まずどこの出版社か書かないのは、不親切だね。
「創元ダシール」と「新潮ケイン」の独りよがりも駄目。
「先生の手=翻訳になる」とか「文庫ロングセラーと言うてよい」とか、もった
いぶった言い回しで文章がブヨブヨになっている。
読んでてムズムズしてきたので、書きなおしてみたw
グレアム・グリーンの「情事の終り」(新潮文庫)を読む。1951年の長編である。
訳者は田中西二郎。メルヴィルの「白鯨」いやミステリ読みにはハメット「血の収穫」
やケイン「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の名訳でお馴染みだろう。
「愛の終り」としてこの田中氏の手で初訳されてから、半世紀以上も読み継がれている、
新潮社のロングセラーのひとつである。
いわゆる文芸作品であるが、語りのテクニックは完全にミステリのそれといっていい。余談ながら、
海外ミステリに造詣の深かった、作家の都筑道夫氏は、本書を「ミステリ史上もっとも意外な犯人が
登場する」作品と評した。
しかし、カトリック信仰が一般的とはいえないわが国で、本作のテーマがどこまで切実なものとして
理解されているかは疑問である。
不倫メロドラマとして映画化されていなければ(世紀末の、見事な「ことの終り」も含めて、映像化に
めぐまれている)、ここまでのロングセラーにはならなかったろうというのが正直な感想である。