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書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
アガサ・クリスティー「雲をつかむ死」を読んだ。
初読は創元版の「大空の死」だったが、今回久々に再読してみて、
オリエントの飛行機版とも言えるクローズド・サークルものを
期待して外された記憶が蘇る共に「こんなにつまらない作だったかと」
との感を強く抱いた。
ポワロが乗り合わせた英仏間旅客機内でひとりの婦人が死んだ・・・
飛行機内という状況設定が特異とはいえ、アガサらしからぬ密室ものでも
あるが、無理がある仕掛人風(仕置人でも仕事人でもなく正にこの喩えが妥当)
の犯行、乗客持ち物リストからあの犯人を推理しろってのも、
また無理有り過ぎでしょ。
執筆年代はポワロ・シリーズでも初期に属する35年。
「三幕の殺人」と「ABC殺人事件」という代表作と言うても良い2作の間に
刊行されたものだが、完全にアウト、逝ってよし作品であった。
考古学者夫人でもあるアガサが、登場人物の考古学者親子を揶揄するような
表現が見受けられる(ただし、気を許した愛情表現とも思え不快感は無い)
のが面白い程度か。