『読みました』報告・国内編(書斎厳禁)Part.7
「京都鷹峯殺人事件」木谷恭介(徳間書店)
日本最大の生け花の流派烏丸流。その家元の弟が衆人環視の中殺されしかも死体が消えるという怪事件が発生する。
被害者はスキャンダルを起こし自宅でマスコミに取り囲まれていた中での凶行だったのだが……。
たった一人の日本版FBI宮之原警部は事件の謎を追うがやがて更なる殺人が!
某スレからのセレクト。
メイントリックは何と言っても冒頭の人間消失な訳ですが、どうしたってバカミスにならざるを得ない中遣唐使してたと思います。あともう一つ消失ネタがあったでしょうか。
華道界を巡るゴタゴタもそれなりの興味を持って読ませますし、缶ピースを好む宮之原警部のキャラクターもまずまず。そう言えばこれが一作目のようです。
シリーズが進むと警部自身の事件もあったりしてトラミス好きには面白そうですね。私は違いますけど。念のため。
「皆殺しパーティ」天藤真(東京創元社)
ラブホテルの一室で富士川市を牛耳る実業家吉川太平の暗殺の目論見を盗み聞きしてしまった二人の男女。
一人は殺され、一人は吉川の元へ駆け込み危機を知らせて秘書に納まる。吉川の強引なやり方は他人のみならず一族間にも少なからぬ軋轢を生じさせていた。
果たして陰謀の主は誰なのか? 一人また一人と一族が姿を消していく。
「遠きに目ありて」を何となく中断している状況では最初に読んだ天藤本だったが、面白かった。読ませる作家だわ。元同盟通信記者て相当古い人間のはずなのに、
筆致が達者も達者。若々しいのよ、とにかく。これも才能だよねえ。うんうん。すらすら読める。道具立ても舞台設定も古めかしさを感じない。
本作はフーダニットはあるしCCぽきもあるが、本格というよりサスペンスに近い印象。どんでん返しに皮肉な結末と〆に至る展開も良い。
そしてジジイのキャラがいいね。結構な鬼畜なんだけど、何かカッコよく思っちゃうわ。
こりゃ読まんとなあ。天藤作品。
「複合誘拐」大谷羊太郎(光文社)
テレビ出演を控えた社長令嬢が局から拉致された!
誘拐犯を追うレポーター田代。しかしそれは複雑怪奇な事件の端緒に過ぎなかった。
某スレからのセレクト。
タイトルからして不安だったのが的中しました。偶然で後付けしちゃえばそりゃ複雑怪奇になりますって。
解説で前例がないとか言ってるのが痛々しい限り。
バイク免許は凄いと思うけど。
940 :
名無しのオプ:2013/09/17(火) 06:27:15.28 ID:eYigWRKH
連投荒らし。
荒らしコテとはいえ酷すぎる。
941 :
名無しのオプ:2013/09/17(火) 09:16:15.26 ID:BxgCCD0N
「密約幻書」多島斗志之(講談社)
イギリスの大富豪の使いだというその男は彼女の家に伝わる古い黒鞄を買いたいという。法外な提示額に不信感を抱く彼女は申し出を断る。
その黒鞄には東西冷戦を根底から覆す恐るべき秘密が隠されていた!
「CIA桂離宮作戦」以来2冊目。これは傑作! 尻尾までアンコが詰まっとる!
直木賞選評ではやりすぎコージーとの批判もあったが、俺様はこの過剰さを愛す。
あとスパイものは巻き込まれ型じゃなきゃおかしいとも思っているので、その点も本作はクリアしているし。
田辺聖子お気に入りのP・グリーン回顧録も良い。
何より尻から登場するヒロインがいい(笑)。
今どこにいるのだろう……。
「0.096逆転の殺人」深谷忠記(光文社)
局部を抉られた男の死体が発見される。局部は馴染みの女性の元へ。
被害者の妹は刑事に協力して真相を知ろうとするが、その矢先被害者の部屋で密室殺人が起こるのだった。
某スレからのセレクト。「密約幻書」もだった。
アリバイ崩しのトラミスや話題になった「審判」など数冊読んだ印象は、プロットは良いんだが地味。東大卒はその辺がね。
本作もやっぱり地味な印象は拭えないかなあ。密室トリックに自殺トリックもあって頑張ってはいるんだけど。
密室トリックは2つあって(二段階と言うべきか)、前者はアクロバティックで良いんだけど、後者がクロフツ的でインパクト不足。
ま、それがいいひと。にはいいんだろうね。オデは違うけど。たまになら。
944 :
名無しのオプ:2013/09/17(火) 19:13:47.91 ID:eYigWRKH
読後感いい加減にしろ。
通報するぞ。
「わが師はサタン」天藤真(東京創元社)
革命と称して学内の悪を一掃すべく動き出した6人の学生たち。謎の人物アスタロトの力を借りて行われた彼らの“義挙”は幸先良いスタートを切ったかに思われた。
しかし殺人事件が発生し彼らは一転窮地に追い込まれる!
タイトルや表紙絵はオカルトぽいがやってることは私刑だね。
しかし達者だなあ。鷹見緋沙子では最年長だろうにこの題材を見事に捌いてる。描ききってる。褒めすぎ? でもそう思ったんだもの。
主人公の官能小説ばりの悪魔青年っぷりもいい。いっそ清々しいくらい。
ミステリー的な要素だけ抜き出せば案外に陳腐になりかねないけど、この人の手にかかればこんな読み応えありありの作品に仕上がるんだから凄いよ。
今後も期待の持てる人材って死んでるけど。
946 :
超電少年でつまつマン ◆VZ06MJxOCbt1 :2013/09/17(火) 19:43:34.51 ID:WnKbIRYs
うぅ
一般人のレビューなんて見たくない(/_;)
947 :
名無しのオプ:2013/09/17(火) 19:59:21.08 ID:dHf4TETc
>>941 相手しないで次スレからはコテハン叩きとしてまとめて削除依頼するようにしようぜ。
さすがの記憶喪失も読後感氏を叩いてるのが書斎支持者の方だともうわかったろう、
でつまつまでが叩き始めた以上今さら「支持者のふりした「アンチ」の工作」とは強弁できないし。
「バイバイ、エンジェル」笠井潔(東京創元社)
パリのアパルトマンで首を切断された女性の死体が見つかる。それを皮切りに起こるラルース家殺人事件。
警視の娘ナディアは奇妙な日本人矢吹駆と共に事件の謎を追うのだが……。
初笠井。面白かったです。作中にも出るけどヴァン・ダインの影響が濃いんですね。というかこの人はミスオタじゃなくて当時あまり読んでなかったんだと思います。
でもそのお陰で本作のような純粋な本格を産み出せたのだと思うと良かったですね。
例によってズラズラと謎を挙げつらう私の好きなシーンがあるのですが、中でも首切りに関する推理に力が入っていて読み応えがありました。
マーカムの鼻っ柱を完膚無きまでに叩き折る過程も定石通りにきちんと踏んでおります(笑)。信任した癖に侮った自業自得なんですが。
ただ探偵役のキャラクターが現実離れし過ぎですね。「救いの死」とは正反対である意味プロテクトをかけ過ぎています。しかもそれを自覚している辺り作ってる感もありまして……。
とまれその辺の変化は次作以降に期待しましょう。ナディアのツンデレ化にも(笑)。
「朱の絶筆」鮎川哲也(講談社)
ベストセラー作家の篠崎が軽井沢の別荘で殺された。
別荘に滞在していた面々は皆被害者に恨みを持つ者ばかり。
なおも殺人は続く。
果たして誰が――?
星影龍三が登場する最後の長編。ただし声だけ。
最初に容疑者たちと被害者との関係が連作短編的に綴られその後事件が起こる運びとなる。
「りら荘事件」ほどには作り込まれていないが、それ故難易度は高いと言えるかも知れない。
解説で完全な新作ではなく、かつて懸賞付き小説として掲載されたものの焼き直しと知ってがっかり。時間が足りなかったと言っても。。。
ちなみに作中に出てくるガイ・ブースビーは「魔法医師ニコラ」の人だね。つかそれしか邦訳ない。
「さよならファントム」黒田研二(講談社)
自動車事故に遭い将来を絶たれたピアニスト新庄は事故の原因である妻に対して心を閉ざしていた。
そして妻に裏切られたとショックを受けた新庄は衝動的に妻を襲ってしまう。
自殺を決意し家を出たものの、謎の美少女と同行することになってしまい、果ては爆破テロに巻き込まれる羽目に。
美少女の思惑そして新庄の運命は――?
初黒田(合作は既読)にして典型的なアイデアありきのトリック小説。
肉付けが杜撰で奥さんのキャラクターがその安易さを引き受けさせられた形になってしまっている。これはないわ。
お陰でチープなハッピーエンドになっちゃってるし。
空き家のミスディレクションは良かったけどね。ベテランの作品とは思えない出来。
951 :
名無しのオプ:2013/09/17(火) 23:06:02.38 ID:QuhJqiJT
ガイ・ブースビーは「新青年」に牧逸馬が長篇『白妖姫』(The Beautiful White Devil)を訳していて
これは改造社の世界大衆文学全集にも入っている
同じ作品を戦後の「探偵倶楽部」に都筑道夫が海野雄吉名義で訳している
「大阪圭吉探偵小説選」論創社
戦時下に書かれた防諜もの連作短編集。
愛国探偵横川禎介があの手この手で情報収集し伝達しようとする敵国のスパイ網を暴く。
解説にもあるように見所はどのように収集しどのように伝達するかなどのハウダニットにある。
私のオススメは「赤いスケート服の娘」。さほど難易度は高くないが見事なアイディアだと思う。
娯楽スパイ映画に出てきそう。
次点は「疑問のS」かな。どこか某ホームズ譚を思わせるストーリー。
長編「海底諜報局」もなかなかのスリラー。大胆不敵な情報伝達のアイディアも良い。
収録作が書かれたのは40〜42年と大東亜戦争直前から直中な訳だが、思ったよりは思想的にうざくなかった。
ま、ただ「海底諜報局」で菊子嬢が盗み聞きした内容は痛々しかった……。
>>951 そうだったのか!学べるスレ
「宇宙大密室」都筑道夫(東京創元社)
SF短編集……のはずだがどうもそうは思えず。
SFもあるがミステリーもありユーモアものもありエロ妖怪譚もありといった印象なので。
ぶっちゃけ粒揃いだとか、突出して面白いものがあるという訳ではないが、暇潰しにちょこちょこ読むには良いので、GWのお供にでも(笑)。
個人的には鼻たれ天狗シリーズが気に入った。
見習い天狗が人間や妖怪の陳情を処理していくというものだがこれはもっと読みたかったな。
あと「忘れられた夜」は意外だった。こんなの書いてたんだね。
宮崎駿も言及していたがマッドマックス的世界観はいつ頃から浸透していたのだらう?
ところで表題作はちょこっと期待はずれかな。。。
954 :
名無しのオプ:2013/09/18(水) 06:03:40.11 ID:Eu9HBb/9
GWのお供ってなんだよ?
「変若水」吉田恭教(光文社)
厚労省職員向井の幼馴染みの女医が通勤途中に急死する。その件を調べていた向井は大病院に隠されたスキャンダルの存在を突き止め、
そこから更に辿って上司で元恋人である美咲と共に山陰の村へ赴く。その村には昔から行われる秘祭があった――。
福ミス新人賞優秀賞受賞作。作者は一本釣り漁師だそうで。
たまたま図書館で見掛けて読んだのだが、読ませる。筆力十分。田舎も都会もしっかり描写出来ていると思う。
そして何より気に入ったのは主人公たちのキャラクター。特にヒロイン!
主役向井の出世も嫌がる怠け者かつ女に弱いおっぱい星人というのも良いですが、美咲ですよ美咲!
東大卒の才媛でキッツ〜イお姉さま系美女。口元のホクロがセクシーで勝負パンツはTバックという。もう読んでてメロメロでした。向井をイビリ倒す一方で怖がりな可愛い面も。
彼女の存在だけでも読む価値あるかも知れません。
ただし、構成は難ありですね。冒頭の伝奇的な雰囲気から三津田ぽい期待を持つと医療ミステリーになっちゃいますし。
とは言え、村のキャラクターもいい味出していてるからその分行ったり来たりしていると余計にちぐはぐな印象を覚えてしまいました。
それとトリックの専門性。これは本格として読んでは楽しくないです。
まあ書ける人なのは間違いないので次回作も期待してます。
「虚構推理 鋼人七瀬」(講談社)
鉄骨を振り回して徘徊する巨乳アイドルの亡霊、鋼人七瀬。
実在する怪異に挑むのは、怪異を引き受け片目片足を失った美少女岩永琴子と妖怪の肉を食わされ異能の力を得た桜川九郎の二人。
二人は怪異に論理的推理をぶつけることで退治しようとするのだが……。
新しい試みで面白かった。主人公カップル特に岩永のキャラクターと、元恋人を加えた三角関係もニヤ読み。
単に推理するだけでなく、ネット上での対決に勝たなければならないの言うのが2ちゃんに揉まれている身には他人事でなく(笑)興味深く読み進められた。
「銀河盗賊ビリイ・アレグロ」都筑道夫(集英社)
銀河を股にかけて活躍する日系泥棒を描く連作。
ざいしょう君が都筑ベストとかやたら評判が良いので期待して読んだ。
どれもよくまとまっていて軽く読めるし暇潰しにもってこい。大友克洋も良い仕事をしている。
ベストは「野獣協定」かな。凄腕の盗賊たちが大富豪の館に集められ数々の罠を潜り抜けや謎を解いて家宝を探すという筋立て。
他住人全員覆面をしているという奇抜な設定の「覆面条例」、メディアの某ジャンルを先取りした「メイド・イン・ジャパン」など。
「綺譚の島」小島正樹(原書房)
学生時代の先輩高品の誘いで知多半島沖に浮かぶ贄島へとやってきたニート探偵海老原。
そこは凄惨な言い伝えの残る島であった。やがて忌まわしい儀式が執り行われ、奇怪な連続殺人が巻き起こる……。
何度も言うけどこの人好きだわ〜。新本格でトップじゃないかとすら思う。超島田流というか。
今回も奇想トリックてんこ盛り。
海が染まり魚群が浮かび棺から鈴の音が聞こえ龍が蠢き甲冑が動き叫び血を滴らせ巨大鎚に叩かれて海上を滑り家紋型ミステリーサークルが現れetc.
モチーフから言うと刀城シリーズと似てるんだけれども、本格としての完成度はこちらの方が上で、怪奇は全てキッチリ解明されるし遡って不自然に思わせない手管は流石。
ただし怖さは殆ど感じないのでそっちは三津田で補給。
でもストーリーは案外はっきりしていて読めるんだよ。これも付加価値として良い。
それから警察の扱いもこの人の特徴の一つ。こういう優しい視点は甘くもあろうが好きだ。
犯人は意外だった。例によって何かおかしいとは感じるんだよ。それくらいは気付けるんだよね。ただそこからが……。
しかしこの動機はどうかなぁ。いやもっと言うとこの動機でこの畳み方はどうかなぁ。とまれ傑作。
あと2つはよ読まねば。
「オリンピック殺人事件」南里征典(講談社)
東京オリンピック開会式当日、倒産寸前の不動産会社社長が自宅で刺殺された。現場は密室。
捜査を担当することになった野村警部は被害者を怨んでいた男に目星を付けるがその男は首を吊った姿で発見され、
次に容疑者になった人物には鉄壁の三重アリバイが!? そして――。
久々某スレからのセレクト。
エロ小説の大家かと思いきやこんなの書いてたんですね〜。面白かったですよ。
密室トリックはメカニカルだがアリバイ崩しはメインの謎は土屋隆夫風のシンプルイズベストな仕掛けで○。
そして更なるサプライズも用意されているという豪華ぶり。思い返すとちとゾッとします。戦地パートもクラシカルな因縁譚めいて良いです。
あとがきによると舞台が古いからクラシックの手法にしたらしいですが、それでこれだけのものを書けるのは凄いと思います。
密かにエロを期待していたのはここだけの話です(笑)。
広山義慶・豊田行二・南英男辺りも本格書いてないのかな〜ね、大元帥(笑)。
「隠蔽捜査4 転迷」今野敏(新潮社)
大森署の隣の署の管内で遺体が発見された。身元は外務省南米課の職員。
本庁の刑事部長伊丹から捜査協力を頼まれた竜崎はすげなく断る。ほどなく大森署の管内でも轢き逃げ事件が発生し、
更に暴力団を逮捕したことによる厚生省麻薬取締部との確執や連続放火、そして娘の婚約者の飛行機事故疑惑まで抱え込むことになる竜崎だったが……。
第4弾。本シリーズはキャラ萌え小説であり、プロットにあまり期待してはいけません。大抵は(本作も)オーソドックスなモジュラー型です。
その定番パターンに竜崎という特殊な物質が混ざることによって起きる化学反応をこそ楽しむものなのです。
今回もその例に漏れず正論を振りかざしで正面突破していく竜崎に心置きなく萌えられます。
そしてストーリーの根底にあるのは官僚性善説と警察の正義です。
前者は傲慢で高圧的でも結局は落としどころを探り手を結んで進むことになる脇役たちから容易に見て取れますし、
作中に細かな批判が撒かれていることがより後者を浮かび上がらせます。
その辺り温さを感じなくもないですが、そこまで言うのは酷かも知れません。
「放射能獣‐X」友成純一(講談社)
福島で巨大昆虫が大量発生しているという情報を得たフリージャーナリストの恭子はカメラマンの啓助と共に取材に赴くが
襲われ重傷を負う。
同じ頃、日本近海深さ8000メートルの底で放射性廃棄物によって怪獣化した恐竜が海上へと向かっていた。
初の怪獣小説かな。ホラーガイドブックで煽られて読んだが、小説というよりシミュレーションみたい。
ゴジラみたいにあーなってこーなってがなく垂れ流して終わる感じ。まあそれもありなのかも知れないが、何か肩透かし。
放射線に関してはリアルなのに怪獣(つーかゾンビ)がチートっていうのも違和感あるかなぁ。
あとエロがなかったのも不満w
「マンハッタン英雄未満」森雅裕(新潮社)
ニューヨークで貧乏生活をしている歌手珠音は炊き出しに行った教会で死産したと思っていた息子が生きていて
しかも救世主でしかも悪魔に拐われたと聞かされる。
教会は悪魔を退治するため過去からベートーヴェンと土方歳三を召還し、彼らを珠音に託す。
彼女は一筋縄では行かない男たちをまとめ我が子と世界とを救えるのか――。
まあトンデモですわ。インスパイア元は「ゴールデンチャイルド」+「ターミネーター」かな。
しかし森はこういうの向かないね。スタートから淡々とし過ぎてて伝奇的或いはファンタジー的雰囲気を醸せてない。
だからまるでシチュエーションコメディを連続で観てるような印象だった。その限りでは楽しめるんだけれどもね。
「現代に触れるベートーヴェン」シーン集が面白い。
それからヒロイン珠音は我が子を追うという深刻さが感じられない。実感が湧かないのかも知れないがこれでは。
あと悪魔をやっつける場面の盛り上げも足らない。
まあでもラスト辺りは流石にしんみりと爽やかに迫ってくるが。
「バード・ウォーズ アメリカ情報部の奇略」多島斗志之(天山出版)
KGB日本支部の新米エージェントレオノフは、日本人の協力者バイカルから奇妙な情報を得る。
それはCIAがコウノトリを使ってペレストロイカを潰そうとしているというものだった。
知らせを受けたモスクワではその謎を暴き対策を練ろうと知恵を絞るのだが……。
ブログ閉じちゃいましたね……。
閑話休題。「密約幻書」で日本を代表するスパイ作家なのかもと思った訳ですが、本作もまた始まりから奇想天外でわくわくしますね。
一体英国の巨匠達は肉付けで韜晦したりするので時にプロットを楽しめないこともあるんですが、この人はプロットに忠実に肉付けしていくので終盤のどんでん返しも楽しめる訳です。
しかもスパイもので大事な「それっぽさ」もありますし。検証不可能ゆえリアルな嘘という逆説的な技術が要ると思うのですが、そこはしっかり押さえている作家です。
とここまでは人の話。
しかし、本作の場合些か竜頭蛇尾ですかねえ。発端が突飛な分もっと凄い真相or展開をを期待してしまいました。あと余詰めが甘いです。
そして肉付けは丁寧な反面冗漫に感じる箇所も。ロマンスありチェイスありで牽引力はありますけどもね。
「草軽電鉄殺人事件」梶龍雄(廣済堂出版)
スター女優白川梨花が草軽電鉄から忽然と姿を消した。
24年後の軽井沢。高室雄司は梨花がモデルと思われる絵が飾られた画廊で梨花の孫という美少女ユカに出会う。
成り行きで雄司は彼女と共に梨花の失踪の謎に挑むことになるが、関係者たちに当たっていく中で新たな事件が――。
まず、裏表紙のあらすじは絶対見ないように! 半ば過ぎてから起こることまで書いてある上、明らかな嘘まで含まれている始末。
いくら中小出版社のトラミスだからって、編集者はろくに読んでもいねえのか。大方コネだろ。これDVDスルーでも時々ある。
さて、本作はカジタツ作品でも評価の高い物のようで期待して読み始めた。
過去と現代2つの事件があるが、片方の謎は殆どの読者が早い段階で見当がつくと思う。
しかしもう片方は独創的なトリックが施されていて一筋縄では行かないだろう。
ただしフーダニットとの相性は良くなく、勿体無いと感じてしまった。伏線はちゃんとあるのだが。
エピローグの“謎解き”もいいだけに残念。
なお、行動的だが気分屋のユカとそんな彼女を受け入れつつストイックに調査を続ける雄司とのカップル探偵ぶりは心地よいゾ。
965 :
名無しのオプ:2013/09/18(水) 21:09:02.25 ID:+kWZ+d0l
意地になって荒らしているな。
966 :
名無しのオプ:2013/09/18(水) 21:53:31.65 ID:H4XZxzWU
そうだな、でつまつくんの怒りが爆発するのも近いぞ。
967 :
超電少年でつまつマン ◆VZ06MJxOCbt1 :2013/09/19(木) 16:01:33.49 ID:FN48RbXn
ゴゴゴゴゴゴ・・・
968 :
名無しのオプ:2013/09/19(木) 18:25:07.55 ID:guea9B3Y
読後感、おまいは多くを敵に回しているぞ。
もうそろそろ潮時だ。
969 :
記憶喪失した男!ninja:2013/09/20(金) 07:57:18.34 ID:nMCfjOKQ BE:958096627-2BP(427)
あうあうあうあうあうああー
::::::::: へ( ^q^')ノ ここって、ミステリ読んだ人が感想書くスレじゃないの?
::::::::: (┐ノ なんで、ミステリの感想書かないやつらの意見が大半をしてめているだ?
:::::::::: /
:::::::::::::::::::::::::::::::::
970 :
書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/09/28(土) 16:32:28.19 ID:K1KcFg/3
鮎川哲也編「本格推理マガジン『鯉沼家の悲劇』」を読む。
マエストロ鮎のライフワーク化していた往年の探偵小説発掘成果の一つ
である。表題作の他にも3作を収録。
お待ちかね収録作品全話講評逝ってみましょう!!!
・宮野村子「鯉沼家の悲劇」
老いても美しい名門鯉沼家の三姉妹、出奔した腹違いの妹が美少年に育った
息子を連れ帰った時、凄惨な悲劇が連続する・・・
横溝ファンなら思わず手が出るような設定。
本格ミステリとしての評価は低いとのことだが、SSのルールあたりに
拘泥しなければ犯人設定、
プラトニックラブとも違うような複雑な動機・背景等の
謎解きもそれなりに楽しめはする。
(横溝御大ならドロドロの関係を明示したはず)
まあ、本作最大の売りは三姉妹を筆頭にした登場キャラの立ち具合だろう。
一番登場シーンが多いはずの語り手(勘当状態な次女の子、三姉妹の甥っ子)の存在感が薄く、探偵役(一家の主治医の息子、語り手の友人)の登場が唐突過ぎてとって付けたような感があるのは難だが、予想外の面白さではあった。
文庫150頁強のボリュームに止まったのは惜しく、もっとこってりと
書き込んで欲しかった作だが、解題にも記されているとおり出版上の制約が
存したのであろう。
971 :
書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/09/28(土) 16:33:09.91 ID:K1KcFg/3
・「病院横町の首くくりの家」
中絶、時を経て完成の陽の目をみた横溝御大の病院坂(当初は坂ではなかった)
の原型となった作(とは言うても、御大の手になるのは序篇部分のみ)に
岡田鯱彦、岡村雄輔という今では忘れられた探偵小説家2人が、第一コース、
第二コースと称して、それぞれに完結篇を記したものである。
うーん、正直いうて、後の病院坂大河ドラマ的横溝ワールドを知っていると、
しょぼく見えてしまう感あり。
2人共に東京生まれの作者だけに、その「語り」からして関西の町っ子である
御大のこってりとしたそれとの違和感大。(特に岡田作品)
まあ、当時は企画としては面白かったということでしょうな。
・狩 久「見えない足跡」「共犯者」
この2作。意外に良し。
プロファイルには、後にテレビ、広告業界を長く生業とした人とあるが、
なるへそ、この2作を読むだけでも、
映像的、軽快でリーダビリティに富む作風を感じさせるものあり。
前者はおなじみ足跡絡みの密室(いわゆる心理的な方)もの、
後者ではかなりのはなれわざトリックを見せる。
解題には、本格ものは本来のフィールドではないのではと記されているが、
収録作品を読んだ限りでは、これは意外な感があり。
972 :
名無しのオプ:2013/09/28(土) 17:41:16.23 ID:HkxY23tc
素晴らしい論考だね。
973 :
記憶喪失した男!ninja:2013/09/29(日) 18:52:15.96 ID:/oha/lux BE:410613023-2BP(427)
あうあうあうあうあうああー
::::::::: へ( ^q^')ノ このスレも書斎さんの勝利で幕を閉じるのか。
::::::::: (┐ノ
:::::::::: /
:::::::::::::::::::::::::::::::::
974 :
名無しのオプ:2013/09/29(日) 23:30:22.57 ID:P7QsP/Wx
ほんとに読んでいるとしたら、こんなことしか書けないってある意味すごいな
975 :
名無しのオプ:2013/10/05(土) 02:15:52.99 ID:oMGVd4fn
976 :
書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/10/05(土) 21:14:43.01 ID:UBj1fGLZ
「『別冊宝石』傑作選」を読む。
・「赤痣の女」 大坪砂男
まあ、何とも古めかしい犯罪譚(人情話でもある)としかいいようがないわな。
屋根裏ネタです。
・「罪な指」 本間田麻誉
とにかく文体が読み難い。作者が早々と消えたのがわかる感あり。
複雑な心理ネタだが、林博士あたりが書けばもっとストーリーテリング
に富んだものになったであろう。
・「翡翠荘綺談」 丘見丈二郎
本作もまた読み難い文体。
オカルト風な展開だが、内容的にも格別に目新しいものなし。
同じ理科系出身作家でも、海野十三ならこのようなテーマで、もっと面白く
書きそうに思えた。
・「背信」 南達夫(直井明)
87分署シリーズ関連の著作で知られる著者が、こんなん古臭いミステリを
書いていたとは意外。展開も見え見えだし、それだけですわ。
・「私は誰でしょう」 足柄左右太(川辺豊三)
長く活躍した大衆小説家の手になるものだけあって、読み易く、
終盤はホームズ譚を読むかのような楽しさもあり。
女心を感じさせるオチもなかなかに面白い。
・「耳」 袂春信
女梅安かお(w な感もある作だが、悪女ものとして短いが読み応えある作。
これだけ書ける人が早々と筆をおきフェードアウトしてまうことに、
文筆業の厳しさをあらためて痛感した。
977 :
書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/10/05(土) 21:15:22.88 ID:UBj1fGLZ
・「消えた男」 鳥井及策
スレッサー等の海外作品のようなオチが効いた小品。
しかし、この人もフェードアウトしている・・・
・「何故に穴は掘られるか」 井上鉄
表題の穴掘りネタ(ちゅーか、「トリック」と称してもよい)が、
面白い作。
・「アルルの秋」 鈴木秀郎
過去絡みの絵画ネタ、格別な作品とは思えぬ。
・「みかん山」 白家太郎(多岐川恭)
あの高木君も書いてる旧制高校ネタのミステリである。
冒頭から弊衣破帽と並ぶ旧制高校名物とも言い得る釣鐘マントねたで
手がかり呈示、トリックは叙情的な作風とは相反するようなジョン風な
トンデモ、このアンバランス具合が逆に非常に良しかな。
動機のインテリ(当時)らしい複雑さも面白いし、いわゆるマドンナも
理想化しない現実主義も良し。
そうねぇ、旧制高校の学生さんと言えば、数的にも現代の芸能人クラス、
否、それ以上の存在だった時代もあるかも。
978 :
名無しのオプ:2013/10/06(日) 07:22:08.71 ID:qvuxsAlW
短くまとめ、それが論考として成立している。
さすがだね。
979 :
名無しのオプ:2013/10/06(日) 09:32:30.54 ID:mHr0CdsM
馬鹿書斎は相変わらず幼稚園児以下(書斎の見解)の駄感想だな。
読後感のほうがはるかにまともだ。
980 :
書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/10/12(土) 21:11:00.79 ID:D1bflAjC
「『新趣味』傑作選」を読む。
後のビッグネーム(現時点の評価ではないが)たちの収録作もあれど、
本誌でデビューということもあってか、駄目駄目が多い。
まあ、歴史的価値だけというもの多し。
一応、収録作品全話講評逝きまっしょ!
・「真珠塔の秘密」 甲賀三郎
まあ・・・犯人の意外性だけは、一応、あるんだけんどね。
それだけではねぇ・・・デビュー作、このボリュームではこんなもんか・・・
・「毛皮の外套を着た男」 角田喜久雄
本作も意外性はあるんだけどねぇ・・・本誌懸賞二等入選ならこんなもんか。
・「噂と真相」 葛山二郎
新青年傑作選(文庫)の「赤いペンキを買った女」はマジオモだったし、
国書の葛山作品集「股から覗く」もグッドであったけんど、
本作はなあ・・・ラストは「アッ!」なのか?、そうであれば意外ちゃあ、
意外だが・・・
・「呪われた真珠」 本多緒生
ここから6人マイナー作家が続く。
本作に関しては、短いしどうってことない話としか言いようがない。
・「美の誘惑」 あわじ生(本多緒生)
ストーカーという言葉も存在しないはるか昔の作にしては
意外にリアルな恐怖感もあるが、ミステリとしてのこの真相はどんなもんか。
・「誘拐者」 山下利三郎
まあ、他愛もない人情話としか感じられぬ。そのオールド感を楽しむしか
ないような。
・「血染のバット」 呑海翁
ちょい海外の短編にもありそうな小編。さほど面白くはないが、
明朗な大学生(早大)探偵という設定が事件の凄惨な印象を薄め、
ジュブナイルを読むかのような軽快さはあり。
981 :
書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/10/12(土) 21:11:46.90 ID:D1bflAjC
・「国貞画夫婦刷鷺娘」 蜘蛛手緑
暗号ネタだが、わかり難い。夜話語りという形式は好みなんだけんどね。
短い作だが、登場キャラは個性的なので、シリーズ化されていれば、
もう少し読んでみたく思うものはあるが、これ一編とのこと。
・「ベルの怪異」 石川大策
柄刀氏の解説にもあるとおり、ホームズ譚ネタである。
タイトルで怪奇探偵小説を期待すると外されます。
・「砂漠の古都」 イー・ドニ・ムニエ(国枝史郎)
国枝史郎が翻訳作品を装って翻訳作品として発表した宝探しネタの伝奇小説、
本作だけで200頁弱を占める、いわば本書の売りの作とも言い得る。
マドリッド、広東、北京、上海、ボルネオとめまぐるしく舞台が移り、
探偵が2人(レザールとラシイヌ)も登場するにもかかわらず、
最終的な主人公は中国人青年張教仁、ヒロインの紅玉(エルビー)は
終盤で唐突にフェードアウト(行く末は不明)、
終いには、有尾人あり、恐竜あり、大洪水ありと破天荒な国枝節全開な作
に仕上がっており、いわゆるこまけえ事は気にしないのであれば、
それなりに楽しめしようか。
作中で言及されるオーストラリア探検は描かれないで終わるのは、
ちょい残念な感あある。
982 :
名無しのオプ:2013/10/13(日) 08:21:43.94 ID:Nvf7QE+0
ミスマガに掲載されてもおかしくない論考だね。
983 :
名無しのオプ:2013/10/13(日) 08:24:11.12 ID:yZfgJYw3
ここまで定番のセットメニューです。
984 :
書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/10/13(日) 22:15:08.41 ID:MbL89nRY
「『宝石』傑作選」を読む。
甦る推理雑誌シリーズのとう尾を飾るものにしては、
やや地味なラインナップという感はあるが、その分、作品発掘の成果はあり、
バラエティに富んだ内容とはなっておる。
・「ユダの発掘」 岩田賛
過去ネタのサスペンスで一応読ませる。
可も無く不可も無くという出来か。
・「或る自白」 川島郁夫(藤村正太)
乱歩賞受賞作「孤独なアスファルト」の作者。
地味な作風ながら、受賞作の面白さには魅せられたのだが、
恥ずかしながら他作は未読なまま今日に至っていた、
本編も凝った謎解きの面白さが溢れる作で満足した。
・「白日の夢」 朝山せい一
少し気にかかっていた作家だったが、この独自なねちっこい作風は生理的に
駄目。
・「薔薇の処女」 宮野村子
うーん、長編「鯉沼家の悲劇」のような作風を期待していたのだが・・・
この短編のようなのが本来の持ち味の作家だったんであろうか。
・「暗い海白い花」 岡村雄輔
中絶した横溝御大の病院横町の完結編担当のひとりだけに、
どうせなら抒情的なものではなく、初期の本格ミステリを読んでみたかった気がする。本作も砂のトリックとかはあるんだが、物足りない感あり。
・「孤独」 飛鳥高
物理的な金庫のトリックもあるんだが、やはり現代では犯人キャラも、
その動機も理解し難いものがあろうか。
985 :
書斎魔神 ◆wo8/e6IiAG5v :2013/10/13(日) 22:18:22.82 ID:MbL89nRY
・「まつりの花束」 大倉てる子
ミステリとしての面白さはありきたり過ぎて薄い。
プロファイルによると、そういう作家だったらしいが。
・「科学者の慣性」 阿知波五郎
本職の医学でキャリアを残した人らしいが、本作に関してはさほど面白い
ものではない。
・「神技」 山沢晴雄
アンチ・ミステリ、アンチ名探偵とも受け取られかねないが、
実は探偵小説愛溢れる玄人好みな作かと思う。
・「ぬすまれたレール」 錫けい二
これはミステリとしては何やらわからんNG作品でした。
世相(当時)批判のコントですな。
・「緑のペンキ缶」 坪田 宏
これはコテコテの密室トリック作品。この手のものが好きならOKでしょ。
今は名探偵コナンでおなじみの「あれ」です(w
プロファイルには高木君の刺青に影響されて本格を書き始めたとあるので、
本作の犯行現場が浴室なのは意識したものであろうか?
・「最後の女学生」 明内桂子(四季桂子)
「みょうない」と読むとか。
ミステリとしては面白くはないわな。
女学生>JKな刑事とか面白いキャラではあるが。
・「蛸つぼ」 深尾登美子
閨秀作家=主婦なのにタイトルからして意味深(w
謎解きミステリとしても
予想外の面白さ(死体隠匿のテク良し)で、
探偵役の飄逸な竹中駐在署長、野田巡査のキャラ、掛け合い等も楽しめる。
もっと読んでみたい気がする作家だが、
この人も早々とフェードアウトしたとか。
986 :
名無しのオプ:
書斎の書評は一冊の単行本としてまとめられるべきだね。