298 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
ポワロ頭髪問題に関しては、
仁賀先生も東氏も、そして私こと書斎魔神もだが、
マローワン夫人十八番の叙述トリック(ポワロ・シリーズ全体に仕掛けられた)
にひっかかってしまったかなという感もないではない。
このことにつき、オリジナルシナリオ仕立てで読み易く、かつ、
面白く書き下ろしてみた。
・登場人物
マローワン夫人
書斎魔神
仁賀勝夫
東 リオ
ミスター・ウィキ
・あるカントリーハウスの応接間
3人の紳士と1人の妙齢の女性が歓談している。
ゲストとして招かれたマローワン夫人は
編み物をしながらじっと彼らの話を聞いている。
話題がポワロの頭髪の件に及び、長編32作を中心に読解した結果、
4人の結論は、ポワロの頭髪は禿(髪の毛が薄い)と見て間違いないという
ことで落ち着きそうになる。
今まで黙って話を聞いていたマローワン夫人がその編み物の手を止めて言う。
マローワン夫人「すると、あなたたちはポワロさんは禿げてるというのね?」
書斎「ウィ、マム。何かご疑問な点でも?」
マローワン夫人「ポワロさんが禿げてるとか、頭の毛が薄くなっているとか、
はっきりと書かれてるところってあったかしら?」
4人の紳士はしばし沈黙す。一呼吸置いた後に、
愛用のパイプを傍らに置き仁賀が言う。
仁賀「うーん・・・しかしだなジェ・・・失礼・・・マローワン夫人、・・」
仁賀説が披露される。
東「わたしもポワロは禿と言うかどうかはともかく、髪は薄い方だと思うけど」
東説が披露される。
ウィキ「ミス・マー・・・失礼・・・マローワン夫人・・あなたはなぜ
この自明とも言える事柄に疑問を持たれたのです?」
299 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2010/09/26(日) 20:49:24 ID:1aSpVPx1
マローワン夫人が口元に悪戯っぽい笑みを浮かべながら話し出す。
マローワン夫人「自明とも言える事柄?果たしてそんな風に言えるのかしら?
さっきも言ったとおり、32作の長編のどこにもポワロさんを禿だとか薄毛
だとかは書かれていない。逆に髪の毛が豊富とも書かれていないけど。
あなたたちは、作者が繰り返し書いてる卵形の頭という表現とかに騙されて、いつのまにか、ポワロさんが禿や薄毛と思ってしまっているのよ。
まあ、これはトリックね」
思わず吸っていたパイプを取り落として仁賀が言う。
「トリックだって!それはどういう意味だい?ジェ・・・否、マローワン夫人」
マローワン夫人が手元にあある小箱開け、
コクヨ400字詰め原稿用紙の束を取り出す。
原稿のタイトルには「カーテン」とある。
東「ミス・マー・・・否、マローワン夫人、それは一体?」
マローワン夫人「原稿の一部を読むから、少しの間我慢して聞いてちょうだい。
朗読はあまり得意でないから、聞き苦しいところがあっても勘弁してね」
マローワン夫人が「カーテン」原稿のポワロの頭髪に関する記述部分を抜き
読みする。
300 :
名無しのオプ:2010/09/26(日) 20:50:05 ID:y46hmoy1
つまんないからやめれば?
301 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2010/09/26(日) 20:51:09 ID:1aSpVPx1
仁賀「うむ・・」
東「鬘だって・・」
ウィキ「黒髪・・」
書斎「なんてこった!」
読み終えたマローワン夫人が話し出す。
マローワン夫人「この『カーテン』という本には事件の謎解きだけでなく、
ポワロさんの頭髪の謎解きも書かれているわけ。
今まで作者がポワロさんの頭髪について、あまりはっきりとしたことを
書かなかったのはこのためだったの。
つまり、過去のポワロ・シリーズ全部がミスリードするための伏線
だったとも言えるわけね」
唖然とする4人の紳士。
どこか嬉し気な表情で編み物を片付け始めるマローワン夫人。
マローワン夫人「『カーテン』の陰に隠されていた謎はひとつじゃなかった
というわけ。さあ、年寄りはもうそろそろ失礼しなきゃ」
マローワン夫人が退室する。
暖炉の火を眺めながら、いまだ呆然としている4人の紳士。
遠くを走る常磐線の汽笛が夜のしじまに響き渡っている。
END