『読みました』報告スレッド その2

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413書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
藻谷浩介「デフレの正体 経済は『人口の波』で動く」を読んだ。
岩波や中公のような老舗・硬派系でない角川の新書だしキワモノでは・・・
という不安はあったが、一読、やや著者の上から目線(意識してはいないと思うが)が気にかかるものの、現代デフレーションの謎(ミステリ)を
統計資料をもとに丹念に解き明かした読み応えある本であったよ。
本書あとがきにもあるとおり、
結論は「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、
つまり生産年齢人口(15〜64歳の人口)=現役世代の数の増減だ」
ということ。
実は経済学を少しでもかじったことがある者、興味がある者には、
何となく「わかっていたこと」という気がしなくもないことではある。
現況の不景気と値下げ競争のスパイラルによる悪循環は過去の不況時とは
異なるようだというのは、感覚的にもわかり得よう。
「年寄りはモノ買わねえし、若い椰子たちは金無いし」という感じかな。
とかく悲観的な現状分析と展望のみを中心に語る類書と比較して、
事態打開のための提言が3講に渡って詳述されているのは良し。
414書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2010/11/21(日) 08:31:41 ID:AIq3jB3Z
(1)高齢富裕層から若者への所得移転
(2)女性の就労と経営参加
(3)外国人観光客・短期定住者の受入れ
しかしながら、以上3点に関してリアルな視点に立った「素朴な疑問」
とでも言うたものを、この場を借りて呈示しておきたく思う。
(1)に関しては、いわゆる高齢富裕層の経済力を背景にした政治的影響力に
より、相対的に見て低所得である若者層(ゆえに政治的影響力は限定的と考えられる)への所得再分配政策の実行が容易ではないこと。
人間の生存本能まで視野に入れれば誰しも自分が一番可愛く、
自己保身を図るのは致し方ないのである。
残念ながら、本書ではこの点に関するリアルな言及は無く、高齢富裕層の
マクロな視点に立った自覚を期待しているだけに見える。
(2)に関しては、異質な労働力とも言い得る団塊の世代(ほぼ男性)と
専業主婦層が、果たして代替効果あるいは補完効果の関係に立ち得るかという
問題がある。極端な例を挙げれば、長年に渡る人脈(これは馬鹿に出来ないものあり)により培われた営業ルートを、昨日まで専業主婦(過去にバリバリの
キャリア歴があるとしてもである)であった女性に短期に代替可能と成り得るかと思うてみれば、答えは自明であろう。
(3)に関しては、「極東」というわが国の地政学的なポジションを念頭に置いた「遠隔」という問題を、もっと検討して欲しいものである。
欧州やアメリカ大陸は言うに及ばず、インドやいわゆる西域から見ても、
日本はまだまだ「ファー・イースト」という感あり。
経済情勢を左右する程の外国人観光客等の増加に過大な期待を抱くのは
危険に過ぎる。