○●鮎川哲也スレッド■□

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969書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
そもそも「怪奇探偵小説」か否かは、作品全体により判断するところも
大きいため、個々の描写を取り出してどうこう言えということ自体が
ナンセンスの極みである。
長野の寒村で起こる天狗信仰が絡んだ連続殺人を描く「天狗の面」、
いずれも一癖ある家族が住む大邸宅に起こる連続殺人を描く「殺人鬼」、
この2作は、本質はパズル小説であるにしても、プロットも恐怖感を煽る物語展開から見ても
十分に怪奇探偵小説と把握して差し支えないものがある。
鮎の長編は、りら荘にしても朱の絶筆にしても、プロットも展開も必要以上に恐怖感や
不可思議さを高めたり煽ったりするところが無く、(例えば、りら荘をもっと「吹雪の山荘」風の設定にしてしまうとか)、純粋な推理ゲームに徹しているのが特色だ。
このため、小説として見た場合には、特に星影シリーズに対してだが、
淡白、無味乾燥等の批判も出て来るわけである。
アンソロジストとしては、十分にマーケットを意識していたように見える鮎だが、
自己の長編に対しては「売る」工夫のみを怠ったかに見えるのがファンとしては残念だ。
特に元祖トラベルミステリの魅力も持つ鬼貫警部シリーズ以上に純粋な推理ゲームの色合いが
強い星影シリーズには、怪奇探偵小説の表装が広汎な読者獲得のための吸引力として
適していたかに思われる。
>長編で「謎と論理」のみを中心にしている作家は知っている範囲で、西澤氏、都筑氏、
>依井氏ぐらいなものだしな
都筑道夫の物部太郎3部作は、怪奇探偵小説と把握出来る。
あの怪談好きが怪奇探偵小説を書かないはずがないのだ。