」
「はっ!」
「で、オレンジと牛乳とそれからそれからメロンソーダ、お願いします☆」
「へぃ!喜んで!」
>>561 かなりかわいい少女がやってきた。
「焼きそばくっださいなっ!あとパンもね!」
健康的に焼けた肌がよく似合う、いかにも元気って感じの少女です。
思わず見とれてしまいました。
「あ・・はい! 焼きそばですね! ちょっとまっててねー。」
ふふふ・・・。わたし、焼きそばにはちょっと自信があるんです。
くるくるくる・・・ぱし!
こてを器用に回して持つと、焼きそばを炒め始めました。
「おねーさん、初めて見るけど、今日から?」
「ううん、今日だけなの。」
「そっかー」
少女はすこしだけ残念そうにうつむいた。
「(!! ここの屋台の焼きそばってそんなに美味しいの? ま、負けられない!
)」
思わず手に力が入る。
「(出来た!)はい、焼きそばとパンで400円ね。」
「はい、400円!・・・・・・いっただっきまーす!」
>>565 おっ、なかなかの手つき!ちょっと期待しちゃうぞ。
うん、この匂い、いいね。
ソースのこげる匂い。オタフクもいいけどやっぱり焼そばならコーミソースだよ。
具には豚バラとキャベツ。奇をてらわないシンプルな作り。いいね。
出来立てをパンに挟んで、紅しょうが。
ちゃんと汁気を切ってから乗せるのが玄人ってもんよ。
で、青のりもいきたいところだけどこれから泳ぐ人間が歯に青のりつけてるのはまずいからガマン。
で、軽くラップでくるんで蒸すこと1分!これでパンが柔らかくなって、ソースが染み込むんだ…
うう、よだれ…
おし、1分!
うーん…至福の香り…「いっただっきまーす!」
ぱく。
うん、キャベツもいい感じ。麺も及第点。なかなかやるね。
豚肉がちょっと焼きすぎって気もするけどカリカリもまたよし。
「うん、おいしい。おねーさん、イケてるねえ。」
おねえさんの顔がぱっと輝いた。
「もうちょっと修行すればいい屋台持ちになれるね。」
「あは、そうかな?」
「うん、今日だけってのは惜しいなあ。ま、しょうがないか。」
「ごめんねー。」
「おいしかったからまた来るよ。じゃね!」
食べ終わるのってあっという間。よーし、おなかも膨らんだし、泳ぐぞーっ!
とりあえず競泳用プールから制覇だっ!
速水の手記。八月某日
私は今日この日を一生涯忘れないであろう。
ひなぎくに転属して幾月。念願の日が来たのである。
バスでは不覚を取ってしまったが、なんの、これから。
そして、その瞬間は来た。
黄色のスイムキャップ。紺色のスクール水着。胸元にはつくしんぼうのおしるし。
白くてぷにぷにして、つやつやな肌。可愛らしいという表現以外では言い尽くせない手足。
ビート板を手にして、おずおずと、少し恥ずかしそうにして。
長い髪をアップにまとめてキャップに押し込み、胸元の「2ねん ここのえ」という名札も可愛い
ご学友の加也様に連れられるようにして太陽輝くプールサイドへと登場されたのだ。
ああ、血が上るのは決して太陽に中てられたせいではない。まぶしすぎます。宮様。
太陽よりも。直視してると血が…血が…
ああ、これから「およぎをおしえてほしいのです」とか言われるのか俺?
も、もしかしたら「おにいちゃんってよんでもいいですか?」なんてことに?
ああ、だめだ。考えただけでクラクラする…(;´Д`)ハァハァ
「わー、このおにーちゃん鼻血出して気絶してるー」
「きっとのぼせたのよ。誰か呼んであげま…あ、あ、そうですか。よろしく。」
………
「刺激が強すぎたか…」
「無理もないよ。俺だって水着コンテストのときは…」
「ま、新入りにはなあ…少し休ませたら後方勤務だな。こりゃ。」
「しかし、スク水は(・∀・)イイ!! なあ…」
「だなあ……」
不覚千万(核自爆)
いつものデスク。退屈そうに朝食を取っている。ジャガイモのゆでたのを主食にサーモンソティー。
菊水@甲がノックをして入室。そちらを見もせずに食事を続ける。
「お食事中失礼いたします。」
「朝にパンっていうのはどうも脳に活力がいきわたらない気がするものだね。」
「はあ。」
「だからといってご飯に味噌汁っていうのもどうかなと思うが。別に朝からステーキって言うのも悪くないんだ。」
「報告を…してよろしいのでしょうか?」
「いいよ。私が勝手に食べてるだけだから。どうせ私を喜ばせてくれるような報告はないんだろう?」
「…それは発言としてはかなりどうかと思うのですが…」
数十秒の後。一瞬ナイフとフォークを止める。が、また食べだす。
「ふうん……死に体と思っていた連中が生きていた…か。」
「いかがいたしましょう。既に出動の準備はできておりますが。」
「キミがそんなに好戦的だとは思わなかったな。まあ、待とうよ。せっかくの機会なんだから。」
「ですが、放置するのは危険だと思われます。」
「ふふ、愉快じゃないかね。彼らは自ら死地へとの道を踏み出したのだよ?我々が進んできた血の道を。
その覚悟もない連中が大半であろうに。楽しみだな。どんな軍団を組織するのかな。どれぐらい動員するのかな。
ああ、愉快だ。実に愉快だ。」
「………」
「とはいってもあまりやりすぎてもらうのは好ましくないな。とりあえず後顧の憂いくらいは絶っておく。準備ってのは
しておくものだ。有事なんてのはいつあるか分からないから有事と言うんだしね。」
「では、手配をしておきます。」
「よろしく。ああ、そうだ。今日、もなこ殿下はプールにお出かけだそうな。キミも暇だったら行っていいよ。」
「暇ではないんですが…失礼します。」
甲退出。食事も終了。葉巻を取り出して、自分で火をつける。その表情に明らかにひどく歪んだ笑みを浮かべて。
大和 撫子はパークのオーナーと型通りの挨拶を済ませ、型通りのコメントをとる。
ごく普通のインタビューだった。あまり奇抜なアプローチは、今回は必要ないだろう。
雄一「じゃあ先ずは、天気の良いうちにパークの外観から撮影しましょう」
撫子「了解。ちゃっちゃっと行きましょう!」
プールの外壁、コンクリートの壁の上に有刺鉄線が張ってある。
で、その壁の上。有刺鉄線の隙間からのぞく目が2つ。
足をコンクリの壁に打ち付けて固定し、足場を確保している。
「あーん、もなこたん(・∀・)イイ!! スク水は紺に限るわ!うらやますいい!!(;´Д`)ハァハァ 」
濃紺の和服に割烹着という暑くないのかよ!とツッコミを受けそうな姿。
目が爛々と輝き、口からはよだれをこぼし、腰を振っているあられもない姿。
「あーもう!なんであたしはプールに入れないのかしら?なっとくいかないわあ…」
えーと、あなたが化け物だからですが…
「あ、そっちに行かないでよ。遠くなっちゃうじゃないのー。もう!移動しなきゃ。ベストポジションを維持しないとね♪」
非常に愉しそうに壁を降りてスキップしながら次のポイントへ向う。
「うーん、プールサイドだったらいいのかなあ?でも見つかるとおねえちゃんに怒られるしなあ…」
そしてポイントを変えるたび、壁に凹みが増えてゆく……
水兵服を着た猫耳が3体、サイダーを飲んでなにやらごちている。
わかば「私たち全然出番ありませんね、姉妹。」
ふたば「もう誰も覚えてないかも…。どうしたらいいのでしょう、姉妹。」
よつば「…かたわればっかりかわいがられてるの〜!むっか〜なの!」
>570
パークの外周を一周しながら、見栄えのいい撮影箇所を探す二人。
雄一「……この辺の壁、なんだかボコボコですね」(妙に不自然な傷だけど)
撫子「こんな目立つ傷を補修しないなんて、本当に経営難のようね」(なんだか真新しいけれど)
雄一「あっ?」
撫子「何?」
雄一「いえ、何でもありません」(一瞬、黒い影が目の端に映ったような……)
>>566 よかった・・・。
喜んでもらえたようです。
でも、顔見知りの人が来たら緊張して失敗してしまうかも・・・。
∩∩∩
⊂(###)つ /| コソーリ・ウメタテ
しUUJ //,' |
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UU ヽ |//
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