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書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
ウィリアム・C・ゴールト「百万ドル・ガール」を読んだ。
この作者唯一の訳書、なんとあのエル作品の妙訳で知られる井上勇氏の
手によるハードボイルドである。
(ゆえに日本文としては「?」な訳文が散見される。「どん百姓」とかの今はNGな訳文がある楽しさもあるが)
正直言うて、ミステリとして見るべきものは皆無に近い。
探偵ジョー・ピューマ(名前はカッコ良さ気だが、女好きで喧嘩早いだけの
ような)が、事件関係者の学歴(カウンセラー)を確認するためビルの一室
を本部とするインチキ大学を訪問するくだりが、現代にも通じるエピで興を
惹く程度か。
あとがき(ノート)によれば(なぜか厚木淳氏が担当)、この作者の作品中では
出来が良いものらしいが、後が続かなかったのは仕方あるまい。
本邦では未訳に終わった多数の通俗ハードボイルド・ミステリ作家が存することを思えば(この辺の事情は小鷹信光氏の著書に詳しい)、早くに1作だけでも
紹介されたことを幸運とすべきであろうか。