『読みました』報告スレッド その2

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935書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
アリステア・マクリーン「女王陛下のユリシーズ号」を久々に再読。
早川が実施した冒険小説ランキングで総合1位に輝いた冒険小説の
古典とでも称すべき作だが、その後のミステリやスリラーの要素をまじえた
マクリーン作品と比較して正攻法な戦争小説のため、船舶や英国海軍に
関連した専門用語や俗語が頻発、決して読み易い作ではないという感
は変らなかった。
ソ連への援助物資を運ぶ護送船団(旗艦がユリシーズ号)へ
襲い掛かるドイツ爆撃機、Uボート、そして過酷なまでの北洋の悪天候・・・
壮絶な戦闘シーンはあるが、護送船団の物語ゆえ、
あくまで守りの戦いという展開。
真っ向からの海戦とか期待すると外されるかも。
艦長のヴァレリーを筆頭に多彩なクルーのキャラも読ませどころと
なっているが、艦内配置図は掲載されているにもかかわらず、
新装版にも人物表が無いのは翻訳の老舗早川にしては不親切に過ぎるのでは
ないかな。
ユリシーズ号の壮絶な最後を、僚艦サイラス号からの視点に切り替えて
見せたり、ラストは生存者である軍医ニコルスを中心とした
淡々としたやり取りで締め余韻を残す等、処女作らしい堅苦しさを感じさせる
部分も見受けられるものの、最後までマクリーンの語りの上手さは既に発揮
されている。
しかし、この作品が個人的に好きという見解はありだろうが、
海洋冒険小説の世紀の傑作、ナンバー1冒険小説と絶賛するほどのものかと
いうと、やや疑問に思わないでもないのだ。