これからミステリーをこのスレで書きます

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1名無しのオプ
これから、細々と自作のミステリーを書いていきます。
結末も内容もまだ考えていませんが、
考古学探偵ということにしようと思っています。
宜しくお願いします。
タイトルも未定。
2名無しのオプ:2001/06/29(金) 22:51
読んでやるからはよ書け。
3名無しのオプ:2001/06/29(金) 23:03
タイトルを決めれ
4名無しのオプ:2001/06/29(金) 23:12
タイトル案
1 革命に賭ける
2 素晴らしき新世界
3 殺戮の板(ミステリ板に関する2,3の話し)
4 青銅の上智
5 俺がねつてつだ
6 密室博士の事件簿1
7 黒猫缶と乾パンの謎

以上ご参考までに
7 
5名無しのオプ :2001/06/29(金) 23:15
タイトルから察するにあんまりセンスはなさそうだ。
期待してないけど、頑張ってね。
6黒猫缶:2001/06/29(金) 23:20
また私が犯人役か・・・・。
7名無しのオプ:2001/06/29(金) 23:22
先にねたバレはいけませんよ、黒猫缶さん(笑)
8名無しのオプ:2001/06/29(金) 23:28
>>7
叙述トリックでは?
9名無しのオプ:2001/06/29(金) 23:34
女子高を舞台にした同性愛ミステリーはいかがですか?
10黒猫缶:2001/06/29(金) 23:42
>7
倒叙系ということでご勘弁ください(w
11名無しのオプ:2001/06/29(金) 23:53
>>8,10
7ですが、りょーかいしました----は?!
この流れまでもが、既に組みこまれたメタ作品なのかも?!
まー、ともかく、1さんのお手並み拝見といたします。
12名無しのオプ:2001/06/30(土) 01:04
私はこれまでに、我が類い希なる才能を持つ友人にして我が国唯一の諮問探偵シャーロック・ホームズの活躍を紹介してきたが、
彼の扱った事件の中には、それら既に世に発表したものに勝るとも劣らぬ内容ではあるものの、様々な理由から、私と我が友の判断により発表を控えたものが多数あった。[つづく]
13名無しのオプ:2001/06/30(土) 01:36
>>12
ジューン・トムスンかよ!
オリジナルにしろよ!
1412:2001/06/30(土) 02:05
>>13
ネタバレなのでメール欄を参照

ちなみにオレ1じゃない。
というわけで、あとは1にまかせた。
15上智kanagawa0102-108092.zero.ad.jp:2001/06/30(土) 02:14
「黒猫缶と乾パンの謎」きぼーん
16名無しのオプ:2001/06/30(土) 02:26
―          \/ ̄―_
         /                    \
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  |  /  /       |    |                   ヽ ヽ
 |  /  /     | | |  |      |   |         ヽ |
 | /  /      | |  |  |      |   | |   \       |
  | |  /    / | ヽ |  |      |  | || ヽ   ヽ       |   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ||       /___|| |  |   |  |   |___ヽ ヽ      |   |
  |  |    / ヽ__  |  |   | |  /__ノ  ヽ ヽ     |   < もう終了なのね・・・・
   |   |  /ヽ/|○o|`  | |   | // ´|○o|\ノ |  ヽ   |    |
   |  | /  |   | o/   | | | /    | o/ ′/|   |   |     |
   |  |   | ` ̄ ̄      |      ` ̄ ̄   / |   |  |     |
    |  |  | |                    /ノ |  |  |/     \_____________
    | | |  | |\        /|           /|  || |
     |  | | | Г         く |          ∠  | / /| |
        |  | |\        ´          / |/ / ||
         | | |\        −ー      ∠ / ノ  |
        \|\|\               / / /
              |\           /| //
             |  \         /  |
              |    \    /    |
             /        ̄        |
17名無しのオプ:2001/06/30(土) 02:30
今出版されてるミステリを著作権無視で丸まる一冊
書き込んでみて
18名無しのオプ:2001/06/30(土) 22:03
密室博士の事件簿
主な登場人物
密室博士  東京警視庁顧問の名探偵
ロリ子    密室博士の助手 博士顔負けの推理力の持ち主
ユンボ警部 労務者上がりの東京警視庁捜査第1課の鬼警部
19名無しのオプ:2001/06/30(土) 22:25
密室博士対アリバイ教授、宿命の推理対決!
そこにあらわれた、謎の叙述男爵とは何者か?

みたいな、集団抗争推理合戦キボーン!
20密室博士:2001/06/30(土) 22:31
どうでもいいが「東京警視庁」はワラタぞ。
君は有栖川「登竜門が多すぎる」に出てくる阪本君か?
21名無しのオプ:2001/06/30(土) 22:35
おまえ流水だろ。こんな所で何してんだ。
22流水:2001/06/30(土) 22:38
>>21
おしっこ。
23名無しのオプ:2001/06/30(土) 23:05
探偵:ポール・ニザン
語り手:サルトル
場所:アラビア
24名無しのオプ:2001/06/30(土) 23:54
よし
誰か頑張って
流水パシティーシュにチャレンジしてくれ!
25名無しのオプ:2001/07/01(日) 00:35
パシティーシュ?
26名無しのオプ:2001/07/22(日) 01:59
サルベージ
27 :2001/07/22(日) 02:50
ニュース速報@2ch掲示板
レイプ京大院生とゆかいな薬物仲間達part36 (877)

で、日記の内容から推理しての人探しが進行中。
ミステリー好きには面白いはず。
リアルタイムで現在進行中。
28蝙蝠男:2001/07/22(日) 03:16
考古学探偵ならば、世界七不思議の巨人像にまつわる
人間消失や密室殺人が出てくるネタを持っている。
29名無しのオプ:2001/07/22(日) 08:49
で、もう書き始めたの? >1
30名無しのオプ:2001/07/22(日) 08:49
ふにゃ。
31名無しのオプ:2001/07/22(日) 15:28
考古学探偵ならば、自分で土器を埋めて遺跡を捏造してみろ。
32偽虎猫の藁【序幕1】:2001/07/22(日) 23:11
【偽虎猫】本草綱目より
文字絵の類ナリ。能ク人ヲ煽ル。弐番組二多ク観ラルル、四ツ這ヒノ猫二似タ絵ナリ。
掲示板ニテ惨言ヲ蒔キ散ラス、厨房二向カヒテ、逝ッテ善シト云フ。
ゴラァ、ト云フ事モ在ル。立チ向カフハ能ズ。済マソト素直二謝ル二限ル。

【ぎこねこの事】百物語評判より
(前略)世に語り伝ふる、ぎこねこと申す物こそ心得候はね。
其の物がたりに云へるには、書き棄てられた文字、其の執心、此の物となれり。
其の姿、得も云われぬ貌付きにて、其の声、逝って善し、逝って善しと鳴くと申しならはせり。
其の嬰児、ちびぎこと呼び慣わさるる。(後略)
33偽虎猫の藁【序幕2】:2001/07/22(日) 23:18
啼ひて居る。
猫が啼ひて居る。

猫は、何処に居るのだらう
猫は、何を求めて居るのだらう

發情して居るのか
欲餌して居るのか

ーーぽたり

雨が降り初めた

ーーにやぁ
猫の聲が聴こえる
ーーうぃんにゃ
縁台の下からまた聲が聴こえる
ーーいんにゃし
聲は益々高く成る
ーーいってょし
吁、何だ
啼ひて等居なひじゃないか
嗤って居るだけじゃないか

ーー逝って善し

鬱だ氏のう
34偽虎猫の藁【其の1】:2001/07/22(日) 23:20
神田神保町には、界隈に散在する大学で学ぶ生徒達の需要に応える為、
沢山の書店や古書肆が軒を並べている。
其の一角に、私の目差す高岡漫画堂は有った。

この店は、兎角、難解な専門書や洋書等を求める学生が多い土地に有り乍(ながら)、
何故か子供向けの漫画を専門とする、何とも奇妙で善く判らない店だ。
その上、需要の無さそうな土地柄、さぞ空いて居るのだろうと思って往くと、
予想を遙かに超える混雑に驚かされる。

しかも、客の殆どが大人の男性なのだから、また判らない。
児童文化を研究する輩(ともがら)か、漫画雑誌の編集者達か。
皆、一様に眼鏡を掛け、本を物色し乍らぶつぶつと何事か呟いて居るので、
天才と狂人は紙一重ーーーと謂う至言に照らせば、彼等の中からも、
将来、其の研究成果に因り世に名を成す者が現れるやも知れぬと思えて来る。

そんな事柄をつらつらと考えて居る内に、私は目差す場所の前に立って居た。
35偽虎猫の藁【其の2】:2001/07/22(日) 23:21
入り口から中を覗き視る。
やはり今日も店内は沢山の客で満たされて居る。
私は軽く息を吸い込むと、覚悟を決めて、人の溢れる店内へ足を踏み入れた。
入口すぐ右手の会計に姿の見えない店主を捜す為、奥へ踏み出そうとした刹那、
左手の棚の美人画集を物色して居た、酷く膚の白い男が、
突然、千年の頸木(くびき)から解き放たれた發條(ばね)を想わせる動きで立ち上がった。
私は予想せぬ動きに慌ててしまい、これを避けた拍子に鞄が平積みの新刊本に触れた。

ぼたりーーー本が堕ちる。

男と眼が合う。
死んで三日以上経った鰯を恐ろしく不味い葡萄酒で煮込んだような眼だ。
そして其れは何時か何処かで見た事の有るような眼だった。

「済まそん」
男は奇妙に甲高い声で、そう云うと、床に散らばった本を拾い初めた。
私もそれを手伝い、二人で墜ちた本を一通り棚に戻し終えると、
男はもう一度「済まそん」と云い乍、鰯の死体の葡萄酒煮込みを不自然に歪めて嗤い、去った。

にゃぁ
何処かで猫が哭いた。

その時、雑踏へ消え混じる男を目で追う私の後ろから、
聴き慣れた善く通る聲が聞こえた。
「困るじゃあ無いですか、お客さん」
振り返れば地下への階段から半身を晒し、この店の主人、
三省堂がまるで親族全員が不老不死にでも成ったかの如き満面の笑貌(えがお)で立って居た。
36名無しのオプ:2001/07/22(日) 23:30
>>33
>啼ひて居る。
>猫が啼ひて居る。
仮名遣いを間違えています。
「啼ひて」ではなく「啼いて」が正しい。
もう少し考えてから文章を書きましょう。
37名無しのオプ:2001/07/22(日) 23:51
>>36
それは伏線です。
38蝙蝠男:2001/07/23(月) 00:00
面白いゆえに上げよう。
39密室博士:2001/07/23(月) 00:54
>>34-35
面白い!
あーそーいやコミケカタログまだ買ってなかった!
「高岡漫画堂」でおもいだしちゃったよ!
40名無しのオプ:2001/07/23(月) 00:59
ツギハギダラケ
41偽虎猫作者:2001/07/23(月) 02:11
この話はフィクションであり、
たとえ神保町に似たような漫画専門店があっても
そことは一切関係ないです。

あと俺はもっぱら読む方専門な人なんで、
文章の変な所は許してね。

つか、続き、ほとんど考えてないけど。
42名無しのオプ:2001/07/24(火) 00:53
age
43名無しのオプ:2001/07/24(火) 15:37
age
44名無しのオプ:2001/07/24(火) 20:34
age
45名無しのオプ:2001/07/24(火) 21:48
あげ
46偽虎猫の藁【其の3】:2001/07/24(火) 23:10
この店の店主、三省堂こと小禅寺飽彦は私の古くからの友人である。
学生当時、漫画研究会に属して居た私はーーそういった若者の多くがそうである様に、
周囲から一段下の存在として視られて居た。
彼は、そんな私にも分け隔て無く接してくれた数少ない級友のひとりである。

いや、実際には、私を見下さなかった訳ではなく、
彼が、僅かな例外を除き、私を含めた殆どの級友を見下していた為、
結果的に私の事も他の連中と変わらぬ扱いになったと言うのが正解らしい。
確かに彼は、私の漫画を嗤う様な連中の多くが好む、
犯罪小説や恋愛小説、映画や演劇と言った娯楽作品の殆どを散々莫迦にしたが、
同時に漫画も例外無くこき下ろした。

それでも、私にしてみれば、私を他の連中同様に扱ってくれる、
特別な人物である事には変わりなく、
更に、彼の実家がーー其の渾名からも知れるとおり、
界隈でも有数の大書店である事もあって、
彼にしてみれば甚だ迷惑な事かも知れぬが、
私の方が一方的に友人と認識し、学生時代の多くの時間を共にした。
47偽虎猫の藁【其の4】:2001/07/24(火) 23:11
それから十数年。

私は結局、芽の出ることの無かった漫画家の道を諦め、
代々木に在る漫画家養成学校の講師を生業にして糊口をしのぎ、
三省堂の方は、何故か家業を継ぐ事を拒んだうえ、
事も在ろうにあれだけ莫迦にしていた漫画の専門店を開業したのだった。

開店当時、嬉々としてその矛盾を指摘した私は、逆に、

矛盾のない人間など存在しない事
矛盾がある故に生ずる人間の魅力
そのそも矛盾という言葉の元になった矛と盾の成り立ちと歴史、及びその使用法

ーー等といった事を、十三時間以上に渡り講釈されて辟易した事があり、
それ以来、私はその点には決して触れない事にしている。

何れにせよ、彼も相当に変わり者であるという事に間違いは無い。
そして、そんな彼を未だに友人と認識している私の矛盾は、
確かに彼の説いた理論を裏付けしているのかも知れない。
48偽虎猫の藁【其の5】:2001/07/24(火) 23:12
「大切な本を汚されちゃあ、敵いませんよ」
三省堂はそう云って、私が並べ直した新刊本を手に取り、
嫌みがましく埃をはたく様な仕草をした。

「何を云ってるんだ三省堂。そんな風にする程、その本は汚れて居ないじゃあないか」
私は、その結果がどうなるか、ある程度予測していたのにも限らず、
つい、つまらぬ自意識の誘惑に負け、反撃の口火を切った。

「大体、君は僕の不注意の所為で、その本が墜ちたかの様に云うが、
元はと言えば、これだけ繁盛していながら、
相変わらずこんな狭い店内に、これだけ沢山の本を並べている君の方にだって非は在るだろうよ。
そもそも、君の店は客に対して不親切すぎるのだよ。
棚の事もそうだが、例えばそこの張り紙はなんだい?
今時、図書券の使えない店なんて、神田広しと言えども、君の店くらいじゃあないのか?」

「図書券だったらス井ートボウズだって使えないじゃないか」
「それは餃子屋だろう!」
普段は能弁な三省堂が、珍しく言い淀んだ事に後押しされ、私は更に声の調子を上げた。
49偽虎猫の藁【其の6】:2001/07/24(火) 23:15
「その本だって 売り物にならないほど汚れたというなら、弁償しないでも無いが、
それどころか、僕にはまるで汚れていない様に見えるよ。
それに中身まで汚れたのならまだしも、
幸いどの本も、墜ちた時も閉じたままだったじゃないか。
大体ーー本の価値は中身にある。表紙で買う本を選ぶ奴は莫迦だ
と言うのが君の持論だった筈だろう?」

三省堂は俯きながら私の反撃を愉しそうに聴いていたが、
急に悲しそうな貌をして云った。
「その点に関しては、君の頭が悪い事を承知していながら、
君の理解可能なレヴェルで説明しなかった、僕に非があるのは認めるよ。
その時僕は、本の価値は表紙も含めた内容全てにあるーーと云ったのだ。
つまり、表紙だって内容の一部に含まれるという事さ。
ところが、大方の低俗な漫画読み達は表紙の善し悪しで、その本の価値を決めてしまうだろう?
先の台詞はそんな連中を揶揄したに過ぎないのだよ」

三省堂は一気にそこまで捲し立てると、また満面の笑貌に戻り、更にこう付け加えた。
「それ以前に、その本は売り物じゃあ無い」
50偽虎猫の藁【其の7】:2001/07/24(火) 23:16
思いも依らぬ言葉に、私は棚の本を見直した。

ーー世界しごと発見!
ーー無料(御自由にお持ち下さい)

「まぁ、君も悪気があった訳では無さそうだし、以後気を付けてくれれば良いよ。
其れより、何か用事だろう?
でも見ての通り、君と違って僕はまだ仕事の途中で忙しいのだ。
何処かの店で、暫くの間待っていてくれないか?」
三省堂は唖然としている私を哀れむ様にそう云うと、
器用に客を避けながら、奥の扉へ向かって進み始めた。

仕方無しに私は
ーーじゃあ難解に居るよ
と告げ、店を辞した。
51名無しのオプ:2001/07/25(水) 00:52
イイ!!(・∀・)
早く、つづきを書いて!
52名無しのオプ:2001/07/25(水) 00:56
以後、安易なパロディは禁止
53偽虎猫の藁【其の7】:2001/07/25(水) 01:35
キッチン難解は、高岡漫画堂の真裏辺りに在る洋食屋だ。
夕食には若干早い時間の為、今のところ客席は疎らだが、
厨房では、間もなく迎える繁忙時間の準備の為、
熟練した手つきで、キャベツを千切りにしていた。

私は店の奥のテーブルにつくと、
いつも通りチキンカツレツ&生姜焼定食を頼み、
後ほど1名連れが来る事を給仕に告げた。

給仕の置いていった水を一口飲み、店内を軽く観廻す。

私は、この店が気に入っていた。
値段の安さと味の良さのバランスもさる事ながら、何よりも雰囲気が佳い。
特に素晴らしいのが 、店員が全て初老の紳士だと言う事である。
勿論、私も男である以上、若く美しい女性給仕のいる店も好きだが、
料理人から給仕まで、全て洗練された動きの紳士達で固められたこの店には、
他の店では得難い、一種独特の味わい深さがある。

私の頼んだチキンカツレツが出来上がったのと時を同じくして、
三省堂がやって来た。

三省堂は、席につくといつもの通り平目フライ&生姜焼定食を注文した後、
何故か酷く悲しそうな貌で私に云った。
「非道いじゃないか、積口君」
54ギコワラ作者:2001/07/25(水) 01:36
>>52
俺のスキルじゃ
コレが精一杯
君や他の人も、平行して別作品を連載してくれると楽しそう。
なんならこの続き書いてくれても良いぞ。
55ギコワラ作者:2001/07/25(水) 01:39
>>53は【其の8】の間違い。
56名無しのオプ:2001/07/25(水) 02:09
イイ!!(・∀・)
どうなるか楽しみ!
57名無しのオプ:2001/07/25(水) 02:47
age
58名無しのオプ:2001/07/25(水) 07:24
榎木図訳はまだか。
59名無しのオプ:2001/07/25(水) 16:19
age
60名無しのオプ:2001/07/25(水) 22:10
age
61名無しのオプ:2001/07/26(木) 01:32
イイ!!(・∀・)
ギコワラ作者さん、続き書いて!
62ギコワラ作者:2001/07/26(木) 04:08
今日は殆ど書けなかったので
アプは無しです

でも、本当に先のこと何も考えてないので
あまり期待されると辛いなぁ

ちなみに神保町周辺のネタ<高岡や難解
解ってる人いる?
63偽虎猫の藁【其の9】:2001/07/26(木) 04:36
「そんな事とはなんだい。
大体、福神漬けってのは其の名の通り七福神の漬物って事だぜ。
そもそも福神漬けは上野の『酒悦』と云う漬物屋の主人が作った、
大根、茄子、胡瓜、蓮根、生姜、なた豆、紫蘇と云った、
七種類の野菜を醤油や味醂の合わせ汁に約一週間程漬けた物でね、
七種類の野菜を使うのと、店のすぐ近く、上野恩賜公園に在る
不忍池の畔に建つ弁天堂にあやかって名付けたと云う話だ。」

こういった時に彼の口から飛び出す知識の量は驚くべき物があるが、
何れにせよこれ以上話しを続けられても私の頭は混乱するばかりだ。
しかし、そんな事を知ってか知らずか、私の友人は更に話を進めた。

「 また、大根は福禄寿、茄子は恵比寿、胡瓜は布袋尊、蓮根は毘沙門天 、
生姜は寿老人、なた豆は大黒天 、紫蘇は弁財天 と、
それぞれの野菜が誰を意味するのかまで決まっているらしいよ。
まぁ、これは後付けの話だろうから、どこまで本当かは知らないがね。
何れにせよ、福神漬けは七福神とあまりにも縁が深すぎる。
君だって僕の実家がどういったものか知っているだろう?
仮にも神の道を司る僕がその神様を食える訳無いじゃあないか?」

先に三省堂の実家が神保町の老舗書店だと述べたが、
これは父方の実家であり、
母方の実家は豊島区巣鴨の萬頂山高岩寺、
即ち、俗に言うところの巣鴨とげぬき地蔵尊であった。
64ギコワラ作者:2001/07/26(木) 04:37
と思ったけど、ここまで書けた。
65ギコワラ作者:2001/07/26(木) 04:41
うぎゃーーー!!!

【超訂正】
誤)仮にも神の道を
正)仮にも仏の道を

早くも、底の浅さが露呈して参りました!
66ギコワラ作者:2001/07/26(木) 04:49
ぴぎゃーーーー!!!

【鬼訂正】
誤)仮にも仏の道を
正)仮にも神の道を
つまり65は無し
そして
誤)母方の実家は豊島区巣鴨の萬頂山高岩寺、
  即ち、俗に言うところの巣鴨とげぬき地蔵尊であった。
正)母方の実家は文京区湯島の湯島天満宮、
  即ち、俗に言うところの湯島の天神様であった。

さあ、俺を嗤ってくれ!!!
67雑古庵:2001/07/26(木) 12:22
>ギコワラ作者さん
この世は夢か現か判然としない、
云ってみりゃあ間違いだらけの世の中でありんす。
貴方を笑いの種にするなんざぁ、滅相も無いことで。
危惧するこたぁ御座いやせん。
だからめげずにガンバッテ!
68名無しのオプ:2001/07/26(木) 20:20
age
69名無しのオプ:2001/07/27(金) 02:19
イイ!!(・∀・)
わーい、ギコワラさんが帰ってきたよー。
あのシリーズはパロるのも大変そう、がんばって!!
70名無しのオプ:2001/07/27(金) 04:59
>>1
考古学探偵の話はどうなったの?
71名無しのオプ:2001/07/27(金) 21:11
age
72名無しのオプ:2001/07/28(土) 00:15
age
73偽虎猫の藁【其の9.5】:2001/07/28(土) 01:07
やっぱり気になるので、少しやり直しました。

*************以下本編**************

「 また、大根は福禄寿、茄子は恵比寿、胡瓜は布袋尊、蓮根は毘沙門天 、生姜は寿老人、なた豆は大黒天 、紫蘇は弁財天 と、それぞれの野菜が誰を意味するのかまで決まっているらしいよ。
まぁ、この辺は恐らく後付けの話だろうから、何処まで本当かは知らないがね。
何れにせよ、福神漬けは七福神とあまりにも縁が深すぎる。
君だって僕の実家がどういったものか知っているだろう?
仮にも仏の道を学ぶ僕がその仇敵たる神様を食える訳無いじゃあないか」

先に三省堂の実家が神保町の老舗書店だと述べたが、これは父方の実家であり、
母方の実家は豊島区巣鴨の萬頂山高岩寺、即ち、俗に言う刺抜地蔵尊であった。

しかしーーやはり詭弁だ。しかも破綻している。

そもそも、神を喰うのが憚られるなら、八百万の神はどんな物にだって宿って居る筈なのだから、大根やなた豆ばかりでなく、平目や羊羹にだって神は宿っている事になる。
しかし、それを指摘したところで、また矛と盾の歴史を復習する事になるだけなのは明らかだ。
彼は何時でも、この様に豊富な知識と滅茶苦茶な理論で聴く者の判断力を半ば崩壊させる様な、ある意味暴力的とも言える論法を使う。

それでもーーそんな彼の話術に身を委ね、言葉の海にたゆたう様な感覚を、私は決して嫌いではなかった。
74偽虎猫の藁【其の10】:2001/07/28(土) 01:10
「ちょっと待てよ、三省堂。確かに君の母方の実家が、かの有難いとげぬき様だと云う事は知っているよ。
でも、福神漬けの例はあくまでも、名前の上だけの事だろう。
しかも、もっと由緒ある話ならまだしも、上野の漬物屋の親父の駄洒落程度の事に、
いちいち眼くじら立てる必要が有るのかい?」

「上野の親父が名付けようとお釈迦様が名付けようと、名前は名前だよ。名付け親の貴さなんて関係ないよ。
大体、君が何時までも愚図で間抜けなのは、決して君の親父さんが千駄木の大学芋屋だったから等では無く、
あくまで君自身の無知と惰性の賜物だよ」

本筋と関係無いながら、尤もな叱責を受け、私は限りなく萎縮した。
75名無しのオプ:2001/07/28(土) 05:10
age
76名無しのオプ:2001/07/28(土) 13:16
age
77名無しのオプ:2001/07/28(土) 15:48
age
78名無しのオプ:2001/07/28(土) 18:28
79名無しのオプ:2001/07/28(土) 21:29
age
80名無しのオプ:2001/07/28(土) 23:24
age
81偽虎猫の藁【其の11】:2001/07/28(土) 23:28
本筋と関係無いが、尤もな叱責を受け、私は限りなく萎縮した。

「実際、名前にはそれ位の力が有るのだよ。
大体、君が貪る様に読んでいた岡野某の『陰陽師』にも書いて有った筈だぞ。
まあ、僕は夢枕漠の原作は好きだけど、漫画版は頂けないな。
そもそも原作の魅力は、その何処か滑稽な雰囲気にあったのに、
直接的ではないにしろ、同性愛を思わせる様な雰囲気を折り混ぜて描くなんて具の骨頂だね。
それに、本来、安倍晴明はもっと歳をとっている筈なのに、
あの作品では、随分と若く美しく描かれているじゃあないか。
どう考えても、婦女子の不健康な性的妄想が反映されているとしか思えないね」

好きな作品を貶され、私は思わず、脊髄反射的に反論した。
「そこは岡野さんの作風だから、仕方ないだろう。
それにあの作品では、そういった雰囲気が極力出ない様、岡野さんなりに勤めている様に見えるよ」
しかし、三省堂に対して、不用意に反論する事は逆効果だったようだ。

「だからね、積口くん。
漫画を描く云う事とは、否応無しに自己の内面を開け晒す事に他ならないのだから、
どう足掻いても、其の人の根底にある思考は作品に反映されてしまうんだよ。
つまり、男色家が描けばこそ、『パタリ口』はあの様に成らざるを得なかったのだし、
頭の悪い田舎者でも無ければ少年マジガンなんかで良くやる様な
珍走団漫画は恥ずかしくて描けないだろうよ。
さらに、まぁこれは想像だがーー『4P中田』の作者なんかはしゃれこうべが、
こう、ぐにゃりとひん曲がっているんじゃあないかな?」
三省堂はそう云って自分の頭に手を当て、実際にぐいとねじ曲げた。

そこに丁度平目フライを持った老給仕が来た。

にゃぁ
また何処かで猫が啼いた。
82(・∀・)イイ!:2001/07/29(日) 01:04
がんばれ。オイラは期待してるよ。
83名無しのオプ:2001/07/29(日) 01:41
age
84名無しのオプ:2001/07/29(日) 05:21
 続きが読みたい……
 頑張ってください
85ギコワラ作者:2001/07/29(日) 23:51
頑張りますが
あまり期待しないでね
特にここから事件にはいるので
滅茶苦茶になりそうな予感...。

ちなみに、今日はあぷ無しで
86名無しのオプ:2001/07/30(月) 00:30
age
87名無しのオプ:2001/07/30(月) 06:14
 あげときます
88名無しのオプ:2001/07/30(月) 23:45
age
89蝙蝠男:2001/07/30(月) 23:53
偽虎藁さんのパスティーシュ作品が長篇になりそうなので
自分は短かめのやつ書いてみます。お題は「ネオ心理試験」
90ネオ心理試験 1:2001/07/31(火) 00:13
 私はうだるような暑さの中、一本の路地を這い回っていた。焼けた砂で手の
ひらが痛むのも構わず、ある物を探していた。アパートの家賃を集めた数十万
円は入った集金袋をである。
 本来私はアパートの管理人などではなく、ただ一介のフリータ−であった。
管理人の家族が海外旅行に出かけ、その月のアパートの警備及び集金を任され
ただけの立場に過ぎないのだ。二十を超える家庭から家賃を徴集し、アパート
の持主の家に持っていく間にどこかに落としてしまったらしい。私はどうせな
ら銀行振り込みにすればいいのに、と責任転化を行なおうとした。
 だが、どう言い繕っても私がその代金を立替えなければならないのは明白だ。
朝方この銀行に抜ける裏道を歩いてから既に五時間は経っている。もう警察に
届け出るしか無いと覚悟を決めた。
91ネオ心理試験 2:2001/07/31(火) 00:50
 ジリジリと、日射しが照り付ける中、私は派出所からの連絡を待ち続けた。
あの後、結局届け出るのは中止したのだ。あの集金袋にはアパートの名前や番
地、私が今住んでいる管理者の部屋の電話番号まで大きく書いてある。わざわ
ざ届けなくとも、拾得されれば私の所に連絡が来るはずなのだから。念のため
新聞やテレビ、派出所の掲示板を見るなどもし続けた。もし届けた後に袋が見
つからなければ私が絶対それを払わなければならなくなる。
 だが金の都合が何とかつけば上手く誤魔化す事も可能だ。そう、私は覚悟を
決めた。丁度例の路地の塀の向こう側にこじんまりとした家が在る。そこに住
んでいる老婆は性格はがめつく近所付き合いが殆ど無い。その理由として実は
お金をしこたま溜め込んでいるからだというまことしやかな噂があった。
 普段なら只の噂として片付ける所だが、今はそうも行かない。家賃を大家に
渡さないのは後二、三日が限度。家賃を払った者達が騒ぎ出すかもしれない。
そして、集金袋を落とした次の日、再び通った道を探していた私は塀越しに見
たのだ。
 噂の老婆が箪笥にこっそりと札束を隠している所を。
92ネオ心理試験 3:2001/07/31(火) 01:28
 そう、私はその金を盗み出し、家賃に替えるつもりだ。だがその老婆は独り
身であるが、いつも家の中に居て出歩く事は殆ど無い。食料品等も配達しても
らっているらしく、家の周囲から離れる事はないようだ。私は老婆を拘束して
その間に金を盗ろうかと考えた。だがその老婆は惚けてなどいない。顔を覚え
られて捕まるのがオチだ。どうせ生い先短い命だ……私が奪ったところでどう
なるという物でもない。
 計画は簡単だ。私はしばらく行っていない大学に少しづつ登校する事にした。
そして今日、昼休みの時間を使い学校を裏から抜け出す。そのまま老婆の家に
向かうのだ。朝方老婆にぜひ会って話したい事が在ると連絡し、それは意外な
ほどあっさりと受けいられた。
93ななし:2001/07/31(火) 01:40
<強迫性人格障害の診断基準>
アメリカ精神医学界 DMS-IV
秩序、完全主義、精神面および対人関係の統制にとらわれ、柔軟性、開放性、効率性が犠牲にされる。 成人早期に始まり、種々の状況で明らかになる。
以下のうち4つ(またはそれ以上)で示される。

1.活動の主要点が見失われるまでに、細目、規制、一覧表、順序、構成、予定表にしばられる。
2.課題の達成を妨げるような完全主義を示す。
(例:自分自身の過度に厳密な基準が満たされない という理由で1つの計画を完成させることができない。)
3.娯楽や友人関係を犠牲にしてまで仕事と生産性に過剰にのめりこむ。
(明白な経済的必要性はない。)
4.道徳、倫理、価値観についての事柄に、過度に誠実で良心的かつ融通がきかない。
5.感傷的な意味のない物の場合でも、使い古した、または価値のないものを捨てることができない。
6.他人が自分のやるやり方に従わない限り、仕事をまかせることができない。また一緒に仕事をすることができない。
7.自分のためにも他人のためにも、ケチなお金の使い方をする。お金は将来の破局に備えて貯めるべきだという歪んだ信念を持っている。
8.堅さと頑固さを示す。
94蝙蝠男:2001/07/31(火) 01:48
>>93荒らしサンクス(w
正に今そのネタはありがたい。
95ネオ心理試験 4:2001/07/31(火) 02:13
 老婆の生活は極めて規則正しい。常に朝は五時に起き、六時に朝飯を食べ、
洗濯をして晴れていれば干す。そして家の掃除を十時に初め三十分して終える。
それからテレビでも見ながらすごし、飯の支度をして十二時きっかりに昼飯を
とる。そういった生活をずっと続けているのだ。
 そして、私のとった行動は一つの賭けであった。私は急ぎ足で老婆の家に向
かった。裏道を通り、誰にも出会っていない事を確認して塀を乗り越えて庭を
抜けて玄関から入った。
 「何の用だい。」
 玄関の中で老婆が仁王立ちしていた。
 「少しお話があります。此所で話すのには長いので中で。」
 大丈夫だ、声は震えていないし態度も堂々としている。余裕を見せれば相手
は怯むはずだ。
 事実、けおされるようにして老婆は私を上がらせて居間に向かわせた。今だ。

 
96ネオ心理試験 5:2001/07/31(火) 02:33
 いや、駄目だ。

 私ははやる心を抑え、様子を見た。廊下は真すぐ進んでいるが、今無防備な
後頭部を狙えば誰かが会いに来て隙を見て殺したと警察にばれてしまう。私と
老婆に直接的な関係は無いが、それではまずいのだ。
 居間に向かう。丁度十二時。居間の横の戸が開いている。台所に食器が置か
れていた。
 「さあ、話があるなら早くしな。」
 居間の畳に座布団を布いてふんぞり返る老婆に、状況を確認した私は無言で
鈍器を振りおろした。
97名無しのオプ:2001/07/31(火) 07:57
あげ
98執事バンター:2001/07/31(火) 19:28
愛読してます
偽虎藁さんも蝙蝠男さんもがんばれ!
99名無しのオプ:2001/07/31(火) 22:29
age
100ギコワラ作者:2001/07/31(火) 23:55
テストです。

────
━━━━

これ、化けずに、隙間無くつながって見えますか?
特にウィンナーの人。

なんなためのテストかはーーバレバレですね。
101名無しのオプ:2001/08/01(水) 00:14
age
102名無しのオプ:2001/08/01(水) 00:29
>>100
OKだ。当方ウィンナーIE5だが、ちゃんとつながってみえるよ。
103蝙蝠男:2001/08/01(水) 00:35
>>100見えないけど、隙間なく繋がっているつもりと分かるから良いよ。
じゃあ、ネオ心理試験の探偵登場編は三時頃にでも。
104ギコワラ:2001/08/01(水) 00:52
サンクスです。
105 (・∀・)ノ:2001/08/01(水) 01:04
いよいよですね。
106名無しのオプ:2001/08/01(水) 01:05
age
107偽虎猫の藁【其の12】:2001/08/01(水) 01:15
「──ともかく、自分に合わないもの、出来ないことには、手を出さない。
其れが職業人としてのけじめじゃあないのかい?」
そう云うと、三省堂は来たばかりの平目フライにソースを掛けた。
私も、すっかり忘れられ、冷え始めたチキンカツの存在を思い出した。

暫く、二人とも無言で喰べた。

「ところで──代々木駅の掲示板を知っているかい?」
自分の鶏を喰べ終わったところで、私は出し抜けに切り出した。

「良くは知らないな。掲示板の事かい?」
「いや、違うんだ──これを見てくれ」
そう云って私は、駅員に頼んで貰ってきた紙を三省堂に手渡した。
108ギコワラ作者:2001/08/01(水) 01:17
またやってしまった!
訂正です。

誤:「良くは知らないな。掲示板の事かい?」
正:「良くは知らないな。伝言板の事かい?」

焦っちゃダメですね。
109偽虎猫の藁【其の13】:2001/08/01(水) 01:33
国鉄代々木駅の各ホームの片隅には、それぞれ一枚の掲示板が貼られている。
元々、電車待ち時間の暇潰しを目的に始められたものであろう。
単に掲載期限の切れた広告の裏面を貼っただけの簡素な物であるが、予想以上に人気があった。
とりわけ、私が教鞭を執る漫画学校の生徒達の嗜好にも合致したのであろう。
そこには、文章ばかりでなく、美人画や武者絵といったイラストレイションも多く描かれている。

他愛もない規模でしか無い。しかし、そこには確実にひとつの文化が成立していた。
110名無しのオプ:2001/08/01(水) 02:21
age
111蝙蝠男:2001/08/01(水) 03:09
では、そろそろ・・・
112ネオ心理試験 6:2001/08/01(水) 04:01
 私は畳にうつ伏せになってヒクヒクうごめいている老婆に続けて鉄の棒を振り
下ろした。頭部は割れ、中から白っぽい脳味噌がはみ出て血が畳に染み込んで、
固まっていく。そしてすぐに動かなくなった。
 ああ、熱い。部屋は日光で白くとんでしまった写真のようだ。額の汗を手拭
いで拭き取る。汗一つ落とす訳にはいかない。鉄棒は老婆の服で拭ってそのま
ま放り出した。後は何処にも触れてはいないはずだ。軍手をして箪笥を探る。
時間を無駄には出来ない。
 私の計画は極めて単純だ。ただ、いつもは老婆が昼食をとるであろう時間に
会う約束をして、僅かな時間を縫って殺す。そして、普通の強盗に見せかける。
こちらの予想通りに老婆は昼食を繰り上げた。老婆が発見されれば昼食を食べ
た後に強盗が押し入ったのだろうと判断されるだろう。余計な手間を掛けては
ならない。そして、計画通りの行動を相手がとった時に初めて殺害を選べる計
画だ。隙は大きいだろうが、上手く行けば誰も怪しまない。
 そして食器を水に浸けて残しているのも好都合だ。もしも完全に片付けてい
た場合、胃に食べ物が残っていてもそれが昼食の物かどうか、判り難くなるだ
ろう。居間の卓袱台に湯飲みが二つと急須が並んでいるが、これは台所の食卓
に運び、湯飲み一つを棚に返せば良い。置き場所が見つからなければどこかに
捨てても構わないだろう。これぐらいは運任せだ。
 そんな事を考えて気持ちを奮い立たせつつ、箪笥を引っ掻き回していたが、
ついに目的の金を見つけた。家賃の分は充分有る。
 だが、それを覆い隠していた布を凝視した時、あまりの事に目眩がした。
 「……糞婆ぁ」
113蝙蝠男:2001/08/01(水) 06:17
今朝は探偵が登場させられなかった、スマン
114名無しのオプ:2001/08/01(水) 06:46
age
115ネオ心理試験 7:2001/08/01(水) 23:16
 道理で上手く事が進んだ訳だ。せいぜい近くのアパートの日雇い管理人に過
ぎない俺に、わざわざ昼食の時間をずらしてまで会ってくれた理由がやっと解
った。そして、あれだけ探しても見付からなかった原因も。
 引き出しの底の札束に覆い被さっていたそれは、紛れも無く私が探していた
家賃の集金袋だった。

 老婆は外に出歩いても自分の家の周りの掃除ぐらいしかしない。あの日私が
集金袋を銀行に持って行く途中で落として、丁度その直後にでも金を見付けた
のだろう。金に汚いこの婆あは、それを黙って猫ばばしたのだ。
 そのため私が会いたいと言って来たのを、取り返しに来たのだと思って受け
入れざるを得なかった。そのため時間等の私の奇妙な申し入れも聞き入れたの
だ。あの偉そうな態度は虚勢だったに違い無い。そのお陰か私の殺気等も見逃
してもらえたのだろうが。気付いていれば幾らか強請り取る事も出来た筈だっ
たのに、惜しい事をした。
 だが、今はそんな事を考えても後の祭りだ。一撃目ならばまだやりなおせた
かも知れないが、既に何度も殴りつけて強盗への偽装工作もある程度済ませた
後では、口論の末かっとなって殺してしまったなどという言い訳も出来まい。
116名無しのオプ:2001/08/01(水) 23:35
age
117(・∀・)イイ:2001/08/02(木) 01:14
がんばれ!
オイラも何か考えよう。
118名無しのオプ:2001/08/02(木) 01:54
age
119(・∀・)イイ:2001/08/02(木) 02:32
なにも思いつかない。
氏にます。
120名無しのオプ:2001/08/02(木) 09:27
 あげとこう。
 ネオ心理試験は……微妙に『罪と罰』っぽいのが心をくすぐりますな。
121名無しのオプ:2001/08/02(木) 09:29
ロンドンの黒魔術師が呪いをかけて作ったサイトです。
3分以上見ると「死」にます!! マジネタです!!!
体内の細胞が変化を起こし急逝心筋梗塞を起こします。
最初は頭痛がしてきます。
そして、左の男の目が赤く見えてきたら危険です!
その後は・・・・・・・・。

http://www.mayhem.net/juke/bodiesbeat1.html
122執事バンター:2001/08/02(木) 12:20
ネオ心理試験、続き楽しみ〜
スレッサーやウェストレイクのようなどんでん返しおねがいします。
123名無しのオプ:2001/08/02(木) 14:58
age
124名無しのオプ:2001/08/02(木) 20:26
age
125蝙蝠男:2001/08/02(木) 23:07
ありがとう。
>>120やはり少し意識しています。
>>122どんでん返しは基本的に終わりです、スミマセン。
次の次ぐらいから解決編です。
126ネオ心理試験 8:2001/08/02(木) 23:14
 不幸中の幸いか、私と会った事が知られるのは老婆にとっても不利だろうか
ら私と会っていた事や、昼食がずらされた事を知る者はきっと無いだろう。計
画はこのまま進める事にした。座布団は何時もここに敷いているようだから、
放って置いて取り敢えず今は急須と湯飲みを台所に持って行こう。
 台所の食器棚を探すとすぐに湯飲みの置いてある場所が分かった。湯飲みの
種類や場所もまちまちで、他人に区別がつく事は無いだろう。食卓の真ん中に
急須と老婆の側に在った方の湯飲みを置くと、その端に水が少し入ったガラス
のコップが在るのが目に入った。水滴が付いて輝き、きっと良く冷えているだ
ろう。手を伸ばしかけたが、ここは堪えなければ。水が殆ど残って無い所から
見て、袋などは見当たらないが薬でも飲んだ後だろう。動かせば怪しまれる。
水滴に触れて軍手の糸が付着するのも好ましく無い。洗う時間も無いし、喉の
渇きは途中で飲み物でも買って癒そう。熱射病にでもなればこれまでの工作が
無意味になってしまう。
 玄関に靴を取りに行ってから網戸を開けて庭に出ると、じりじりと油蝉の鳴
き声が耳に突き刺さり、どっと汗が吹き出した。庭の土は乾いて足跡は付いて
いない。腕時計を見て老婆の家に入ってから十分程しか経っていない事を確認
して、私はもと来た道を走って大学へと舞い戻った。
 大学に着いたのは午後十二時半過ぎ。講議はまだ始まっておらず、より現場
不在証明を強固にするため教授に余り大した意味も無い質問をしに行った。金
は図書館のロッカーに入れたが、後でまた別の場所に隠そう。百万円程余分に
貰っておいたが、老婆に私を非難する権利は在るまい。補講を深夜まで受けて、
私は夜遅くアパートへと帰った。
 そして、事件が通報されたのはその次の日の朝、牛乳を配達に行った青年の
知らせによってだった。
127名無しのオプ:2001/08/03(金) 12:52
あげるよ〜
128名無しのオプ:2001/08/03(金) 15:42
age
129ネオ心理試験 9:2001/08/04(土) 00:10
 速報によると、私の考え通りに事件は単純な強盗殺人として処理されている
ようだった。そして私は朝一番で銀行に金を振り込みに行った。不審の種かも
知れないが、引き延ばすのはもっとまずい。そして今日一日は大学には行かず、
テレビをずっとつけて様子を見守る事にした。
 正午過ぎ、ようやくある程度纏まった情報が流れ出した。部屋に物が散乱し
ており、犯人は居間と共用していた座敷の網戸から侵入し、台所に居た老婆が
物音に気付いて来た所を用意した鈍器で殴りつけたらしいとある。少し離れた
ゴミ置き場から拾って来た物だ。そこから私に辿り着く事は出来ないだろう。
死亡推定時刻は正午過ぎとなっている。私の工作がどの程度効果を上げたかは、
よく判らない。あちこちチャンネルを変えていると、どんどんと扉を叩く音が
した。
 覗くと二人組のぱっとしない男達が立っていた。一人は覗き穴に警察手帳を
突き出している。扉を開けると、当然のような顔をして上がってきた。刑事は
私が昨日の十二時から二時まで何処に居たか通り一遍に聞くと、部屋に姿の見
えない住人の様子を聞き、しばらく管理人としてある程度協力してくれるよう
頼んで来た。別に断る必要も無いし、何らかの情報が得られるかも知れず、了
承する事にした。ありがたい事に死亡推定時刻は老婆の生活順序から推し量っ
て、昨日の午後一時前後三十分とされたらしい。
 老婆が私を追い込んだと知った時から何ら良心の呵責など感じておらず、ど
の問いにも焦らず応える事が出来た。そう、この汗は単に暑さのためだろう。
管理人の部屋に置いてある扇風機は生温い風を送り続けるばかり。棚からビー
ルジョッキを取り出して水道の蛇口をひねった。溜まっていた熱い水が終わり、
冷たい水が流れ始めるまで数秒かかった。それを受けて飲み干す。アパートの
屋上に一度貯められた黴臭い水だが、喉を潤すには充分だ。ふと、老婆の家に
在ったコップもこれぐらいの大きさだったと思い出した。今考えれば、あのコ
ップを床に落として割るぐらいしても良かったか。
 急に一つの失敗を思い出した。台所から来た老婆を殺したという設定なら、
座り込んだ所を殺したのはまずい。あれでは最初から居間に居たのに、なぜか
煎れたばかりの茶が台所に在った事になってしまう。
 呆けていると、再びどんどんと扉を叩く音がした。何か嫌な予感に襲われな
がらも仕方なく扉を開けると、あの刑事達よりもさらに地味な格好をした、一
人の長身の男が立っていた。男は帽子を脱ぐと白髪混じりの頭を下げて名刺を
差し出した。白い紙に唯、MONAE mao 萌萎 真魚とだけ書かれた名刺。
 「あのう、職業は。何の御用で……」
 男は声を発して、微笑んだ。
 「探偵、という奴です。」 
130蝙蝠男:2001/08/04(土) 00:17
さて、皆さん。ここであえてこの文章を出させてもらおう。

「私はミス板の住人に挑戦する」

「私」が気付かなかったある事、それは何か?
この物語に叙述トリックは使われていない。
また、その事は警察は既に知っており、
優先順位の関係からまだ調べていないだけである。
ある意味、気付かなかったのは「私」だけ。
「私」の計画を瓦解させるそれは何か、推理してくれたまえ。
131名無しのオプ:2001/08/04(土) 01:54
ヒントほし〜よう。
132ギコワラ作者:2001/08/04(土) 01:57
>>130
来た来た来た来たぁぁぁーーーっ!!!

...考え中
133偽虎猫の藁【其の13】:2001/08/04(土) 02:02
「ほう。どら右衛門を写実的に描いた物か──こちらは栄螺(さざえ)と鱒夫の春画だな。
コンセプト自体は陳腐で焼き直しの域を出ないが、それでも、良く描けているじゃあ無いか──」
「代々木駅にはね、各ホーム毎にこんな紙が貼られていて、自由に書き込みが出来るんだが、
これは二ちゃんねるの部分を貰ってきた物だ」

「二ちゃんねる──?」

「あぁ、済まない。さっきも云った通り、この紙は各ホームに一枚づつ貼られていてね、
欧米贔屓の学生の嗜好の所為か──1番線を1ちゃんねる、2番線を2ちゃんねると云う風に、
それぞれを呼んでいるんだ」

「──成る程」
134名無しのオプ:2001/08/04(土) 02:27
湯飲みがふたつあった。
ちょっと前に来客が来ていたのでは?
まずいことに、老婆の側にあった湯飲みを戻している。
ならば、客の指紋つきの湯飲みの方が残っていることになる。

さてその客は、台所で水を飲ませて貰ったのでは?
水滴のついたコップが、それを暗示している。
その時、水につかった食器を見たとしたら。
老婆が食事の時間をずらしていたことがバレてしまう。
単純な強盗殺人の線は崩れた上に、アリバイまでも崩壊。

こんなところで、どうでしょう。
でもその来客が探偵だった、とかいうのは無しがいいなあ。

是非、私の推理を見事に裏切るような真相をお願いしますね。
期待していまーす。
135名無しのオプ:2001/08/04(土) 02:53
age
136蝙蝠男:2001/08/04(土) 03:15
>>133イイ!
>>134スミマセン、説明不足でした。
湯飲みはそのまま戻しているので、空っぽです。
つまり茶は急須の中に入っているだけです。
137名無しのオプ:2001/08/04(土) 10:31
おや?
>>134の説は、湯飲み、空っぽでも成り立ちませんか?
つまり、客にお茶を出そうとしたら、水がいいと言って、
お構いなくとかいうことで自ら台所に行き水を飲む。
というわけで、指紋がコップの方に残っていて...

あと落ちとして、実は老婆が大家だった。
(最初、家に持ってくとかなってたけど、結局振り込みなので
面識なさそうだから成り立たなくもない。)
殺す必要のない殺人だったとか。
138執事バンター:2001/08/04(土) 12:23
お婆さんが箪笥にお金を隠していたのを道端から目撃できた。
夏だから、窓などを開けっ放しにしていたんでしょう。

お婆さんの居間の窓や縁側は丸見え、案外間抜けである。

実は一部始終誰かに見られていた。

というのは?・・駄目だな、おもろくない。すみません。
139名無しのオプ:2001/08/04(土) 15:04
age
140名無しのオプ:2001/08/04(土) 23:08
age
141名無しのオプ:2001/08/05(日) 02:00
頭痛がする頭で考えたのでいまいちアレですが
老婆が飲んでいた薬は食後のものだけではなかったかな
食後の薬と、食前あるいは食間の薬も併用していたため
胃の内容物に矛盾が出た

間違っている気がする
142141:2001/08/05(日) 02:11
間違っている気がする訳がわかった(笑)
食前だとか朝夕食後だとか、薬の飲み方によって主人公のアリバイ(と言うより死亡推定時刻)は崩れるが
それが犯人を指す証拠にはならないのか
一人ボケ一人突っ込みスマソ
143蝙蝠男:2001/08/05(日) 07:31
あ、その考えでけっこうです。主人公のアリバイが何故崩れるかが
主な問題です。(と言うよりも推理で判るのは基本的にこれのみ)
144ネオ心理試験 10:2001/08/05(日) 08:00
 探偵だと……
 「こちらのアパートの持ち主に頼まれて、家賃の集金とその振り込みを早く
  して欲しいと貴方に伝えに来ました。」
 仕事の催促と聞いて、私は少し拍子抜けした。確かにあれから一週間になる
のだ。大家が何らかの行動に移してもおかしくはなかった。
 「ああ、それなら今日の朝きちんと振り込みましたよ。それにしても探偵を
  呼ぶ事もないでしょうに。」
 探偵はするりと土間に上って説明を始めた。
 「いえ、私は探偵と言っても興信所などと違い、便利屋のような者です。依
  頼主も何度か貴方へ電話をかけようとしたそうですが、その度に留守にさ
  れていたそうで。もしや、貴方が家賃を持ち逃げでもしたのではないかと
  思い私が来た訳です。」
 「信用無いんですね。バイトだから仕方ないのかも知れませんが。」
 「それで、どうして貴方はこうまで仕事を先延ばしにされたわけです。」
 私は露骨に嫌な顔をしていたのだろう。少し慌てたように付け加えた。
 「ああ、最近大学の方頑張っておられるのは知っています。何故、しばらく
  行っていなかったのにまた通い出したのでしょうか。」
 「……何が言いたいんですか。」
 少し長い話になると言って探偵を名乗る、名前も偽名臭い老人は止める間も
なく上がり込んできた。
 「近所の人たちに聞きました、そういった事は。昨日、貴方の所まで来たの
  ですがあいにくと居らっしゃらなかったので。家賃は既に何日も前に集め
  られたそうですね。」
 部屋に座禅するかのように胡座をかいてこちらを見上げてきた。
 「そしてどうでも良い事かもしれませんが、この直ぐ近くで強盗殺人が在り
  ましたね。正直に言いますが貴方がもしやお金を使い込んでいるのではな
  いか、と疑っていました。良く在る事ですからね。」
 この男は何処まで知っているのか。強く否定し過ぎるのもまずい。私も座り
込んで相手の様子を探ろうとした。
 「失礼だな。私は大金を浪費するような事は在りませんよ。借金の有る無し
  なんてそれができる者が調べればすぐでしょう。」
 探偵は頭を軽く振って続けた。
 「そうですね。問題は事実として当日の貴方の行動に或疑問が在るだけです。」
145名無しのオプ:2001/08/05(日) 08:32
age
146名無しのオプ:2001/08/05(日) 20:28
早く!解決編を!!
147ネオ心理試験 11:2001/08/06(月) 06:10
 可能な限り意味の有る言葉を返すべきではない。相手に情報を与えてしまう。
 「当日とは何時ですか。別にいつもの通りの行動をとっていただけだよ。」
 「強盗殺人が在った日です。貴方の担当教官に聞きましたがあの日、昼中に
  講議の事で質問に行ったそうですね。」
 「警察でもないのに何故そんな事をするんだ。」
 「今朝、貴方が居ると思いまして大学に伺ったのです。どうも、毎度すれ違
  いばかりで。その時何故、授業が終わって真直ぐに来なかったのか、と言
  ってらっしゃいました。私は昼食を取ったためと思い、貴方を探すついで
  に学生食堂で聞いて廻ったのですが、いつもと違い終了直前に来たそうで
  すね。つまり、どうやら貴方は昨日の正午頃、大学に居なかったという状
  況証拠が出て来たのですね。」
 「それで私がお婆さんを殺した犯人という事ですか。」
 探偵は何も応えず、私を見ているだけ。細く微かに垂れた眼の奥で私を観察
している。すっと伸びた背筋に薄茶色のスーツ姿。何故かネクタイはしていな
かったが、首の所まできちんと留めているためにだらしなさは感じられない。
 「ニュース聞いたら、お婆さんが殺されたのは私が大学で教官に会っていた
  後のようですがね。私が少し姿見えなくなっていても別に何の問題も無い。」
 「それはそうです。では貴方はその時何をしていたのでしょうか、宜しけれ
  ばお答えして欲しいのです。答えられないのであれば、このまま話を続け
  ます。」
 「……便所に行ってたんだよ。」
 「それを証明してくれる方は居ませんね。勿論、それだけで貴方が怪しいと
  も言えませんが。しかし、貴方が犯行時に現場に存在できた証拠は在るの
  です。」
 私は答えなかったが、それで弁説が止まるわけでも無かった。
 「被害者は強盗に殺されたとなっていますが、彼女がその時何者かに会って
  いた明白な証拠が。そして彼女が誰かに会っていたために彼女が何時もの
  生活習慣を変え、時間割りを繰り上げていた可能性が出ました。そのため、
  貴方の現場不在証明は意味を成さなくなったのです。」
148ネオ心理試験 12:2001/08/06(月) 06:42
 「何ですか、その証拠は。私が解る訳無いでしょう。」
 「貴方は知っている筈です。報道で出ている事だけで或程度推測が付くでし
  ょう。」
 「そんな物が在るなら、警察が直ぐ犯人を捕まえるだろう。」
 「いいえ、その事から解るのは犯人と被害者が会っていた事と、死亡推定時
  刻が間違っている可能性だけです。貴方の所まで辿り着くのは当分先でし
  ょう。それが報道に流れないのは犯人だけが知っている物と思われている
  からでしょうね。しかし、撮られた映像の中にそれを明示する物が在りま
  した。」
 そう言うと、探偵は帽子を冠った。
 「貴方は知らないかもしれませんが、実は彼女は夏の習慣として昼食の後、
  いつも昼寝をしていたのですよ。」
 昼寝。あの日は確かにいつもと違って起きている予定だった。
 「……歳を取ると、どうしても体力が無くなってしまうものでしてね。」
 では、いつもなら寝巻きにでも着替えていたとでも言うのか。
 「いつもと違う格好で寝ようとしていても、別におかしな事は無いだろう。
  いや、それ以前に片付けを終わらせぬまま着替える人なんて居ますかね。
  何よりお茶を煎れたばかりだったのだろう。」
 「少し、勘違いされている様ですね。昼寝をする時は別に着替えたりはしな
  いそうです。ただ、普段と違う格好であったのは確かですが。それは貴方
  があそこに居たら気付いてもおかしく無い事です。きっと眼に見えていた
  筈ですよ。」
 老婆は化粧一つしていなかった。していれば、直ぐ気付いたはずだ。何も見
落としてなどいない。あの光景はぎらぎらしと今も強く網膜に焼き付けられて
いる。ふとその時、何故かあの時の暑さを思い出した。そして……
 「気が付かれた様ですね。」
 探偵は無感動に言った。
149蝙蝠男:2001/08/06(月) 06:55
次からが解決編です。今朝はもう無理ですが・・・
一応論点を纏めたから、問題の主旨は分かり易くなった筈です。
前回はこちらの描写の失敗から分かりにくくなっていたので、
これが本番という事で。また、「私」にとって意図的では無い
間違った描写が有るとも言っておきましょう。

さて、皆さん。ここで再びこの文章を出させてもらおう。

「私はミス板の住人に挑戦する」

「私」が気付いたある事、それは何か?
この物語に叙述トリックは使われていない。
また、その事は警察は既に知っており、
優先順位の関係からまだ調べていないだけである。
ある意味、気付かなかったのは「私」だけ。
「私」の計画を瓦解させるそれは何か、推理してくれたまえ。
150名無しのオプ:2001/08/06(月) 08:26
age
151名無しのオプ:2001/08/06(月) 21:16
age
152雑古庵:2001/08/06(月) 21:21
ageるだけじゃなく、推理しろ!
オレモナー
いかん、全然解らない。
洗濯が関係あるかと思っても、推理進まないし…
153名無しのオプ:2001/08/07(火) 08:46
age
154名無しのオプ:2001/08/07(火) 09:36
 ええっとー、うーん、分かりませんな。
 前に出てきた湯のみではないんですね?どうやら。
 「○○○の○」みたいに、見えてるはずのものが見えてなかった、
 ということはありませんよね?
 
155名無しのオプ:2001/08/07(火) 11:03
一見しただじゃ解明は無理か…
で、解決編はいつなのさ?
156執事バンター:2001/08/07(火) 12:24
読み直してもまったくわかりません。
せいぜい思いついたのは、
お婆さんは意外にもお洒落で、人前ではコンタクトをする習慣があった。
しかし普段寝る前には眼鏡に替えていたとか・・
アンフェア以前に、つまらない>自分。
157名無しのオプ:2001/08/07(火) 12:58
明日から二週間ネット出来ません。
解決編すげー気になる。
158名無しのオプ:2001/08/07(火) 15:55
age
159アンフェアな解答:2001/08/07(火) 16:03
「急須の中には毒が入っていたんですよ―――」
「毒―――?」
「ええ。恐らく彼女は件の訪問者を殺そうとしたんでしょう」
「し、しかし自殺しようとしている所を強盗に襲われたのかも
しれないでしょう。」
「あのお婆さんが自殺するような人間に見えますか?」
「そんなこと私に解るわけないでしょう。会ったこともないのに」
「まだしらを切りますか。まあ、いいでしょう。でも、彼女が
自殺などするはずがない証拠があるんですよ」
「証拠?」
「食卓に水の入ったコップがあったのはご存知ですか?」
「知りません。薬でも飲んでたんじゃないんですか」
「そう、貴方の仰るとおり、彼女は薬を飲んでいました。
彼女の胃の中から発見されたそうです。動かぬ証拠は
体の中にあったのですよ」
「まさか―――」
「そう―――解毒剤ですよ。」
160名無しのオプ:2001/08/07(火) 17:03
洗濯物、記述がないけど、習慣通りなら干してあった?
シーツかな。
干したまんま=昼寝していなかった。
昼食をとっていたのに。
でもこれじゃ、アンフェアーだな。
161執事バンター:2001/08/07(火) 17:16
アンフェアでもそれ好き!>>159
162雑古庵:2001/08/07(火) 18:26
〓〓『ネオ心理試験』/ 蝙蝠男〓〓

問題編
>>90-92 >>95-96 >>112 >>115 >>126 >>129
住人への挑戦状 其の1
>>130
探偵登場
>>144 >>147-148
住人への挑戦状 其の2
>>149
解決編
近日公開!暫し待てや。

まだ読んでない人、利用して下さい。
名探偵の称号は貴方の頭上に輝くかもよ。
163名無しのオプ:2001/08/07(火) 21:04
あげ
164141:2001/08/07(火) 22:19
そう言えば暑い日なのに冷房の記述が無いが関係なさそうだな
>玄関に靴を取りに行ってから網戸を開けて庭に出ると
と言う事はクーラーではないのは確かだが
関係無さげ
165蝙蝠男:2001/08/07(火) 23:31
なんとか最後まで書けました。
解決編は一挙にやった方が良いと思いましたので。
たぶん今夜中には全文書き込めます。
>>154あ〜それは問題ではないのですが、それはそのう(解決編参照)
>>156ほぼ正解です。その考え方を別の方に・・・と言うよりもう気付いてますね
>>159実はそれは初期のオチで正解!でも処理の仕方はそっちが良いっす
>>160洗濯物、実は私すっかり忘れてました。
>>164昭和の頃と考えてますし、死亡推定時刻がずれる以外には関係無しです
他の皆さんも楽しんでいただけているようで何より嬉しいです
166ネオ心理試験 解の1:2001/08/07(火) 23:42
 名探偵にも解らない、私だけが知っている事が有る。老婆は私に対して心を
許してはいなかった。それは逆に私も相手に心を許していないだろうと老婆に
思われていたという事だ。この場合、老婆がこちらに不信感を抱かれるような
行動は取らない。つまり敵対するが為に普通よりもさらに気を付けて接待する
だろうという事になる。
 だから、私の犯罪が発覚するのは意図しての事では無い。老婆が身の危険を
感じて、わざと手懸かりを残す可能性は殆ど無いだろう。頼る者等何も無い筈
だからだ。
 逆に言えば、意図せずして手懸かりが残った事になる。
 結局あの時、強盗に見せかけて部屋を散らかす為に、老婆の死体を動かした
のは正解だったのかどうか解らない。それで私の工作がすぐにばれる事は無か
ったのだが、犯行が露呈する原因はそれ以外にも在ったのだ。
167ネオ心理試験 解の2:2001/08/08(水) 00:48
 あの時の水は、つまり……
 「まず、あのコップの中に入っていた水は何に使われたのでしょうか。単に
  喉が渇いたから飲もうとした。飲み終わったのなら、これから寝るのです
  から食器と一緒に流しで水に浸けておくでしょうし、飲む前ならお茶を煎
  れないでしょう。紅茶では無いのですから、良い葉を使っても出す時間は
  三分もあれば充分です。水を飲んだ後に煎れれば良い。そもそも水を飲む
  だけなら、流しで入れて立ったまま飲めば良いですしね。彼女はまだ足腰
  もしっかりしていた様ですし。それに、これからお茶を飲もうという時に
  水を飲む人が居るでしょうか。」
 「……老人だし、薬でも呑んでいたんじゃ無いか。」
 「その水で薬を呑んだのならば、薬を入れていた容器が残っている筈です。
  また、容器を片付けたのならばコップをそのまま食卓の上に置いておく必
  要は無いでしょう。薬を呑む前ならやはりお茶を煎れておく必要は有りま
  せん。つまり、あの水を飲み水として捉えると、食器とともに片付けてい
  るか、お茶を煎れていないかのどちらかになる筈なのです。また、あのコ
  ップは水を入れて飲むのには少し大き過ぎます。我々の世代が使うのなら
  あれ程の大きく重そうな物は選びません。どうせお茶を飲むのですから、
  湯飲みにそのまま入れれば良い話しです。」
 喋り疲れたのか、目の前の老人はふっと息を吐いた。
168ネオ心理試験 解の3:2001/08/08(水) 03:29
 「つまり、あの水は飲料用に置いていたのでは無い、という事になります。
  或いは一輪挿しでも置くつもりだったのでしょうか。ですが、そのような
  痕跡はやはり見付かりません。これから寝るという時に、そのような仕事
  をする必要は無いですしね。では、別の方向から考えてみましょう。人は
  これから寝ようとする時、どのような行動に出るでしょうか。可能な限り
  楽な格好にする筈です。余計な装飾は出来るだけ外してね。そのような物
  で、外した時に水が要る物はどのような物が有るでしょうか。コップが用
  意されているという事は、その中にでも入れる積もりだったとも考えられ
  ます。人間が普段着けていて必要無くなると水に浸ける物、それは」
169ネオ心理試験 解の4:2001/08/08(水) 04:54
 「……入れ歯だ。」
 名探偵は軽く頷き、続ける。
 「そして被害者が入れ歯をしていたのなら、その入れ歯は外されていなけれ
  ばなりません。」
 だが、それが何故おかしいのか解らない。
 「まだ起きては居たんだろ。なら、寝る直前に外せば良いじゃ無いか。」
 「昼食を食べ終わったのです。もう着けている必要は有りません。」
 「これからお茶を飲む処だったんだろう。」
 目の前の男は帽子の上から頭を掻いた。
 「お茶を飲むつもりなら、普通は入れ歯を外すのです。入れ歯は人間の歯と
違って茶渋が付いてしまうからね。そして入れ歯を外さない程、慣れてい
  るのであれば逆に入れ歯を浸ける容器を昼中に出す必要は全く無い。これ
  からお茶を飲むのに、入れ歯を外さない状況は唯一つと言って良いでしょ
  う。入れ歯の御飯を噛む為以外のもう一つの使い道、声を正しく出し会話
  する事。つまり、誰かと話す予定が入っていたという事になります。そし
  てそれは昼食の直後という状況から、犯人では無い別の人間が介入してい
  た可能性は殆ど有りません。その人物には早晩現場不在証明が無い事から
  疑いがかかるでしょうし、被害者が入れ歯を着けたままという事は強盗が
  来た時も家に居た筈で、警察に犯人を指摘する筈でしょう。ゆえに被害者
  と面会していた相手は、犯人です。」
 それはつまり……
 「この事件は単純な強盗殺人では無いし、突発的に起こった事件では無いの
  で、当日の彼女の行動が通常の生活習慣からずれていた可能性が出て来る。
  つまり、被害者の死亡推定時刻に幅が生まれ、貴方の現場不在証明は存在
  しなくなるという事です。」
170ネオ心理試験 解の5:2001/08/08(水) 04:59
 もし、それが正しいのであれば、死体を調べれば一目で解る。そうなると、
私の現場不在証明が無い以前に
 「警察も、しばらくすれば強盗殺人が偽装と気づくでしょう。方向性さえ掴
  めれば、犯人を割り出す事も簡単でしょうな。」
 そう言って目の前の名探偵はすっと立ち上がった。
 「どこへ、行くんだ。」
 応えは無い。
 「……悪いのは自分じゃない。余計な欲をかかなければ殺される事も無かっ
  た。」
 少し興味が湧いたように名探偵がこちらを見返した。
 「確かに金を取った。だがそれは集金した家賃を婆あが猫糞した自分の金だ。」
 「それなら、必要な分だけを返してもらえば済む話しだ。それにそれは君の
  金じゃ無い。」
 「先に犯ったのは奴だ。俺は奴の所為で殺してしまったんだ。」
 私の口はこれまでの事を吐き出していった。それを止める気力は最早無い。
 「婆あは俺に犯罪を起こさせるよう仕向けたんだっ」
 見下ろしていた名探偵が呟いた。
 「お前もな。」
171ネオ心理試験 解の6:2001/08/08(水) 05:07
 見上げると名探偵は顔を私の所まで下ろして言った。
 「お前は何故、金を落とした。」
 何故……
 「落とそうと思って落とせる物では無い。札束は、かなりかさ張って場所を
  取る。何より大金だ。意識の外に出てしまう事は有り得ない。」
 逆光で真っ黒になった老人の顔の中で眼だけが光っている。
 「何より被害者はどうして人に見られるかも知れない状況で金、それも盗ん
  だ物を隠そうとした。……お前が這いずり回って捜していたのは、何処だ。」
 金が欲しかった。
 「お前は被害者が大金を隠している事を噂で知った。その金を溜める為に随
  分と無茶な事をしていたとも。だが、その場所は分からない。銀行か、地
  下か、肌身か、鏡台か、箪笥か。そこでお前はわざと老婆だけの眼に付く
  ように、自分の物ですら無い大金を落とした。彼女が拾う事を意識して。
  それを他の大金と共に隠すと考え。そして隠し場所が分かれば計画通り、
  殺して奪う。」
 そんな事考えてもいない……
 「自らの心を誤魔化しても、行動から導き出される答は一つだ。」
 私は……
 「お前が殺したんだ。」
172ネオ心理試験 13 :2001/08/08(水) 05:15
 ふっと我に返った。男の姿は何処にも無い。西日が眩しく部屋を紅く染め上
げている。
 ふと気付いて体をまさぐったが、名探偵を名乗る老人から貰った筈の名刺は
影も形も無かった。私は白昼夢でも見ていたのか。
 何時の間にか、大学に隠して置いた筈の集金袋が側に落ちていた。慌てて手
を伸ばしたが、軽い。中に入れて置いた札束が無くなっている。
 「夢……」
 袋は裏返しになっていた。唯のずた袋に見えるよう簡単な細工として裏表を
ひっくり返したのは何故だったか。
 ふいにどんどんと扉を叩く音がした。私が呆けていると、再びどんどんと扉
を叩く音がした。

 私はしばらく扉を開けられなかった。

                         ネオ心理試験 了 
173名無しのオプ:2001/08/08(水) 08:27
age
174執事バンター:2001/08/08(水) 11:33
おもしろい!かなり意外でした
最後のシメもイイ!

ぜひ第2弾おねがいします。
175名無しのオプ:2001/08/08(水) 11:40
いいスレでした。続編期待
176名無しのオプ:2001/08/08(水) 12:06
おもしろかった
177名無しのオプ:2001/08/08(水) 12:28
 入れ歯……考えなかったよ……
 なんか後半純文学っぽくてかなり良かったです
 同じ作者で別のもの書いてください
 というわけで、ageですね
178159:2001/08/08(水) 12:34
入れ○は盲点だった。次も読みたいです。
ところでこのタイトルって乱歩だっけ?
179141:2001/08/09(木) 00:25
思いっきり既出になってしまいましたが
まったくの盲点でした。脱帽しました。
180蝙蝠男:2001/08/09(木) 04:21
皆さん、どうもありがとうございます。
ネタができれば、またその内・・・
『偽虎猫の藁』の後にでも。
(最初はこんなに長くなるはずじゃなかった・・・)
>>178はい。
181名無しのオプ:2001/08/09(木) 07:54
http://corn.2ch.net/test/read.cgi?bbs=entrance&key=997310007

今ここの放送が熱い!
てゆーか凄いミステリーだよ!
182名無しのオプ:2001/08/09(木) 09:39
凄い、蝙蝠男さん、面白かった!!
テンポ良かったよー、文才おありですねぇ。

ギコワラ作者さんのもとっても楽しみ。
本草綱目のとこなんてよく出来てる!
ホント藁たよ。
神保町ネタも個人的にすごくウケた。
折れも鰯の葡萄酒煮だった(w

ところで1の作品公開はまだ?
183黒猫缶:2001/08/09(木) 11:30
あー、おもしろかったです。
文才に妬いてしまうわ・・・。
こんなに巧いと後で書く人が大変じゃないですか(w
184名無しのオプ:2001/08/09(木) 16:10
応援age
185名無しのオプ:2001/08/09(木) 16:39
あがるたびに新作かと期待してしまうナ。
応援。
186ギコワラ作者:2001/08/10(金) 02:42
ごめんね。
俺の方は今ちょっと忙しくて続きが書けないの。
気長にお待ち下さい。

>蝙蝠男さん
すげー。すげー。
何はともあれ、お疲れさまです。
気が向いたら、また書いてくださいね。
187蝙蝠男:2001/08/10(金) 06:53
感想は嬉しいのですが、自分としては粗が見えてきてちとつらいです。(笑
>>169の半角スペースやってしまった事による行替えミスはいいとしても、
前半、主人公と老婆の間であれつきが起こった描写をすれば感情移入や
どんでん返しが自然だったとか。文章も最初と最後でかなり違うし。
それでもまだネタはあるので、またその内に。
188名無しのオプ:2001/08/10(金) 16:53
 はーい、まってまーす。
189名無しさん:2001/08/10(金) 17:19
>>527
でも、1人だけ裏情報を
知ってた人いたよね、発売前から。
最新号の目次とか、Aの異動とか、
学園モノが受賞したこととか。
あなどるべからず。
190名無しのオプ:2001/08/11(土) 02:02
 >>189
 スレ違いデス
191蝙蝠男:2001/08/11(土) 06:55
今回は正統派の短編。道行きは少したるいですが、お楽しみ頂ければ幸いです。
192猫達の密室 序:2001/08/11(土) 06:55
 庭木の間を熱風が通り抜け、ゆるやかな涼風となって風鈴を鳴らした。
 陽の光りは木々の作り出す影により溶鉱炉の融けた鉄から無音の花火へと姿
を変える。
 都市空間から隔絶された平屋には、かつて大勢の人々が暮し、その声で騒め
いていた。

 それが誰の耳にも届かなくなって久しい。そう、それでも少し前までは猛暑
から逃げ出してきた子供達の喚声があふれていた。さらにほんの少し前までは
拾われてきた猫達の鳴き声がその代わりを勤めた。だが今、それらは全て失わ
れている。

 古い日本家屋を建て直し、あるじの老婆のために障子を近代的なガラス窓に
変え、防犯用の鉄格子を全ての窓に取り付けた平屋敷。外界に対する防御壁と
して作り直されたその家は今、全ての出入り口を閉め切って密閉されていて、
さらにその周囲を植物の檻が覆っていた。
 その密室には沢山の猫、一匹の犬、彼等だけが通り抜けられる扉が存在して
いる。それ以外には、骨と化した一匹の猫と一人の老婆の屍体が在るのみ。
193猫達の密室 一:2001/08/11(土) 07:00
「へっくしゅい」
「お父さん、夏風邪にだけは気を付けてくださいね。ただでさえ生活は苦しい
 んですから、病院代なんて払えませんよ。」
 夫が何も答えずに新聞を広げ直したのを見て、香澄は大きな溜息を吐いて朝
食の支度を再開した。毎年夏が暑さを増しても、朝は幾らかの涼しさを与えて
くれる。それが苛つきを抑えてくれた。やや温い水も野菜を洗うには丁度良い。
 不意に、とこ、とこ、と二階から足音が下りてきた。この家の小学校に上が
ったばかりの一人娘、ここねがパジャマ姿で台所に入ってきた。
「あら、ここねちゃんどうしたのそれ。」
 眠そうに眼をこすっているのはいつもの事だが、今朝は友達と一緒だった。
「クマチャンはもう幼稚園と一緒に卒業したでしょう?」
 幼稚園の頃のここねと同じぐらいあった熊のぬいぐるみだった。普段と違っ
て軽快に階段を下りてこなかったのは、これを抱きかかえて下りてきたためだ。
「今日ね、今日ね、わたし怖い夢見たの。」
「夢?」
 ばさりと新聞を下ろして父親がここねを見やった。
194猫達の密室 二:2001/08/11(土) 07:19
「だからね、クゥマに守ってもらったの。」
「どんな夢かな。今日の夜は父さんと一緒に寝ようか。」
 正喜はここねに優しく語りかけた。香澄は興味を失って家事に専念している。
二人を遅刻させる訳にはいかないし、熊のぬいぐるみを引っ張り出して散らか
ったであろう押入れの掃除を、こちらに押し付けるつもりの夫の魂胆が見え透
いていたためだ。
「お屋敷のね、お婆ちゃんがね、犬に食べられちゃうの。お父さん、わたしど
 うしたらいい?」
 ここねの父はびくりと体を震わせた。
 お屋敷と言えば、この近辺で野良猫を拾い集めていたお婆さんが居る鈴木家
の猫屋敷しか思いつかない。昔ここねがしょっちゅう遊びに行っては日が暮れ
るまで帰ってこなかったものだが、行く事を禁止して二年程経つ。この土地の
持主なので全く会わないという訳にはいかないはずだが、正喜も香澄も顔を合
わせる事は無い。
 しかし、ここねは一年程前まではこっそり入り込んでいた。資産家らしいが
孫も居ないその家の老婆は分け隔てない優しさを近所に振りまいていた。だが、
最近は野良猫をのべつまくなしに拾い出して、ろくに世話もしていないという
噂が流れている。正喜は答につまって妻の方を見る。当然助け舟は来るはずも
無く、仕方なく娘と話を合わせた。
「大丈夫さ。悪い犬なんてお父さんがやっつけちゃうから。ここねは怖がらな
 くても大丈夫だよ。」
 力強く応えたが、すでにここねの興味はぬいぐるみとどうやって一緒に御飯
を食べるかに移っている。正喜はほっとしながらも少し寂しく目の前に運ばれ
てきた目玉焼きに手を着けた。
195名無しを呼び起こせ:2001/08/11(土) 08:09
おお、新作だ。
期待上げ。
196名無しの読者:2001/08/11(土) 09:54
起きたぞ!
197執事バンター:2001/08/11(土) 11:02
嬉しいなあ、さきが楽しみです。
ここねちゃん萌えの予感アリ(w
198猫達の密室 三:2001/08/12(日) 08:00
ここねは紅い玉飾りの付いたゴムバンドで髪の両脇を結び、房のように垂らした。ここねには大きいランドセルをしょって元気良く外へ飛び出した。子犬の垂れ耳のように髪の房が左右に跳ねる。それを追うように正喜も駅に向かって走る。そして家には食器を洗う専業主婦の母親と存在意義を無くしたクマのぬいぐるみが椅子に座らされたまま残された。
 十年前の新興住宅地から抜け出し、少し古びた町並みの中を走る。それにつれ、モルタルの塀はブロック塀、生け垣へと変わっていった。
「もう、怖くないかい?」
「え、なにが?」
 振り向きもせず軽快に答えたここねに正喜は安心した。
「じゃあ、お父さんは先に行くから。」
 忘れた事を確信した正喜はそう言って足を速め、ここねを追い抜いていった。
やがて何度か道を曲がり、お互いの姿は見えなくなった。
 ふと、ここねはつんのめるように立ち止まった。
 父親が消えた先をしばらくじっと見ると、ここねは振り返ってもと来た道を
戻りだした。遠回りしてお婆ちゃんに会ってこよう。そう思いついたのだ。
199猫達の密室 三 (訂正):2001/08/12(日) 09:36
 ここねは紅い玉飾りの付いたゴムバンドで髪の両脇を結び、左右に垂らした。
そして着替え終わってから、まだ小さな体に合わないランドセルをしょって元
気良く外へ飛び出す。足を前に出す度に子犬の垂れ耳のような髪の房が左右に
跳ねていた。それを追うように正喜も駅に向かう。
 家には食器を洗う専業主婦の母親と、存在意義を無くしたクマのぬいぐるみ
が椅子に座らされたまま残されていた。
 十年前の新興住宅地から抜け出し、少し古びた町並みの中を走る。それにつ
れて、モルタルの塀からブロック塀、生け垣へと変わっていった。
「もう、怖くないかい?」
「え、なにが?」
 振り向きもせず軽快に答えたここねに正喜は安心した。
「じゃあ、お父さんは先に行くから。」
 忘れた事を確信した正喜はそう言って足を速め、ここねを追い抜いていった。
それから何度か道を曲がり、やがてお互いの姿は見えなくなった。
 ふと、ここねはつんのめるように立ち止まった。
 父親が消えた先をしばらくじっと見ると、ここねは振り返ってもと来た道を
戻りだした。遠回りしてお婆ちゃんに会いに行こう。そう思いついたのだ。
200蝙蝠男:2001/08/12(日) 09:38
自分としては段落がえミスが許せなかったので訂正しました。
ついでに表現も少し直してあります。
201名無しのオプ:2001/08/12(日) 12:22
age
202蝙蝠男:2001/08/13(月) 01:52
今日はアップ無しです、スンマセン
お盆のため家中の掃除やって・・・
事件が起こるのは、多分三レス目ぐらいかな。
203名無しのオプ:2001/08/13(月) 04:42
もちろんageます……
204執事バンター:2001/08/13(月) 15:05
お掃除がんばれ。
やはり「ここね」という唐突な(かわいいけど)名前が気になります。
205名無しを呼び起こせ:2001/08/13(月) 19:07
>>202
お疲れさん。
206誘導:2001/08/13(月) 20:42
〓〓『ネオ心理試験』/ 蝙蝠男〓〓

問題編
>>90-92 >>95-96 >>112 >>115 >>126 >>129
住人への挑戦状 其の1
>>130
探偵登場
>>144 >>147-148
住人への挑戦状 其の2
>>149
解決編
>>166-167 >>168-169 >>170-172

纏めてみた。
207猫達の密室 四:2001/08/14(火) 00:13
 試験も終わり、後三日もすれば夏休みだ。少しぐらい休んでも、通知表が悪
くなったりしないという計算も有った。
 ここねにとって、お婆さんに会っていたのは随分と昔の出来事だった。子供
の一年は長い。だからこそ、思いついた今、会わなければならない。そう考え
ていたのだろう。
 鈴木家の門まで辿り着くと、ランドセルを下ろした。お婆さんの家はまるで
あばら家のようになっていた。だが、猫の鳴声がどこかから聴こえてくるのは
昔のままだ。
 ランドセルを背負い直して鉄の門をぎいと開けた。草がここねの背丈程伸び
ている。その草を門から玄関まで誰かが踏み倒していた。
「……お爺さん誰。」
 玄関の前に見知らぬ男が突っ立っていた。
 毛髪に僅かばかり白い物が混じった五十代らしき男。二十歳でおじさんと感
じる子供にとっては充分お爺さんだ。灰色の背広を着こなし、同系色のソフト
帽をかぶっている。左手で洋画に出てくるような杖をついていたが、足が悪い
訳ではないらしい。男はここねの方を振り向いた。しわこそ刻まれているが、
張りのある若々しい顔つき。ネクタイはしていない。
「探偵だよ。」
 男はそう言って微笑んだ。
208猫達の密室 五:2001/08/14(火) 08:57
「探偵さん?」
 男を見る眼に少し尊敬が混じり出したのは好きな漫画の影響だった。
「萌苗 真魚と申します。」
 男は帽子を脱ぎ、少し薄くなった頭を下げてきた。
「私は八木 ここね、六才……ここで何してたの。」
「猫探しだよ。この家のお婆さんは猫を拾い集めていると聞いてね。君はこの
 家の人の知り合いかな。」
「うん。確かにお婆ちゃんは猫の事良く知っているよ。」
「じゃあ、その人に会わせてもらえるかな。この猫達を探しているんだ。」
 探偵はそう言うと、背広の中に手を入れ数枚の写真を取り出した。色々な飼
い主からの依頼らしく、細かな特徴がそれぞれ違った文体で書き込まれている。
「これ、レヴィだよ。」
 うねるような模様の入った猫の写真を少女は選び出した。
「お婆ちゃんが一番最後に飼っていた猫だよ。交通事故に遇っていたのを助け
 てあげたんだって。他は知らない。」
「そうか。案内してくれるかな。ここには鍵が掛かっているんだ。それに」
 蔦が戸の硝子を護る格子に巻き付いていた。玄関は長い間使われていないら
しい。
「じゃ、ついて来て。」
 ここねは草がぼうぼうに生えた庭に走って家の横に廻った。探偵はランドセ
ルを持とうとしたが拒否され、仕方なく杖で白い毛の生えた草をぺきぺき倒し
ながらついて行った。
209蝙蝠男:2001/08/14(火) 08:59
>>204-205どうも。送り火がけっこう上手く焚けたので気分良し。
210名無しのオプ:2001/08/14(火) 15:29
 真魚萌え……かな?
211執事バンター:2001/08/15(水) 10:18
はやく読みたーい。
212名無しのオプ:2001/08/15(水) 11:36
>蝙蝠男さん
一つ意見言っていいですか?
かぎ括弧の最後に句点は要らないと思われ。
創作文芸板みたいなこといってすんません。
213蝙蝠男:2001/08/16(木) 01:57
>>212う、気にしていた事を・・・昔の縦書きの癖で
どうしても付いていないと不安なんですよね。
確かに横書きだと、伸び過ぎて読みにくいのですが。
214名無しのオプ:2001/08/16(木) 12:27
気にしないで、続きを早く!
215執事バンター:2001/08/16(木) 13:06
そうそう、がんばってー。
216名無しのオプ:2001/08/16(木) 19:13
待ってマース
217名無しのオプ:2001/08/16(木) 21:42
今や、このスレだけがここの唯一の希望だ。
218名無しのオプ:2001/08/17(金) 01:56
まだぁー?
219名無しのオプ:2001/08/17(金) 02:52
 あー、そういうのってありますよね>句点
 わたしは他のは句点なくてもいいんですが、
 驚きの
 「え。」
 だけは句点ついてないとダメです。なんか
 驚いてるって気分になれない。
 これはコミックの影響ですが(笑)
220名無しのオプ:2001/08/17(金) 05:24
要は韓国人は「日本人は屑であるという事を教えなさい?メっ」
と言いたいわけだろ?それでニタニタしながら教科書に要求してくる。
日本人慰安婦にすらのっていない教科書にナ。
韓国人や在日の話聞いてると、日本人は日本人が屑である事だけ学べ
とニタニタしてる気がするんだよな。
221蝙蝠男:2001/08/17(金) 05:43
>>220誤爆?コピペ?

色々とアドバイスありがとう。>ALL
少し復活しました。
222猫達の密室 六:2001/08/17(金) 06:15
 なあなあと、草むらの蔭から猫の鳴声が聴こえて来る。草の海を掻き分けて
いくここねを追って萌苗はついて行った。緑の視界の中で赤いランドセルがち
らちらとのぞいている。ここねは草の種が体に引っ付いていくのを気に止めも
せず、庭を駆けていった。
 庭の周りを取り囲む猫。その幾匹かは間違い無く萌苗の探していた猫だった。
飼い主に貰った写真はほぼ頭に収めている。だが、取り敢えず今はここねを追
う方が先だった。
 鈴木家の家の横、東側の壁に小さな扉が在った。ここねはその扉を開けて猫
を呼んでいる。
「これは……猫用の出入り口か」
 その扉の前には舌のように板切れが突き出ている。その上に猫が乗ると扉が
重みで開く簡単な仕掛けだ。板には釘が上に何本も突き出しており、小動物が
上に居座って扉が開いたままになるのを防いでいた。草が鬱陶しく蔓延ってい
る庭の中でその周りの一角だけほとんど何も生えていない。猫が歩き回ってい
人の手で少し前に刈っていたらしかった。
223猫達の密室 七:2001/08/17(金) 07:08
 「レヴィ、レヴィ」とここねは繰り返し呼んでいる。萌苗は振り返って猫の
写真を取り出した。庭のそこかしこに放置されて崩れた花壇や種を孕んで垂れ
落ちそうな向日葵が咲いていた。そういった庭中の日陰に猫がたむろしている。
裸眼で充分な視力を持つ探偵職にとり、見分ける事は容易だった。半数以上を
選り分け、残りは家に居ると考えて間違いなかろうと萌苗は判断し、ここねの
方に向いた。
「探偵さん、まだ見付からないの」
 ここねは入口に顔を突っ込んだまま謝った。
「いや、いいさ。……この家で飼っているのはレヴィだけかい?」
 ここねは顔を上げた。
「私が初めて来た時、ビヒモンってこおぅんな太っちょの猫が居たんだけど、
 すぐに心臓を悪くして死んじゃったの。あそこにお墓が」
 ここねは這いつくばったままそこを指差した。木の札が数本立っており、お
そらくその一つがビヒモンの物だろう。
「ふむ、すまないが他にも猫が亡くなったのかな。お墓は一つでないようだが」
「お婆さんはそう言っていたよ。他の猫に会った事はないけど。こんなに猫飼
 い出したなんて知らなかったよ」
 ここねはそれを言い終えるとレヴィをまた呼びだした。広い日本家屋だ、奥
に居れば声が届いても、こちらに来るまではそれなりに時間がかかるだろう。
しかし、少し遅過ぎる。ここねも半ば意地になって呼んでいた。萌苗は再び庭
を見渡した。草が蔓延ると言っても、多少のむらが有る。だが、この庭を見る
時、何者かが外から覗いているような雰囲気があった。気のせいではあろうが。
 ふと、その時風が巻いた。草の擦れ合う音が響き、猫達の声を消していく。
猫達の声が聞こえなくなった時、萌苗の耳が雑音を感じ取った。何者かが唸る
ような微かな響き。
「探偵さん、どうし……」
 ここねの声は口の中に侵入して来た萌苗の人指し指と中指に掻き消された。
両目も探偵の左手を被され、ここねは引っ張り上げられた。探偵は押し殺した
声で告げた。
「声を出すな。前を見るな。そこは危険だ」
 誰かの張り上げた声が玄関から聴こえた。
224執事バンター:2001/08/17(金) 10:32
えーなんで指を入れるのー、お爺さん・・
 でもオモシロイ!
最近のミステリー板のオアシスですね。
225名無しのオプ:2001/08/17(金) 11:10
つまんね
226蝙蝠男:2001/08/18(土) 00:23
>>225ゴメン
全然事件に辿り着かない・・・無駄な描写は可能な限り省いているのに。
227蝙蝠男:2001/08/18(土) 00:25
>>224小さな子だと、手の平で覆うと息が止まる恐れが有りますので。
228名無しのオプ:2001/08/18(土) 00:37
>>蝙蝠男さん
反射的に噛まれたりしないか心配でーす。
二本指で塞ぐとかの方が、私的には安心(笑)

とにかく続きを待っています。
無駄な描写もまた、楽し。
それが伏線につながると、もっとグー!
頑張ってくださいね。
229名無しのオプ:2001/08/18(土) 05:12
 どんどん長く書いちゃってオッケですよ。
 ミステリったって『小説』
 エンターテインメントですからね!
 頑張ってください!
230執事バンター:2001/08/18(土) 09:57
なるほど!そんな意味があったんですね。
ネオ心理以来、蝙蝠男さんの描写を楽しみにしてます(トリックも)
231名無しのオプ:2001/08/19(日) 00:19
続きを!
232猫達の密室 八:2001/08/19(日) 03:35
 人を呼ぶ声と玄関の戸を叩く音はここまで聴こえて来た。
「すまなかった。ここは危ないから離れた方がいい」
 萌苗はここねの口をハンカチで拭ってやり、猫扉から引き離した。
「探偵さん、事件なの?」
 少し驚いていたここねは、すぐに眼を輝かせながら聞いて来た。
「ああ、そうだ」
 杖を持ち直して、ここねの手を引きながら後ずさりするようにそっと門まで
戻ると、入口には青年が一人と主婦が幾人かたむろしていた。この家の主人の
名を呼んでいる。少し慇懃な雰囲気を漂わせた青年がこちらを向いた。
「良かった、この家の関係者の方ですか?」
「いや、違います。猫を探しに入らせてもらっただけで。貴方は……役所の方
 ですな」
 鈴木家が多くの猫を飼ったまま放置している事について調査に来たのだろう。
事実、青年は市役所の畜産課の木村 正助と名乗った。萌苗は迷い猫の情報を
得ようとしていた時、幾人もがこの家に対する苦言を洩らしていたのを思い出
した。
「その娘は誰です。学校では無いんですか」
 木村は萌苗を軽く睨み付けて来た。ここねは萌苗の後ろに隠れると青年を睨
み返した。
「猫探しを手伝ってくれまして。つい先程この家で出会ったばかりですが。ま
 あ、学校という物は必ず行かなければならない物ではありません。心配され
 る方が居るかも知れないので、連絡は取りたいのですが」
 結局、聞き込みの相手だった野次馬の何人かが萌苗が探偵である事を証言し
てくれた。木村はまだ半信半疑のようだが、それは放って置いて萌苗は電話を
かけにいった。
233猫達の密室 九:2001/08/19(日) 07:37
 ここねを学校に行かせると萌苗は鈴木家に戻った。
 木村の話によると一ヶ月程前から何度来ても留守だったらしく、今回で八度
目の訪問だという。電話は本々通じていないとかで、直接訪問するしか手が無
かったという。
「こうなればもう、中に踏み込まさせて頂く外に無い」
「そんな簡単な話ではありませんよ……」
 見なさいと、萌苗は玄関の鍵穴を示した。
「鍵はここに刺さったままです。それも、先だけがね。鍵を差し込んで折って
 しまったのでしょう。それによく見てください。草だけでは無く、蔦まで玄
 関に巻き付いてしかも根元が木化しています。長い事この玄関は使っていな
 いのですよ。そして、私は一度裏口に行って来ましたが、鍵は内側から閉め
 切られたままでした。状況はここと似たような物です」
「では……」
「中で倒れている可能性等も考慮した方が良いでしょうね。この中で最後に鈴
 木家の方を見た者は誰ですか」
 一人の主婦が恐る恐る手を挙げた。猫にいつも迷惑させられていると、強く
憤っていた一人だ。そして、その五ヶ月程前に庭の方で猫に餌をやっていた姿
が最後らしいと判った。
「警察を呼んでおいて良かったというべきですか」
 萌苗は複雑そうに呟いた。
234名無しのオプ:2001/08/19(日) 23:09
あ、新作、気がつかなかったよ!
age進行で行こう!!
235名無しのオプ:2001/08/20(月) 00:05
ヨコハマ買出し紀行
236名無しのオプ:2001/08/20(月) 06:14
 あ、新作ですね!ていうか八話、03:35て……
 すごい時間にカキコしますね(笑)

 ところでギコワラはまだですか?
 続き……読みたいです〜
237蝙蝠男:2001/08/20(月) 08:03
>>236ギコワラさんは忙しいそうで。

眠りは浅いのでそんな時間に書き込む事も多いけど、
大体昼に書き溜めたのをアップしてるだけですよ。
238猫達の密室 十:2001/08/21(火) 08:04
「まったく、あんたの事だから交通事故にでもあったんじゃないかって心配し
 たんよ」
「部長ごめんなさい」
 ここねはぺこりと直角以上に上半身を曲げた。部室の掃除をする他の多くの
新聞部員は一年生のやる事だ、と気にもとめてない。ただ一人の同級生が口を
開いた。
「八木さんどうしたの、今日は。先生ごまかすの大変だったんだから。」
「ほんとにごめんなさい」
「まあ、無事だったから良かったようなものの……ここねちゃんの仕事はもう
 終わっちゃったし。じゃあ、このゴミ焼却炉に出しといて。それから後で先
 生に会ってきなさいね」
 ゴミ箱を受け取ってまたペこりとおじぎをすると、ここねは校庭に向かって
かけていった。
「廊下走ったらいかんけんねー」
 部長が部屋の窓から体を乗り出して注意した時には、すでにここねは階段を
かけおりていた。
「すみません、とびら開けてください」
 プラスチック製ゴミ箱の口ををたたくようにして焼却炉に最後のゴミを落と
すと、ここねは熱さから逃げるように急いで焼却炉から退散した。後ろでは周
りにこぼれたゴミを用務員が拾って焼却炉に投げ入れている。
 暑さで汗が目に入ってここねは足を止めた。しばらく空を見ていると、汗で
涙が流れ出した。
「お婆ちゃん?……」
 なぜか涙が止まらなかった。
239執事バンター:2001/08/21(火) 12:16
盛り上がってきたなあ。
240名無しのオプ:2001/08/21(火) 12:22
え?え?
ここねちゃんって、小学生だよね。
この同級生の口調といい...???
いきなり成長していませんか。

もしかして叙述トリックですか?
241名無しのオプ:2001/08/22(水) 02:07
さよう
242猫達の密室 十一:2001/08/23(木) 00:43
 げほげほと咳き込まずには居られない。それほど鈴木家の中は埃ぽかった。
カーテンで閉め切られていたとはいえ、中の空気は生温さと生臭さで牛舎を思
わせる。
 玄関に最も近い大窓の錠の付近をガラス切りで開け、敷き居にたまった塵を
掻き取り、男全員の力を合わせて窓を引き開けたのだった。
「じゃ、貴方らはここで待ってなさい」
 萌苗とは違い、どの年齢の者が見ても老人と呼ぶだろう警官は、木村と共に
サッシを乗り越えて鈴木家の中へ入っていった。あまりに汚れているため土足
で。
「探偵さん、あんたは行かんの?」
 一人の主婦が訊ねた。
「実の所私にそれほどの権限は無いんですよ。猫がここから逃げ出すと困りま
 すしね」
 微笑みながら言ったが、困った事になったという思いが僅かに顔に出ていた。
「あの子はどうしたん?可愛らしい子だったけど、小学生や。まだ夏休みや無
 いやろ」
 また別の主婦が聞いてきた。
「今朝、ここで会ったばかりですが、聞いた所によると昔この家によく上がら
 せてもらっていたそうで」
 そうそう、昔ここぐらいしか遊び場なくてねえという声が続いた。
「それで、この家の主人の……久米さんですか、その方の不吉な夢を見たそう
 でここに来たのだ、と駅に着くまで話してくれました。ただの気紛れの言い
 訳かもしれませんが」
 少し場がざわつく。不謹慎にも面白がっている様でもあった。
「超能力少女でしょうか?夢見とか第六感とか。あの年頃の子は不思議な力を
 持っているってよく言いますものね」
「そんな力が本当に有るのなら、ずっと前にここへ来ている筈でしょうが。そ
 れも鈴木さんがどうにかなっていると仮定してだ……あの子はもう自分なり
 の力で物事を判断する時期だ。それにしては確かに幼すぎる。人が思うより
 も子供の成長は早いものだが」
 強い語調に押されて主婦達が最後の独り言を聞く事は無かった。
「強い勘など持っていても何かの役に立つ事は有りませんよ」
 萌苗は諭すようにそう付け加えた。
243蝙蝠男:2001/08/23(木) 00:54
う、何故か読みにくい。会話が多くて行数稼ぎになってしまっているな・・・
>>240-241違います(笑。自分が思うに、ここねがむしろ子供っぽ過ぎて、
部長くらいが実際の小学生に近いでしょう。
同級生に関しては裏設定になるかも知れないので説明しておくと、
ここねが純粋に新聞部が好きなのに対し、新聞部長に憧れて入ったので
少し大人びた口調等をまねている所があるのです(w
もちろん小説の筋には直接影響しません。
244執事バンター:2001/08/23(木) 08:38
あいかわらずおもしろいです。
おばあさんの家でなぜ危険が感じられたのか?
245密室博士:2001/08/23(木) 14:15
面白い。
「読者への挑戦」きぼ〜ん。
246名無しのオプ:2001/08/24(金) 12:33
240です。安心しました(笑)
でも私が、成長してる!と思ったのは小学一年生は、
部活の対象外(加入できない)という事実からです。
なので、てっきり中学一年生になったのかと(笑)
247蝙蝠男:2001/08/25(土) 04:25
>>246そうか・・・どうやら自分の記憶違いだったようだ。
クラブ活動みたいな特別な活動として考えてください。
あるいは部室に勝手に居ついているとか。
>>244-245遥か先です・・・なんでこんなに事件が起きないんだろう。
248名無しのオプ:2001/08/26(日) 03:20
事件は気長に待ちます。
じっくり、どうぞ。
249蝙蝠男:2001/08/26(日) 03:58
正直、あせった。このまま消えたらどうなるかと思ったよ。
250猫達の密室 十二:2001/08/26(日) 04:06
 木村は霜のように降り積もった埃を踏みつつ、老警官の後を付いて行った。
廊下も含めてあちらこちらに猫の姿が有り、なあなあと鳴声がかしましい。強
い臭いと埃を嫌いハンカチを口に当てた。どの猫もろくに手入れもされていな
いらしく、毛はぼさぼさで毛玉が出来ている猫すら居る。灰色の猫も元はおそ
らく白猫だったのだろう。だが木村が彼等に憐憫の情を感じる事は無かった。
好きで着いた職業ではないし、こういった活動そのものが本来の仕事からかけ
離れている。
「どの猫も不健康そうだな。やはり保健所で処分する事になるのか?」
 前の老警官が聞いてきた。
「引き取り手は探しますよ、一応」
 畳のぶよぶよと古びた感触が足に伝わり不快にさせる。廊下のあちこちが虫
が喰った穴で軽石のようになっている。さらに柱も猫の爪とぎでささくれて、
お化け屋敷のようだった。日の光があちこちから入ってくるため恐怖感は無く、
見窄らしいだけだったが。
「何か臭わないか」
「さっきからずっと生臭いですよ」
「いいや、そうじゃない。何か、別の臭いだ」
 居間に入り電灯のスイッチを入れる。ぼんやりと紫色の蛍光灯が灯った、そ
の直前。さっ、と黒い影が視界の隅で消えていった。
 金属音を起てて餌皿が独楽のように回っている。猫が勝手に開けたらしい餌
の空箱が散乱していた。他に動くものの姿は無い。
「今のは……猫か?」
「そうでしょうよ。窓を開けていいですか?息苦しくってしょうがない」
 警官は少し呆れたように頷いた。
「猫にしては大きかったような気もするが……」
 木村がカーテンを引いて鍵を開けて、窓から外の空気を吸い込んでいるのを
尻目に老警官は次の部屋へと向かった。
251猫達の密室 十三:2001/08/26 08:00
 その和室に入った時、老警官はあまりの事に喉を鳴らした。これまで見回っ
たどの部屋も物が散乱していたが、どれもこれまでの経験で得た予想の域を出
なかった。部屋の中央、座椅子の上で陽の光を浴びてくつろぐ老婆。それが今、
腐臭を放っている。
「死んで数カ月は経っているな……」
 服装から見ておそらくこの家の主人、鈴木久米らしい。遺体はほぼ白骨化し
ており、その骨に纏わり付くようにミイラ化した肉が貼り付いている。一瞬感
じた気がした死臭はすでに無い。屍体の存在が生み出した幻臭だったのだろう。
関節が外れたのか骨の幾つかは床に散らばっていた。衣服は破け原型を失って
いたが、老人が好く着込む毛糸製の上着を羽織っていたらしい事が見てとれる。
色使いから上品な雰囲気の老婆だったのだろう。老警官よりも少し年上らしい。
 後ろで悲鳴が起こった。その時ようやくもう一人居た事を老警官は思い出し
た。
「保健所さんすまないが、あんた外の人呼んで来てくれないか」
 木村はかくかくと糸の切れた人形のようにうなずくと、逃げ出すように部屋
から後退りしようとした。
252名無しのオプ:01/08/26 09:50
祝!存続
祝!続き掲載
253蝙蝠男:01/08/26 23:34 ID:EYma/suQ
せめて九月までにはなんとか完結させます。
解決編の前に2ちゃんが消えたらどうしようもない。
今回はそれほどフェアに伏線を張っているわけでもないし、
読者への挑戦は多分やりません。
新作上げるのも20時〜3時頃にはしないことにします。
(大変だったなあ。応援自体が邪魔になる危険性も有ったし)
254猫達の密室 十四 :01/08/28 03:55 ID:0bUliQ4w
 老警官は遺体の在る部屋を見渡した。八畳もある広い部屋だが座敷ではなく、
ここがこの老婆が普段生活している部屋だった。箪笥の重みで畳がへこんでい
る様子から、この部屋がそう使われだしてからからどれだけ過ぎたのか見当は
付く。おそらく、未亡人になるまでこの部屋で夫と布団を並べて寝ていたのだ
ろう。押し入れが破られ、中に在る布団等の私物が覗いている。振ら下がって
いる紐を引っ張り、軽く舌打ちをした。この部屋の電灯はとっくに切れている
らしい。仕方なく物を踏まないよう慎重に遺体に近づいた。
 すぐに頭部に損傷がある事が確認出来た。事故か、殺人か。或いは猫が傷を
負わせた可能性も有る。何時、生前か死後かに傷つけられたのかは、その知識
が無いので判らない。それでも白骨化している様子から最後に目撃された三ヶ
月程前に死んだ事は間違いないと考えた。それならばこの家に猫の足跡しか残
されていない事も納得がいく。
 だが、ここまでだ。これ以上は専門の課に頼まないと分からないし、私の仕
事ではないと老警官は考え直して作業をやめた。本庁の若者に怒られたくはな
い。そして結局、ここで遺体の番だけをする事にした。
 腐臭の漂わない、作り物めいた屍体なのがせめてもの幸いか。老警官はふと
そんな事を思った。
255猫達の密室 十五:01/08/28 04:27 ID:ZppIEIHQ
「名探偵?」
「うん、今日会ってきたの。背が高いお爺さん。猫のお婆ちゃん家に調査に来
 たんだよ」
「猫のお婆ちゃん……ああ、あそこ。それで遅れたの。八木さんまだそんなと
 こ行ってるの」
 学校の帰り道。二人の少女が並んで歩いていた。
「ううん、ここねはあそこへ行ったのひさしぶり。ずっと行ってなかったの。
 そうしたらお婆ちゃんが居なかった」
「まさか、おじさんと同じに行方不明?それで探偵が来たのね」
「ええと……そうじゃなくて、猫を探していて教えてもらいに来たんだって」
「え、じゃあべつにお婆ちゃんがどうかなったわけじゃないの?」
 そう聞かれて子犬のような少女はこくりとうなずいた。
 なあんだといった表情でそれを聞いていた少女は付け加えた。
「八木さん、自分のことここねと言うの、もうやめたほうがいいよ。子供っぽ
 い。それに、探偵なんてほんとは浮気調査するためにいるんだよ。ホームズ
 みたいな、かっこいい名探偵なんて作りごとよ」
 そうかもしれない。でも、
 ここねは反論しようとしたが、何と言えば良いのか分からなかった。そして、
そのまま二人は別れていった。
256執事バンター:01/08/28 09:33 ID:0CAioTHw
ここねちゃんの友達、けっこう厳しいな(w
257名無しのオプ:01/08/28 19:04 ID:VixKwDEc
age〜
続き頑張ってね〜
258猫達の密室 十六:01/08/30 08:04 ID:7ax6fy2E
 老警官は遺体の在る部屋の入口を見張れる居間に陣取っていた。まあ、これ
くらい構わないだろうと思い、椅子の埃をはらって座っている。そして単純に
警察を呼んでくれと言った方が良かったか、などとぼんやり思っていた。連絡
をとる物を外に置いてきた自身の失敗から反省しても後の祭りだったが。なあ
なあと、また猫が鳴いている。飼い猫の筈なのに全く人に懐いて居らず、老警
官に近付く事さえしなかった。
 ぼんやりと屍体の側で和んでいると、猫の鳴声に交じって悲鳴と物の崩れる
音がした。そして何者かの唸り声。
 それを耳にしてすぐに老警官は音の方向に走った。悲鳴が木村が発したもの
である事は間違いない。
 部屋に囲まれ、窓一つない物置きとして使われていたらしい真っ暗な部屋の
中で二つの影が格闘している。いや、正確には、一方の影がもう一方を攻撃し
ていた。
 扉を大きく開けた瞬間、その攻め立てていた方が老警官の方を向いた。猪程
もある体躯、ただれた皮膚、ぎらぎらと見開いた眼球、象牙のような牙。全身
に怒りを張り巡らせている巨犬がその矛先を老警官に向け、次の瞬間には跳び
掛かっていた。
259猫達の密室 十七:01/08/31 03:28 ID:Gk2sqi2U
 鈴木久米は、常に猫の世話を怠らなかった。夫が死んでからは家の外に出る
事は滅多に無く、せめて家の中の事だけは自分で何とかしようと努力していた
のである。無論、それは息子が定職に着いておらず、家事もほとんどしないた
めでもあったのだが。
 そしてその努力は庭の手入れにも向けられていた。庭木はさすがに専門の職
人に頼んでいたが、草を一々むしり、花壇の土を掘り返して種を蒔き、虫を取
り除いて水を撒く、それらもまた、老女の生活の中心を担っていた。勝手口や
玄関の横にはそれに使う器物が無造作に、しかし使い勝手が良いように置いて
あった。
260猫達の密室 十八:01/08/31 07:59 ID:lX5obm7s
 中型犬の体重は中学生男子程も有る。それが、軽自動車の速度でぶつかって
来るのだ。衝撃で肺が押され、老警官の口から意味を持たない呼気が噴き出た。
老警官は不様に後ろに倒れて脊椎を床に強く打ち、立ち上がれなかった。犬は
出しっ放しの爪を警官の服に引っ掛けてそのまま貼り付くようにし、相手が倒
れるのに合わせて上に乗しかかった。
 噛み付こうとする犬の上顎を右手、下顎を左手でつかみ、老警官は必至に耐
える。口から粘り着く唾液が顔に垂れ落ちてきた。酷い臭いが老警官の鼻に突
き刺さった。筋肉に包まれた首の力で頭部を押し付けて来る犬。既に腕は痺れ、
巨犬の顎が食らい付かんとぎりぎりと近付いていく。
 ふいに、巨犬が跳び掛かった時以上の力で四肢を伸ばし、跳躍。今にも噛み
付かんとしていた相手から離れた。老警官の顔から犬の唾液が急に水で洗い落
とされた。
「こっちだ」
 犬に対して挑発する萌苗の声が廊下に響いた。右手には水をぶち撒け、空に
なったブリキのバケツを振ら下げている。犬は少し相手を見定めるかのように
横にそろりと移動しようとした。その瞬間、萌苗はバケツを投げ付け、それを
避けた巨犬は真直ぐに萌苗に向かって跳び掛かった。相手を畏怖させようと、
同時に吠える。萌苗は努めてゆっくりと、しかし無駄な動作はせず、右足を後
に下げ、腰を落とし衝撃に耐える姿勢をとる。そしてずっと左手で柄を握って
いた杖の先を巨犬に向け、右手を逆手で杖の半ばを握って支えた。そしてその
まま巨犬の跳び掛かって来る軌跡に合わせて杖の向きを調整する。
 杖は、空中で殆ど体の向きを変える事が出来なかった巨犬の喉を突き刺し、
破った。そして直ぐに杖はしなりが限界に達し、右手と左手の中間で裂けた。
杖だった破片が飛び散り、皮膚を傷つける。萌苗も受け身をとりながら床に倒
れた。
 犬は血を口から吐き出しながらふらふらと歩き回り、ばたりと横に倒れ伏し
た。真っ赤な舌を口から出したまま呼吸が出来ないで喘いでいる。
 そこへ起き上がった萌苗が折れた杖を持って近付いた。萌苗は軽く眼を細め
ると、杖の尖った先を犬の眉間に突き立てる。そしてすぐに鈴木家の中は静か
になった。
261蝙蝠男:01/08/31 08:01 ID:lX5obm7s
今日中に出来るのか?難しいかも。でも、今はまだ謝らない。
最期まで書き終えたら直して富士美ミステリー文庫に応募しようと思った。
年齢制限に引っ掛かりまくり。
262名無しのオプ:01/08/31 09:04 ID:VaqXX5fU
つまんね
263猫達の密室 十九:01/08/31 20:47 ID:6JkZGXHA
「あれだけ来るなと言っただろう。倒す自信があっても応援を呼べばそれで良
 かっただろう。殺す必要も無かったかも知れん」
 老警官は萌苗に手を借りながら、それでも警察官としての説教を忘れなかっ
た。
「ああ、はい。猫が……」
 どこかに隠れていたらしい猫がまた何匹か出てきた。萌苗の探していた猫は
ほぼ揃ったらしい。
「おおい、そんな事より、あいつは大丈夫か。儂より先に襲われたんだぞ」
「大丈夫ですよ。後ろに転げた時に頭を打ったくらいです。木村君への敵意は
 それ程無かったでしょうから、この犬は」
 陽の下に引きずり出されたその犬は、今は比較的穏やかな顔をして眠るよう
 に死んでいる。灰色の毛をした牧羊犬だった。口から赤い物がはみ出ている。
 舌では無く、赤い毛糸で編んだ布の切れ端だった。萌苗はそれを取り上げて
 言った。
「……鈴木さんの着ていた物らしいですね」
「じゃあ……こいつが、殺したのか」
 萌苗はうなずいて奥を見に行った。老警官はあえて止めようとはしなかった。
「やはり、鈴木さんは殺されていましたか」
 探偵は、そう嘆息した。そして老警官の方を向く。
「それでも、事件は既に終わりました。おそらくもう、大丈夫でしょう」
264猫達の密室 二十:01/08/31 22:40 ID:WxDpD2d.
「お父さんは?」
「お父さんはちょっとね、お腹の調子が悪いから、寝ているの」
 食卓には昼の残りのお浸しや、味の煮付けが並んでいた。熊のぬいぐるみは
とっくに片付けられていて、ここねは帰ってから母親に押入れの奥に戻したと
聞くまで居場所を探した。
「ゲリ?」
「ええ、そうよ……ごはん食べている時はそういう事言ってはいけません」
「ごちそうさまでした」
 ここねは叱られない内に逃げ出した。せっかく朝の遅刻を上手くごまかした
のに、これ以上説教されてはたまらない。小学校に入る少し前から両親が小言
を言う回数が多くなっていた。もう小学生になるのだから、そう言われる事が
ここねには苦痛だった。友達みたいに成長の早い子もいれば、ここねみたいに
ゆっくりな子もいる、そう言ってくれる人もいたが。
 代わりに前よりも色々な物を与えてもらったが、別にそれも嬉しくはなかっ
た。外を走り回る事が好きなここねにとってかわいらしい服は邪魔なだけだっ
たし、新しいぬいぐるみを買ってくれると言っても結局熊のぬいぐるみが一番
好きなのだ。
 母親が家の借金を払うために、勤めに出て行かなくなったのは嬉しかったの
だけれど。
「お父さん、大丈夫?」
 部屋を真っ暗にして父は布団に寝そべっていた。
「でんきつけるよ」
「いや、いい。眩しいから早く戸を閉めてくれ」
 布団を被ったまま父親が応えた。そう、と言ってここねは部屋から離れた。
 ここねは自室に入ると、自分も布団にうつ伏せになった。それから、テレビ
に出たお婆ちゃんの事件を思い出した。この時は少しも涙が出なかった。悲し
いのに。母親が驚いていてわざわざ寝ている父親に言いに行った事くらいしか
覚えていない。
 結局お婆ちゃんの家に行った時に会える事は絶対に無かったんだ。そう思い
叱られたくないという理由では無く、家に行った事は秘密にしようと決めた。
265蝙蝠男:01/09/01 00:45 ID:wGI.WAeE
>262正直スマンカッタ
>ALL正直スマンカッタ
これから俺の事へたれと呼んでくれ。
板が亡くなるまでは一応頑張るが、期待せんで待っていてください。
転送量問題があるのでこれが終わったら多分次は無いな・・・
266名無しのオプ:01/09/01 02:56 ID:6shvlDmo
大丈夫!

ここの避難所に続き書けばいいから。
ttp://bad.adam.ne.jp/2ch/3/mystery.html(直リン自粛)

がんばってね!
267蝙蝠男 今日はアップ多分なし:01/09/02 05:38 ID:9zvgXdXI
>266ありがとう、でもかちゅ〜しゃだから直リンと同じ(苦笑
(マック用使いにくい…すぐエラーだし、コピペでのアップ出来ないし)
268猫達の密室 二十一:01/09/03 07:56 ID:HyyP69Hc
 次の日も、ここねは走って登校した。前と違うのはお婆ちゃんの家に向かわ
ない事。それと……
「今日はお父さんと一緒ではないんだね」
 家を出てからすぐの場所に萌苗が立っていた。ここねは驚いて足を止めた。
「うん……風邪だって。お婆ちゃん、死んじゃったんだね」
「ああ、そうだよ」
「殺されたの?だったら、犯人捕まえてくれる?」
 少し迷ってから萌苗は答えた。
「いや、捕まえるのは私の仕事ではないからね。そうだな、犯人が誰なのか考
 えるのが私の仕事だよ」
 自分から聞いたその答を、ここねはそれ程信じてはいないようだった。
「さあ、学校が始まるよ。今日は遅れないようにね」
 萌苗の注意に軽くうなずくと、ここねはまた学校へ急ぎ足で向かった。
269猫達の密室 二十二:01/09/03 12:00 ID:kmIzBxso
「あれが、お前が連れていた女の子か」
 ここねを見送った萌苗の後ろにあの老警官が立っていた。萌苗は驚きはしな
かったが。
「お巡りさん。どうかなされました」
 相手は少し顔をしかめた。
「お巡りさんと呼ぶのは止めて欲しいな。まあいい、あの子供の住居を聞いて
 いないと言っていたのは、やはり嘘だったんだな」
「住居を聞いてはいませんよ。登校する道を知っていただけです」
「……何にせよ、証言を得なきゃならん。意図的に隠していたのは感心しない
 な、子供を守るつもりが有ったにせよ」
「いいえ、別にそういう訳では有りませんが。あの日、一年ぶりに偶然来ただ
 けの、子供の証言が欲しい程切羽詰まっているとは思いませんでした」
「人が一人殺されているんだ、どんな小さな手懸かりでも必要なんだよ」
 ついそう答えて老警官は軽く舌打ちをした。
「結局殺人事件という考えですか」
「いや、そうじゃない。変死なら一応警察は調べるものだ」
「そうですか、まあそれならばそれでも構いませんが。で、現場の状況はどの
 ような物でしたか。ちらと見ただけでよくは判らなかったのですが」
「何でお前にそんな事話さなきゃならん」
「構わないじゃないですか、貴方も正式にこの捜査をしている訳ではないので
 しょう」
 老警官は不機嫌そうに唸った。
「別に私としても、それをどうこう言うつもりは有りません」
「ああ、確かにここに来ているのは個人的な考えからだ」
270名無しのオプ:01/09/09 18:13
続きは?
271蝙蝠男:01/09/10 02:05
ゴメン、気長に待って
272誘導:01/09/10 18:03
ギコワラ作者「偽虎猫の藁」
【序幕1-2】
>>32-33
本編 【其の1-】
>>34-35 >>46-50 >>53 >>63 >>66(>63の訂正)
>>73-74 >>81 >>107-108 >>109 >>133

蝙蝠男「ネオ心理試験」
>>206参照

蝙蝠男「猫達の密室」

>>192
本編
>>193-194 >>199 >>207-208 >>222-223
>>232-233 >>238 >>242 >>250-251 >>254-255
>>258-260 >>263-264 >>268-269

板に負担をかけそうだ。鬱。
273蝙蝠男:01/09/11 00:39
今日はかなり進んだので3レスぐらいは上げられるはず。
実は三日程用事で京都に行っていた。山村美沙よりもガメラ3の印象が強かったりして。
274猫達の密室 二十三:01/09/11 03:08
 少し笑みを浮かべて言葉を接いだ。
「そして、そうだな。これはただの職務質問だ。不審人物が目の前に居るのに
 取り調べない訳にはいかないだろう」
「では、そういった物は任意でしょうから、私も質問に答える義務は有りませ
 んね」
 萌苗もそう言って、にこりと笑った。横から見れば数年来の友人が語り合っ
ている様に見えるかも知れない。実際、老いが近付くと互いに相手が何を考え
ているのか、おおよその見当が付く。だからといって老人同士が相手を理解し
あうという事は決して無いが。
「冗談ですよ。警察の捜査に協力するのもある種、市民の義務ですし」
「……新聞等にも載る範囲なら答えてやってもいい。鈍器で殴ったらしい頭蓋
 骨の陥没が死因だそうだ。勿論犬が殺したんじゃ無いとさ。死亡推定時刻は
 幅が有り過ぎてよく判らん。目撃証言と突き合わせて二ヶ月から五ヶ月の間
 だな。より厳密に言えば近所の主婦の目撃証言より約一週間後の四ヶ月と二
 十日前に、銀行で金を卸している姿が自動引落し機の監視映像に映っている。
 それが最後だな」
「遺体に他の傷は有りませんでしたか」
「それも判らん。ほぼ白骨化していたからな。腕などは肩関節から外れて下に
 落ちていた。それでもよく状況が残っていた方だよ。椅子に座っていた、あ
 るいは座らされていた事は確実だな。そして猫の白骨死体も同じ所に在った。
 多分飼っていた猫の一匹だろう。……そうだな、死後付けられた傷なら、部
 分的に残っていた皮膚等に猫の歯形が残っていた。おそらく……飼い主を食
 べたんだろうさ」
「犯人の逃走経路は判っていますか」
 老警官は首を左右に振った。
「さすがに、そこまでは答えられんよ」
「では、貴方が犯人ですね」
275猫達の密室 二十四:01/09/11 03:26
「……はぁ?」
「私はあの日、鈴木家の周りを廻ったのですよ。その時、人の出入り可能な場
 所は何処にも有りませんでしたからね。全ての窓と扉は鍵が掛かっていまし
 たし、それら以外に人間や、逆に遺体が通過出来るような場所は有りません
 でした。何よりそれらの殆どが、雑草で覆われていて人の出入りを不可能に
 していましたからね。植物は不自然に見えないよう一度に上手く植え変える
 事は出来ません。つまり、家の出入りが殺人の後に不可能だったとなれば、
 最初に遺体を発見したとされる人間を疑うのは当然でしょう」
「……そんなもの、合鍵で出られるだろうが」
 勝手に被疑者にされた警官は呆れたような声を出した。
「いいえ、外から鍵で開け閉め出来る場所は玄関しか有りませんでした。そし
 て御存じの通り、その鍵穴には折れた鍵が突き刺さったまま、誰も使えなく
 なっていたでしょう」
「犯人が鍵を閉めた後折ってしまったのだろう。いいや、誰かが入らないよう
 にわざとそうしたのかも知れん」
「思い出して下さい。玄関には古い蔦が巻き付いていました。あれは」
「無花果だ」
「そう、いちじくでしたね。それがあそこまで成長するには、おおよそ一年位
 かかるでしょう。つまり、ここ半年程あの玄関を開け閉めした者は居なかっ
 たのです」
「ならばあの鍵は被害者が折って、そのままにでもしていたのか。お前の意見
 が正しいならな」
「おそらくは。あの鍵はかなり古い物で柔らかい鉄製の物でした。梃子の原理
 で子供でも折る事が出来るでしょうか」
「それなら、それでも良いさ。だが、そうなると当然私もあの家から出られな
 かった事になるだろう」
 これ以上相手はしていられないとばかりに老警官は手を振った。
「逆ですよ」
 その言葉を相手が理解するより早く萌苗は続けた。
「内と外を移動したのは、逆に遺体の方です。あの遺体を発見した時、貴方は
 独りだった。ならば、あそこに最初から遺体が在ったと誤認させる事は可能
 でしょう」
「それでも、すぐ側にあの保健所員が居たぞ。それに私が手ぶらだったのはお
 前も見ているだろうが。どのように運び入れたと言うんだ?」
276名無しのオプ:01/09/13 18:51
名スレなり
277猫達の密室 二十五:01/09/14 04:03
「別にその時に移動させる必要は有りません。ただ、そこに死体が在ったとと
 もに入って来た者に一瞬だけ誤認させれば済む話です。後はその者を警察に
 呼びに行かせ、その隙に開けた窓から外の草むらに隠していた遺体を運び入
 れれば良い。内側から窓を開けるのは自由ですからね。そう、貴方は何故連
 絡するための道具を持っていなかったのでしょうか」
「あの男はしっかりと死体を見たはずだ。暗がりといっても 陽射しがずっと
 家の中に射し込んでいたからな。」
「ええ、確かに木村君も白骨死体を見たでしょう。被害者の飼っていた猫の物
 をね。何故そこに猫の死体が在ったのか、納得出来る説明でしょう」
 一瞬惚けた表情をして、すぐに老警官は渇いた笑い声を上げた。
「じゃあ、お前は私を現場に呼び出して工作の手助けをしたと言う訳か」
「偶然にも。死体は庭で殺して放置していたのでしょう。そのまま町を巡回し
 ながら、事件の手懸かりが無くなる時を見計らって発見するつもりだった。
 ですが、予定よりも早く発見されてしまいそうになる。そこで奇妙な言い回
 しですが、普通の変死に見せ掛けようと……」
 老警官は萌苗がさらに続けようとするのをさえぎった。
「所詮は机上の空論だな。言っておくが、猫の死体は老婆の遺体が抱いていた
 んだ。そんな格好を取らせる必要は無いだろう。そもそも猫の死体を片付け
 ないのも工作がばれる可能性が増え可笑しいしな。それに猫は普通の大きさ
 で普通の視力を持っていれば、暗がりでも人間とは見間違わないさ。それに
 家の周囲にも不振な状況は見付からなかった。遺体が野ざらしになっていた
 のなら何らかの証拠が残る筈だろう。日本の警察は、優秀だからな。それを
 見逃す事は決して無い」
278猫達の密室 二十六:01/09/14 06:40
 老警官はしまった、といった感じに口をつぐんだ。
「では、やはりあの部屋の中に殺された直後から遺体は在ったという事ですね」
 相手の反応も気にせず萌苗は続ける。
「そして貴方が私に対する反論に侵入経路いえ、この場合は逃走経路ですか、
 その事を持ち出さなかったのは合鍵を作っていた者や、知られていなかった
 出入り口が無かったという事ですか」
「……また引っ掛けたのか」
「色々な可能性を排除しただけですが」
 しばらく年下の探偵を睨み付けていた老警官は軽く溜息をつくと、ついて来
いと合図をした。
「こんな所突っ立っていても仕方がない。例の家に行って何もかも説明してや
 るよ」
 歩き出した老警官はその言葉をはっきりと口に出した。
「調べてすぐに分かった。あの家には隠されていた出入り口が存在したんだよ」。
279名無しのオプ:01/09/14 23:47
行方不明にならないようにあげときますんで
よろしくお願いします。
280蝙蝠男:01/09/15 00:53
>279はい、頑張らせてもらいます。次は推敲もしっかりします(句点がはみ出ているとか…
281猫達の密室 二十七:01/09/15 03:07
「八木さん、通知表どうだった?」
「うん……ちょっとよく分からない」
「そっか、こういうのもらうの初めてだもんね」
 今日は一学期の終わり、夏休みの始まりだ。小学一年生ならば休みと学校が
同じ程度に楽しく感じられたのも昔の話である。事実、すでに学年の約半分は
塾通いをしていた。簡単な休み中の諸注意を教師が話しているが、教室は雑然
としていた。
「これからどうする……私の家に遊びにこない?」
 一人の少女が相手の髪の房をもてあそびながら聞いた。
「ごめんなさい、家に帰って通知表見せなきゃいけないし」
「じゃあ、一度帰ってからおいでよ」
「それにお父さんが風邪ひいているから」
「そう……」
 少女が肩を落としたのを見て、もう一人の少女は急いで付け加えた。
「お父さんに、ごはん作ってすぐ行くから」
「それじゃ待っているからね」
 そう言って相手が帰り支度をはじめた時、教室の中で二人きりになっている
事に気付いてあわててここねも通知表をランドセルに入れた。
282猫達の密室 二十八:01/09/17 01:06
 日は天上に在り、アスファルトで地を覆った石の町を焦がしていた。そこを
一人の老人と一人の壮年が歩いている。水溜まりは道の先に揺らいでいたが、
それは逃げるばかりで彼等の靴を濡らす事はなかった。
「殺害現場の状況を整理してみるか」
 老人が言った。
「遺体は被害者の家で発見された。建物は木造の平屋で敷地は四十坪くらいか。
 出入り口は玄関と勝手口がそれぞれ一つ」
「それと猫の扉ですね」
 壮年の男が口を挟んだ。
「人が出入り可能なのはその二つだけだ。そして玄関は外から鍵が壊れていて、
 内と外どちらからも出入りは不可能。勝手口は内側からのみ鍵が開閉可能で
 鍵はしっかり閉まっており、同様にそこから出た形跡は無かった」
「猫の扉は犬も出入りは不可能でしたね。そして窓には全て鉄格子がはまって
 いました」
「それ以前に、どの窓も三日月錠が掛けられていたんだ。その鍵は外からこじ
 開ける事は出来ても、痕跡を残さずに閉める事は出来ない」
「全ての鍵が閉まっていたから、殺されたのは夜中やあるいは外出していた時
 等と考えられますね」
「そして被害者は現場で殺されたという事が判っている。つまり殺されたのは
 夜か雨の日だったという事だ。最後に目撃された時と合わせて梅雨頃と考え
 て間違いない」
「そう、ですか」
「少し前から、ずっと窓を開けなければ生活出来ない程の暑さだからな。あの
 家にも冷房なんて結構な物は無かったしな……で、お前はこの家のどこかに
 変わった点が有るのに気付いたか?」
283猫達の密室 二十八:01/09/23 05:20
「そうですね……勝手口が内側からしか鍵の開け閉めが出来ない、等ですか」
 老警官は試験の採点官のように萌苗の言葉を聞いている。
「そう、例えば庭に出たりする時はその家に人が居るという事ですから勝手口
 くらい開いていても構わないし、外出する時は勝手口の鍵を内側から閉めて
 玄関から出れば良い。だがそれなら、ゴミを出したりで少し家を空ける時も
 玄関から出入りしなければならない。もちろん、短時間ならば開けっ放しで
 構わないと考える人も多いでしょう。ですが、集合住宅ではないから土地は
 十分に有るし、家の設計としては不備が有ると考えるべきでしょうね」
「そうだ。普通に考えれば、あれだけの屋敷に戸が二つだけしかない事はまず
 ない。勝手口が庭の出入りくらいにしか使えない事と考えあわせれば自然に
 別の出入り口が有るのではないか、と誰でも気付くさ。事実そうだったしな」
「しかし、私が見て回った所そのような物は有りませんでしたが」
「潰していたのさ。子供は息子一人で結婚しようともしない野良だ。それで、
 夫が死んだ年に屋敷を改装した。防犯もかねて窓には格子をはめ、他に一つ
 在った裏口を無くした。お前の考えている通り、今残っている勝手口は本来
 庭の出入りに使っていたんだとよ」
284猫達の密室 二十九:01/09/24 04:14
「では、その第三の入口の場所は……」
「着いたぞ」
 老警官の言葉に萌苗は足を止めた。
 話している間に、二人の男は事件のあった屋敷に着いていた。老警官が服の
袖で汗を拭う。もう太陽が真上から照り付けてくる時刻だった。
「付いて来い」
 萌苗は言われた通りに立ち入り禁止の紐をくぐり抜け、ビニールシートがあ
ちらこちらに敷かれている庭にまわった。
「猫扉、ですか」
「人が居なくなったのに合わせて改装したんだ。猫を飼いだしたのも同様さ。
 だから、改装に合わせて猫達が住みやすいような家にした。猫の扉を作るの
 なら、元々入口の有った場所にするのが楽だったんだろう」
「そうですね、古い木造家屋です。この羽目板の向こうは土壁ですか。確かに
 昔の家を出来る限り残そうとするなら、あらかじめ開いている所に穴を空け
 たいのでしょうね」
「この板が簡単に外せるのはすでに調べてある」
 そう言って老警官は猫扉の上の板を引っ張り始めた。
「簡単に釘で打っただけだからな、あまり大工が真面目じゃなかったのか……
 それとも素人が打ち直したのか、だ」
 羽目板を何枚か引っこ抜くと大人一人が屈んでくぐれそうな空間が出来た。
だが、その空間をさえぎるように横棒が幾本も渡されている。
「ほう、こうなってたんですね。しかしこれでは子供くらいしか入れますまい」
「いやこれで終わりじゃない」
 そう言って老警官は猫の扉を持って前後に揺らした。何度かやっている内に
扉がせり上がっていき、ついに扉を枠ごと上に引き出した。
「これなら猫だけじゃなく人間も通れる」
「しかし少し大人は無理でしょう。行方不明というこの家の息子さんの体格は
 よほど小さかったのでしょうか」
「そうじゃない、子供なら通れるんだよ。特に、昨日お前が連れていたような
 小学生ならばな」
285偽虎猫の藁=荒:01/09/27 01:45
 何かが、盗まれた様だった。
「何かとは何だね。もう少しばかり具体的に話し賜え」
 私は毎度の通り、置いて在る古書と店のどちらが先に在ったのか判然としない程、
古びた一軒の古本屋で寛いでいた。私も大きな書店で定期的に働いて、三省堂程では無いが本には煩い。話はそこに来ている客の事だった。
「嗚呼、週に二度程若い女の子が来るんだよ。本こそ滅多に買わないが、立ち読みも
 邪魔にならない様に静かに、必要最小限にするだけで、時々は注文してくれる良い
 お客さんだ」
「ほう、君はその娘に惚れた、そう言う理由だね」
 本の目録作りの手を止めずに三省堂はまぜっ返した。
「からかわないでくれ。ちょっと彼女について気に成る事が有るんだよ」
 目の前の古書店主はへえ、と気の抜けた様な返事をした。
「彼女は何時も、青い擦切れた馬車幌布地のずぼんを履いて店にやって来る。手首に
 は帯をはめてね」
「ケミカルヲッシュのジーパンとリストバンド、と言い賜え。そんな呼び方をする様
 では何年経っても恋人なぞ出来ないと知るべきだね、君は」
「そ、それ位知っているさ、でも、彼女の場合は余り合っているとは思えないんだ。
 化粧も殆どしていないし。それと上も同じジーンズのジャンパーをしているのだが、
 その下のシャツが橙色なんだよ。よくは知らないが、いい配色とは思えない」
「補色と言う奴だね。色の三原色、その各々の色を表にした時反対に当る色の事だよ。
 お互いに相殺してしまう配色である事は確かだな」
 そう言って三省堂は積み上げていた本の山から美術書を取り出し、開いて寄越した。
286偽虎猫の藁=煽:01/09/27 05:43
「難しい事は分からないけれど、彼方此方の週刊誌から寄せ集めた服装に見えたよ。
 基は良いのに勿体無かったな」
「矢張り、惚れたのかい。自分の為に馴れない恰好をしてくれた等と、自惚れない事
 だね」
 私はうっと答に詰まり、慌てて本題に戻した。
「彼女は時たま小さな鞄を持って来る位で、本を買う時は常に紙袋に入れて貰うんだ。
 財布は大抵上着の内に入れて居る。所が一度彼女が何も買って居ないのに警報機が
 鳴り出した事が有ったんだよ。ああ、警報機は音盤の為に付けているんだ。勿論、
 その時周りには誰も居なかった。身体検査、は勿論したさ。僕じゃ無いよ。先輩の
 小母さん。――其れだけじゃ無い。彼女は、以前本を幾つか持っまま便所に行った
 んだ」
「とんでもない女だな」
「まあ、そんな客はよくいるよ――彼女が変わっていたのは複数の本と一緒に入った
 事と、出て来た時に妙にそわそわしていた事かな」
「そりゃあ変な店員に付きまとわれれば挙動不審にも成るだろ」
 三省堂は、そう笑ってきた。
「其れも僕じゃあ無いよ。別の先輩が話して居たんだ。それでね、この前遂に彼女が
 上着の中へ本を入れたのを捕まえたんだ。所が――」
「何も出て来なかった、と言う事だね。本も元の置き場に見付かった、と」
「其れで、今彼女は野放し状態さ。否、実際何か悪い事をした訳じゃ無いんだ。只、
 どうも色々と不思議でね」
「最近は退走推理とか言う百円で買える本も在るらしいが、其れは気付かれずに盗み
 出せる物かな」
「それは普通の本屋では扱わないよ。確か、小さい本は他にも有るけれども服の下に
 隠しても皺とかで直ぐ判るしね」
 三省堂は軽く髪を掻きつつも目録からは眼を離さずに言った。
「――積口君、もしかしたら微妙に本の売り上げが落ちていないかな。或いは理由も
 判らず売り上げが減っているとか」
「――如何して知っているのだ」
「此れはとても単純な事件だよ。呆れる程にね」
287偽虎猫の藁=真:01/09/27 07:34
 私は一週間経ってから三省堂に行った。向かったのは、事の顛末を真の主役に話す
為であり、時間を置いたのはその事件の嫌な記憶を忘れる為だった。
「久し振りだね、積口君」
 主人は読んでいた本から顔を上げ、歓待してくれた。
「三省堂、如何やってこの事件の仕組みに気付いたのだ」
 私は畳にどっかと腰を下ろした。
「さてね。其んなに難しい話でもあるまい。そうだな、此れは書狂の事件とでも呼ぼ
 うか――」
 彼は書の収集に賭ける情熱を滔々と語った。
「さて、収集狂にとって最も重要な事の一つに、物品の完全性がある。汚れや破れが
 我慢出来ない。其れ位なら未だしも帯や栞にまでこだわる様になれば、もう一種の
 人外と言って構わないかも知れない。実際、我々の場合商品の状態は価値を大きく
 左右してしまう物だ」
「君の言っていた通り、彼女は古本屋で買った本の多くに帯や栞等が欠けている事に
 我慢がならなかったと言っていた。だから、便所や上着の中でこっそり抜き取って
 いたんだね。慣れれば手品の様に手の平の内側だけで出来てしまう。早く気付いて
 善かったよ。此れは犯罪だよ。買う人も栞や帯が無いよりは有る本を買うし、返品
 する時も帯を抜いた時破れたりした物は受取って貰い難いから、売り上げが落ちて   
 しまっていた。勿論、体を調べられるのは前もって予測していたのだろう。それで
 隠し場所を考えていたんだね」
「本一冊なら兎も角、栞や帯なら小さく出来る。折ってしまえば本末転倒だし、丸め
 たのだろう。丸めて隠せる所、それに一番相応しいのは手首に巻いた布の下だ」
「――其れにしても、如何して其処までしたんだろうね。僕も本好きでは人後に落ち
 ないが、とても理解出来ないよ」
 三省堂はふと、埃臭い店内を見渡して言った。
「この世に不思議な物は何も無いんだよ。人の形をした狂気を除いてはね」
 何処からか、偽虎猫の藁い声が聞こえた。
288ixi:01/09/29 15:36
保守。
289名無しのオプ:01/10/01 02:36
age
290名無しのオプ:01/10/03 05:33
age
291名無しのオプ:01/10/14 02:44
早く、続きを!
292猫達の密室 三十:01/10/17 04:03
「そうだ。普通に考えれば、あれだけの屋敷に戸が二つだけしかない事はまず
 警官の言葉に萌苗は少し顔を険しくした。
「大人は通れないと試してみたのですか」
「もちろんだ。長男の体格は平均よりわずかに下程度だったからな。写真で調
 べてある。それよりも体の柔らかい小さな奴にやらせたそうだが、壁を壊さ
 ずに通ることは出来かった」
 老警官はそう言って扉のあった場所の脇に手に持っていた枠を置いた。扉の
 あった痕跡は猫が踏む板切れが残っているくらいだ。
「いいえ、あの子がこれをやったはずがありません」
「どう考えても、これ以外に状況を説明出来る物が無いんだ、残酷な事だが。
 ……もっとも、いくら何でも小学生が老人とはいえ大の大人を殴り殺したと
 は上も思っていないさ。おそらく少女がやったのは裏口の鍵を閉めるくらい
 だろうかな。いや、裏口が開いていたのならこんな事をする必要は無いか。
 どこかの窓を閉めたのだろう。悪戯か、誰かに頼まれたのか。それはこれか
 ら調べなければな。ただ、その少女。ここねとか言ったな。被害者が死んだ
 夢を見たと言っていたが、それはあの家で老婆の死体を見たからだと本部は
 考えているらしい」
「違いますよ。心理的にこのようなやり方をしたはずがないのです」
 萌苗に言われて老警官はけげんな顔をした。
293蝙蝠男:01/10/17 23:23
久々だったんで一行目はコピペミス。無い事にしてくれ。グハ
294猫達の密室 三十一:01/10/18 00:31
 萌苗は扉を取り外した後の空間を指して言う。
「まず、ここに扉を開けるための踏み板が残っています。上で小動物が寝転ん
 で扉が開いたままにならないようにこの板には釘を裏から打っていますね。
 この穴をくぐり抜けようとすれば、釘の先で体を傷つけてしまうでしょう。
 そのような痕跡はありませんでしたか。ここを通ってみた時はどのような方
 法でやりました。子供が通ろうとすれば足を広げて入ろうにも膝を傷つけて
 しまう」
「……よくは聞いとらんよ。この板がそれ程問題なのか?板の上に何かを被せ
 れば良いだろう」
「被せた後がありましたか。そして何か被せる物がこの近くにありますか」
「それこそ実行犯がその何かを持ってきて、回収して帰ったのじゃないのか」
「違います。この近くに、被せる物はいくらでもあります。私が……この家に
 いた犬を殺した時の事を思い出してください」
「いや、あの時の事は感謝しとるよ。しかし、それとこれと何の関係が……」
「私はあの時何を持っていましたか」
 老警官はしばし顔をうつむけて、その時の状況を思い出そうとした。
「ステッキと、バケツか」
「バケツはどこから持ってきたと思いますか。私が貴方に最初会った時は持っ
 ていませんでしたね」
「この家のどこかからか?」
 老警官は周囲を見渡そうとした。捜査のために雑草はいくらか刈られている
が、まだ庭全体を見通せる程ではない。手入れのなされていない花壇にはやけ
に長いヒマワリが咲き誇っている。
「庭仕事をするためのバケツだったのか……」
「ええ、別に盗む者もいないので他の道具と一緒にまとめて裏口に置いてあり
 ました。裏口自体が庭仕事のために残された物ですしね。この猫扉は見ての
 通り上に猫が居着かないように釘が上に突き出ています。猫が上で体を伸ば
 せない程長く。この釘が体に引っ掛からないようするには小さなバケツくら
 いの物を被せないと。そしてわざわざ被せる物を持ってくるよりはこの家に
 ある物を使った方が良い」
「バケツがある事なんて知っていたのか?」
「忘れたのですか。あくまで猫扉は裏口の鍵を開けるために使われたと推測し
 ているのは貴方達でしょう」
「では、実際にバケツでも被せて入ったとして、何か不都合があるのか」
「私が最初にここに来た時、少女はこの猫扉を開けて猫を呼んでくれました。
 その時バケツを持ってきたりはしなかった。以前にバケツか何かを使ってい
 たのならば、その時もそうしたはずです」
 老警官は反論しようとしたが、目の前の男に全て言いくるめられそうな気が
して何も言い出せなかった。
295猫達の密室 三十二:01/10/18 02:23
「そしてもう一つ、先程も道すがら話した鍵の問題があります。玄関の鍵はい
 つ壊れたのでしょうか」
「それは……事件が起こる前に壊れたとしか言えまい。いちじくの木がまとわ
 りつく前だから、冬頃か」
「いえ、鍵が壊れたのは久米さんが殺される前ではありません」
 萌苗の言葉に老警官は慌てて問い返した。
「さっき玄関の鍵が壊れたのは半年前だと言ったのはお前だろうが」
「半年以上前に壊れて、少なくとも玄関の出入りがなかったのは確実でしょう。
 しかし鍵が壊れたまま直さないという行動を普通とるでしょうか。その頃か
 ら被害者は外に出歩かなくなったそうですが、土地をあちこちに貸している
 のですから外出しないわけにはいかないはずです」
「しかし……」
 老警官をさえぎって萌苗は続けた。
「鍵の話にはまだ続きがあります。普段の生活で玄関の鍵が壊れた時家の中に
 人は居たでしょうか」
「人は……居たのじゃないか?その時ならまだ息子は居たはずだ」
「人が居たのなら玄関の鍵を閉める必要はないでしょう。逆に人が居なかった
 のなら、鍵が壊れた後に外の人はどうやって家の中に入ったのでしょうか。
 裏口の鍵を閉めていたらもちろん入れない。逆に開けていたら玄関を閉める
 意味は無いでしょう。家の戸締まりをするならば家の中から閉めれば良い。
 外から鍵を閉める必要はありません」
「つまり鍵を壊した時は中に誰も居ず、なおかつ、外から家を閉め切る必要が
 あった……」
「それが犯人です」
296猫達の密室 三十三:01/10/20 04:20
「逆に考えてみてください」
「被害者が殺された後に鍵が壊された、おそらくは犯人によって。それが半年
 前の事。ならば、それ以降に目撃された老婆らしき姿は」
「犯人の、変装か」
 萌苗はその答を誉めるように笑った。
「そう考えるとほぼ全ての状況に説明がつきます」
「……屍体の服装は冬服だった。そして半年前から目撃された姿も冬服だった。
 顔も分からない程の厚着の。人を寄せつけない程大量の野良猫。猫は屍体を
 喰わせて腐敗臭が漂ったりしないためでもある。さらに、閉め切られた戸。
 そして全額引き落とされた貯金……」
「その貯金は半年前ではなく、三ヶ月前に引き落とされたそうですね。それは
 ただ時間を置くためだけではなく、その時ようやく条件が揃ったからもある
 のでしょう。さて、それでは猫の中になぜ一匹だけ犬が居たのでしょうか」
 一応考えようとはしたが、老警官はすぐに頭を振って答を求めた。
「猫でも新聞を取ってくる事くらい仕付けられますが、やはり犬の方が楽です。
 犯人は預金通帳等を家の中に置いたままこの家を出た」
 萌苗はその場から少し離れて家を見上げた。
「盗む時間が無かったのでしょうか、家中の出入り口を閉めて……冬の事です
 からほとんど閉まっていたのでしょう……盗んだ鍵を使って玄関を閉めよう
 とした。しかし殺人の直後です。慌てて鍵を折ってしまった。そのため誰も
 家に入る事が出来なくなった」
「そうやって唯一の出入り口から子犬を入れて家の外から仕付け、金目の物を
 取って来させたのか……」
 老警官は家をじっと見上げる萌苗の方に向いた。
「この事件に前後して消えた人間が一人いる。それも実際に殺人があった半年
 前に。そいつが犯人なのだろう?」
297猫達の密室 三十四:01/10/23 02:09
 萌苗の返答を聞く前に老警官は続けた。
「そう、ちょうど半年前に被害者の息子が行方不明になっている。名前は久雄
 とかいったか、久雄は定職にも着かずにずっと家でぶらぶらしていた。親の
 金を手に入れようと考えても全く不思議じゃない。いつも目にしていた母親
 の仕種を真似るのも簡単だったろうしな。奴が犯ったと考えて、まず間違い
 無いな」
「そう……でしょうね。今のところは」
 萌苗は顎に手を当てて別の何かを考えていた。
「じゃあ、俺はこの事を本部に伝えて来よう」
 萌苗の推測を伝えるため門へ向かって歩き出した老警官を萌苗は呼び止めた。
「すみませんが、これを見ていただけますか」
 萌苗は背広の内側から一枚の写真を取り出した。ここねに見せたのと同じ物
だった。
「この猫は?」
「ゴニャ男という名の猫です。この家ではレヴィと呼ばれていたらしいですが。
 久米さんの遺体が抱いていた猫はおそらくこの猫だと思います。他に捜して
 いた猫は全て見つかりましたから。猫の遺体が残っていればこの写真の猫と
 同じ種類かどうか調べられるでしょう」
 萌苗は捜していた猫の内、それだけが事件の前から被害者に飼われていたと
も説明した。
「そうか。この猫が被害者と一緒に他の猫に喰われていたのはそのためだった
 のか……これが正しければお前の推理の傍証になるな」
「猫が人に懐かないというのは迷信ですからね。難しくはあるのですが」
 萌苗は老警官へ少しずれた返答をした。
「それから、木村君に連絡して下さい」
「木村……あの時の保健所の男か」
「ええ。そうしなければ死ぬ者がもう一人出るかもしれません」
 その言葉に老警官はわずかに顔を強ばらせた。
「……どういう事だ」
 老警官は、その時ようやく日が暮れだし、庭が赤く染まっていっている事に
気付いた。
298名無しのオプ:01/10/30 10:26
続き・・・・続きは?
299名無しのオプ:01/10/31 09:51
続きは?
300海軍条約違反:01/10/31 15:37
もしかして、終了すか?
301蝙蝠男:01/10/31 23:55
すんません、明日か明後日くらいには・・・
ちなみに解決編は大体、三十一以降です。
302猫達の密室 三十五:01/11/03 00:42
「もう一人……また誰か殺されるのか。しかし鈴木家にもう久雄以外の親類は
 残っていない……いやそれ以前にもう金を手に入れたのだから、遺産とは関
 係ないか」
「いえ、死ぬのは犯人の方です」
 けげんな顔をした老警官に対して萌苗は言葉をついだ。
「木村君に聞けば何もかも分かるはずです」
「あの男が何か?この家とは全く関係などない事はとうに調べてあるが。猫の
 管理についての訪問でも一度も被害者と会っていない」
「その理由については、あの狂犬の口に久米さんの赤い衣服の切れ端が引っ掛
 かっていた事を思い出してください」
「ああ、たしかにそんな事もあったが。それで最初はあの犬が被害者を殺した
 と考えてしまったんだったな。いやまて、お前の推測が正しいならあの服は
 被害者が着ていた時の物ではない。服を着ていてあの犬に襲われたのは……
 犯人、なのか」
「ええ、そうなります。そしてもう一つ犬を保健所に届ける必要がある理由は
 個体数の管理だけではなく防疫などもあります。毎年予防接種があるでしょ
 う。それはこの家に居た犬が受けられるはずはありません」
「猫もやっているがな。犬の場合はたしか……」
 老警官はようやくその事に気がついた。
「Rabies」
 警官の前に立った男が呟いた。
「あなたを助けた時私が言った事を覚えていますか。事件はもう終わった、と」
 続けて言ったその顔は、西日の逆光で黒く塗りつぶされていた。
303猫達の密室 三十五:01/11/03 01:10
 街角にぽつぽつと街灯が灯り始めた。この町は住宅街であるために、それを
除いては家々から漏れる光だけが夜道を照らす。その道を二人の少女が走って
いた。
「ただいま」
 しばらくして八木家の玄関に灯りがつき、少女の声がした。
「すみません、私が八木さんを引き留めていたんです」
「ううん、悪いのはここねの方だよ」
「それと、母が作ったお腹に良いお惣菜を持ってきました。お皿は家に置いて
 ください、明日取りに来ますから」
 誰の返事も無かった。
「お母さん?」
 廊下の向こうの台所のみに灯りがともっている。ここねは友人から皿を受け
取り、母に渡そうと台所へ持っていった。
 台所には誰もいない。
 流しのまな板の上にキャベツが切りかけのまま放置してある。食卓には食器
が並べられ、電子レンジの前では冷凍のコロッケが溶けかけていた。
 お父さんを連れて病院に行ったのだろうかとここねは思い、食卓の上に皿を
置くと、父の寝ているはずの部屋をのぞいた。
 ここねが部屋に入った時、父の姿を一瞬見つける事が出来なかった。暗い中、
布団を頭までかぶっている。
「……お父さん?」
 布団が震えている。それをカーテンの隙間から射し込む満月が照らしている。
布団の隙間がゆっくりと
304猫達の密室 三十六:01/11/03 01:48
 熱い。
 木の生い茂るで庭は本来涼しい風のたまり場のはずなのに今夜はたまらなく
蒸し暑い。湿気のため、空気はつかみ取る事が出来そうなほど粘り気をもって
いた。
 今、鈴木家で幾人もの警官が強いライトを照らし、庭のあちこちを掘り返し
ている。
「犬等の獣類は体の中に幾つもの病原体を持っています。大抵は人間にとって
 無害な物ですが、人間と動物双方にとって病気の原因となる物もあります。
 中には命の危機に関わるような物すら。本当は犬に口づけしたりする事も危
 険なのです」
「そんな事を普通はやらんよ。分からんな、最近の若い奴らは」
「その中でももっとも危険な物の一つが、ウイルスによって発症する恐水症。
 喉の粘膜が過敏になり水を飲む場合に一種の麻痺が起こるため名付けられま
 した。……いわゆる狂犬病です」
「死んでいなければ、その致死率十割の病気を持っている者がどこかで菌をま
 き散らしながら生きているわけか」
「最近は日本での症例はありませんし、人から人へはそれほど感染しやすくは
 ありませんが、危険なのはたしかです」
「それで、ここを掘り返す理由は何故なんだ」
「善し悪しはさておき、久雄氏は定職に着く事もなく暮していられました。ど
 こに急に母親を殺すような理由が出来るでしょうか。しょせん金銭は物品の
 価値を形に置き換え、交換を可能にする物に過ぎません。過剰に持っていて
 も何の役にも立たない。これまで通りの行動で安定した生活が得られるのに、
 あえて危険を犯す理由がどこにあるでしょうか」
「何かの間違いで殺してしまい、それから計画を立てたのかも知れんぞ。そも
 そも鍵が折れて家に入れなくなるのは予定外だったわけだろう」
「家に閉じこもったままの人間は変化を嫌います。自分の意志で対人関係を狂
 わせる事はまずありません。そして、逆に母親も息子を追い出そうと考えは
 しないでしょう。久米さんは少し前までこの家に近所の子供を入れさせてい
 ました。家族代わりのつもりだったのでしょう。ですが、最近この辺りには
 そのような子供がいない。そんな環境でお互いに結びあっている母子が険悪
 な関係になるのは余程の事がないありえません」
「嫌な話だ」
「人間とはそんなものですよ。そして貴方が口にしなかったので、そのような
 事は無かったと考えました」
 老警官は否定も肯定もしない。
305猫達の密室 三十七:01/11/03 06:14
「現在の生活を続けていればすぐに母親は死に、遺産が手に入るわけです。こ
 の家の資産のほとんどは土地ですから、盗むよりは死を待った方が楽なはず
 でしょう」
 老警官は深い溜息をついた。
「他に何か根拠はないのか」
「そしてもう一つ、あの猫の扉を使って出入り出来る体型かどうか聞いた時、
 貴方はそれには応えませんでした。おそらく、母親の恰好をするには体格が
 あわないのではないでしょうか。何より男と女の体格は普通はかなりの違い
 があります。特にこの場合は遠くからの仕種や体型で老婆と偽装しなければ
 ならないため、男がそれをやったというのは考えにくいでしょう」
「他に犯人がいるという考えは分かった。ではそいつが誰か見当はついている
 のか」
「先も言った通り、おそらくは久米さんのふりをしていたのは女性でしょう。
 しかし殺害の状況から見て殴打したのは力の強い者。ここで、男女の共犯と
 考えるのはやや無理があるでしょうか」
「……そうだ、その程度では犯人を絞り込む事など出来ない」
「では、他の根拠を」
306猫達の密室 三十八:01/11/03 07:45
 庭を掘り返していた一人の手が止まった。ゆっくりと土を掻き分け、白く乾
いた塊を手に取る。
 骨には縮れた毛皮が貼り付いていた。飼われていた猫の墓だった。草の蔭に
札が隠れていたために分からなかったのだ。
 その警官は額の汗を拭うと、骨を横にどけてまた土を掘り出した。
「そう、貴方も言いました。何故あの少女がこの家の老婆が殺されていた事を
 知っていたのか。そして何故、実際に殺された日ではなく、昨日、あの日に
 この家に来たのか」
 老警官も萌苗が誰を指しているのか、すでに気付いていた。
「それはあの少女の父親が鈴木久米を殺したから。被害者とは家の貸し借りを
 していた関係でした。そのような事もありえます」
「家計は苦しかった、と聞く。そして家賃を払わずにすむには二人殺すだけで
 良い……」
「老婆のふりは母親がした。それは生活が苦しいのに外での仕事をしていない
 のも一つの傍証になるでしょう。そして少女の前でそれらしい事を洩らして
 しまった。それはおそらく、夏が始まるために。屍が腐臭を放つ季節です」
「つまり、犯人は……」
「名は八木正喜、八木ここねの父親です」
 老警官と探偵のどちらも身動き一つとろうとしない。その時、
「死体が出たぞ」
 暗い中遠くで叫んだ者がいた。老警官はその声の方を向いた。
 その声の方へ早足で向かった老警官の後ろから萌苗の話が続く。
「少女の話から推測出来ました。鈴木正喜氏はすでに、風邪にも似た狂犬病の
 初期症状が現れています」
 はっと気付いた老警官は萌苗の方を向こうとした。
「危険だ。あの娘は、今どこに……」
 言いかけ、振り向いた老警官の前に探偵の姿は無かった。
 庭はただ、暗闇と草の匂いで満たされているだけ。
307猫達の密室 終:01/11/03 07:56
 庭木の間を熱風が通り抜け、ゆるやかな涼風となって風鈴を鳴らした。
 陽の光りは木々の作り出す影により溶鉱炉の融けた鉄から無音の花火へと姿
を変える。
 都市空間から隔絶された平屋には、かつて大勢の人々が暮し、その声で騒め
いていた。

 それが誰の耳にも届かなくなって久しい。そう、それでも少し前までは猛暑
から逃げ出してきた子供達の喚声があふれていた。さらにほんの少し前までは
拾われてきた猫達の鳴き声がその代わりを勤めた。だが今、それらは全て失わ
れている。

 もうここには誰もいない。誰も来ない。私は、それを知っている。
308名無しのオプ:01/11/03 17:07
続編キボーン
309蝙蝠男:01/11/04 23:37
疲れたし、まあいろいろあったんでこれでひとまず・・・
誰か他に書く者はいねえかあ
310(・∀・)イイ:01/11/05 01:06
かえってきました。
おもしろかったよ〜。
311名無しのオプ:01/11/07 21:12
再開希望
312蝙蝠男:01/11/10 02:47
大切な事を忘れていた。

作中の出来事は作中人物の推定、記憶、思想であり、現実の物とは
異なっているとお考えください。
また、以下のリンク他、数々のサイトを参考にさせてもらいました。
ttp://www.pref.kyoto.jp/hokanken/k-center/wann.htm
313(・∀・)イイ:01/11/12 00:57
つづきを〜おねがい〜。
314名無しのオプ:01/11/14 00:28
313の御仁に同意、書け
315(・∀・)イイ:01/11/20 23:58
このスレ生き返れ〜。
316蝙蝠男:01/11/21 01:04
いまちょっと創作文芸版の方で書いてますから、しばらく待ってくんろ
317名無しのオプ:01/11/25 23:44
>316
蝙蝠たん、早くこっちゃのスレ来い!
318名無しのオプ:01/11/27 15:13
蝙蝠おのこ待ち上げ
319名無しのオプ:01/11/28 21:41
蝙蝠男の職人ゲイを待つ人は多い。
320名無しのオプ:01/12/01 23:52
早く書けよ、気持たせるんじゃあねえ!ボケ!
321蝙蝠男:01/12/02 00:09
ごめん、二週間近く無理そう(;´Д`)
スレの容量もでかくなっているしやるとしたら途中で途切れないよう
別のスレで書きますわ。ついでに下は今こっそり書いている所
http://www2.yi-web.com/~moji/tora/index.html
322名無しのオプ:01/12/02 14:54
>蝙蝠男

この板で書いて盛り上げてくれよ(泣
323蝙蝠男:01/12/03 00:17
(´Д`;)偽虎藁さんを召還してくれえ
324ねつてつ:01/12/05 17:19
書いちゃおうかな^^
325名無しのオプ:01/12/05 22:54
age
326蝙蝠男:01/12/06 00:15
>324書いてくれ!
327名無しのオプ:01/12/09 14:19
頼むぞ!ねつてつ
328竹内邦夫:01/12/09 15:28
>>1-327
死ねクソブスども
329ねつてつ:01/12/09 19:21
凍りついた影 第1章 暗雲

 私の名はねつてつ、夜の闇はどこまでも深く、夜明けは来ないかのようであった。
330名無しのオプ:01/12/09 23:03
ねつてつは、創作は駄目っぽいな。
331:01/12/10 00:36
朝起きると、ドラえもんが押入れの中で死んでいた。死体の手にはメロンパンが
きつく握られていた。ダイイングメッセージか?確かドラミの大好物がメロンパン
だったはず・・・。しかし軽率な思い込みは避けるべきだ。過去の失敗を繰り返しては
ならない。メロンパンを食べると、まず私はドラえもんの死因を調べてみることにした。
死因は絞殺、他に外傷も見当たらないことからまず間違いない。問題は死亡時刻である。
私は四次元ポケットの中から死亡推定時刻検索マシーンを取り出し、ダイヤルを
ドラえもんに合わせた。2時35分か、いやな予感が当たってしまった。
その時刻は私がまだ宿題をやっていた時刻である。ということはいわば密室状態で
ドラえもんは殺されたことになる。もちろん私は一度も席をはずしてはいない。
犯人の侵入を見逃したということはあり得ない。まずはドラミを訪ねるしかないか。
私はそう思うと、コートを引っ掴んでタイムマシーンに乗り込んだ。
332ねつてつ:01/12/11 10:19
続き書こうかな^^
333ねつてつ:01/12/11 10:24
324、329、332とニセモノがよく出没している模様^^;;
書くときは他所で二次創作をするつもりです。
334らいつびる:01/12/11 10:25
ぜひ書いてください。
335名無しのオプ:01/12/11 10:39
らいつびるたんだ!
らいつびるたんハァハァ(ハァハァは必ず半角で入力すること)
336名無しのオプ:01/12/20 00:28
らいつびる再降臨ギボンヌ
337名無しのオプ:01/12/21 17:26
定期age
ねつてつ 仕事は何をしていますか?