「盗まれた手紙」と「折れた剣」は性質も別だと思いますが。
(ちなみに私はどちらも大好きです)。
前者は「目立つ場所に放り出しておくとかえって目に付かない」という逆説的
な原理によっているわけですから、比較するならむしろ同種の逆説を扱った
「見えない男」あたりがふさわしいのではないでしょうか。まあ、この種の
逆説はチェスタトンの独壇場なので、他にも例は多いと思いますが。
「木の葉を隠すなら森の中に」というのはむしろ常識であって、その常識を
適用することで常識とはかけ離れた恐ろしい結論が導き出されて行くという
「眩暈感」が「折れた剣」の魅力ではないかと思います。