アガサ・クリスティ 17

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949書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
では、落合ではないが俺流、カレッジフットではないがビッグ10を
挙げておこう。
ここはミステリ板ゆえ、
あくまでミステリとして面白さ(トリック、犯人の意外性、伏線の巧さ等)を
唯一の評価基準とした。
ゆえに、アガサの十八番である錯綜した人間ドラマやキャラ立ちを主眼
とした作(後期作品にはこの手のものが多い)は評価が低くなり、
意外に数があるわりには、エスピオナージュにはビッグ10級の作は見当たらなかった。

1位 オリエント急行の殺人
超絶・仰天な犯人像と巧みな伏線(傷跡等)。ミステリ映画史上に残る傑作
である。
2位 ABC殺人事件
後にマクベイン、シムノン等のミステリ他ジャンルの巨匠たちの作にも
影響を与えたアガサ独創の目くらまし(ターゲット以外も消せ)が見事。
3位 検察側の証人(戯曲)
リーガル・サスペンスとして臨場感溢れる第一級の面白さ。
小説でなく戯曲、しかもこのジャンルを書かせてもアガサが超一流の手腕
だったことがわかる。証人に関する大逆転の真相から名探偵ものでは
考え難い鬱エンドへの展開が見事だ。
4位 三幕の殺人
犯人の意外性には「まじっすか!」の一言しかない。
芝居仕立ての構成も洒落ている。翻訳も早期から数社発刊されており、
あまり話題に挙がらないのが不思議な秀作。
4位 メソポタミヤの殺人
アガサ中東もの最高傑作。
出来としては落ちる(展開見え見え)な「ナイルに死す」ばかり話題に
なるのが不可思議千万だ。
ジョン風のトンデモ殺人(食らえ漏れのこの石臼を!)が大きな魅力な作で
あり、「三幕の殺人」とはテーストが異なるため同順位とした。
950書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2010/10/09(土) 03:54:45 ID:YUVyI0l6
6位 スタイルズ荘の怪事件
デビュー長編ゆえ、さすがのアガサにも若書きの感は否めないが、
アクロバティックな成りすましトリックはその後の作品にも繰り返し
バリエーションとして登場する原典の新鮮さ・面白さに溢れる。

6位 予告殺人
アガサ十八番の早業トリックの最高峰に位置する作。
「そこになぜ椰子はいなかったのか?」
見事としか言えない語り口だが、手がかりに日本人にはわかり難い部分が
存するのが残念。
8位 そして誰もいなくなった
冷静な着眼により犯人当てが可能であり、アンフェア(死んだふり)な展開が
存するものの、クローズド・サークルものサスペンス・ミステリとして読めば、
正に息もつかせぬ面白さだ。
9位 アクロイド殺し
最大の売りであるメーントリックに先例がある以上、
いかにアガサの作品におけるバリエーションの上手さを評価しようと、
この順位が妥当。
10位 火曜クラブ
やはりアガサの基本は長編作家なので短編集はこの順位かと思う。
各作品の出来がどうこうでなく、
全体を通じてマープルの安楽椅子探偵ぶりをマターリ楽しめる。
これもミステリを読む醍醐味のひとつなのである。

番外 春にして君を離れ
人間心理を深く抉った非ミステリ。
これは「文学」であり、前に挙げた10作などは軽くぶっ飛ぶ。