###佐野洋スレッド###

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>また、中島氏のエッセイ等で読む限り、木々VS甲賀論争はテーマの
>重要性もあり、佐野VS都筑論争とは比較にならない文壇を巻き込ん
>だ大論争のように理解できるがその点貴君はどう考えるか?

木々・甲賀論争はジャンル論であるから、作家個人の立脚点の確認という
以上の意味は持たないと思う。この論争が推理小説史の中で大きな位置を
占めている理由は、戦前には他に論争らしい論争がなかった、という一点
にすぎない。また、当時は実績のない新人にすぎなかった木々が、斯界の
重鎮である甲賀に噛み付いた、というゴシップ的な興味が、話題の多くを
占めていたことは否めないだろう。これに対して、都筑・佐野論争は技術
論であり、権田萬治、新保博久、笠井潔、北村薫、法月綸太郎といった
作家・評論家が、これを受けるかたちで持論を発表している。また自説を
発表しないまでも、実作においてこの論争を念頭においたと思しき方法論
をとっている作家は数多い。推理小説界に与えた影響という点では、後者
の方がはるかに大きいものと考える。

>じゃあ聞きたいが、なぜこんな重要な問題をマスコミが取り上げない
>のか? その価値が無いということだよ。

マスコミが取り上げるのは、社会的に重要な問題である。しかるに推理
小説の技術論に関心を持つものは、推理小説の愛好家だけであり、社会
性は皆無である。したがって、マスコミに取り上げられないのは当然。
つまり都筑・佐野論争は、マスコミにとっては無価値だが、推理小説関係
者にとっては大いに価値のある重要な問題という訳だ。それとも君は社会
一般の興味を引く問題以外は、すべて無価値と判断するのか?