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書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
ジョルジュ・シムノン「メグレと深夜の十字路」を読んだ。
このシリーズも本格的に新古書店市場に出て来たなという感がある。
メグレ・シリーズ初期(31年刊行)の代表作と言われるが、
ポケミスは出たがHM文庫化されなかったため、
同時期の「男の首」「黄色い犬」「ゲー・ムーランの踊り子」等ほど
読まれる機会に恵まれなかった作である。
なんと80年近く前の作だが、あまり古さを感じさせないのは、
さすが手だれの作家らしいものあり。
パリへ向かう街道筋の十字路、そこに立つ3軒の家を巡る事件・・・
物語は的確な田園描写をまじえて雰囲気を盛り上げながら、
ほとんどこの十字路を舞台にして展開してゆく初期らしい凝った趣向、
犯人は唐突な反則技だが、強調はされないものの怪奇あり、お色気あり、
アクションあり等々サービス満点なのも、パリを舞台にした渋い後期作品
とは異なる魅力に富んでいる。