1 :
名無しのオプ:
国内編が落ちたままなので立ててみました。
過去のスレッドは後ほどリンク予定です。
よろしくお願いします。
2 :
名無しのオプ:2014/07/10(木) 14:33:44.13 ID:l6t7NwhK
NGワード・あぼーんのススメ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■書斎魔神 ◆AnFGIeGcVrq4 とは?
かつて発狂コテにも認定された、読みましたスレに住みつく
NGワードの指定対象人物。
ネタバレを含めた持論を主張し続け、また、
議論においても他者の意見を受け入れようとしない傲慢な態度から、
他の住人からは忌み嫌われることに。
過去スレでのアホアホ発言を一部抜粋。
『 乱歩賞受賞作「暗黒予知」を読み返していた。 』(そんな作品はない)
誹謗中傷当たり前、間違いを認めない、自作自演当たり前と、
三拍子揃った厄介物。
彼の発言に反応してしまうとスレが荒れる一方だが、
反応さえしなければ独り言を言い続けるだけなので、
余程のことがなければ、NGワードに指定してのスルーが推奨される。
どうしても我慢できない・反論したい場合は最悪板で。
■NGワード・あぼーんについて
2ちゃんねる専用ブラウザのオプションのひとつ。
設定することで、任意のレスを消すことができる。
2ちゃんねる専用ブラウザに関するサイトはこちら。
↓
http://www.monazilla.org/
3 :
名無しのオプ:2014/07/10(木) 14:34:29.00 ID:l6t7NwhK
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
|| ○荒らしは放置が一番キライ。荒らしは常に誰かの反応を待っています。
|| ○放置された荒らしは煽りや自作自演であなたのレスを誘います。
|| ノセられてレスしたらその時点であなたの負け。
|| ○反撃は荒らしの滋養にして栄養であり最も喜ぶことです。荒らしにエサを
|| 与えないで下さい。 ΛΛ
|| ○枯死するまで孤独に暴れさせておいて \ (゚ー゚*) キホン。
|| ゴミが溜まったら削除が一番です。 ⊂⊂ |
||___ ∧ ∧__∧ ∧__ ∧ ∧_ | ̄ ̄ ̄ ̄|
( ∧ ∧__ ( ∧ ∧__( ∧ ∧  ̄ ̄ ̄
〜(_( ∧ ∧_ ( ∧ ∧_ ( ∧ ∧ は〜い、先生。
〜(_( ,,)〜(_( ,,)〜(_( ,,)
〜(___ノ 〜(___ノ 〜(___ノ
4 :
名無しのオプ:2014/07/10(木) 14:36:39.13 ID:l6t7NwhK
5 :
名無しのオプ:2014/07/10(木) 18:26:26.57 ID:BZLKpRBf
「脳波の誘い」佐野洋(春陽堂書店)
テレパシーが使えると主張する老人の取材に向かった週刊誌記者水崎。
自著の出版を持ちかける老人に対し水崎は戯れにテレパシーで他人を自殺させたらと返しとある人名を告げる。
果たして数週間後、当該人物が自殺と思われる死を遂げた。それは水崎の愛人の夫であった……。
某スレからのセレクトかな。佐野洋の長編は初。面白かった。200ちょいと短いながら内容はしっかり詰まっている。
テレパシーによる殺人という怪奇趣味が割とすぐ薄れてしまうのは少し残念だが、ハウダニット主眼の本格かと思いきや後半法廷劇になったりして飽きさせない。
真相には驚いた。フェアじゃないし、爪が甘いのも気になるけど。
ただ39ページがなあ……。
「龍の寺の晒し首」小島正樹(南雲堂)
群馬の山奥首の原村で起こる連続殺人。結婚前夜の花嫁を皮切りに妙齢の娘たちが奇怪な状況で次々と殺されていく。
死体は決まって首をもがれ離れた寺の境内で見つかるのだった。被害者の幼なじみの刑事浜中は被害者の妹の友人海老原と組んで捜査を行うことになるのだが、
生首を捜す最中に陶製の龍が消えたり空を舞ったりするところを見てしまう。
果たしてこの怪異ある殺人劇の真相とは――。
冒頭から冒頭に苦言を呈したい。キモいよ。必然性なくはないけど、もう少しオブって。
とは言え傑作である。よくもこれだけ奇想を散りばめられるものだ。汲めども尽きぬ泉の守り人。それがこじまさなのだ!
馬頭の襲撃、密室からの生首消失、独りでに鳴る鐘、飛翔する陶製の龍、付近を彷徨う生首、ボートを漕ぐ首無しの体等々。
もうただただ呆気に取られつつ読み進むしかない。前半に驚き、後半に唸り、読み終えて感服する。これだけ。
あ、そうそう動機もいい。これ一昔前なら弱いとか言われていただろうが今、十分にリアリティがあると納得させられる。
結局当人と周りの問題なんだよな。時期的にしょうがないことでは絶対ない。
疑問点は一つだけ。74ページの浜中の感想おかしくね? お前見たのかよ。
「Sの悲劇」中町信(青樹社)
唯一の短編集。
レアのみならず中身も評判良かったので期待したのだが……まず最初の2編が詰まらない。
おいおい表題作と思いながら読み進むと「裸の密室」でやっと感心。長めの話だが伏線も丁寧で良く出来ている。
密室トリックはいいが……と思ったらやられたわ。
その次の「カブトムシは殺される」も良いね。チェスタトン的というか論理のアクロバットというか、これもやられた感十分。
残り3作もまあまあで着地は上々だった。
「幽女の如き怨むもの」三津田信三(原書房)
同じ遊廓の同じ部屋で戦前、戦中、前後に3度ずつ計9度も起きた身投げ事件。
ミステリー作家刀城はこれらに論理的な解釈を試みるが、掴みどころのない全容に苦戦を強いられる……。
のっけからなんだが、シリーズ最低作じゃね? 糞長い癖に怖くもなくスッキリもしないんだから。
第一部とかストーリーがそれなりでも結局変格にも本格にもなってないんじゃ加点にはならん。
つか遊女ワナビの一人称て時点でもう↓↓。もうあんなシーンやこんなシーンが来るて判るやん。そして予想通りすげえ嫌だった。
長々読んで第四部でやっと解決かと思いきや……。いや確かにあの一言にはおおっと思ったよ。でもよ。やっぱ有り得んて。
“これ”を機能させるには巧く綱渡りさせなきゃ駄目なのに小島よしおやもん。
謎の取りこぼしも多い。4番目に関する浮のセリフとか死のルートに関する薄絹やら目印やらとか最初の顔とか。
あと5番目はその時いなかっただろ。
あ、一箇所だけゾッとしたとこあった。第三部ラスト。
でも結論からすると失敗作でわ。
10 :
名無しのオプ:2014/07/12(土) 22:40:59.24 ID:P2sSqlbS
本スレにはちょっと躊躇われたのでこちらに書き込み
貫井徳郎の「症候群シリーズ」三冊読了
貫井さんのは今まで何冊か読んでいるけれど、
このシリーズの出来は正直、ひどすぎだと思う
内容も人物造形も物語も何もかもが浅くて薄っぺらい
まともに読めたのが最後の「殺人症候群」だけ
「失踪」「誘拐」は読むのが苦痛だしエンタメとしてもダメだった
全体的に掘り下げがなく中途半端、の一言に尽きる
ファンの方、気分を害したならばすみません
11 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/12(土) 23:54:44.23 ID:KrznXL6Y
>>1 乙!彼!
>>2 即刻逝け!(w
さあ、一切の制約を脱して熱く語り合いましょう!
12 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/12(土) 23:55:43.61 ID:KrznXL6Y
折原一「模倣密室 黒星警部と七つの密室」を読む。
既に10年以上前の作となったが、現在のところ愛すべき(?(w )
黒星警部シリーズの最終作品集である。
今読んでも結構楽しめる。妙に社会派のような題材を入れず、
「密室」という魅力的なネタで徹底して遊んでしまおうという姿勢が
良し、この手の作が許容され、受容された時代でもあったのだ。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
「北斗星の密室 『黒星警部の夜』あるいは『白岡牛』」
作中でも示唆されるとおり、オリエント急行ネタ(状況でなくメーントリックのみだが)。まずまず面白いものの、物置への放火という偶然性が絡む展開に
難ありか。
「つなわたりの密室」
首をめぐる大胆なトリック(放り投げ)が面白い。
グロく感じさせないのがこの作家の良い意味での作風であり、
強味かもなー。
「本陣殺人計画 横溝正史を読んだ男」
例の本陣のトリックのバリエーションで、本陣の離れ崩壊(w
大乱歩の「屋根裏の散歩者」を想起させる展開もあって、
かなり笑えて楽しめる。
「交換密室」
ハイスミス作品でおなじみのネタに密室ネタを絡めた面白い作。
交換密室のタイトルの意は読んでのお楽しみだ。
「トロイの密室」
これもおなじみ死の部屋ネタ。動く壁れした(w
それなりに面白いものの、
ヒロイン虹子の女探偵譚ということもあって、
少しはしゃぎ過ぎなのが気にかかる。
13 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/12(土) 23:56:52.84 ID:KrznXL6Y
黒星警部は登場せず、部下の竹内刑事がプライベートに遭遇した事件。
「邪な館、1/3の密室」
大魔神、コナン等の小ネタによるくすぐりをまじえながら、
ジョン風のアクロバティックなトンデモトリックが炸裂。
だけんど、ロケットのように空中を飛んで・・・とかこれは無いでしょ(w
「模倣密室」
エテ公ネタゆえ、てっきり最後までモルグで押すのかと思いきや・・・
被害者によるストーカー退治でしたか。
トリックよりは展開が面白い作。
14 :
名無しのオプ:2014/07/13(日) 00:02:36.93 ID:YjtNzgdr
15 :
名無しのオプ:2014/07/13(日) 08:19:21.00 ID:zBXcYFVW
ルールに縛られない自由を。
ミス板の革命はまだ続くよ。
16 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/13(日) 17:38:17.87 ID:xkK9ujmE
谷崎潤一郎「猫と庄造と二人のおんな」を読む。
最後まで先が読めない展開という点ではミステリと共通するものがある。
大谷崎好きな私には、今まで唯一の未読長編であった。
ある意味で最後までヌコのリリーに翻弄される人間たちの姿が鮮やか。
解説には、谷崎作品のうちでも最も見事なまとまりを示している、とあるが、
うーん、これで終わり?という感を抱いたのは、やはり俺もミスオタらしい
オチ必須主義に毒されたゆえか(w
17 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/13(日) 17:41:08.24 ID:xkK9ujmE
奥田英朗「我が家の問題」を読む。
非ミステリ作品集だが、ミステリ作家でもある著者の作ということで
紹介しておこう。ちょいリアルな今風ホームドラマ集である。
「甘い生活?」
タイトルの「?」がクセモノな作。
フェリー二作品のようなビターな後味ではないので、その点は御安心だ(w
「喧嘩でデート」ってポピュラーソングがあったけど、本作のラストは
「(夫婦)喧嘩で仲良く」って感じだわな。
真っ当なリーマンとかで、嫁がいないとわけわからめなものでしょうな(w
「ハズバンド」
仕事が出来ない夫(イケメン、高学歴、一流企業勤務なのに)を持った料理好きOL経験有り、子持ち願望有りな専業主婦のお話。
あえて職場の夫を直接描くようなあざといことをしなかったのが、
本作を佳作足らしめたものかと思う。御都合主義でなく、それなり良い後味で
ある。
「絵里のエイプリル」
JKが主人公な両親の離婚ネタ、ヒロインの周囲(実弟、教師、友達、
ボーイフレンド等)の状況から、ユーモアをまじえて家族をめぐる
現代の世相が垣間見える感があり、
夫婦の危機自体はあからさまに描写しない手法が良しな
好短編であった。ラストはハッピーエンディングに持ってゆくのかなと予想
していたが、両親の離婚という現実に立ち向かうヒロイン、甘くはなく、
しかし、前向きなラストというのもいい。
18 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/13(日) 17:41:55.28 ID:xkK9ujmE
「夫とUFO」
派閥抗争に巻き込まれて多忙となり、UFOを見るようになってしまった夫
の身を案じる妻、シリアスな状況にもかかわらず、どこかユーモラスで
面白い話。
夫婦が河原で巻き起こすUFO騒動に翻弄される結果となる若いおまわりさん
が気の毒ではあるが(w
「里帰り」
新婚夫婦のそれぞれの実家への初めての里帰りを描いた作。
里帰り風景に北海道と名古屋というお国柄を感じさせ、
それなりに興味深く面白くは読ませるが、
明るく肯定的な面が強調され過ぎな感はある。
「妻とマラソン」
売れっ子作家の奥さんがマラソンにはまり、東京マラソンにまで出場する
というお話。
実話ネタ?な面白さありだが、収録作品中では一番平板な展開と結末
という感あり。
19 :
名無しのオプ:2014/07/13(日) 21:29:20.57 ID:HVIm7+SG
一晩で、こんな素晴らしい論考をロハで、3つも読めるなんて・・・
まさに至福のひととき。
20 :
名無しのオプ:2014/07/13(日) 23:32:30.62 ID:It7Mq+QL
「タダ」のことを「ロハ」とか言うのって、相当年輩の人だけだよね。
21 :
名無しのオプ:2014/07/14(月) 15:21:45.62 ID:nQQ/TJrW
日本語として定着しているよ。誰でもわかる言葉だ。
22 :
名無しのオプ:2014/07/14(月) 19:38:25.74 ID:5T13vO7m
>>21 残念ながら同意できない
教養のない人間にはわからない言葉だからね
23 :
名無しのオプ:2014/07/15(火) 00:49:21.04 ID:Egvpd37t
なにを言われているのか理解できていない馬鹿な名無しの書斎w
24 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/20(日) 22:47:22.16 ID:eNT/sWd9
奥田英朗「家日和」を読む。
先に紹介した「我が家の問題」に先立つホームドラマ集とでも称す
べき作品集。この作者らしく工夫された作が多く楽しめた。
大好評な収録作品全話講評逝ってみようか!!!
「サニーデイ」
ネットオークションねた。妹を利用した最後の展開が面白い。
やはりミステリを書く作家らしいものあり。
「ここが青山」
「青山」=「あおやま」でなく「せいざん」。
リストラされた主人公にとって「ここ」って何処か?
これが本作のポイントなんですわ。
軽いタッチながらいろいろ考えさすものもある小品。
「家においでよ」
「男の城」とかのタイトルなら、そのまま成程感ありだが、
ローズマリー・クルーニーのスタンダード曲を意識したと思われな
タイトルも良し。
「グレープフルーツ・モンスター」
アラフォー主婦が主人公の淫夢ネタ、ラストはどこか哀感漂うものあり、
好短編である。
「夫とカーテン」
いわゆる友達夫婦、旦那の独立ネタだが、微笑ましいエピではあるが、
その分、刺激が少ない展開で収録作品中では一番インパクトを欠く作とは
言い得る。
「妻と玄米御飯」
面白そうな短編なのに。奥さんやご近所に気を使って没扱いとか・・・
まさか実話ネタとか?
25 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/21(月) 21:30:05.96 ID:wRUbSOya
奥田英朗「無理」を読む。
またしても奥田である(w
この作家の長編は「最悪」の創り過ぎた終盤に失望してから
手にしかねていたのだが、腕を上げたというか、
逆に上手く創って読ませるという感がある。
いわゆるグランドホテル形式で進行、登場人物たちが一堂に会する
終盤のクライマックス(玉突き事故)への展開が力技的に面白いのである。
誰にもこれといった「救い」が訪れない(「救い」を書くのは正にタイトル
どおり「無理」か・・・)、
ラストもお約束の甘口小説嫌いな俺好みなクライムノヴェル、
(殺人が発生するのは終盤に至ってからだが)
まあ、それなりに面白く、読み応えありましたわ。
明記はされないものの、誘拐されたJKの同級生たちが事件発生後も
それぞれに淡々と日々を過ごしているように読めるのがリアル。
(親友のJKなどは事件発生後は一切登場しない)
こういう細部にも凝ってるという感あり、紙数が足りなかったからって
ことはないわな(w
「黄金海峡」南里征典(光文社)
一夜にして海辺の集落が家ごと消滅するという怪事件が発生。警察の捜査も空しく行方は知れない。
一方、ダイバー笛吹草介は莫大な金貨を積んだバルチック艦隊の沈没船を引き上げる計画に参加するが、謎の美女に眩惑され、彼女の別荘で起きた心中を巡る争いに巻き込まれてゆくが……。
2冊目。こっちが本領か。
当然の如く白人が出てきたり悪者どもが幾重にも絡んで進んでいく(しかし決して複雑ではない)ストーリーは海外のB級冒険小説のノリで思ったより楽しめた。
ただしエロがいまいち。寿行と比べるまでもなく、対象に魅力がないし描写も雑で短い。
あと終盤が駆け足気味で一方的な展開になってしまうのがバランスを欠いている。
「機密狩り」南里征典(徳間書店)
かつてコンピューター業界で凄腕の産業スパイとして暗躍した津島は突如元上司に呼び出された。
元同僚の佐久間がアメリカで事故死したというのだ。不審な点が多いため調査を依頼され、津島は佐久間の妻亜衣子を連れ渡米する。
連続。こっちもまあまあ読み捨てとしては悪くないレベル。ここまでスカスカな話書けるのも才能だよなあ。
それなりに調べていたとは思うが。
あとエロは結構頑張っていた。でも本来やられるべき相手に直接描写が無いのはマイナス。それが寿行との差か。
「定吉七は丁稚の番号」東郷隆(講談社)
大阪商工会議所所属のスパイが主役の中編集。
パロディとしてよく出来ていると思うし、ご当地ネタもふんだんに盛り込んでいて楽しめた部分もあったけど、紙芝居的冒険活劇だなあという印象止まりだった。
金子のお色気シーンがもっとあるとも少し☆足すんだが(笑)
「死のハイテクビル・パニック」和久峻三(双葉社)
裕福な医者の娘が誘拐され身代金要求の電話が。受け渡し場所に指定された超高層ビルに向かった母親はエレベーターに閉じ込められてしまう。
ビル内のコンピューターをハッキングした大規模な誘拐事件が発生したのだった。
警察は後手後手に回り、身代金の調達もままならない。果たして人質は無事助けられるのか――?
いや酷いの一言。この事件自体はいいんだけど、他がまるでダメ。推理も捜査もほとんどなく、あるのはエログロだけ。
それも雑なエロと唐突かつ無意味なグロだから読んでて気分悪い。思うに調べたことをコピペして前後におざなりなストーリーを書き足したのだろう。
エレベーター内のシーンはページ数はあるんだからもっとねちっこくしないと。あれじゃ寒いギャグだもの。
唯一魅力的に見えた謎を放置しているのがまた残念だね。あと表紙の子が怖いよ。
「赤い森の結婚殺人」本岡類(角川書店)
脱サラペンションオーナー邦彦は常連客陽子から頼まれて彼女の同僚の結婚式に出席することになった。
しかし、式の最中花嫁がきえてしまう。煙に包まれたゴンドラからの消失!?
行き掛かりで警察の捜査に首を突っ込む邦彦だったが、容疑者として浮かび上がったストーカーにはアリバイが……。
白から大分経ったなあ。刊行順に落ちていくんだっけか。
うむ、ビミョー。正直発端のシーンがインパクト不足なんだよなぁ。メインの謎にノれないのは残念。
ただし、その後の展開は本格興味たっぷりで読ませる。途中で止まる逃走経路、無駄な時間の謎、死体切断の謎……。
不発気味ながら論理のアクロバットもあるしね。
しかし、肝心の部分でご都合主義になってしまっているのとフーダニットの弱さは明らかな失点。
まあ、精々中の上ってとこかな。
31 :
名無しのオプ:2014/07/26(土) 05:04:57.16 ID:+3oyFd07
読後感は、荒らし書き込みをやめろや。
32 :
名無しのオプ:2014/07/26(土) 09:47:42.04 ID:15iA/yPs
王様のブランチで門谷憲二の『クラウド』が週間ランキング1位だったんだけど読んだ人いる?
33 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/26(土) 23:28:25.62 ID:wt8vhN4j
折原一「鬼が来たりてホラを吹く―鬼面村殺人事件」を読む。
うーん、気軽に楽しめました。
黒星警部シリーズ長編第1作である。
「神の灯」の堂々ネタばれがすがすがしいものあり、
(方位違いの2軒の似た家)
真相の急造セットねた、外れ推理の湖中の巨大鏡設置もそれなり
に面白い。
ただし、平成初期バブル時代の作だけに、古さまでは感じさせないものの、
時代に合せた浮ついた雰囲気(ドタバタとお色気)が漂うのは、
いささか(注 いささか先生ではない)鼻につくものはある。
今読むと、ヒロイン虹子がうざ過ぎ。
34 :
名無しのオプ:2014/07/27(日) 00:17:20.86 ID:YNqElDt+
35 :
名無しのオプ:2014/07/27(日) 00:33:13.42 ID:dDMUFt8a
宮部みゆきの「火車」読みました。
終わり方にどうしてもフラストレーションを感じ得ません。(英雄の書も読んだ時も多少感じたが、今回はその比ではない)
新庄喬子についてずっと掘り下げてきているのに、最後の最後に答えがでないで終わってしまっていてやりきれない気持ちが抑えきれません。
それに、和也もきっかけを作るだけの役割しか果たさず、中盤から適当な口実付けのためだけにしか出て来なず、そういう人物についての心情について曖昧で煮え切らない気持ちです。
そう思うのは自分が読書家として未熟なだけだからかもしれませんが、吐き出したい気持ちがあったのでこの場を借りました。
36 :
名無しのオプ:2014/07/27(日) 15:17:25.47 ID:EqKoQd1W
答えが誰にでも分かるように書いてある小説もつまらんよ
37 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/27(日) 21:32:27.96 ID:dDEs9M66
折原一「七つの棺」を読む。
「五つの棺」刊行時に読んで以来、久々の再読ちゅーか、
「七つ・・」は初読。
早速、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
「密室の王者」
密室と思わせて、胴上げ時に床に激突死、黒星警部の推理は真相そのもの
ではないが良い線では?
「ディクスン・カーを読んだ男たち」
真相を知った後だと、「男たち」というタイトルにはひっかかるものを
感じないではない。英語ならtheyで問題無しなのだろうが。
やや強引なプロバビリティの犯罪(成功する)、いくら何でも鍵に消化液の
痕跡が残るでしょうが(w
「やくざな密室」
やはりやくざの抗争と密室不可能犯罪ってミスマッチという感あり。
シェルター内での工作も上手く行き過ぎでしょ。
「懐かしい密室」
本作も人間消失や密室殺人工作(入れ替わり、死体を運び込む等)
が御都合主義展開フルモード、ガイシャ(作家)が書いた
第三の窓=時空間の窓というSFの方が、まだ面白いかもなー。
38 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/07/27(日) 21:33:04.08 ID:dDEs9M66
「脇本陣殺人事件」
名作のパロディでもありパスティーシュ。
四本指の男の襲撃という偶然性が絡んだ密室形成は少し残念なり、
ヒーターをオフにしたという意図せざる殺人ならぬ事故というのは
地味だがそれなりに面白いので、もう少し自然な設定に出来なかったもの
であろうか。
「不透明な密室」
夏の甲子園高校野球でおなじみ正午の黙祷の時間ネタだが、
とにかく無理有り過ぎ。笑って楽しむだけの作なのか?
「天外消失事件」
これもかなり無理ある展開。
致命傷を負ったガイシャが密室内(本作ではロープウェイのゴンドラ内)で・・
というパターンのバリエーション。
作者の文庫版あとがきを読むと、作者の好みは異常心理物や叙述トリック物であり、密室とか本格物はどちらかといえば苦手の部類に属するとあるのには、
意外感あり。後の○○者シリーズ等の方が、本領なのだな。
(勿論、カーマニアに負けないほど、その作品は読んでるそうだが)
「君の館で惨劇を」獅子宮敏彦(南雲堂)
売れないミステリー作家三神は同業者白縫と訪れた美術館幻遊城で不可思議な事件を人知れず解決しているダーク探偵の噂を聞く。
2年後、三神の元へダーク探偵から助手の要請が届いた。探偵と共に喜び勇んで辿り着いたのはミステリーマニアの大富豪が棲む奇妙な館だった。
やがて2つの密室を舞台に惨劇の幕が開く――。
初めての現代ミステリーそれも館ものと期待して読むが、不満が4つほど。
まず登場人物表も見取り図もない。これ止めろよ。もう。
次に引用してるミステリー作品の無意味な多さね。しかも内ネタバレしてるのが9つという。ここまでやらなきゃ書けないものに読む価値があるのかね。
最後にその引用されてる作品が全て国産ものだということ。最近の新本格作家はこういう人多そうだが、どうなの?
国産派と言えば聞こえはいいが勉強不足というか偏向というか偏見というか……。こんな所にもガラパゴス化が。
一読者ならともかく本格作家なら古典本格くらい一通り読もうぜ。こんだけずらずら引用してるから歪さが余計に際立つ。
やっと中身。ビミョーなんだよなあ。大事な部分で乱歩に寄りかかりすぎてると思うし、肝心の密室も白は論外。
ただし赤はなかなか見事だったと思う。もう少し伏線が欲しかった気もするけれど。これは前例知らない。……あっさり国産であったりして(笑)
あとシリーズ化するのか知らんが、あの謎を残したのは残尿感だなあ。
追伸 中盤と終盤にそれぞれ好きなセリフがあった。これをラストに活かせば皮肉が効いてもっと良かったと思う。
「パラダイス・ロスト」柳広司(角川書店)
第3短編集。
相変わらず重厚さを感じさせないラノベタッチな小品が並んでいる。
一番マシなのはやっぱり「暗号名ケルベロス」になっちゃうなあ。でもこれ前後編だからどっちかに絞ると後編。
敵の計画がちょっと面白かった。結局ケルベロスが何なのかとか、犯人指摘の論理が薄弱とか穴はでかいけど。
他4編は特に論評する程でもない。しかし一作目をバカにしたヒョウロクダマは絶対に許さんからな!
「犯罪待避線」島田一男(徳間書店)
某スレからのセレクト。シベリア帰りの医師都野を探偵役に据えた連作短編集。
どの短編もきちんと本格ぶりを備えており、出来も悪くない。
ベストは「或る暴走記録」。アリバイ崩し&隠し場所トリックで伏線も丁寧な良作。
次点は「首を縮める男」。画が派手でインパクトは一番。トリックはカーの某短編を思わせる。
ミステリー以外の部分だと「機関車は偽らず」のラストの犯人の呻きが何とも胸に迫る。
最初は荊木歓喜シリーズを連想しながら読んでいたけど、こういう社会派な部分には「夜より他に聴くものもなし」も思い浮かんだ。
しかし、レイプに対する意識が低いのは引っ掛かるところ。時代のせい? ペッ
「雪に花散る奥州路」笹沢左保(文藝春秋)
某スレからのセレクト。渡世人を主人公にした読切短編集。
和製マカロニウエスタンといった趣でどれも股旅ものとして成立している上にミステリーとしてのヒネリも加えてあるので面白い。
ベストは「峠に哭いた甲州路」。迫り来る危機にジリジリしながら読み進むと思わぬどんでん返しに見舞われるという。
静かなサスペンスの醸成も巧い。中盤の別れのシーンが良いやね。
次点は「木っ端が燃えた上州路」。珍しくルーキーの渡世人が主役で渡世人の大元締なんかも出てきてクライマックスの盛り上がりがピカイチだった。
他「狂女が唄う信州路」の牢獄内の描写も圧巻。
最初も書いたがストーリーが面白いから良いね。笹沢渡世人ものはまた読みたい。
「地獄を嗤う日光路」笹沢左保(文藝春秋)
心臓病を抱えながらも恩を返すため娘を捜し求める渡世人新三郎を主人公にした連作短編集。
某スレからのセレクト。
流石に先が読めてくるし、実際「雪に花散る奥州路」より質は落ちると思うが、つまらないと感じる程のものは無かった。
前半2編が良いと思う。
44 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/08/02(土) 06:24:11.38 ID:YYuNKeJM
折原一「猿島館の殺人」を読む。
黒星シリーズ長編第2作。
当然ちゅーか、残念ちゅーか、虹子ちゃんも登場(w
それはともかく、モルグ、まだらの完ネタばれはOKなのに、
何でYは伏字?
このネタばれネタ(妙なワードになってはいるが)が事件の真相に
かかわるものではあるんだけんどね。
そして最終的にはオリエント急行ネタのバリエーション。
作中で盛んにオリエント急行本が出て来るのがお遊びの趣向なんでしょうな、
俺的にはやっぱり感大だが(w
第二章が「猿が彼を殺すはずがない」なら、爬虫類館ネタも入れて欲しかった
ところではあるが、既に脇本陣(目張り)で少々やってるんだわな。
全体的にはこのシリーズらしい気軽に楽しめるライトなミステリではありましたわ。
折原一「丹波家の殺人」を読む。
黒星警部の部下であり憎き(?)相棒でもある竹内刑事は登場するが、
虹子は登場せず。代わりにと言うては何だが、名探偵役を務めるのは
JK丹波リエちゃん。この辺もトレンドを読んだところかな(w
現在のところ黒星警部シリーズ最新作(作品集)である「模倣密室」には
虹子登場譚はわずかに1話である点を見ると、作者自身も、
さすがにバブル時代の象徴のような元気印虹子がうざくなってきたのか。
内容的には資産家丹波家の当主の水難死を契機にした相続人間の確執、
遂に連続殺人へ・・・
水車の発電機を利用した密室トリック、おんぶネタ(足跡の深さに言及
されていないのが難だが)による足跡トリック等々、
意外に読ませるものはある。
ただし、犯人はYの基本線上(キャラや状況は全く異なるが)にあり、
非常にわかり易いものとなっている感あり。
45 :
名無しのオプ:2014/08/02(土) 08:20:32.83 ID:LX68V2/o
IDを真っ赤にしてまで必死に投稿する読後感。
批評それ自体がエンタメ芸になっている書斎。
優れた書き手がどちらかは一目瞭然。
46 :
名無しのオプ:2014/08/02(土) 08:38:39.25 ID:ykKlMVuc
発狂老人書斎、朝っぱらから全開で狂乱ww
いいからマンガ家になった夢でも見てろ
座敷牢の痴呆ジジイwww
47 :
名無しのオプ:2014/08/03(日) 16:20:56.06 ID:NNPczv5q
すべてはFカップになる
期待してなかったけど結構面白かった
48 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/08/09(土) 09:25:18.25 ID:wb0rR/Qg
折原一「黄色館の秘密」を読む。
本作にて、現時点における黒星警部シリーズ全冊読破と相成る。
文庫書下ろし作品として刊行。
本作も時代に迎合ちゅーか、マッチさせたというか、秘宝館、混浴温泉等々、、
お色気度がアップしている感あり(これをミステリファンとしてはうざい
思うかどうか)。
昔懐かしい謎の怪盗団ネタも有り。
勿論、このシリーズ十八番な密室ネタも(w
更には、この作者の後の十八番芸である叙述トリックも終盤に来て炸裂(?)、
(語り手は、正に「見えない人」な竹内刑事であった・・・)
第一の密室のコンドーム利用の短編「茶の葉」ネタバリエーションは、
まずまず良ながら、
第二の密室の黄色い部屋ネタのバリエーション(激突の後遺症が出て死亡)は
無理やり過ぎな感あり。
空飛ぶ黄金仮面の謎=トラップにかかって空中へってのは、ここまで来ると
バカミスとして楽しめますわ。
49 :
名無しのオプ:2014/08/10(日) 08:26:10.90 ID:gyG3KP1I
この論考を百回音読して勉学に励むこと。
これは命令と心得ておけ。
「影丸極道帖 上・下」角田喜久雄(春陽堂書店)
長らく江戸を騒がせてきた稀代の怪盗影の影丸が遂に捕まった!?
と思いきやあっさりと脱走を果たしてしまう。時を同じくして隠居した名与力松並白亭の養女小夜が何者かにさらわれ、
白亭とその息子で小夜の許婚源太郎そして小夜の兄同然の同心志賀三平らは必死にその行方を追う。
某スレからのセレクト。角田時代小説初挑戦。
某スレにあるように前半は活劇ものって感じでそれ故にどうミステリーしかも本格になっていくのだろうと期待しながら読み進めると中盤過ぎて段々と謎がはっきり浮かび上がってエンジンがかかってくる。
下巻に入ると連続殺人が起きてぐっとミステリーらしくなり、ディスカッションも行われたりして本格味も増してくる。
しかしそうやって徐々に立ち上がってくる真相?の一部が読者が掴んでいる情報と上手く重ならなかったりするから終盤まで先が見通せない。
フェアプレイに徹しているとまでは言えないまでもフーダニットとしては成立していると思う。
あと文章に関して、時々未来から振り返る感じになるのは違和感があった。
読み終わると逆に活劇ものとしては読めないなと気付く。だからミステリーという心構えは持ってね。
「土山秀夫推理小説集 あてどなき脱出」土英夫(長崎文献社)
長崎大学名誉教授の医学者で反核平和活動家の著者が若き日に余技として執筆していたミステリー作品集。
宝石の懸賞短編で第一席を獲得した「深淵の底」他4編と未発表中編である表題作が収められている。
乱歩も言っていたように畑違いの人が生涯で数編書いて発表されたのは大概面白いから期待して読んだ。
まず表題作。戦時中ナチの収容所に派遣された日本人医師がユダヤ人女性と恋に落ち決死の脱走を図るというおはなし。
終盤に盲点トリックが使われているものの、大体は緩いサスペンス調でこれという評価ポイントはない。
ただ文章は(全編通じて)こなれており読みやすかった。
さて第二部の短編集であるが、まず第一席の「深淵の底」。若妻の失踪から始まる事件が語り手を次々交代させて展開していく。
偶然に頼っていたりトリックの実効性も低く感じられたりしてプロットは大したことはないが、記述スタイルとラストの締めでポイントを稼いでいるかな。
「影の部分」はミステリーとしては弱いし「妄執」は官能小説ぽい。「切断」は心理サスペンスか。
総じて伏線があまり張られておらずミステリー殊に本格としては低評価にならざるを得ない。
残念ながら同じ余技作家でも隣県の宮原龍雄とは歴然たる差がある。
ま、でもこういう発掘はどんどんやって欲しい。落ち穂拾い上等!地方出版社頑張れ!
「うそつき」戸松淳矩(東京創元社)
ニートの癖に見栄っ張りで虚言癖のある青年朋也は仕事の帰りに男の死体を発見する。
咄嗟に死体からバッグを奪ってしまったことから朋也は事件にのめり込んでいく。
一方文芸サークルに所属する“私”は先輩会員の助けを借りて小説を仕上げていく。
しかし、イギリスのミステリー作家の新作が“私”の作品と酷使していることを知る。
交互に語られる2つのストーリーの果てには何があるのか?
「剣と薔薇の夏」は早々に中断してラノベ一冊読んだきりだが本作は取っ付きやすそうだし、何よりブログを覗いている身としては読んどかないとと思い面白かれと願いつつ読んだ。
もう冒頭から挫折しそうになった。文章が素人臭いんだよね。ちょっとした動作にクドクドと細かく説明を付けたり心理描写を重ねたりして。
中盤でもその場限りのキャラに長々裏事情語ったりしてる。そこまで書かなくても読者は次に進めるし却ってリズムを壊したりして逆効果だから。
ただ、ストーリーが動き始めて以降はあまり気にならなくなり普通に繰れるようになった。
しかし肝心のプロットについては凡庸と言わざるを得ない。
大体においてカットバック形式の作品は底が浅いのだが(「歯と爪」然り「慟哭」然り)、本作もご多分に洩れず。
真相はやや捻りはあるが偶然に支えられていて完成度が低く、ラスト手前の突発的な出来事にも疑問が残る。
残ると言えば終始思わせぶりな印象を放ち続けていた某キャラクターが特に何もないまま終わるのも消化不良だった。
ひょっとしたら何か隠された真相があるのではとも思ったがその余地も無さそうだしなー。
付き合いもあったんだろうがこんなもんに「愉悦」を感じたなんてのりりん仕事選びなよ。
「カラコルムの悲劇」赤羽堯(光文社)
モンゴル帝国のスパイミクローシュは任務を終えて都へ帰還した。皇帝の暗殺を企む邪教集団の探索をしていたのである。
しかし、母をモンゴル軍に殺されたミクローシュの心中は複雑であった。
一方都では宮中に建造するからくりを巡って2人の親方が火花を散らしていた。
その最中、決定に影響力を持つ役人が密室状態の邸宅で殺される。暗殺者が迫る中、ミクローシュは上司と共に事件の捜査を始める。
某スレからのセレクト。
まあまあ面白かったです。モンケ=ハンはてっきり楊禍に石ぶつけられて死んだのかと思ってました。
東西に勢力を拡大していくモンゴル帝国を背景に桃源郷で誘う暗殺集団、ハンガリー職人の闘い、醜い王女との逢瀬、密室殺人等々
面白要素は十分、ただし全体としてはもっと妖しさというかケレン味というか、そういう雰囲気が欲しかったかなと。
密室殺人のトリックは良いのですが、スパイものとしては捻り不足だったと思います。
54 :
名無しのオプ:2014/08/11(月) 19:18:02.17 ID:yE9Y0Vj2
完全な荒らしだな。
削除依頼出しておけや。
55 :
名無しのオプ:2014/08/11(月) 19:21:52.58 ID:bkkhSsz+
読んだフリ書斎の削除依頼さっさと出せよ
56 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/08/16(土) 22:38:02.17 ID:y/ntuC8+
笠原卓「仮面の祝祭2/3」を読む。
さほど期待していなかったが、まずまず楽しめる作であった。
フォーク歌手が殺害され、見分けがつかないサンタのコスをした
3人のJDが容疑者、東京では関係あり気なあらたな殺人
(大御所な演出家の毒殺)が発生、
しかし、第四の女がいたのれすというお話。
後出しキャラとまでは言わないが(実際、序盤から登場はしている)、
あくまで警察の捜査、刑事の推理でこの辺が明らかになって来る展開を
どう評価するかだわな。謎解きミステリとしてのフェア度を欠くとするか、
警察捜査小説の面白さもある(この点、マエストロ鮎の鬼貫警部シリーズと
相通じるものあり)とするか。
動機面のテーマに、今でもありがちな有名人の広告塔問題あり。
そもそもトラブル無しならOKなのだが、作者の代弁者と思われる若手刑事が
芸能人や野球選手に対する断定的な批判は、どんなものであろうか?
彼らとて生業であり、断れない場合も有り得るのではないか?
神奈川県警と警視庁の確執などは、わりとクール、ソフトに描写されている
だけに違和感があった。
糸やタイマーを使用した電話のトリックは、あまりにコテンコテンな御愛嬌
と言うたところか。
後は、事件の発端となり、メーンの舞台のひとつが鎌倉市とはいえ、
大船というのが、異色な感があった。
57 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/08/17(日) 16:33:11.01 ID:0WzYyfo3
折原一「倒錯の死角(アングル) 201号室の女」を読む。
十八番の叙述トリック長編だが、これはNGでしょ。
ガイシャの女の子のママも完全に頭の中逝っちゃてますわ(w
それにしても、リベンジねたにしてもストーリーそのものに無理有り過ぎ。
謎解き趣向仕立てにせずに、この異常心理をビビッドに描く方向で
書いた方が読物としては正解だったという感もあり。
ただし、スリラーではあってもミステリにはならんかもしれんが。
「平家物語殺人事件」広山義慶(祥伝社)
新聞記者諏訪はかつての親友市島からとんでもない情報を掴んだと連絡を受ける。自分を裏切り恋人美也子を奪った男だった。
平家物語に出てくる俊寛に関するものらしい。請け合わなかった諏訪だったがその直後市島は何者かに殺される。
更に諏訪の見合い相手が謎の病に倒れ、譫言でシュンカンと口にしたという。
諏訪は美也子と共に市島の足取りを辿って真相を探る旅に出るのだが……。
某スレからのセレクト。
第1章の構成から良い雰囲気を醸していて滑り出しは順調。その後俊寛を巡る謎が解き明かされていきそこに政府の秘密計画が絡んでくる過程も悪くはないと思う。
伝奇推理というと推理そっちのけでサイキックファイトになってしまったりするけれど、本作は超自然的な中にもガチな殺人を入れてミステリーの部分を残している。
伝奇ものに付き物のエロに関しても多くはないがしっかりあるので安心汁。
裏切り女の尻にぶち込むってのは新鮮だね。しかし肛門から分泌される体液ってウン汁?
「金塊船消ゆ」多島斗志之(講談社)
戦後フィリピンから引き上げてきて40年、侘びしい老後を送っていた鳥居甚一の下へ奇妙な手紙が届く。
送り主は匿名で内容は戦時中バターンで炊いた〈四つの火〉についてであり、マニラへ来いという。
手紙は鳥居の上官であった浅田にも届いていた。〈四つの火〉、それは金塊を積んだ船を自沈させた場所の目印だったのだ。
誰が、何故今になって? 鳥居は謎を追ってフィリピンへ向かう。
某スレからのセレクト。
面白かったね〜。今までの多島スパイ小説は器は凝っていても中身が若干安酒かなっていう違和感があったりしたけれど、
これは日本人が主役で舞台も日本と、日本軍と結びつきが強いフィリピンのせいか違和感なく読み終えることができた。
それにすぐフィリピンへ行くので無しに、まず半過去の日本で一冒険やることによって主役に読者をぐっと引き寄せてから行くという構成が上手いね。中ボスの得意技も読んでて痛かったし。
難を言えばオニャノコをもっと動かして欲しかったのと、終盤のサプライズが今一つだったかしらね。ああそれと主人公に何かもう一つ欲しかったな。
「陰画の構図」井沢元彦(勁文社)
若手弁護士立花透は元恋人の女優亜紀子と再会した。婚約者がいて幸せそうな彼女だったが、その3ヶ月後、死体で発見される。
現場は施錠の上チェーンもついて密閉されておりガスが充満していた。更に亜紀子は当日に自殺を仄めかす電話をしていたこともあり警察は自殺と判断する。
しかし立花は他殺と決めつけ友人津村や亜紀子の妹由紀子と共に犯人を探すべく行動を開始するのだった。
某スレからのセレクト。
井沢の現代ミステリーを読むのは佳作「殺人ドライブ・ロード」に続き2冊目か。
密室、予告電話、更に立花が犯人と目した人物にはアリバイもあって不可能興味は抜群だし、それらの隙間を埋めるかのように配置された巧みな小手先トリックや盲点を突いた大胆なトリックにも膝を打った。
これだけならば傑作と言って差し支えないかも知れなかったが、悲しい哉、見逃せない欠点があるのだ。
それは前半のとある段落。何でこんな書き方したんだろう。台無しじゃん。
他にも明け透けに書き過ぎじゃないかという箇所はあるけれど、それらが単に難易度を下げるだけに止まっているのに対し(それもダメだけど)、こちらはストーリーの一貫性をも崩してしまっていて致命的。
もう一つ、一つの道具であれこれやり(れ)過ぎな部分もある。これらのせいで狙いは良いのに傑作と呼べないのが残念だ。
61 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/08/23(土) 19:43:00.05 ID:DWeLfNGj
隆慶一郎「吉原御免状」を読む。
宮本武蔵の愛弟子松永誠一郎は師の遺言に従い吉原へ。
華やかな色町の裏では裏柳生の陰謀が渦巻いていた・・
主人公の痛快な剣劇満載かと思えば、それのみに非ず、デビュー作とはいえ、
手練れのベテランシナリオライターだけあって、柳生一族(宗冬、十兵衛、
そして義仙こと烈堂)、傀儡衆、水野十郎左衛門(前半だけのちょい登場だが)、
なぜか八百屋比丘尼まで登場させ、トンデモ稗史的着想の面白さで読ませる
面の方が強い作である。
吉原は江戸時代における苦界ならぬ公界(自治都市的存在)、立地的には城塞
であったというネタは、従来の吉原観を覆すものであり、斬新ではある。
後の「影武者徳川家康」で書き込まれる徳川家康影武者説(関ヶ原の戦い以後の家康は影武者の成り代わり)、
天海僧正=明智光秀説等、そのはじけたトンデモぶりはいかす。
吉原の時代考証、描写は、エロいシバリョウという観さえあり、
(シバリョウが吉原をメーン舞台にするとは考えられないし)
司馬作品も愛読するが、そのストイックさに物足りないものを感じていた
オトナの時代小説ファンを堪能させたのはわかるものあり。
62 :
名無しのオプ:2014/08/23(土) 20:50:43.32 ID:XHF55p8P
書斎はいい作品を取り上げるね。
バカみたいにつまらない駄本の感想を打ち上げる読後感は猛省すること。
63 :
名無しのオプ:2014/08/24(日) 11:47:04.05 ID:FTow41CC
八百屋比丘尼じゃ、あまりにもかわいそうw
64 :
名無しのオプ:2014/08/24(日) 13:34:49.24 ID:fS6Y9l1K
八百屋比丘尼w
尼さんが火の見櫓に登って半鐘叩くのかよw
65 :
名無しのオプ:2014/08/24(日) 13:39:33.46 ID:0vChgk/B
そうだね。作品はいいのに、バカに読まれて可哀そうだw
66 :
名無しのオプ:2014/08/24(日) 14:03:20.34 ID:UxUtX0lV
駄本だとこの野郎 多島だ
67 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/08/24(日) 21:21:09.93 ID:/ypN06pK
井伏鱒二「駅前旅館」を読む。
映画化(オリジナル脚本でシリーズ化もされた、ミステリでいえばハメットの
「影なき男」のような作品)された当時のベストセラー作品。
駅前旅館の番頭を主人公=語り手とした旅館にまつわる昔語りと現代模様、
当時の中・高校生の修学旅行におけるバンカラ、放蕩ぶりが笑えるほど凄い。
酒、煙草は勿論のこと、酒場でクダを巻き、女郎屋に沈没とか(w
マジかよ感あり。
江の島東浜海岸での客引き模様も時代を感じさせる面白さに富む。
68 :
名無しのオプ:2014/08/25(月) 11:01:48.49 ID:gcCCZsJ6
たしかに森繁主演の映画よりも小説のほうが面白いですな。
69 :
名無しのオプ:2014/08/25(月) 11:33:01.13 ID:WvBfBm62
書斎の書評は人の知的好奇心を喚起させるね。
70 :
名無しのオプ:2014/08/25(月) 19:11:06.33 ID:qSWS64GY
井伏鱒二がミステリーに見えるという書斎のようなキチガイミスヲタにはなりたくないなあw
71 :
名無しのオプ:2014/08/26(火) 12:15:38.96 ID:s7rpw3wK
書斎は普通に都筑を評価しているでしょ。
過大評価するヲタに苦言を呈していただけで。
72 :
名無しのオプ:2014/08/26(火) 16:49:57.49 ID:KVy6wp39
いきなり都筑とか何言い出したんだ?
頭おかしいのか?
73 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/08/30(土) 21:58:43.02 ID:sNn634kn
水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」。
硬めのテーマにもかかわらず売れてる新書をミステリ板住人的に
読み解いてみた。
経済のミズノンこと日大の水野先生のコンパクトな著作である。
本書の推薦者には、佐藤優、内田樹、榊原英資、中谷巌、
溝口敦(その著作を見る限りでは、この人だけはやや意外感有りである)と
有名どころが並ぶが、このメンツから「ああ、アンチアベノミックスね」という
のはわかるものあり。
左とは言わぬまでも、現代資本主義アンチな面々である。
結局、「資本家が労働者を搾取している」「資本主義は崩壊する」
(ただし、本書でその後の世界は呈示されていない)等々のメーンな主張って、
「宗教は麻薬だ!」と断定しながら、自己の言説も宗教化していったMの世界
そのまま何ですな。
資本主義を「中心」と「周辺」(フロンティア)という観点から把握した分析は
西部劇かお(w で面白いものはあり(ゆえにフロンティアの消滅という時代
も存するわけで、これが本書でいう利潤=利子率の低下、消滅ということになる)
ドイツ主体のEUの動向を第四帝国の構築という観点も興味深いものある。
だけんど、万国の労働者が連帯するのは現実的に無理ゆえ、
国家(具体的にはG20)が団結して資本主義にブレーキをかけるって提言は
あまりに非現実的でしょ。
現代資本家サイド、ちゅーか、グローバル化した企業の国家(つまり政府)に
対する影響度から見てもね。
人間(一般的にという限定を付けても構わぬが)は皆、資本(より端的に表現
すれば金)がある方向に頭を垂れる「生き物」なのであるから。
良い悪いではなく、生存本能(実際に死なぬまでも社会的ステータスの維持
ということからも)とも言い得るものなんである。
生きたい、より高く、楽しく生きたいという方向性を否定する資格は何人にも
無いです。
ゆえに、私は断言する「資本主義は行きます!」(オボちゃん風、
あの子かわええ〜〜)と(w
74 :
名無しのオプ:2014/08/31(日) 07:23:16.55 ID:0mFIBe26
よくわかりました。
買わずにすんで助かりました。
75 :
名無しのオプ:2014/09/01(月) 10:32:39.42 ID:g9uhIl5h
還暦をむかえて絶好調だな
76 :
記憶喪失した男:2014/09/02(火) 17:41:37.92 ID:tYP8Ldxh
でつまつ君の裁判はどうなったの?
決着ついた?
77 :
名無しのオプ:2014/09/02(火) 17:58:13.22 ID:LpX1KEZn
でつまつくんはなんにも不法行為はしていないから、あちこち通報しても無駄だったんですよ。
民事で行こうにもアンチには弁護士を雇う金がない(w
78 :
記憶喪失した男:2014/09/02(火) 18:00:14.76 ID:tYP8Ldxh
そうかあ。平和になったんだねえ。
79 :
名無しのオプ:2014/09/02(火) 18:31:55.13 ID:/UKF12UE
ああ、てっきり「アンチ」を訴えると遠吠えてた告訴やるやる詐欺のことかと思ったらw
まあ何故未だにしてないかは自白してくれたからわかった
80 :
記憶喪失した男:2014/09/02(火) 18:37:06.20 ID:tYP8Ldxh
実は、最近、あまりミステリに食指がわかなくてね。
ついつい積んでるんだ。
五冊以上、積んでいる。
最近、ミステリにこれだという傑作は出たかい?
81 :
名無しのオプ:2014/09/02(火) 19:00:53.94 ID:r4v6bVQR
お前みたいな荒らしに教えるミステリーはねえよ
82 :
記憶喪失した男:2014/09/02(火) 19:06:27.56 ID:tYP8Ldxh
ぼくが荒らし?
なんで?
ミステリ板のやつに荒らされた記憶はあるけど。
83 :
名無しのオプ:2014/09/02(火) 20:34:34.57 ID:LpX1KEZn
記憶さんが荒らした証拠もなしに・・・。
84 :
名無しのオプ:2014/09/02(火) 21:34:05.36 ID:kkC7Fyby
>>80 ×食指がわかない
○食指が動かない
このざまで、作家志望なんて、ちゃんちゃらおかしいや。
85 :
名無しのオプ:2014/09/03(水) 01:21:43.37 ID:0g5Jf/Kl
校正が直すからいいんだよ。
86 :
名無しのオプ:2014/09/03(水) 01:56:27.45 ID:WYZw8Z/Y
人の手を借りないとなにもできない書斎派w
書斎なんて論考wの論旨wからして直してもらうのが当たり前だとまで言われているしw
87 :
名無しのオプ:2014/09/03(水) 02:01:27.64 ID:0g5Jf/Kl
記憶さんは書斎派ではないよ。
88 :
名無しのオプ:2014/09/03(水) 07:29:48.92 ID:t/9ygFPX
書斎と記憶、狂人どおし仲がいいね
「殺人航路」大谷羊太郎(講談社)
娘が持ち帰った伊豆大島で撮られた心霊写真を観た後に密室で死んだ男、前原。
彼は死の直前友人へ電話し、娘を大島へ行かせるなと警告していた。しかし、電話の相手である有田の娘は恋人と大島へ渡ってしまった!
一方イラストレーターの伊吹はヤクザ者の兄が追われていると知り、助けるために兄が向かった大島へと急いだ。
そしてついに幾多の因縁が渦巻く大島で殺人が引き起こされてしまうが……。
某スレからのセレクト。
読んだのは「複合誘拐」に続いて2冊目ですが、この人は大衆読捨作家としての意気込みが凄いんでしょうね。
本作は冒頭から心霊写真だの密室だの巻き込まれ型スリラーだのが入り乱れてこれから何がどうなるのか読者の鼻面を掴むことに余念がありません。
そういう発端のハッタリというか不可思議性は十分なんです。ただし、それが勝ちすぎてて作品全体としてのまとまりが疎かになっていまして、これは大きな弱点だと思います。
本作で具体的に言うとストーリーとストーリーとを偶然によって直接的に結びつけてしまっているんです。
より正確に言うとそれを剥き出しに見せてしまっているんです。これはダメですよ。本格としてみると特にダメです。
例えば一つの流れの中の部分部分に関わっていたとか、そういう間接的な繋がりを鮮やかに見せられれば上手いと思えると思うんですけれど。
或いは直接的な繋がりは先に見せてそこから更に展開させるとかですね。
使用されているトリックについては、密室は単純ながら効果的で上手いと思いましたし、アリバイは逆に練られていてこれもワンノブゼムとしてはアリです。
しかし本格としての作品の評価は前述の弱点のせいで精々中の上ってとこになっちゃいますね……。
「ローカル線に紅い血が散る」辻真先(徳間書店)
女子大生真由子は友人毬子に頼まれて里帰りに同行することになった。父親に望まぬ縁談を押し付けられているという。
現地ではローカル線の廃止を巡って政治家と村人たちが対立しており、毬子の問題もそこに絡んでいた。
帰郷後父子の話は物別れとなったが、数日後毬子の父親は線路上で轢断死体として発見される。しかし、その路線は前日に廃止されていたのだ!
幽霊列車が現れたのか?
真由子は恋人の旅行作家慎と共に事件の謎に挑むが程なくして第2の殺人が!?
某スレからのセレクト。
辻のトラミスは初めてやけど面白かったわ。列車が通ってないのに轢かれてるっていう抜群の不可能興味に加えて捨てトリックを惜しげもなく投入しその伏線も撒くという徹底ぶりに拍手。
殊にメインの謎に関する多重推理場面は本作のハイライトだね。
但しそのせいでフーダニットが犠牲になっているのがウィークポイントではあるのだが……。
「新大岡政談」笹沢左保(双葉社)
重度の偏頭痛に悩まされる大岡越前と同輩を斬って主家を去った浪人新八郎コンビの活躍を描く連作。
某スレからのセレクトであるが、小粒なものばかりでイマイチ。
密室や人間消失もあるけど、特に印象に残らず。新八郎の因縁が有耶無耶の内に幕引きになってしまったのもマイナス。
「ホラー作家の棲む家」三津田信三(講談社)
編集者三津田信三は偶然発見した洋館「人形荘」に魅了され借りることにした。
そのことと前後して、自分が登場する小説が賞に投稿されたり送った覚えの無い原稿が発表されるなど不可解な事態が勃発する。
人形荘のルーツを知るべく調査を始めた三津田は愛読者だという稜子に出会い惹かれ始めるのだが自身を巡る怪異はエスカレートしていくのだった。
デビュー長編。ホラーとミステリーの混合物ぽいのかと期待して読んだ。
新しい屋敷怪談を志向しているのかと思うも、結果的にみればオーソドックスな枠の内で終始したようにみえる。
もっとも作中作と並行して進んでいき……という「匣の中の失楽」を意識したようなメタなスタイルや終盤のサプライズ、そしてぞわぞわと余韻の残るラストはそこそこに楽しめた。
刀城シリーズを先に読んじゃうとどうしても、ね。
作者が作中で繰り返し言っているようにホラーは短編に限るのであり、長編で心からの恐怖を味わうことは不可能に近い以上長編ホラーの向かうべき先はミステリー的な仕掛けであると確信した次第。
「作者不詳」も読もう。
「孤島パズル」有栖川有栖(東京創元社)
推理研の紅一点マリアの誘いで南海の孤島嘉敷島へ向かった江神部長と「ぼく」アリス。
亡き祖父の遺した財宝を捜すのが目的だったのだが、台風に見舞われた2日目の夜に惨劇は起きた。
密室状態の部屋で2人が殺されたのだ。3年前、財宝の謎を解いたというマリアの従兄弟が不可解な死を遂げたことと関連があるのか?
そして惨劇は繰り返される……。
学生アリス2作目。図らずも3、1、2とノックならぬドックしてしまったが、まあまあ面白かった。
密室、ダイイングメッセージ、暗号など本格の要素が詰まっているものの、作者が中心に据えているのはフーダニットへ至るロジックであり
他はあくまでも点として整理されてしまっているところが興味深い。
個人的にはロジックへの偏愛というよりは他要素に対する冷淡さが際立って見えた。
如何なトリックも挑戦して貰ってなんぼなんだねえ……。某氏は気に食わなそう。
ただそのロジックについて、ちょっと迂遠じゃない?もう少し順を追った形で解けていけたような気もするんだよねえ。ホニャララから疑義を呈していくとかさ。
とまれ、あることからバタバタバタッと犯人へ到達する道筋が美しいことに異存はない。
「女王国の城」もいずれ。
94 :
名無しのオプ:2014/09/06(土) 20:57:10.22 ID:K94vRBGl
書斎の珠玉の論考に敵わないからといって、いやがらせの荒らしはやめろ!!!
95 :
名無しのオプ:2014/09/06(土) 21:34:25.19 ID:u/JNKD44
読後感の嫌がらせ、最早悪魔の域だな。
96 :
名無しのオプ:2014/09/06(土) 21:36:42.61 ID:nimEKuLf
まともに内容を批判できないからって中傷ばかりする書斎派はみっともないな。
97 :
名無しのオプ:2014/09/06(土) 22:23:56.11 ID:BeMiqF2a
>>93 「ホニャララ」「あること」についてメール欄を使って内容を教えてもらえるとうれしい。
98 :
読後感:2014/09/08(月) 21:14:06.74 ID:yuk0D4b+
>>97 それは読んでのお楽しみってことで……実は結構前に読んだのでもう記憶が曖昧で……スイマセン
99 :
名無しのオプ:2014/09/08(月) 23:08:36.09 ID:O2EPTG3R
>>98 いえいえ、レスありがとう。また読み返してみたくなりました。
(某氏ってS・Sさんでしょうかね?ロジックよりトリックの好きそうな…)
100 :
名無しのオプ:2014/09/09(火) 08:37:16.27 ID:hjnediTV
読後感の感想は極めていい加減なものだということがよくわかった。
つまりは未読に近い状態で書いているに過ぎないんだな。
101 :
名無しのオプ:2014/09/09(火) 11:07:44.78 ID:mR+mNEce
書斎は近いどころか未読じゃん
102 :
名無しのオプ:2014/09/09(火) 11:22:12.25 ID:hjnediTV
読後感の罪深さを先に断罪すべき。
書斎の場合は証拠がないからな。
103 :
名無しのオプ:2014/09/09(火) 13:16:05.14 ID:mR+mNEce
は?
読後感の感想の方が書斎より何倍も参考になるけど?
104 :
名無しのオプ:2014/09/09(火) 13:35:08.10 ID:hjnediTV
人それぞれだからねえ。
ただ絶対的評価として、読後感は果てしなくつまらない、書斎は途轍もなく面白い。
これは変わらない。
105 :
名無しのオプ:2014/09/09(火) 13:51:52.19 ID:mR+mNEce
書斎の書き込みのどこが面白いの?
106 :
名無しのオプ:2014/09/09(火) 13:58:25.53 ID:hjnediTV
石田金吉にはわからないんだろうけどね。
107 :
名無しのオプ:2014/09/11(木) 00:25:06.42 ID:QLRKJZ5R
石田金吉がわからないです
108 :
名無しのオプ:2014/09/11(木) 08:45:49.17 ID:p4XgCeXX
辞書ででも調べてこいや。クソが。
109 :
名無しのオプ:2014/09/11(木) 14:39:58.49 ID:GGRppDv/
石田金吉などという言葉の載っている辞書が存在するのかよww
110 :
名無しのオプ:2014/09/11(木) 14:51:27.76 ID:p4XgCeXX
御託はいいから調べてみろ。
それから言いたい事は言え。
111 :
名無しのオプ:2014/09/11(木) 18:06:58.63 ID:GGRppDv/
それこそ「御託はそうしいう辞書を示してから言え」だなw
112 :
名無しのオプ:2014/09/11(木) 21:24:15.67 ID:ETGTcluD
石田金吉も知らずに何を言ってるんだ?とも思ったが・・
初学者なら仕方ないね
113 :
名無しのオプ:2014/09/11(木) 21:48:18.94 ID:M4flv1Oo
人の気を惹き付けるために、わざと間違ったり(最初はマジでw)、ネタバレしたり…
そこまでして構ってもらいたいのよ。
114 :
名無しのオプ:2014/09/11(木) 22:09:19.53 ID:Mh78MKTg
だって書斎は家族からも見放された孤独なオッサンだもん
115 :
名無しのオプ:2014/09/12(金) 06:42:42.90 ID:HHGTcWql
名無しで暴れるなよ読後感
116 :
名無しのオプ:2014/09/12(金) 06:58:51.50 ID:+ch6BNz1
図星を突かれたとはいえ、読後感の荒らしは酷いねえ。
117 :
名無しのオプ:2014/09/12(金) 07:32:59.50 ID:l1YCHNba
と、書斎が名無しでわめいております
118 :
名無しのオプ:2014/09/12(金) 10:51:33.64 ID:44R1nhj+
人名の掲載されている辞書なんてのはめったにお目にかかれないねえ
119 :
名無しのオプ:2014/09/12(金) 11:32:05.81 ID:+ch6BNz1
なんだ、まだ調べていないのか。
アンチは愚図にも程があるな。
120 :
名無しのオプ:2014/09/12(金) 12:34:05.80 ID:w5Z9XE4+
ほんとアンチ読書の書斎きは愚図のうえにクズだなw
あ、辞書で調べたら「書斎魔神」という項目に「嘘つき、低能、未読の代名詞」と出ていたぜw
121 :
名無しのオプ:2014/09/12(金) 15:12:40.08 ID:lMhrwoVZ
↑
0点(つまらないし捻りもない)
「半七捕物帳【一】」岡本綺堂(光文社)
言わずと知れた捕物帳の元祖にしてリアルホームズのライヴァルであります。
私は元来捕物帳とはミステリーの着想力と時代小説の描写力とを併せ持って初めて書けるジャンルの小説であると信じてきました。
然るに、片面の能力しか持ち合わせていないにも関わらず安易に捕物帳に手を出す作家が多過ぎやしないかと危惧しておりました。
誰とは言わないけれど、北国の女流作家とか。そういう秩序のない現代にドロップキックすべく原典を紐解こうと思い立った次第であります。
収録短編は全て怪奇的な出来事が合理的に解決されるという筋書きになっていて、これはミステリーの基本であり良いコンセプトです。
スタイルは明治に入って新聞記者が半七老人に手柄話を聞くと言うものでこれも良いです。
さて中身はと言うと……正直、そこまで本格としてすぐれているという訳ではありません。張り込んだり自白させたりして推理に乏しいのね。
キャラクターが魅力的という訳でもありません。女っ気もないし。
しかし、中にはちらほら及第点のミステリーもあります。ベストは「半鐘の怪」です。火事もないのに鐘が鳴る。傘が重くなる。着物が歩き出す。
頻発する怪奇現象の真相は――驚きました。オマージュでもあるようで。
他、「広重と河獺」のバカトリック(?)。「弁天娘」の奇想、「春の雪解」の幕切れなどが印象に残りました。
解説で都筑道夫が、綺堂の文章が似非捕物帳の弁護材料に使われたと書いていて吃驚怒髪天。捕物帳無理解者という言葉が頭を過ぎりました。
ちなみに末尾では捕物帳は小説のジャンルではなく短編推理小説のスタイルであると明言されており私も全く同感です。
「時のかたち」服部まゆみ(東京創元社)
短編集。
初挑戦だが、何とも独特な読み心地であった。外から来た書き手でしかも女性という特徴が+に働いてる感じ。こういうのは新本格連中じゃ味わえない。
しっとりと情感で魅せておきながらプロットは巧緻で本格としての完成度も高い。
ベストは表題作か。巻末鼎談で北村薫も言っているようにチェスタトン風味のトリッキーな良作。
個人的には「桜」も好き。事件が起きるまでが長いが、十代の主人公から覗いた人間関係が面白く引き込まれる。密室殺人+アリバイ崩し+フーダニットときて更にラストで綾を加える手管にクラクラした。
これからも読んでいきたい作家。
「ピラミッド殺人事件」新谷識(双葉社)
中東との取引で急成長した商社の社長が殺された。現場は父である会長が大学に寄付したピラミッド型のホールだった。
奇しくもエジプト通の会長から誘いを受けていた地理学者阿羅と姪の由美子の2人も行き掛かり上事件の捜査に関わることになるのだが、殺人は更に続いていく……。
某スレからのセレクト。
しかしこれはダメだわ。探偵役が誰なのかはっきりしないし誰も推理しないんだよね。思い付きをバラバラに挙げてみるだけというか。
やっぱ過程を描くのが一番難しいんだろうね。登場する毒殺トリックも「こういうの思い付いた」ってだけでどう隠すかどう解かせるかとかの部分がおざなりだし。
そもそも最初の殺人が密室じゃないのが興醒めなんだよな。その癖ピラミッドパワーだとか言い出して更にそれを刑事が承っちゃうゲンナリな展開。
フーダニットはまあそれなりの体裁を取ってはいるんだけど、犯人指摘の場面がまた不器用でなあ。
地の文がどんどん迎えに行ってるからね。関係者のコンセンサスはえー。テレパシーか。
あと六章だけ意味なく漢字。
「青い灯の館」森真沙子(角川書店)
交通事故で母を亡くし自身もピアニストととしての道を断たれた冴子は資産家の弁護士楡から彼の娘美也の個人教師の依頼を受ける。
楡家の館は明治期に建てられた洋館で敷地には先々代が造ったという奇妙な庭が広がっていた。
しかも館ではかつて忌まわしい出来事が起こっており幽霊が出るという噂があるという。着いた早々何かの気配を感じる冴子。
やがて知り合った霊媒が庭の四阿で突然の死を遂げた。冴子は心霊研究家矢上と共に館の謎に挑むのだが……。
某スレからのセレクト。
いやあ冒頭から如何にもゴシカルな展開に引き込まれましたねえ。佐々木丸美、服部まゆみ系の手触り。館からも新本格的な奇をてらった書き割りではなくストーリーの気配を漂わせています。
そして亡霊、怪物庭園、降霊会と道具立てもバッチリ。更に夜の庭に踊る白い影や荒れ果てた木立の間から覗く振り向いたのっぺらぼうの像など雰囲気が滲み出るような描写も溜まりません。
と言ってそこだけにインシテイルのではなく、ヒロイン自身のストーリーも並行して描かれます。事故の謎、母親の謎、侵入者の謎。
社会派な側面も見せつつ楡家の物語が綴られるという妙ですよ。真相も美しい。意外性とかよりもストーリーとの溶解度を評価したいですね。
この人もまた読みたい作家。
「真夏の妖雪」小林久三(講談社)
某スレからのセレクト。
短編集だがこれは歴史ミステリーとするか時代ミステリーとするか迷うな。実在の人物や事件は出てくるものの、真っ向から史実の真相を暴くという感じではない。定義に困る。
でも内容は良かった。ベストは表題作。真夏に殺された岡っ引きの懐に入っていた雪の謎。被害者の父は下手人を脱獄した蘭学者高野長英だと睨むが。
こうかこうかときて反転させるプロットに唸った。
次点は「『解体新書』異聞」。漢方医の下へ運び込まれてきた重傷患者は憎き元弟子。目を離した隙に消失してしまい、離れた河辺で見つかる。積雪の中足跡は無かった。
本書中最もトリッキーな作品。
他、大震災の直後焼け出された女中が見知らぬ男から名前を呼ばれ妹扱いされるという不可思議な出だしが印象的な「焼跡の兄妹」など。
127 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/18(木) 23:54:43.35 ID:Vy37g+Sf
読後感氏が半七に関してコメントしているので一言。
本格として疑問符を呈しながら、ミッチーこと都筑氏の
短編推理小説のスタイルであるとする見解に同意するのは不可解なものあり。
やはり捕物帳は主として江戸風物詩、人情等を描く時代小説の一ジャンル
として把握しておくのが、その作品評価を誤らないためにも妥当であろう。
さすれば、ミステリ的要素はそのスパイス(作品によりその強弱はあり)
に過ぎないと理解できる。
ミステリ的評価オンリーでゆくと、
「半鐘の怪」はモルグを読んでいれば笑ってしまう話だし、
「広重と川獺」は、タイトルの川獺ネタそのもので正に笑うしかない代物、
「春の雪解」のぞっとする後味は、ミステリでなくホラー的ものでしょ。
狂綺堂が書かんとしたでなく、書けたのはミステリ仕立ての優れた時代小説
なんである。
128 :
名無しのオプ:2014/09/19(金) 09:02:39.59 ID:X2UjdwFF
読後感は基本反論できない人だから、これは書斎の不戦勝かなあ。
129 :
名無しのオプ:2014/09/19(金) 18:37:41.46 ID:mvSkCble
中卒書斎が
めくら頭吊についてなにか反論したことがあったっけw
130 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/19(金) 22:03:48.12 ID:W9yCaa3B
読後感氏が面白いと認める「弁天娘」。
この点は俺も同感。
しかし、ミステリ云々というよりも、これをスパイスとした
小説としての興趣だな。
強請やこれに関連した殺人事件は、蛇足とまでは言わぬまでも
捕物要素を入れるためのにぎやかしに過ぎない感あり。
本作を石原慎太郎の「太陽の季節」と比較して語った
今思うと、トンデモな論考あり。
障子紙をブレークするのがポコチンか舌先かの違い(w
131 :
名無しのオプ:2014/09/20(土) 05:14:31.49 ID:Ry3cQ07E
圧勝の論考だね。
132 :
名無しのオプ:2014/09/20(土) 13:36:24.87 ID:lwsdeBnc
書斎の論考で完成する読後感の感想文。
プロに手を入れてもらったことに感謝して謝意を明確にしておくこと。
133 :
名無しのオプ:2014/09/20(土) 13:38:06.55 ID:Fh1LzUxM
うむ
134 :
名無しのオプ:2014/09/20(土) 18:05:32.56 ID:m9veucGX
頭吊や血蛞蝓その他について手を入れてもらったくせに感謝の言葉のひとつもないバカ書斎www
135 :
名無しのオプ:2014/09/20(土) 20:18:05.72 ID:Fh1LzUxM
馬鹿じゃない!!!!!!!!!!!!!!
136 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/27(土) 21:49:38.27 ID:78isiH14
柴田錬三郎「幽霊紳士」を読む。
近々にレアな作品集「異常物語」と併せて創元から文庫が出るとのことだが、
懐かしくなって書庫たんから出し一読。
最後に幽霊が出て来て謎解きというタイトルのままなパターン、
気軽に読めるわな、まあ、それだけです。
個別収録作品に関して、詳細に論じるまでもあるまい。
(またその手の作にも非ず)
137 :
名無しのオプ:2014/09/28(日) 18:09:13.22 ID:tdvNDxUg
都筑などよりもずっと大切な作家だよね。
138 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/09/28(日) 23:51:37.64 ID:kuQt6AH3
久々に池波正太郎「剣客商売」1、2巻を再読。
このシリーズも秋山父子事件帳、秋山小兵衛の事件簿とかネーミングすれば、
ミステリ扱いされてしまったであろう。
(ゆえに、鬼平も「犯科帳」であり「捕物帳」とネーミングしなかった池波先生、
火盗の捕物(探索等も含む)が見せ場となるエピも多いにもかかわらずだ)
実際、スリルとサスペンスを強調した先の読めない展開、どんでん返し等は、
正にサスペンス・ミステリの世界と言い得る。
するすると2冊完読してしまいますた。
139 :
名無しのオプ:2014/09/29(月) 08:09:56.49 ID:cazuTdLd
ビッグ3に並ぶ大家だよね。
ミス板では話題にもならんが。
140 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/04(土) 13:34:08.40 ID:ag3sgbnt
池波正太郎「ないしょ ないしょ」を読む。
剣客商売シリーズ番外編。
ただし、小兵衛登場は物語中盤に入ってからであり、
50代前半の彼氏、子息大治郎は諸国武者修行中時代の話。
主役はあくまで手裏剣の名手となるお福ちゃんである。
うーん、身寄り無きいたいけな少女であった頃、
自身を凌辱しまくりちよこな旧主人の仇を取るという
心理が、最後まで「どうにもわからぬ」なのだ。
池波先生は説得力を持たそうと「一所懸命」な感はあるけどね・・・
まあ、現代では到底理解され難いものでしょ。
池波先生には「剣客群像」という作品集に「寛政女武士道」という
手裏剣の名手である娘(こちらは武家)が、もて遊ばれた男とその
悪い仲間を成敗し、自身も自裁するという読み応えある短編があるが、
こちらの方が自然な流れで読めるものがあった。
141 :
名無しのオプ:2014/10/05(日) 11:55:17.17 ID:eABZvN47
櫛木理宇「寄居虫女」。
この作者は初読み。最初の女子高生の会話で挫折しかけたが
そこを超えたらぐんぐん面白くなって一気読みした。
家庭に他人が入り込みいつの間にか家族を支配しているサイコサスペンスもの。
マインドコントロールのやり口がなかなか現実的というか
ああなるほどこうやってやるのか、と感心した。
万に一つもないのだがもし他人を洗脳する機会があったら参考著書にしたい。
「猫間地獄のわらべ歌」幡大介(講談社)
譜代の小藩猫間の江戸下屋敷で御広敷番が切腹するという事件が発生した。屋敷を取り仕切る藩主の側室和泉の方は責めを負うことを避けるため、御使番の藤島に殺人に改竄せよと命じる。
しかし、現場は施錠された蔵の中。藤島は密室作りに頭を悩ませることになる。
一方、国許では妖しげなわらべ歌の通りに首を斬られた死体が続々と発見されるという怪事件が起きていた……。
前年度本格ミスなどで話題となった文庫書き下ろし時代本格ミステリー。
文庫書き下ろし時代小説のミステリーというと以前ガイド本を信用して痛い目に遭ったことがあるが、本ミスにランクインしたのなら間違いなかろうと期待十分で読む。
うむ、まあまあ。いくつもの事件と謎が天こ盛りの構成はワクワク感を誘うし、設定等も丁寧に説明されており特有の解りにくさもない。
密室作りの試行錯誤と“真相”は良い意味でバカミスという評価が出来て○。ラストのサプライズもなかなか。
ただ、“童謡殺人”とアリバイ崩しはちょっと書き込みが足りない&拍子抜け。わらべ歌くらいフルで載せましょうや。
それから時折挿入される登場人物のメタ会話がイタい。90年代のラノベの後書きによくあった座談会的なノリで陳腐。ミステリー論自体は興味深い部分もあるのだけれどね。
まあ、必読書というほどではないかな。解説は例によって褒め過ぎ。
「見知らぬ扉」森真沙子(日本文芸社)
都心にほど近いフラワーマンションの住人たちの物語を綴った連作短編集。
某スレからのセレクト。
文章はね、読みやすくて良いんですが、一編一編は大したことがなく、というかオチてるかどうかも判然としないようなものもチラホラ。
しかし全体を包む枠があってラストに真相?が明かされるのですが……うーん、大元帥が感心されるようなものがあるかな?私はあまり驚けませんでした。
ひょっとしたら気付いてない仕掛けがあるのかしら……?
ベストは308号室か603号室かな。
「法廷の疑惑」小杉健治(双葉社)
結婚を間近に控えた相羽李奈子は母親が交通事故で植物人間になったせいで婚約破棄され生活にも困窮する羽目になってしまう。
李奈子に捨てられた医師上林はこうなると解って手術を施したことに自己嫌悪を覚えていた。
そんな中、李奈子は在宅介護に追われながらも死んだと聞かされた父親の正体を突き止めようと思い立つのだが……。
某スレからのセレクト。大元帥絶賛の一冊です。しかし! はっきり言ってイマイチでした。
この後殺人事件が起きて法廷劇に入っていくんですが、そこまでがダラダラ長い。やりきれなさだけが売りの社会派を読まされている苦痛を味わいます。
それでも後半探偵役らしき水木弁護士が登場するに及んでコペルニクス的転回が起きて前半の退屈さに潜んでいた驚愕の真相が姿を現すのかと思いきや全くそんなことはなく、
それどころか中盤である出来事が起きた時点で真相に直結してんじゃないかとすら思ってしまう始末でして。
ただメインの事件におけるホワイダニットに関しては解りませんでした。でもこれだけで傑作とは到底言えません。
あと法廷劇も明確な対立構造が無いから盛り上がらないんですよね。狭いところで争ってる印象で。
「罪の女の涙は青」日下圭介(講談社)
経済評論の傍ら喫茶店を経営している木次が娘のように可愛がっていた姉妹の姉梢が自殺した。見つかった遺書には自身が殺人を犯したと3人の被害者名が挙げられていた。
木次は梢の恋人だった北原と共に梢の死の真相を追う。
某スレからのセレクトかと思ったらまとめには出てないね。じゃあどこからだろう?
ともかく面白かった! 木次たちが関係者に話を聞いていく過程にやや雑な部分があったり筆が滑った部分もあったりしたが、全体としては良作。
まず冒頭から「何が起きてるの?」と読者をグイグイ引っ張っていく力が強い。端々に細かな謎を散りばめて燃料注入にも余念がないし。
そしてストーリーもちゃんとある。推理“小説”が書けている。当たり前と言えばそうなんだけど、案外手抜きもいるからね。「法廷の疑惑」みたいに(笑)。
日下、長井、高柳辺りは流石乱歩賞というハードルを越えてきてるだけあってエンタメが解ってるよ。
フーダニットは弱めだが、解けてみれば解りやすいアリバイ崩しや写真のトリック、レッドヘリングの活用など読み応えは十分。
日下は短編集2つ読んで長編は初めてだと思うが今後も読みたい作家だ。
「女たちの捜査本部」日下圭介(徳間書店)
友達4人でペンションへ宿泊している少女香織は洗面所で白い服の女を目撃する。
女が消えた213号室は無人の空き部屋だったが、その夜別の少年がそこに死体があると騒ぎ出しベランダから部屋を覗いた香織は倒れ伏す女を発見する。
しかし、ドアを開けた時には死体はなく、ベランダから撮ったはずの写真にも写っていなかった。
一方、東京ではマンションの一室で刺し殺された男の死体が発見され警視庁捜査一課の女刑事が捜査に乗り出す。
某スレからのセレクト。
日下連読であります。「罪の女の涙は青」以上の魅力的な導入部にクラクラきました。いいですねぇ〜。全く匂いが違う2つの事件の組み合わせって展開がもう萌えますし。
フーダニットはこれを唐突と見るか意外と見るかで評価は別れそうですが、無しだとは思いませんでした。
アリバイ崩しはちょっとワンパターンかなと思いますが、消失トリック殊に写真からの消失トリックはクレイトン・ロースンを思わせる鮮やかさで感心しました。
やはり良い作家。
ところでヒロインと相棒のオッサン警部補とはこれからチョメチョメな関係になっていくのでしょうか? 今回はあっさり交わされてましたけど(笑)。
147 :
名無しのオプ:2014/10/09(木) 16:04:52.43 ID:PwyRS0H+
相変わらず酷い悪文。
二度と来るな。
「やさしく殺して」胡桃沢耕史(勁文社)
国連本部にほど近いバーの地下に集う女たち。様々な社会的地位を持つ彼女らの共通点は2つ。処女であることと男性への激しい敵愾心。
女傑マーサ率いるアメリカ合衆国新政府設立会議は絶世の美女を大統領に擁立し男性を奴隷化しようと企んでいた。
この陰謀はアメリカ連邦調査局P0課の知るところとなったが、チーフのHは本気にせず対応をコネで潜り込んできたスパイ07号ことジェームス・モンドに押し付けた。
勇んで初任務に就くモンドだったがあっさり捕まってしまい……。
本邦007パロディとしては読むのは定吉七番以来2作目となりますが、こっちは200ページ足らずと短いのですぐ読めました。
主人公はスパイの適性のない色男なので勢い美女とのいちゃいちゃが目立ってくるのも違いかな。
ただしユーモアものだと思っているとギョッとするような場面に突き当たるのでご用心。ラストの残酷さにはびっくりした。
ひつまぶしにはいいと思うが、ハードカバーなのは×。
「殺しは惨く、美しく」胡桃沢耕史(勁文社)
色事だけが取り柄の3流スパイモンドの今回の任務はエーゲ海に浮かぶヌーディストの島へ行きソ連のスパイを捕まえること。
まずはパリへ向かったモンドは自分そっくりの殺し屋に出会い、彼に成り代わって島へ潜入することとなるのだが……。
一つ飛んで3作目。ヌーディストの女たちにマダムXなんつー元締めが出てきたからすわ1作目の焼き直しかと思ったら黒幕は別にいた。
そして例によってあっさり敵の手に落ちたモンドは激しい苦痛を味わうのだが、その内容が凄い。ネタバレになるから伏せるがもう非道いの一言。
スパイものの主人公たち受けてきた拷問は多岐に渡るだろうけどこれ以上のものはちょっと無いんじゃないかな。そのくらい残虐。
恒例モンドガールとのいちゃいちゃはあるにはあるがあまりそそらない。しかし秘書のミス・ケイトには萌える。ナイスバディなのに初心という。いつかものにして欲しい。
150 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/11(土) 11:44:47.91 ID:YbRztdgj
池波正太郎「黒白」を読む。本作も剣客商売シリーズ番外編。
「ないしょ ないしょ」と異なり、終盤は若き日の小兵衛が主役状態。
小兵衛が若い(後の大治郎の母=お貞所帯を持ち、自身の道場を開いたばかりの30男)だけで、剣客商売本編と変わらぬ展開になってしまうのは、
シリーズのファンの要望を考慮したものかもしれぬが、
ノンキャラの短編等も好む自分にような読者には、少し残念な感あり、
悲運の剣客と言える波切八郎をメーンにおいて描き切って欲しかった。
八郎、江戸の公儀ヒットマンの岡本弥助、その手先である伊之吉の
妙な三角関係状態(男色ではない)が妙に良いんである。
悲劇に終わるかと思いきや、意図せぬ偶然により悲願だった小兵衛との
真剣勝負を果たし、右腕を斬り落とされた八郎、
これもまた偶然(池波作品はこの手の展開が多過ぎなのは気にかかるが(w )
により、三条大橋上で老いた八郎とその連れ合いの女(これもいわく有りな
キャラ=お信)を幸福そうな姿を見かける小兵衛というエンディング。
小兵衛目線だけでなく、八郎、伊之吉、市蔵(八郎を慕う下僕)等の顛末も
読んでみたかった感はある。
「四月の橋」小島正樹(講談社)
駆け出しの弁護士川路弘太郎は知人の弁護士奈々橋泉の父親栄治の弁護を担当することになった。
栄治には殺人の容疑がかけられており、被害者はかつて栄治の息子優一をひき殺した男だった。
彼の無実を信じる川路と泉は疑いを晴らすため奔走するのだが……。
新本格の驍将小島正樹の作品はとにかく読むべしと思っていたのだが、本作は敬遠していた。
タイトルからして他のいかにもというものと違ってフツーだし、あらすじもピンと来なかったし(「日本版『川は静かに流れ』」って……)。
しかし今回思い切って読んでみた。良かった!
これは読み応えのある作品だ。奇想天こ盛りの作品群とは作風がガラリと変わって地に足のついたリアルな謎と丹念に描写されていく捜査過程に引き込まれた。
鬼面人を驚かすようなものが無くともヒネリも見せ場も十分に用意されている。
個人的にはいじめの扱い方が気に入った。不自然さを覚える向きもあろうが、このくらいに捉えていた方がいいと思うわ。
生真面目な川路と気の強い泉との友達以上恋人未満の関係の行く末にも注目しとけ。
「人形佐七捕物全集一 ほおずき大尽」横溝正史(春陽堂書店)
人形の如きイケメン岡っ引き佐七が活躍を描く第一短編集。
「半七捕物帳」は謎解きが弱いなと思い大横溝ならばと期待するも割と微妙。フェアでもなく後付けぽい駆け足の結末な感じは基本的には変わらず。
捕物帳とはこんなものというコンセンサスが受け継がれていたのかしらん。この問題は次読む「安吾捕物帳」に持ち越し。
ベストは「佐七の青春」かな。美人妻お粂のジェラシーが炸裂して追い出された佐七を襲う災難。表裏の辻褄合わせが素晴らしくユーモラスな雰囲気も○。
次点は「双葉将棋」に。作中の棋譜を使った暗号がシンプルイズベスト!
ほか表題作は敵対者を次々襲うキチガイの話だが後半の動機の物語が長いがエロい(笑)。そう、艶っぽい描写がちらほら登場するのも本シリーズの特徴か。
「日本探偵小説全集3 大下宇陀児 角田喜久雄 集」(東京創元社)
角田目当てでも半分読むのも気持ち悪いから茹だるような思いで前半を読む。犯罪心理の描写だとか嫌な予感してたらまんまと的中。
何だろうねこれ。遺すべき作家なん?論創か作品社辺りでチョロッと出るなら解るけどさあ。トリックも無ければどんでん返しも無いかしょっぱいかって感じで……。
読んで詰まらんとは言わんよ。そこそこ読める。ただン十年経ってまでも通るべき場所じゃないってこと。「虚像」なんて長すぎるもの。だったらもっと伏線撒けやって話。
で本編。流石につのだ☆きくおはやるね。本格でありながら変格的奇妙な味的な感じもあってグーよ。倒叙アリバイものあり、島荘風奇想ものあり、チェスタトン風ありと堪能したわあ〜。
そして代表作「高木家の惨劇」。長編というには短いが、内容は盛り沢山。機械トリック、天才型VS凡人型、レッドヘリング、そして錯綜するプロット。
犯人像と真相に乖離がある気がしないでもないが、まあ良作だあね。
再読だった「沼垂の女」もやはり良い。この“目的地へ行く途中”というのがホラーの好きなシチュなのよね。四つ辻とかもゾクゾクする。「笛吹けば人が死ぬ」はタイトル倒れの凡作。
「ノックス・マシン」法月綸太郎(角川書店)
本格ミステリを題材に採ったSF短編集。
楽しくなかった。ゴテゴテしく意匠を凝らした器に水道水入れた感じ。こんなもん売って良いの?
「坂口安吾全集 12 明治開化安吾捕物帖(上)」(筑摩書房)
明治の半ば、東京都下で巻き起こる怪事件の数々を解き明かすは、剣術家泉山虎之介から仔細を聞く勝海舟か。現場に赴く探偵結城新十郎か。
待望の捕物帖であります。顎十→半七→人形佐七と来て今一つくすぶっていた不満をスカらせてくれるや否や。
くれましたね。面白かったです。口上であるように毎回安楽椅子探偵VS通常の探偵という構図で二重推理が楽しめるのは大きな美点でしょう。
前半は虎之介が海舟を訪ねるところから始まる話ばかりですが、後半からまず事件を描いてその後レギュラーメンバー登場の運びとなるスタイルに移行しています。
同じスタイルじゃ飽きるからこれは良いと思います。
ベストは「稲妻は見たり」でしょうか。雷鳴響く夜お屋敷の若い女中が行方不明になるのですが……練られた犯行にチト唸りました。
次点は「ああ無情」。人力車夫が奇妙な依頼の本預かった行李から女の死体が……既読ですが発端の不可解性から錯綜する事件に意外な犯人とやはり見事な出来栄えでした。
他、「石の下」「冷笑鬼」など事件のストーリーが印象的な短編もいくつかあります。
毎回ラストの海舟の負け惜しみでないような負け惜しみのようなコメントがいい味出してます。
しかしナイフで後頭部切って悪血取るってアブナイ癖ですね(笑)。
156 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/10/18(土) 13:48:34.25 ID:Z1Hs0x07
野村胡堂「銭形平次捕物控傑作選3」を読む。
今は無き嶋中文庫等で読み耽った時期もあったゆえ、
未読作が収録されているものをと思い本書をチョイス。
収録作品講評、逝ってみようか!!!
・「権八の罪」
・「縞の財布」
この2作は過去に嶋中文庫版で論考済み。
・「荒神箒」
ホームズのマスグレーヴ家のエピを想起させる暗号宝探し譚である。
まあ、創りものの面白さを堪能せいや、というたところか。
・「二つの刺青」
持ち物の整理具合から計画失踪を見破る平次親分の推理は見事ながら、
ミステリ的にはお玉の替玉ネタが御都合主義的で弱いという感あり。
・「小便組貞女」
現場の状況(真新しい杉板等々)から殺しの方法、死体移動を推理する
平次親分見事としか。
あらえびす自身もお気に入りの作だったとか。
・「花見の留守」
最後は因縁話風な兄弟相討ちへ。鏨の弾丸発射殺人とか、ジョンかお(wな
機械的トリックが笑える一編。
・「死の秘薬」
おなじみトリカブトネタ、フーダニット的にはラストまで意外性に富む
(犯人がお道とは)
・「八五郎子守唄」
トリカブトネタ2連発なチョイスは頂けず。矢による殺人偽装も無理有り過ぎ。
157 :
名無しのオプ:2014/10/18(土) 14:34:43.97 ID:zjS1L2VV
読後感の荒らし行為のあとの書斎の本格論考。
これがないとこのスレは意味がない。
158 :
名無しのオプ:2014/10/18(土) 15:21:04.83 ID:9Ya+1m2R
みんなを笑わせ場を和ませるには書斎のすばらしい論考が必要不可欠。
159 :
名無しのオプ:2014/10/18(土) 19:07:56.88 ID:mrOcdG0f
そのトオリ!!!!!
160 :
名無しのオプ:2014/10/18(土) 20:53:23.75 ID:9Ya+1m2R
書斎の論考は人を笑わせるユーモアがあるから皆仲良くミス板の秩序が保たれてる。
書斎は尊敬されるべき人間なのは明白である。
161 :
名無しのオプ:2014/10/18(土) 21:45:16.44 ID:4iU8W6Ng
×笑わせる
○嘲笑われる
「巨根伝説 上・下」半村良(祥伝社)
謎の美人社長に魅せられた新宿に住む男性4人組は彼女の遊びに付き合う中で突飛な冒険を思いつく。
それは怪僧道鏡の財宝を探そうというものであった。
伝説シリーズ最終作。だけどこれがシリーズ初読書。伝奇推理とあるが嘘。お色気ありの社会派って感じ。
道鏡の話が出るのは上巻の後半で実際探し始めるのは下巻に入ってから。本作の主題はそこではなくもっと生々しいもの。
はっきり言って道鏡は強引にねじ込まれた印象でその意味では失敗作だと思う。
エロ方面でも散々引っ張っといて肝心なとこでお茶を濁すという竜頭蛇尾っぷりに学刈だった。
「作者不詳 ミステリ作家の読む本 上・下」三津田信三(講談社)
関西の出版社に勤める三津田信三は偶然迷い込んだ杏羅町の雰囲気に魅せられた。
やがて親友飛鳥信一郎を町に案内し、彼は古本屋〈古本堂〉で『迷宮草子』という同人誌を手に入れる。
七つの不思議な短編が収められたその本を読み進むにつれ、話に纏わる怪異に襲われるようになる二人。
過去の持ち主が次々と失踪を遂げていたことを知り、身を守るため各短編に隠された謎を解くべく推理を試みていくのだが……
作家三部作之二。文庫版で読んだが、いやあ面白かった。刀城以上じゃね? これ当時ランクインしてた? スルーした書評家どもはbungeeに値する。
作中作の問題編と二人の解決編とのセットを繰り返す構成は怪奇的な作風のお陰で飽かずに読めた。きっちり多重推理もやりつつ、ラストには通しの謎もあったりしてね。更にはストンと落とすアレも。
あと、この人の話はなんか依存性があるんだよね。もっと読みたくなっちゃう。ヨーロッパ的不思議小説の趣もあったりね。
ただし現実パートの怪異の部分は冗長に感じられることもあり、特に金曜日は要らない。
作中作のベストは「朱雀の化け物」かな。「霧の館」「時計塔の謎」とか雰囲気良いのは他にあるんだけど、本作の胸糞の悪さとトリックの見事さに圧倒された。
これには本当に身につまされたわ。途中で一旦読めなくなったもん。そして仕掛けが巧かった。CCの新ネタだよね。考え付きそうで付かなかったネタだ。
しかしこの話は動機の掘り下げが欲しかった。そういう意味では前掲「時計塔の謎」も多分彼女はこうだったんじゃないかなと思うが闇の中。
三作目は怪談だそうで期待大。
追伸 CCを「嵐の山荘」と「テン・リトル・インディアン」に分けたのは新鮮だった。
164 :
名無しのオプ:2014/10/24(金) 22:56:14.37 ID:GGqtzhFU
荒らしは逝けや。
「狩久探偵小説選」(論創社)
以前「訣別――第二のラブ・レター」を読んでアマチュア臭いなーと思ってそれっきりだった(物理的にも読めなかったし)が、今回まとめて読んで印象変わったわ。プロの作家だ。
作風は本格派だが、名探偵が推理するというスタイルのものは少なく警察も絡まずに終わる。作者の犯罪に対する考え方が反映されている形。
前半の四編は少数派の名探偵シリーズ「瀬折研吉・風呂出亜久子の事件簿」。
様々な密室トリックを解き明かしていく。二人の掛け合いを始めユーモラスな筆致で面白い。こういうの国内古典では他に鷲尾の酔いどれ男&ストリップ嬢しか知らないが、いいね。
ただしトリックは良いけど解明がいい加減なのがマイナス。女の特徴(偏見)を押し出した演出だとしても、本格としてはね。
ベストは「虎よ、虎よ、爛爛と――一〇一番目の密室」。全体のベストもこれかな。逆密室殺人とも言うべき事件のおはなし。多重推理=どんでん返しの密度が濃く楽しめた。
その他の短編も片腕を犠牲にした凄絶な女優を描いたハッピーエンドのデビュー作「落石」や強盗に犯される未亡人を描いた「ひまつぶし」、
凝った人間消失トリックを用いた「山女魚」にアッと言うアリバイトリックの「恋囚」、大胆な二つの密室トリックが出てくる「共犯者」と佳作揃い。
この流れで「訣別」を再読すると印象が変わってきたみたい。
「落石」のトリックはクロフツの某作と同じだし、「恋囚」のも某世界傑作短編のバリエーションであるが読んで損はない。
示唆に富む随筆も合わせてお薦めである。
追伸
・「寝室的」って新しいな。
・「すとりっぷと・まい・しん」の選評読んで乱歩の頭の悪さを再確認した。
「火刑法廷」「ありふれた死因」の真相も理解出来てなかったし、飛鳥高に短編より長編書いたらとアドバイスしたりトンチンカンなおっさんだよ、ホント。
「ネメシスの契約」吉田恭教(光文社)
厚労省職員向井俊介は従妹から医療訴訟への協力を頼まれる。急性心筋梗塞で亡くなった患者を調べていく内不審な点が浮かび上がった。
夕刊紙記者周防正孝は自身が殺人犯の息子という事実に苦しんでいた。もしや冤罪ではないかとの思いを抱いた周防は八年前の首切り事件を洗い直すべく新潟へ向かう。
警視庁捜査一課の刑事副島佳苗は通勤途中に上司から連絡を受け目黒川から上がった死体の発見現場へと急行した。身元は行方不明となっていた少年で残虐な暴行を加えられていた。
三つの事件はやがて絡み合い、大きな悲劇が暴かれていく……。
「変若水」に続くシリーズ2作目。半本格といった感じで、本格ぽいトリックやどんでん返しがある一方、解明部分は直感頼りで甘く前々世紀的。
とまれトリックそのものは専門的ながら理解しやすい構造で○。医療トリック、首切りトリック、××トリックとあるが僕は最初のに一番感心したかな。
その後の意外な犯人及びどんでん返しも良かったのだが、そこまでやるかという不自然は残った。
小説としては前作同様軋みが散見される。幽霊に頼まれる行とか服買いに行って閃く行とか唐突で苦笑を禁じ得ない。俊介も閃き過ぎだし、仲悪い出世頭の秘密もしょぼすぎる。
大山鳴動して鼠一匹なところがこの人の弱点よね。
そして何より不満なのは美咲タンの出番が少ない! 出ても普通のいい彼女で物足りない!
やっぱ俊介との間にゴタゴタがないと美咲タンの魅力は活きてこないね。次作は一嵐来い!
最後に、作中には刑事の口を借りて死刑廃止論者批判が出てくるがこれは飛躍していて受け入れられなかった。でもラストの主人公の決断はGJ!
167 :
名無しのオプ:2014/10/26(日) 16:08:44.17 ID:RLM6fjab
やりたい放題に荒らすなあ。
168 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/02(日) 19:41:25.82 ID:DKwE/JWz
野村胡堂「銭形平次捕物傑作選2」。
嶋中文庫版で未読だった収録作品中の3作を読む。
・「九百九十両」
高利貸の盲人が検校の位ゲットのため貯めた九百九十両盗難事件、
平次は高利貸の娘からの依頼で探索を開始する・・・
最終的な金(というかこれを入れた竹筒)の隠し場所(杉丸太の間)が、
ちょい面白い程度な作か。
・「刑場の花嫁」
ちょい興を惹くタイトルだが、正に絵に描いたような勧善著悪の
ハッピーエンド。まあ、この手の話が好きという向きもあろうか(w
平次が自身に対する過信を自戒するラストは面白くなくもないが。
・「遺書の罪」
これは悪女ものとも読める偽装トリックをはじめとした展開が
楽しめる作ではあるが、武家社会の慣行として弟の敵討ちはNGな
はずなのに、何で自死したのか?
短編で基本設定が破綻してはこれこそNGかと思う(w
169 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/03(月) 23:29:00.41 ID:+VWuL4C0
谷崎潤一郎「夢の浮橋」を読む。
タイトルから源氏物語ネタ(見立て)の話かと思いきや、
勿論それもあるが、終盤に来てのミステリ展開(ムカデによる義母殺し、
なぜ嫁に寝間着の下のそれが見えたのか)にびっくり。
しかも、作中前半には、いわゆる主人公と若く美しい継母の間を匂わせる
叙述トリック的記述さえ見受けられるという、この板住人にも、
なかなか読ませる作である。
さすがにミステリも書くし、愛読もしていた大谷崎らしいくはある。
大学生(旧制)にもなって、継母のオパーイをチュッパチャップスって自体、
主人公曰く「物狂おしい行動」「狂気染みた心」と表しているとおり、
尋常ではないわな。
「幻の翼」逢坂剛(集英社)
稜徳会病院で起きた血腥い殺人劇はスキャンダルを恐れる政府与党や警察上層部によって詳細が握り潰された。
警察庁特別監察官の倉木は恋人の刑事美希の協力を得て事件のリポートをマスコミに流そうと画策する。
そんな時、能登半島沖で北朝鮮の工作船が発見され、捕まった男が漏らした言葉に倉木と美希は衝撃を受けた。それは死んだはずの男の名前だった。
「よみがえる百舌」のエロシーンを読むためにシリーズ読書再開して久しぶりに2作目をば。
書評家としての逢坂剛は数年前の酔狂の選評で見限ったけど、作家としては3冊くらいしか読んでないしエロのためなら仕方がない。
前作は殆ど覚えてなかったけど、あまり困ることはなかった。もちろんネタバレはあるが。
主人公たちは刑事ばかりでも警察小説というよりスパイもののノリ。
警察官という職業を軸にして個別の事件や組織の綱引き等の「日常切り取る」小説ではなく、陰謀を軸にして様々な事件やキャラクターたちを結びつけていくといった「非日常を濾し取る」小説なのだ。
だから飽かずにどんどん読める。リーダビリティがある。ここは文学賞の選評では付け入れられる疵となるだろうが、エンタメとしては正しい書き方だ。と敢えて断言する。
前作に負けないどんでん返し(ピートリック+叙述ぽいトリック)もあるし、ヤラシイエロシーンもあるのでお薦め。
つか精神衛生法怖すぎ。もう改正されてるといいけど。
「砕かれた鍵」逢坂剛(集英社)
麻薬捜査中の刑事が射殺された。犯人と相討ちかと思われたが、倉木は被害者が死ぬ前に言った「ペガサス」という言葉から第三の人物がいたと睨む。
一方調査事務所を開設した大杉は倉木の依頼で警察の内部告発本を出している出版社を調べることに。
そんな中、ある病院で爆破事件が起こり倉木と美希とにとって大切な人物が命を奪われた。復讐の鬼となった美希は独力で犯人を突き止めようと動き始めるのだった。
シリーズ3冊目。相変わらずのリーダビリティの高さ。エンタメはコーディネート。
サプライズもしっかり二枚刃で仕掛けられている。ただし続けて読むとワンパターンだなと思わざるを得ない。
このトリック確かに使い勝手は良い。きちんと仕込むと読者はカタルシスを得られる。ロスマクの某作のように。本作でも成功はしていると思うので、欠点とまでは言わない。
なのでしばらく間を空けて読むと良いだろう。
それとは別にクライマックスには驚愕の展開が待っている。
ちなみに今回エロはなし。残念。
「よみがえる百舌」逢坂剛(集英社)
過去のある事件に関係した元警察官たちが次々と殺されていく。死体の首には千枚通しが突き刺さり百舌の羽根が残されていた。
死んだはずの百舌が生きている!? 警部となった美希は大杉と共に連続殺人に挑むが自身も狙われることに。
果たして百舌の正体は?
さあ遂にエロ天大聖ここまできた。なかなかのボリュームですがエロのためならペプシコーラ。頑張って読みました。
しかし、期待はずれ! 部分的になぶるだけだし場面も短い。手マンして羽根で背中なぞって挿入するだけ。ものた りぬ。
ミステリーとしては、百舌と百舌を操るバードウォッチャーとの2人のフーダニットで引っ張る訳だが、伏線がろくすっぽないので単なるイーッ!でしかない。
まあそれに絡んだ叙述トリックは悪くないけど、それもあくまで局地的な話であって加点は小さい。
それともう一つダメなのは思わせぶりな人物が結局何もないというところ。あの人は何か魂胆があるはずだと思うし、あの人だってあれで終わりじゃないと思うのに見たまんまなのはいただけない。
或いはこの辺りが逢坂剛の限界と言うか、本格の素養はありながらもセンスがないってことかも知れないね。
後は……自スレで評価の高い短編くらいは読んでやるとするか。
173 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/08(土) 14:41:45.25 ID:oGXRDA5S
壺井栄「二十四の瞳」、竹山道雄「ビルマの竪琴」を久々に一挙再読。
いずれも映画化作品も名作の誉れ高い。
今回、両原作を精読するに、映画は原作準拠を心掛けたのが傑作足り得た因
のひとつだと確信。
(無論、木下恵介、市川 崑という日本映画史上に残る名匠の手腕も十分評価
するに躊躇するものではないが)
ラストの一本松の写真をめぐる感動的エピ(ソンキ役の若き田村高廣氏の好演が絶品)、「おーい、水島、一しょに日本に帰ろう!」の鸚哥のエピ等々、
全て原作には有る。
ビルマの方は、作者自身が「ビルマの竪琴ができるまで」で「推理小説のようなサスペンスを工夫」と記しているとおり、序盤は水島に似たビルマ僧は本人
なのか?、であるなら何で隊に帰ってこないのか?という謎の解明で興を惹き、
後半では、ビルマのジャングルを舞台にした水島上等兵の冒険的内容で
読ませる面あり。
前者は右から、後者は左からの批判も有り得よう作だが、
(前者には作中で触れられる左翼思想の批判的観点からの指摘はなく、
後者には軍隊組織が持つ負の側面には全く言及されない)
内地と外地(戦地)という舞台の違いはあれど、共に戦争の悲劇を
メーンテーマに置いたリアルなファンタジー、メルヘンの色彩が濃いは言える。
小石先生ならぬ大石先生、水島上等兵のようなキャラ(特に後者)は
その実在性は別として「あるべきキャラ」であってこそなのであろう。
174 :
名無しのオプ:2014/11/08(土) 15:40:24.71 ID:/B4hoaOf
林、いっしょに病院還ろう
175 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/09(日) 15:33:13.99 ID:e+ORHmV+
西村京太郎「消えた巨人軍」を読む。
70年代、80年代初めぐらいまで(トラベルミステリ量産体制に入る前)
の西村作品はそれなりに面白いものが多いのだが、
これは今ひとつの出来、「消えたタンカー」「消えたクルー」等の
海洋ミステリのような不可能犯罪ものを期待すると見事に外されます。
張本が巨人に在籍していた頃のOH砲時代(長嶋は既に監督)、
リアルでは超キャラ立ちしている長嶋、読売の本作刊行当時の球団社長等の
存在感がゼロなのが、何とも「小説」としては残念な感はある。
阪神との対戦のため甲子園球場に新幹線移動中の巨人選手一行が
集団誘拐される、警察の捜査にもかかわらずその行方は不明、
球団関係者の苦悩は深まるばかり、ここに米国帰りのハーフの私立探偵
左門寺が活躍と相成る。十津川警部ほど人気は出なかったものの、
後にシリーズキャラとなるが、本作に関しては作品のリアリティを殺ぐ
いらない存在としか思えぬ。
集団捜査によりじょじょに犯人グループが絞り込まれ、巨人選手の
行方が判明して来るといった警察小説的書き方をした方が、
臨場感ある面白い作になったと思われだ。
まだ、プロ野球がナショナルパスタイム足り得た昔懐かしい時代、
隔世の感ありとは言い得よう。
「赫眼」三津田信三(光文社)
著者初のホラー短編集。
「ついてくるもの」から遡った。相変わらず良い。あらすじだけ抜き出せば似たり寄ったりな気もするがそれをあの独特な文章が各個確固とした怪談に仕立てていると思う。
ただ怪異に一応の説明すら付けずに終わっていることが多々あり、これは評価が分かれるところかも知れない。
あと合間に掌編が挿入される構成はグー。「幽剣抄」も「悪魔なんかこわくない」も良いホラー短編集はみなこうだ。願わくば短編をも凌駕する切れ味鋭いものが一つでもあれば良かったのだが……。
ベストは唯一ミステリーとしても読める「灰蛾男の恐怖」に。戦前戦後にあちこちで出没した怪人による殺人の謎に三津田が迫るというモノ。あのフレーズが耳に残る。
次点は全編通話の「よなかのでんわ」。限られた落としどころの中巧みに怖さを醸成している。
夏のミスマガに載ったのも良かったし、この人の短編をもっと読みたい。
「人間の尊厳と八〇〇メートル」深水黎一郎(東京創元社)
酔狂賞受賞作含む短編集。
鬼面人を驚かす類のものはなく、そこそこのサプライズが並んでる印象。
ベストはやはり表題作か。バーで隣り合った男から奇妙な勝負を持ちかけられた主人公。話を聞く内次第に引き込まれていくのだったが……。
二重のドンデン返し。抑えた筆致ながらその衝撃悪くない。
他はちょっと小粒或いは類型的かな。最後のは芸が足りないと思う。あれだけの長さならもっと伏線撒いて凄いこと仕掛けるべき。
自作解説もちと自信過剰気味でもしやあまり読んでない?
深水はウルチモで切ってたけどもすこし読んでみよかな。
178 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/16(日) 18:32:57.67 ID:Gb+qOTbx
黒川博行「後妻業」を読む。
著者の直木賞受賞後第1作、素材の面白さもあってかなり売れてるようで
ある。ヤクザ上がりの結婚紹介業者と組んだ悪女(と言うても69歳の婆)
が資産持ちの爺を文字どおり食い物(財産、更には命さえも)にしてゆく
犯罪小説。
作中で言及される現実の事件を想起させて、かなりグイグイ読ませるものあり。
ただし、時代のせいか、この現代のピカレスクロマン(悪漢小説)の貫徹は無し、
最後には後妻業に関連した殺人者たちは自滅してゆく・・・
何か惜しい感あり、ここは悪のサクセスストーリーで突っ走って欲しかった
のだが。
美大出と法律には門外漢の作者でありながら、公正証書、戸籍制度、登記制度等
の法律ネタ満載(決して手際よくわかり易く纏めたとまでは言い難いものは
あるが)で、この点は読み応えはある。
179 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/22(土) 20:53:44.95 ID:/oEbkCX/
角田喜久雄「黄昏の悪魔」を読む。
古い作であり、本格ミステリでもないが、この作者の伝奇小説でおなじみの
ストーリーテリングは健在。
戦争で両親を失った若い女性を主人公にした巻き込まれ型の
サスペンス・ミステリの世界に惹き込まれるものあり。
中盤を超えても、ヒロイン自身にもなかなか状況が見えて来ないサスペンス
は強烈なものがある。後半の横溝正史まがい(と言うては失礼な表現かも
しれぬが)の片桐家の様は前半の都会派サスペンス小説の世界との落差が
大きいゆえか、逆にコントラストが明確で面白いものあり。
加賀美警部もの等と異なり、完全に忘れ去られた作ではあるが、
案外な拾い物であった。
180 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/23(日) 17:53:12.12 ID:mHJuz6fd
甲賀三郎「妖魔の哄笑」を読む。
列車内の殺人を契機とする通俗サスペンス・ミステリというか、
臆面もない御都合主義連発で犯人捜査・追跡のスリルを強調した
いわゆる大衆スリラーであり、現在視点で多くを語るべきほどものはない
作である。
前半部分の主人公が文字どおりの素人探偵(何しろ偶然に殺人事件の現場に
遭遇した単なるリーマン)、しかし、この点からはスリルよりも何気に
ユーモアさえ漂うどじっ子ぶりの方が印象的だ。
捜査担当の水松警部からして、犯人取り逃がし常習犯(?)。
かなりのどじっ子ではあるが(w
181 :
名無しのオプ:2014/11/24(月) 10:42:00.55 ID:6YtEcszo
乙です
甲賀三郎は当時の人気作家らしいけど青空文庫で読んでみます
182 :
名無しのオプ:2014/11/24(月) 10:43:40.99 ID:OURsyRVo
幼稚な自演w
183 :
名無しのオプ:2014/11/24(月) 11:48:32.24 ID:i7yLKBt7
書斎は自演なんかしない。
184 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/24(月) 15:47:36.46 ID:C0iC76st
西村京太郎「マンション殺人」を読む。
トラベルミステリ量産体制前で、わりと読ませるものが多い最初期西村作品に
しては今ひとつな出来だが、昭和40年代のマンションブームという
社会派ネタを取り入れた刊行当時はカレントな作と思われ。
都心の高級マンションと都下ニュータウン集合住宅で発生した2つの
殺人事件、一見、無関係に思われたが、じょじょに関連を示す背後の事情が
判明してゆく・・・
浴槽内殺人の消えた凶器の謎解きはお粗末(何と浴槽そのものが凶器という
あっさりおとぼけぶり、現場検証や検死解剖でわかるやろと・・)だし、
そもそも犯行に無理有り過ぎ、誰かには感づかれて当然な状況である。
動機面(リベンジ)に関連するマンション販売詐欺の手口も、
今から見ると非常に単純過ぎ。
以上、ミステリとしての魅力は薄い警察捜査小説なんだが、
現代では過疎化、ゴーストタウン化が問題になっている
草創期のニュータウン(多摩ニュータウンがモデルであろう)の様が
懐かしくも、隔世の感あり。
当時はニュース等でも、その開発・発展の様がよく紹介されていたものである。
185 :
名無しのオプ:2014/11/24(月) 16:41:25.16 ID:i7yLKBt7
休日の夕方、書斎の論考を読みながら、グラスを傾ける。
至高のひとときだ・・・。
186 :
名無しのオプ:2014/11/24(月) 19:03:38.04 ID:hByBwurV
復刊の「フローテ公園」読んだ。
いやぁ、びっくりしたなぁ。クロフツらしく、じみーな中盤の積み重ね。
面白くよんでいたが、なんか犯人序盤からなんとなくわかるし、
意味なく、舞台を南アからイギリスに移すのもいつものパターンだし、
アリバイトリック?おい、それ買収だけだろうと突っ込みながら、
でも、まぁこれがクロフツらしさだよなぁと、思いつつも読み終えようとしたら!
あざといトリックだよなぁ。今では通用しないものだけど、クロフツの作風の
先入観があり、そこまでべたなトリックを使用するとは思いもしなかった。
思い返せば「スターヴェルの悲劇」もそうかとは思いついたが。。
案外、リアリスティツクな作風よ思わせつつ、読者サービスに重心を置く
作者ではなかろうか。
187 :
名無しのオプ:2014/11/24(月) 22:13:27.90 ID:tniTDWNR
古い本ばっかりだな・・・書斎も読後感も・・・
新刊を買う金がないのか?
188 :
名無しのオプ:2014/11/25(火) 11:19:15.35 ID:Xv3i4J8m
新刊がめぼしい作品が見つからないんだよ
メディアの書評はホメ殺しみたいなのが多いし…
189 :
名無しのオプ:2014/11/25(火) 12:43:18.57 ID:Kbe/gsMk
読後感はともかく
書斎は他人様の読書感想サイトからパクっているだけだから。
190 :
名無しのオプ:2014/11/26(水) 07:59:59.16 ID:1t+kmo3Y
逆でしょ。
書斎はいつもオリジナルだよ。
191 :
名無しのオプ:2014/11/26(水) 13:11:43.21 ID:E4dvrUF9
血蛞蝓
めくら頭吊
なるほどオリジナルだw
192 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/27(木) 20:58:08.93 ID:72I2oAuY
「後妻業」も古い本とか。
何かしょうもねぇなあ(w
まさかあの世界がタイムリーにリアルなって来るとは。
193 :
名無しのオプ:2014/11/28(金) 07:11:02.54 ID:Rk8l/Sno
>>192 後妻業はともかく、大半がブックオフでも置いてないような本じゃ
感想書いても意味ないでしょ。
194 :
名無しのオプ:2014/11/28(金) 11:29:04.61 ID:d+igCD+/
お前のレスのほうが無意味なわけだが…
195 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/29(土) 02:07:50.40 ID:bRm6lR8W
>>193 >後妻業はともかく
まず、これを書かないと駄目でしょ(w
>大半がブックオフでも置いてないような本じゃ
アマゾンやライブラリー・・・(w
196 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/29(土) 19:11:09.42 ID:tJjTnut8
遠藤周作「真昼の悪魔」を読む。
案外と面白く読了。サイコミステリの範疇に入る作であろう。
果たしてヒロインの女医を「サイコ」と称するか否か、
この事自体が本作のテーマでもあると思われ。
内面の神秘(ミステリー)を探る推理(ミステリー)長編小説と
文庫本カバー裏には記されているが、
「ミステリ」として読み、評価するのであれば、解説者は
叙述トリックが使用されている点を指摘しないと駄目であった。
「作中で主人公が女医の彼女とだけ書かれ、その名が終り近くまではっきり
しないのも、主人公が普遍性をもつ人物であることをしめすためだと
みなされる」
遠藤氏はミステリ作家ではないので、外しているとはまでは断言しないが、
この評だけでは駄目でしょ(w
(犯人名はこの引用文に先立つ部分で諸に明記)
197 :
193:2014/11/29(土) 22:21:14.42 ID:oOkMlgow
でも結局、古すぎて誰も興味なしw
198 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/11/30(日) 20:30:17.64 ID:lXeHPJi4
遠藤周作「闇の呼ぶ声」を読む。
これもコリアン先生の手になるミステリ。
70年代前半に精神科医を探偵役にしたサスペンス・ミステリというのは
本邦では先駆的ではなかろうか。
しかも、ぱっとしない中年男(妻子と共に安アパート暮らし)というのが
リアル、ではあるが、勤務先がどう見ても慶応病院(精神医学のメッカのひとつであり、OB)というのが、いかに昔の話とはいえ「?」。
精神医学と心理学を駆使した探偵役の分析と彼に協力する若き新聞記者の調査により、謎の連続失踪事件の裏には戦時中のコリアンならぬコーリアン(w
のリベンジがあった
ことが判明するが、当然リベンジの対象たるべき人物のひとりは
完全スルー状態、殺人の実行犯は形はどうあれ生き残り、
結局、死んだ(殺されたではないのがミソ)のはリベンジとは直接無関係な親族(従兄弟)のみという、何となくすっきりしない結末。
異色作とは言えるが、連載当時、ハードカヴァー刊行当時に
ミスオタにも、一般読者の間でも話題にならなかったのは仕方あるまい。
カタルシスが無さ過ぎなんである。
若きヒロインとその恋人がハッピーエンディングなら良しというわけでもあるまい。
199 :
名無しのオプ:2014/12/01(月) 10:24:04.99 ID:QFLx0EGq
ああ、それは野村芳太郎監督で映画化されたのを観たな
週刊新潮の連載小説だったと思うが話題にならなかったわけではないと思ったけど…
200 :
名無しのオプ:2014/12/02(火) 08:51:23.55 ID:BsmuWy+H
遠まわしに言わずはっきり言ってやれよ。
映画見ただけで原作読んでないだろバカ書斎
って。
201 :
記憶喪失した男:2014/12/02(火) 20:05:07.36 ID:feMV35Ms
「○○○○○○○○殺人事件」 早坂吝
83位/489作品。日本語小説。
題名当て推理小説である。オチはめっちゃ傑作だった。傑作すぎて犯人が誰かわからない。
秘境ものである。ネタバレしてはいけないらしいので、思う存分語り合いたいものだが、
秘境ものだというにとどめておく。
202 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/06(土) 23:37:42.46 ID:Y1k32NEs
小林信彦「夢の砦」を読む。
著者が「坊っちゃん」61年度版(西暦)を意図したと語る
若き日のミステリ雑誌編集者時代の体験・見聞を小説化した読み応えある
青春小説である。テースト的には60年代の村上春樹と言うた感もある。
本作自体はミステリではないが、(おそらく実話ネタがありそうな鉄道トリック
まがいの社内不倫エピとかはあるが)、草創期のミステリ雑誌に興があれば、
グイグイと作中に引き込まれてしまうであろう。
編集者の業務は小説の主人公に成り難いという実体験に拠る作者の判断から、
雑誌編集の細部の様はあまり詳述されないのは、ちと残念な感はある。
本作のメーンテーマは、あくまで年代、業界、地域が限定されたものとはいえ
ある「時代」を描くということにあるせいもあろうか。
203 :
名無しのオプ:2014/12/09(火) 03:29:43.61 ID:L6iQ0T5o
204 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/13(土) 08:35:44.82 ID:gN9pvsPm
井上靖「天平の甍」を読む。
堂々たる芸術選奨作ながら、若き遣唐使たちを主人公とした冒険小説
(当時の渡航は正にこの言がふさわしい)とも読める。
この著者の歴史小説の特徴であるが、詳細な歴史事項の書き込みが
本作をコンパクトでありながら読み難いものにしているのが惜しい感もある。
鑑真帰朝に至る若き僧たちの人間模様は読み応え溢れるものだけに。
萌えキャラ表紙の新書版、文庫版ミステリをアホ面して読み耽っている
ミスオタに言いたい、各人の宗教観や人生観はおくとしても、
喪前たちは本作に登場する僧たちの何万分の一、否、何百分の一さえも、
「生」を全うしているのか?と。
遂に鑑真来日を実現する普照、彼と志を共にしながらも病に倒れる栄叡、
脱落し唐人の妻子を得て異郷の土となる玄朗、
フロンティア精神に富みひたすら放浪の途をたどる戒融、
自身の才を見切りひたすら写経(主観を入れぬ原典資料収集か)にまい進
する業行・・・
そう、彼らはとにかくそれぞれに「生きた」のである。
205 :
名無しのオプ:2014/12/13(土) 10:27:44.78 ID:tfhvVXY0
なんだか、スレ違いのような…
もちろん、書斎さんの熱い論考に敬意を表したいとは思いますが。
206 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/14(日) 13:19:56.97 ID:bGgG2nhw
藤沢周平「風の果て」を読む。
藤沢作品中ではさほど著名な作ではないが、たまたま手にして、
まずまず当たりというところであった。
現代の社内抗争にも通じるような
北国のある藩の権力闘争を描いて間断するところがない面白さである。
特に小禄ながら真面目で欲が薄い主人公が農政の現場で実績と人望を築き
ながら藩の重役である執政まで上り詰め、若き日の道場仲間たちと
権力抗争、果し合いをするに至り、権力というものが持ついわば「魔力」を
自覚せざるを得ないことになる。この展開は見事。
しかしながら、オーバーフィフティ同士のカッコ良くないものとはいえ、
藩の重役がガチンコで果し合いってのは、漫画ちっく過ぎるクライマックス
であり、やや引くものはあり。
とは言うても、この板的には、
ミステリも書く作者だけに、藩内の権力抗争をめぐる陰謀の詳細が判明
して来る後半のくだりは面白く読ませるものはある。
207 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/21(日) 20:22:45.84 ID:9tei1u3Z
有栖川有栖「高原のフーダニット」を読む。
相変わらず大好評な収録作品全話講評逝ってみましょう!!!
・「オノコロ島ラプソディ」
うーん、トラベルミステリちゅーよりは、淡路島舞台の観光小説としては
楽しめるんだけんどね。
ミステリとしてはふざけ過ぎですわ。
オコノロ庵は可動式って、何じゃこりゃ(w
元刑事のおっさんは客観的に判断すれば公判なら偽証罪成立でしょうが。
・「ミステリ夢十夜」
これは漱石ネタによるアリスのお遊び。
細かく云々するのは野暮ってものでしょ(w
・「高原のフーダニット」
一卵性双生児の兄弟が2人共殺された。弟殺しを自白する兄からの連絡が
火村のもとにあったのだが・・・
弟殺しの犯行現場(洞窟)の立地から見て、
犯人は普通にミラーと双眼鏡持ってる香具師ってこと。
一応、理詰めとは言えるが、それだけで面白味は薄い作である。
オノコロ島同様に観光小説としての魅力は十分なんだけどね。
あとがきによると、近年の作家アリスは田舎を舞台にしたミステリを書く
ことに興を惹かれているとか。
情景描写の冴えの因はこの辺にあろう。
「ドラフト連続殺人事件」長島良三(リヨン社)
プロ野球チーム「東京キャッツ」の監督新藤敏彦がホステスから強姦で訴えられた。
あくまで冤罪を主張する新藤だが降って沸いたスキャンダルに動揺したフロントは彼を更迭する。
新藤の娘万里子は失意の父を見かねかつての恋人で編集者の純平を頼り、協力して父の無実を証明しようとするのだが、殺人事件が発生し新藤は更なる泥沼にはまり込んでしまう……。
ミスマガの追悼エッセイで本作を知り、フランスミステリーの泰斗が如何なる創作をものしたかと期待して読んだ。
うーん、普通。駄作ではないが傑作とも言えず、凡作ということになっちゃうかなあ。
典型的な私立探偵スタイルで推理するよりは当たって砕けろで道が開けていく感じ。真相はご都合主義で展開に捻りがない。
フランスミステリー風のトリッキーなミステリーを読みたかった。
「血の季節」小泉喜美子(早川書房)
弁護士から殺人犯の精神鑑定を頼まれた精神科医は彼の独房へ赴く。
昼間が苦手というその男は人形の足を握り締めながら自らの過去を語り始めた……。
「弁護側の証人」以来二冊目。吸血鬼をモチーフにした作品。
男の回想と幼女の惨殺事件の捜査とがクロスカッティングで進み、ラストで謎解きが明らかになるという結構であるが、はっきり言って冗長。
やりたいことは解るが長編を支えるには柱が足りない。ダラダラとだぶついた回想を読ませてバタバタと推理を提示して、では傑作とは言い難い。
ぶっちゃけ捜査パートいらないんじゃないかとさえ思う。
前半の〈お城〉での交情の場面なんかは三津田ぽさもあっていい味わいなんだけど活かしきれなかったね。
この分じゃ「ダイナマイト円舞曲」もあまり期待できそうにないな。
「蛇棺葬」三津田信三(講談社)
母が死に幼くして父の実家である百巳家に預けられることになった僕。田舎の閉鎖的な素封家の一族の中で邪険にされていた僕の唯一の救いは元乳母の民婆と過ごす時間だった。
民から教えられた言い伝えの数々と、好奇心が仇となった“百蛇堂”や百々山での恐怖体験。そして20年後、僕は再び百巳家を訪れた……。
作家三部作最終作の前編ということで期待して読んだが、何か肩透かし。やはり「百蛇堂」とセットで評価すべき作品のよう。
なので本作のみで語れることについて書く。まずダラダラとした日々の描写が長すぎる。それ自体は複数のエピソードの連続なのでそれなりに読めるし冗長というには当たらないのだが、やはり長いと思った。
あと殆どの登場人物が語尾に「け」を付けるのがわざとらしくて鼻につく。
あと致命的だけどあまり怖くないんだよね。長さは怖さを減ずる。これホラーの鉄則。見せ場を勿体ぶりすぎるのと分散させているのが原因かな。
あと関係ないけど解説の柴田よしきはツイッターがDQNで嫌い。
まあ後編に期待。
「百蛇堂」三津田信三(講談社)
編集者兼作家の三津田信三は知り合いの編集者から作家志望という男を紹介される。
その男龍巳から渡された原稿には、彼が幼い頃に預けられた父親の実家で休験したという奇怪な出来事の数々が綴られていた。
原稿にのめり込む三津田だったが、読み進むにつれ彼の周りで不気味な現象が起こり始める。そして、原稿を見せた同僚の女性は自身の恐怖体験を語った直後に跡形もなく消え失せてしまう。
龍巳の原稿のせいでただならぬ状況に陥ったと悟った三津田は親友飛鳥信一郎、祖父江耕介とともにそれに隠された秘密を暴こうとするのだが……。
「蛇棺葬」後編。前作を作中作として展開していきます。
例によって脱線が多く、おまけにすぐ荊作の謎の解明に乗り
出すのかと思いきや、現在にまた様々な怪奇現象が謎が出てきてこれがちゃんと収束されるのか心配になります。
中盤になってようやく二人の探偵役のうち、現実路線担当の
飛鳥が百蛇堂での人間消失の論理的推理を始めますが、物語
はそこで収斂するどころか、更に深淵へと伸びていきます。そして三津田がたどり着く真相は……。
作者はミステリーとホラーの融合などではなく、明確に怪談を志して本作を書いたそうで、読み終えるとその狙いは成功しているように思います。
謎を解くという行為はミステリーにおいては物語を終わりに導きますが、怪談においてはより恐しい結末へと到達させてしまうのです。
ちなみに私が一番怖かったのは、川に囲まれた家です。あの独特の雰囲気は妙に既視感があって胸に迫ってきます。
あと、リング2の影響が感じられる箇所もあってあそこも結構怖かったですね。
最後に、喫茶店の女主人のガンは未解決じゃね?
212 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2014/12/29(月) 20:31:14.47 ID:M7rvXszK
大坪砂男「探偵クラブ 天狗」を読む。
最近、文庫全集が刊行されたが、その作風を知るにはコンパクトな
本書の方が適かと思う。
肌に合わないのであれば、文庫全集逝ってよし!!!(w でオールOKな
わけだし。
しかも、本巻の解説はあのミッチーこと才人都筑道夫なんである。
それでは、早速、収録作品講評逝ってみようか!!!
・「天狗」
ねらー的な主人公が笑える表題作。
そこは何気に素知らぬふりするのがオトナの男の態度やろと(w
美人の用足しシーン(文字通り)を覘く結果となってしまった男の完全犯罪
(これも文字どおり)を描く作。
話そのものはおもろいが、ダイナミック過ぎる殺人トリックはわかり難いものあり。
・「三月十三日午前二時」
三大に渡る女性家族の悲劇。本作も井戸に仕掛けられたトリックは正直言うて
わかり難いものの、長編化しても面白いテーマだったかとは思う。
・「黒子」
本作を執筆中の作家視点で進行という趣向は面白いのだが、逆にこの点で
ストーリー上は読み難くなってしまっているのが難。
・「立春大吉」
氷柱の銛ネタ。ミステリ的にはユーステスの氷の短剣のバリエーションに
過ぎず、おもしろうはないし、相変わらず独自の読み難い文体が鼻につくもの
あり。
213 :
記憶喪失した男:2015/02/06(金) 19:41:28.76 ID:Wzn2klWu
早坂吝が二作目だしたらしいな。
エロミスだとかwwwwwwwwwwwww
まさかのらいち推しとは。
短いページ数だし、買って読むわ。
214 :
名無しのオプ:2015/02/07(土) 08:32:54.15 ID:9ukHU/iZ
>>213 デビュー作のらいちの言動から、最初からシリーズ探偵として使う構想があったとは思えないけどw
編集に請われてシリーズ化させたのか、読者人気が出たのか。
215 :
名無しのオプ:2015/02/07(土) 14:05:24.22 ID:dkIL0jDT
相変わらず書斎と読後感の格差が浮き彫りになっているね
216 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/02/07(土) 23:25:09.23 ID:yHn7poZF
本堂平四郎著・東雅夫編「怪談と名刀」を読む。
怪談と銘打たれているし、ドロドロな恐さかと思いきや、
時代性もあって決して読み易い文体ではないものの、日本昔ばなし的な
トンデモ、ビクーリな楽しい話も多数。
かなり楽しめるものがあった。
217 :
名無しのオプ:2015/02/08(日) 09:26:41.66 ID:EJ5KQ+Ak
>>215 同感。読後感氏の「俺も読んでみよう」と思わせる感想に比べて
書斎の無味乾燥な粗筋ときたらw
「忍法相伝73」山田風太郎(戎光祥出版)
貧乏リーマンが先祖伝来の巻物を読んで実は自分が伊賀忍者の末裔だったと知り、行きずりの大学教授の力を借りて巻物に記された珍妙な忍法の数々を駆使して世直しをするというナンセンスファンタジー活劇。
ミステリ珍本全集スタート! 「くの一忍法帳」しか読んでない癖にこういうのを読みたがるミーハー。それが私だ。
だがつまらん。
コンセプトは良いのだが、一編が長すぎる。アイデア本位で骨までしゃぶろうとするから間延びしちゃうの。
というか、その間延びこそメインなのかな。社会問題に関して逆説的な主張が長々と開陳されるところが。
いずれにしろ退屈。全体を繋ぐ謎も最後の最後でダッシュで種明かしする脱力ぶり。これは世に出なくて正解。入道。
他の収録短編も落ち穂拾いに相応しい出来で敢えて言及する価値はない。
つか月報がキモい。前から思ってたがこいつナルシストだよね。誰に読ませる文章なんだっつうハナシ。これがイケメンだってんならまだしもおにぎりのお化けだからね。
「十二人の抹殺者」輪堂寺(戎光祥出版)
元旦、同じ敷地内に家屋が隣接する結城家と鬼塚家の全員に届いた悪趣味な年賀状。それは凄惨な連続殺人の到来を告げる開幕ベルだった――。
密室で、或いは足跡のない雪上で、次々と屍を晒していく両家の人々。
事件の捜査に当たった広島県警の佐藤警部は入院中の甥、私立探偵江良利久一の助力を得て犯人を突き止めようとするのだった。
珍本全集2冊目。庭園内の五つの家で首吊り事件が連発する「人間掛軸」同時収録。タイトルとあらすじからして珍本の匂いがチンポンするね。
読んでみると、ポツポツとアラが目に留まる―トリックが機械的で類似的、クイーンを模してる割に推理が杜撰―し傑作とは言えないが、マニアならこの形にワクワクするのだろう。
とにかく人が死ぬ。ここまで上手く行っていいのものかってくらい順調に殺されていく。流石に犯人については途中で見当がついたが、死亡率からすると良く隠してる方かと。
「人間掛軸」は表題作以上の不可能状況が矢継ぎ早に起きる。何しろ首吊り死体が現れたり消えたり、被害者消失と死体出現にタイムラグがあったりしてこりゃどう辻褄合わせるのかと思ったら……
まさかのオチ。これ映像化したら殆どドタバタギャグだね。
正直読んで良かったとは思わんけど、「発酵人間」も読んじゃいそうでいやだなあ。
「恐怖小説コレクションV 夢」(出版芸術社)
『評価』
△、○、○、△、○、○、○、◎
『感想』
何故3巻からかと言うとコミさん(こう呼ぶと不遜であることは承知しているが、「田中氏」「小実昌先生」ではご本人が嫌がられると思うので)の「氷の時計」を読みたかったから。
かつて宮部のみっちゃん(こう呼ぶと不遜であることは承知しているが、「宮部女史」「みゆき先生」ではご本人が嫌がられると思うので)が
都筑のみっちゃん(こう呼ぶと不遜であることは承知しているが、「都筑氏」「道夫先生」だとご本人が嫌がられると思うので)が評価している風にと書いていたから。
土砂崩れで自宅が倒壊し家人を押し潰された翻訳家はどこへ消えたのか? 確かに良くできていたが、別に怖くはなかった。
ベストはラストの「Uターン病」(式貴士)としたがこれも良い話であるものの怖くはない。純粋な恐怖で言えば「いなかった男」(久野四郎)かな。でも全体的に怖くない。
221 :
記憶喪失した男:2015/02/10(火) 19:22:12.83 ID:uV4qMG+i
「虹の歯ブラシ」について議論していて見解がわかれたんだけど、
現代のエロ漫画における触手ものは、「射精をするし妊娠もする」という意見が出たんだけど、
おれの認識では、触手ものは「射精をしないし、妊娠もしない」というか妊娠するエロ漫画はほとんどない。
はずでどっちが正しい?
222 :
名無しさん:2015/02/15(日) 13:25:47.36 ID:mdYH02NP
「宰領 隠蔽捜査5」今野敏(新潮社)
今日も淡々と職務をこなす竜崎の元へ伊丹から連絡が入った。国会議員の牛丸が地元福岡からの帰路行方不明になったのだ。牛丸の秘書は元キャリア警察官で、内密に彼を捜して欲しいと頼んでいるという。
渋々頼みを引き受けた竜崎だったが、大森署管内で議員の車が発見され中にはナイフで喉を切られた死体が発見される。
長男の3度目の東大受験が迫る中、正念場を迎えることになる竜崎だが……。
本シリーズは主人公の魅力に拠る所大のキャラ萌え小説或いはハウダニット小説なのですが、流石にもう飽きが来ますね。
キャリアに反感を抱くノンキャリとの対立→和解の流れも最早予定調和としか読み取れなくなってしまいました。
事件の真相に関して珍しくどんでん返しが用意されていましたが、何やら唐突な印象でした。竜崎に名探偵役があまり馴染んでないですし。
そろそろ何か大きな転換が必要だなあ。あるいは幕引きが。
224 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/03/01(日) 17:47:06.41 ID:u0CXTU8Q
結城昌治「赤い霧」を読む。
私立探偵真木シリーズと同様な結城昌治流ハードボイルド・ミステリだが、
弱小芸能プロのマネージャー(元劇団俳優)が主人公という異色作である。
決して短い作ではないが、往年の人気女優の殺人事件をメーンに
会話主体で物語は軽快に進んでゆく。
真木が依頼者がいるとはいえ、基本「私に命令できるのは私だけ」主義であり、
真実を追求するスタンスなのに対し、本作の主人公はその職業上、
あくまで所属タレントをガードする方向で行動してゆく、この辺の展開も
当然とはいえ、ミステリとしては実に変わった展開と言い得る。
タイトルの「赤い霧」は、実は本筋に直接の関連はせず、遺伝病による狂気
の象徴として語られる。
この辺の表現は現代では極めて不味いものがあるかもしれぬが、
現代でも通用するテーマを40年も前の作が正確に着眼しているのは見事。
綿密な取材をしたのであろうか、芸能界の有様も現代とはさして変わらない感もある。
また、登場キャラが脇に至るまで簡潔かつビビッドに描かれているのも
この作者らしい魅力、ジョッキーあがりのナイトクラブ経営者と力士あがりの
その用心棒、芸能事務所の魅力的なおデブちゃんOG等々。
「火の接吻」戸川昌子(扶桑社)
画家の家が全焼し、主人が死んでしまう。原因は火遊びをしていた三人の幼稚園児とされるが、彼らは火を吐く男のせいだと言い張った。
そして26年後、街では放火魔が跳梁し犠牲者が増え続けていた。使命感に燃える消防士、そして刑事がその正体を暴こうと追い続けるのだが……。
消防士、刑事、放火魔の3者の三人称一視点によるクロスカッティングで進んでいく。最初はありがち〜と思いきや、どんどん意外な方向に逸れてきてラストこうきたかと。
本格としては評価出来ないし、ちょっと違和感ある道具立て(ライオン)があったりもするけど、上質なサスペンスかなとは思う。外人にもこのくらいが丁度良く受けそう。
ちなみに新本格直前の84年刊。
あと流石女流作家と言うべきか、人物描写に光るところがあった。放火魔と母親との関係とか巧いと思う。ゴールドマンみたい。
「Jの神話」乾くるみ(講談社)
全寮制の純和福音女学院に入学した優子の学園生活は初日から遅刻するなど不安なスタートとなる。しかしやがて優しい先輩や仲良しの同級生に恵まれ楽しくなり始めた。
その矢先、生徒会長の真里亜が怪死を遂げた。皆から慕われていた人物の死に動揺を隠せない生徒達。優子もその一人だったが、事件を境に何故か親友椎奈とも疎遠になっていく。
一方、黒猫の異名を取る女探偵美音子は娘を立て続けに喪った父親から依頼を受ける。姉は夫ともども自宅で死に、妹は学寮で死んだ。
そして二人とも妊娠しており、死因は出産或いは流産によるショック死だったというのだ。しかも赤子の姿はなかった。
これは単なる偶然か、それとも?
どんでん返しならぬまんぐり返しのあるミステリーと聞いて期待して読むも落胆。確かにまんぐり返るけどさあ、あれだけじゃどうしようもないよ。せめて手マンくらいして貰わんと興奮しようがない。
何か所かあるレズ描写(?)はノイズがあってこれまた実用には適さない。
ミステリーとしては、奇妙な死因の謎をどう解き明かすのかと思いきや、いつの間にやら海野山風々になっちゃってちょっとびっくり。
案外自然にアウターゾーンに入ったからそこまで気にならなかったが、ミステリーじゃないわな。いや待てよ、中世ヨーロッパの魔女狩りについての歴史ミステリーとしての側面はある……かも?(笑)
「山田風太郎ミステリー傑作選@眼中の悪魔〈本格篇〉」(光文社)
いきなりケチつけて恐縮だが本格篇と銘打ってる割には本格ぽいものが少ない。トリックや意外な犯人はあっても推理が欠落しているものが殆どで。
あと前半の短編群は男女関係絡みのどんでん返し(フーダニット)ばかりで続けて読むとちと飽きてくる。そう仕向けた的安易さも――銅婚式的よりはマシだが――マイナス。
後半200ページの中編「誰にもできる殺人」はアパートの一室に隠された日記帳に代々の間借人が住んでいる時体験した出来事を綴っていく形式の連作ミステリーで面白いのだが
――テレビのくだりは怖いし、ラストも迫力がある――、推理や動機といった要素が弱く本格としてはあまり買えない。
文句なく本格と言えるのは「逗子家の悪霊」「黄色い下宿人」「司祭館の殺人」くらいかな。どれも良い出来。
噂のパスティーシュである真ん中は確かに巧いプロットだしイギリス批判にもニヤリとさせられた。アリバイ崩しである最後も設定からして引き込まれる。
他にも前述のようにトリックが光るもの(「恋罪」)はあるし、ミステリー短編集としては良いのだが、本格と言い切るのはどうか?という話。
228 :
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM :2015/03/08(日) 17:47:44.51 ID:1up8M5To
司城志朗「相棒 劇場版」読む。
まあ、映画も長寿番組のテレビシリーズも見てない俺ではあるが、
ノヴェライズの好評を耳にしたゆえ、手に取ってみた。
2008年の作ながら、テロリストによる日本人誘拐・身代金要求、
(ただし、本作で誘拐のターゲットにされてしまうのは
ジャーナリストではなく、NPOボランティア。当時はこの方が
リアルな感はあったかも)
東京シティマラソンと今でも十分にタイムリーなネタに驚く。
ただし、政府の退去勧告伝達ミスによるボランティア男性の死、
親族(妹)たちによるリベンジ(チェスねたによる予告連続殺人、かなり理不尽)ってのは、いかにも創りものめいた展開なのは、わかり易さ前提の大衆向き
娯楽作品の宿命か。
とにかくチェスのルール等を知らないとわかり難い面がある。
テレビ番組が好きでキャラに馴染みあり(この手の者には楽しめそうなエピも
散りばめられている)なら、それなりに面白く読めるのではあろうが。
229 :
名無しのオプ:
もう「感嘆」の二文字しかない・・・