【推理パズル 総合スレ】第16回モナギコ蜘蛛の会

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418「運命のエレベーター」出題篇2/3
「運命のエレベーター」出題篇2/3
「みなさんどうですか?待っていても退屈なだけだし自己紹介でもしませんか?まず私は保険のセールスをしている脇坂 当(わきさか あたる)という者です。
ここに来たのは初めてなんですが、いやあ、こんなことに巻き込まれるなんて…」
ネクタイをキュキュッと絞め直し、スーツの内ポケットから出した名刺を配りだし、保険のセールスマンらしい口上をペラペラと述べだす。
次に話しだしたのは、二つに折れてしまった杖を膝の上に置いたあの車イスの老人。
「狭苦しくさせて申し訳ない。私は五十嵐 冬馬(いがらし とうま)といいます。10年前に事故に遭ってそれ以降こうして車イスの生活です。
ほとんど家から出ない日々なんですが今日は通院の日でして、このタクシーの運転手さんの手助けを借りてこうして送り迎えをしてもらってるんです」
と横に立つタクシーの運転手に目配りする。
目配りされた男が話しだす。
「あのー、いま御老人が話されたように私はタクシーの運転手をしている丸山 草太(まるやま そうた)と申します。
足の不自由な御老人の通院の送迎のお手伝いを…はい」
次に、箱内に香水を匂い立たせフチの広い帽子を深くかぶって顔を隠していた美女が話しだそうとしたとき、脇坂が先に口を開いた。
「言わなくてもあなたのことなら誰でも知ってますよ。テレビで今売れっ子の女優、紅月くららさんでしょ?よければサインして戴けませんか?」
「え、ええ…、わたし、紅月くららです。サインはこんな状況なのでのちほど…、いたしますわ…」
一同の視線を浴びる中、彼女は皆を避ける感じで真赤なマニキュアをした細長い指先で帽子のフチをさらに深く落とした。

そうこうしているうちに、やがて箱の外で作業をしているのだろう作業員達の声が聞こえてきた。
「どうやら、もうすぐ動きそうですね」と脇坂が言うと「早く逃れたいわ…」と紅月が小声でつぶやく。(つづく)