『読みました』報告・海外篇

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808名無しのオプ
ウォラス・ヒルディック『ブラックネルの殺人理論』(角川書店)

人を殺した人間は、心理的抑制から解き放たれて、プラスの化学変化を持つ筈だ。
その「実験」を日々実践するロン・ブラックネル。
だが妻のパットが彼の手記を読んでしまい・・・

ウォラス・ヒルディックと聞いて何人が「ああ、あの!」というか怪しいものだが、マガーク探偵団シリーズの作者である。
(これは解説にも載っていない。子供の本を40冊書いてる、とあるだけ)
この本は75年に上梓されたもので、夫の手記と、それを読んでしまった妻のノートが交互に提示されるかたちで進む。
近年の作品ならたちまち追跡型のサイコホラーになるところだろうが、意外にあっさりした結末でほほえましい(?)。
これは年代とスタイル、双方の限界だろう(だから面白い部分もあるのだが・・・)。
最後に妻のノートは(メール欄)だった、ということがさりげなく判明するのだが、この部分を活かして読者に「あれ?」と言わせることも可能だったのではないか。惜しい。
ロンの理論と実践などは面白く、なかなかの佳作なのだが、文庫落ちしていないのが残念だ。