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書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
M・P・シール「プリンス・ザレスキーの事件簿」を読んだ。
創元のシャーロック・ホームズのライヴァルたちシリーズ中で唯一の未読作
であったが、遂にゲットした。
名翻訳家と言うてよい中村能美氏が「あとがきに代えて」で
「シール氏の文章には手応えどころか、遂には嘔吐と憎悪と、時としては敵意
すら覚えることがあった」と述べ、解説の戸川安宣氏も「その難解な文章と
原書の入手難などを考え併せると、今後もまとまった形でシールの作品が
邦訳される機会は多くはあるまい」と記した作品群、いかに安楽椅子探偵の
元祖とはいえ、現代ならマニアック志向な国書刊行会あたりでも躊躇するで
あろう邦訳出版に、よくぞ踏み切ったものである。
現在は品切れ(事実上の絶版状態)とはいえ、さすがミステリプロパーな
出版社の意地と心意気を感じさせるものあり。
では、当方も躊躇無く、大好評な全話講評逝ってみようか!!!
以下、4編が表題にあるプリンス・ザレスキーものである。
・「オーヴンの一族」
なるへそ、苦労の翻訳の末でも読み難い文体が想起される代物だが、
本作はジョンまがいのトンデモな機械的トリックが炸裂。
偶然性が強い展開をお約束とすれば、意外に終盤は楽しめるものがあった。
・「エドマンズベリー僧院の宝石」
宝石を巡る怪奇談。
古色蒼然たるものはあるが、それなりに楽しめるものにはなっている。
・「S・S」
エルのアンソロジーに収録されたザレスキーものの代表作、
暗号ミステリの佳作とあるが、この絵解き(正に字義どおり)は日本人には
わけわからめで面白くはないと思われ。
・「プリンス・ザレスキー再び」
ザレスキー復活談にして最後の事件。「メグレ罠を張る」を想起させるものが
あるのが面白い。