『読みました』報告・海外編Part.4

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845書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
ジョゼフ・ウォンボー「メキシコ国境の影」を読んだ。
警察小説の大家の手によるコテコテのノンフィクション警察ノベルとでも称す
べき作だ。
既に30年以上前の邦訳作品であり、文庫化もされず忘れられた作品と言い
得るが、今読んでも米とメキシコ国境の治安維持に当たった20世紀の
ガンマン(サンディエゴ市の警官で略称「バーフ」=ボーダー・エイリアン・ロバリー・フォース=国境付近の不法入国者に対する強奪犯罪を取締る
機動部隊)たちの家庭崩壊や精神変調までに至る者も出た体を張った勤務ぶりは強烈な印象を残すものあり。
個性的な人物群の濃い描写は、ノンフィクションとフィクションの違いは
あれど、ポケミスのハリウッド警察ものへとしっかりと継承されている。
現場警察官出身の作者らしく、アメリカ人の警察官(メヒコ系が多いが)に
肩入れし過ぎず、美化もせず、彼らと対立関係にあるメヒコ警察官
(ティファナ市警)たちの視点にも配慮している筆致は好感度大。
作中でハリウッドの映画会社のリサーチに警官たちが狂喜するシーンがあるが、
もし本作が映像化されていたとするなら、
ストイックで理想主義なバーフ創設者のディック・スナイダー警部補は
ロイ・シャイダー、
実質的にバーフを仕切ることになるマニー・ロペス巡査部長は若い頃のテリー・
サヴァラス、といったイメージだろうか。
この線で時代性に拘泥しなければ、
その他の警官たちには、ペドロ・アルメンダリス、サル・ミネオあたりの
キャスティングが浮かんでくるお。
この「バーフ」、米墨国境はあまりに広大に過ぎ砂上の楼閣に終わったようなのが悲しいが、
本書を読了後は現在の状況はどうなっているのか非常に気にかかるところだ。