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70書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
田草川弘「黒澤明VS.ハリウッド 『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて」を
読んだ。
黒澤監督が東宝所属だからというわけでもないだろうが、
怪獣映画を想起させるメーンタイトルがまず目を惹く作。
(『ハワイ・マレー沖海戦』に触れたくだり等で円谷監督に言及されるが、
記述を見る限りでは、年代的にもこの著者は東宝怪獣映画に対する思い入れは
無いようだ)
著者みずから本文中でも認めているとおり、
タイトルどおり「・・・その謎のすべて」までに至ってはいないものの、
米映画「トラ・トラ・トラ!」(世界の黒パンにとっては「虎 虎 虎」)に
おける日本側監督解任に至る「ミステリ」を資料収集が可能な限り解明した
なかなか面白い作である。
著者略歴や本文中にも述べられているとおり、AP通信社勤務歴があるせいか、
日本人にしては、ややハリウッド映画社会に対する理解が有り過ぎな感があるのが気にかかるが、明言されないものの、相互文化理解の齟齬による
パール・ハーバー奇襲による太平洋戦争開戦の悲劇をザナック親子率いる
20世紀フォックスと黒澤天皇の映画製作破談に見立てた構成が読物として
「イケ」る感あり。
まあ、結果的に黒澤解任は「必然」というのが、偽ざる読後感(ミステリ板の有力コテではない(w )ではあるが、黒澤天皇が自分より上位にクレジットされても良いとしたとされる監督(格上)の並びが、
F・ジンネマン、R・ワイズ、W・ワイラー、J・スタージェスというのが面白い。
ジンネマン、ワイラーはともかく、後の2人は当時でも明らかに黒パンが上だと思うのだが・・・
ちなみに現時点では、黒澤はこの4人より明らかに上位評価であると思う
(スタージェスは大好きなJ・フォードの弟子筋・後継だしという黒パンなりの「思い」でもあったのか、実は俺はスタージェス作品大好き人間、
一番好きな作は「墓石と決闘」って輩で、黒澤マンセーでもないつもりだが、客観的に見てもジョン・Sは映画史的に黒パン級の「作家」ではないと
確信している。
むしろJ・ウェインと現代版西部劇な痛快刑事ドラマ「マックQ」なんて
撮ってしまう傑出した「アルチザン」なのだ)
71書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2010/03/27(土) 21:25:56 ID:thh76yKu
余談だが、黒パンが語るべき米映画作家(監督)はS・ペキンパーだと思うのだが、ストイックな作風がポリシーな彼にとっては、諸に悪人(たち)が主役、
「女は母親と娼婦の2種類しか無い」というサムの世界は受け容れがたいもの
であったのだろうか?
さて、世界の「ハリウッド」と決裂した世界の「黒パン」が後に
当時強権主義の象徴のような存在であったソ連で「デルス・ウザーラ」を
完成出来たのはなぜか、是非、この著者に書いて欲しい気がしたが、
いずれも破談に終った「暴走機関車」「トラ・・・」の交渉文書翻訳に携わった
ものの、「トラ・・・」撮影台本最終確認会談後、逝去まで直接には1度も会う
機会が無かったとのことであり、そもそも無理な話だったと理解した。
最後に、著者あとがき(本書は2006年の刊行)には
「・・・2010年の生誕百年には、世界中で
クロサワ回顧の催しが開かれ、日本が生んだ天才映画作家の再評価の試みが
行われることになるものと予想される」とあるものの、
2010年も3月目を迎えた現時点では、いまだにその気配が感じられないのは少し寂しい感もある。
72名無しのオプ:2010/03/27(土) 21:29:39 ID:MWR2P4Zh
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