717 :
書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
711氏が、大藪作品に関して我流の解釈するのは勝手だが、それを一般論のように
語られては困る。
大藪作品をハードボイルド小説の系譜の中で語るのは、ワセダの先輩である
大乱歩が大藪氏を見出して以来、一般的なことである。
大藪氏のエッセイを読めばわかるが、氏の作品をハードボイルド小説という
観点を全く外して考察することは、氏自身「?」であったであろう。
日本の読者に多いが、711氏はハードボイルド小説のイメージにチャンドラー的
ものを多く抱き過ぎているのではないか。
実はその表面的スタイルのみならず、精神性においてもヘミングウェイ、ハメットの
真の後継と言い得るのは、日本では大藪春彦が嚆矢だったのである。
次に、大藪作品の本質と言うべきものだが、作家をその生い立ちというものを捨象して
考えることが出来ない以上、引揚げ者としての暗い情念の発露こそ、その本質だった
と考える。娯楽主体のアクション小説には、この点が感じられぬもの、弱いものが多いが、
(しかし、前述したとおり「裁くのは俺だ」の毒島の過去のように、その暗い情念が、
ふと顔を覗かせることもある)
逆に、これらの作には、大藪作品の「コア」になる部分が欠けているとも言い得る
わけである。これが気楽に楽しめる反面、初期作品のファンにはどこか物足りないものを
感じさせる所以であろう。