『読みました』報告スレッド その2

このエントリーをはてなブックマークに追加
393書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
アガサ・クリスティー「火曜クラブ」を久々に読む。
アガサ短編集の最高傑作にして、ベスト10級の作というにとどまらず、
ミステリ史上に残る作品集という感を強く抱いた。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「火曜クラブ」
表題作だが、第1話ゆえ、人物・構成紹介に主眼が置かれている感じで、
ミステリとしては今ひとつの出来。キーワードはねらー大好きなメイド(w
「アスタルテの祠」
怪奇小説も書くアガサではあるが、ミステリでは珍しく怪奇色を強く出した
一編。十八番の早業トリックが炸裂する。最後まで神秘的な雰囲気が魅力の作。
「金塊事件」
小技ながら自動車に関するトリックが面白い。海賊の宝探しに現代犯罪を
巧く絡めた一編。
「舗道の血痕」
タイトルにあるネタは、横溝作品にありそうな、また、現代にも通じるリアルな事件の匂いもあるという作。これもアガサ十八番のアクロバティックな成りすましネタが炸裂。
「訳者あとがき」の本作に触れた部分に他作品ネタばれ気味記述あり。
「動機対機会」
犯人に関して、動機があれば機会がない、その逆も成立するという面白い設定。
ただし、スパイ手帳の付録かお(w なオチはがっくり。
「聖ペテロの指のあと」
メイベル登場作品。
(ただし、原作では叔母のジェーン曰く、おつむが弱い20代の既婚者。
旦那は精神病の家系。アニメファンはショックやろな(w )
アガサ作品の特色である精神病に関する偏見に近い固定観念が良く
発揮された作であり、これが謎解きにも関連する。
ポイントになる英語ネタが日本人にはわかり難いのがマイナス。
394書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2010/11/06(土) 15:55:24 ID:eULzs9hQ
「青いゼラニウム」
リトマスねた。これもアガサのミステリにしては怪奇色が濃い展開の
作であるが、「アスタルテ・・」以上に洗練されたタッチで読ませる。
「二人の老嬢」
これも十八番の成りすましトリック。これも「訳者あとがき」に要注意。
「四人の容疑者」
アガサ作品にあろがちな犯罪スリラー風の一編。
「クリスマスの悲劇」
状況設定は異なるが、長編「魔術の殺人」を想起させるスピーディで
アクロバティックな犯行トリックが魅力の作。
「毒草」
犯人の意外性もあるが、とにかく動機が読ませる。
カントリー・ハウスものの趣もある英国作品らしい一編だが、
意外にこの動機設定は長編にはない。
「バンガロー事件」
第二部から登場するもうひとりのジェーンこと女優へリアが語る一編。
仕掛けに関する意外な展開が面白い。
「溺死」
既に火曜クラブ解散後の事件か。ヘンリー卿が表の探偵役となり、
若き妊婦の溺死事件に挑む。パターン崩しの最終作となったため、
百物語的な妙味は消滅し、やや生彩を欠くものとなっている。
「毒草」同様に動機が読ませる作だが「無実はさいなむ」まんまや。