エラリー・クイーン&バーナヴィ・ロス〜PART9〜

このエントリーをはてなブックマークに追加
882書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
エラリー・クイーン原案「ミステリの女王の冒険」を読んだ。
原案とあるが、エルの原作付きは1作のみ。
探偵エル、クイール警視、ヴェリー巡査部長といった登場キャラの借用した
テレビドラマ用の贋作集というのが実態である。
先に刊行されたエル自身の手になるラジオドラマシナリオ集と比較すると、
やはり本家との「差」を痛感せずにはいられないものがあり、
「ここ」まで読むのは「オタ」以外の何者でもなかろう。
ただし、作品内容とは別にシナリオ用語も解説も付されており、
実例付きの勉強のための1冊としての効能はあるやもしれぬ。
一応、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「十二階特急の冒険」
冒頭から、エル自身の手になるラジオドラマ台本との「差」を
痛感させられる一編。
エレベーター内の人間消失ネタの解決の単純さ加減、ダイイングメッセージの
無理やり感等、テレビドラマ台本とはいえ、読むに堪えないものがあった。
・「黄金のこま犬の冒険」
解決は「ああそう」程度のネタだが、「老いの悲しさ」を感じさせる作ではある。
エル自身がライツヴィルもので書いていれば、それなりの作になったと思われだが、テレビでは人間ドラマへの踏み込みは企画趣旨ではなかったようだ。
・「奇妙なお茶会の冒険」
トリックに完全に反則技あり。これをエルの世界で書いては駄目でしょ。
(ただし、この責めは原作に存する。映像関係者が問われるべきは、
ロジックでなく、雰囲気=欧米人には馴れ親しんだアリス・シリーズを背景に
した奇妙なサスペンス、で読ませてゆく本作をチョイスしたかという点
であろう)