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書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
エリック・アンブラー「あるスパイへの墓碑銘」を読んだ。
心ならずも国際スパイ容疑を受けた主人公による冤罪を晴らすための探偵談。
ダークでシビアな作かと思うが、
意外や母国無き主人公のポジティヴなキャラが逆にコスモポリタン的であり、ユーモアさえ漂わし、(主人公の語学教師バタシーが無謀で間抜け過ぎる
という気もするが)
前記した「ディミトリオスの棺」の如き暗さは無く、
スイスイと読める反面、舞台が保養地のホテルに限定されるため、
スケール感を欠くことは否めない。
全般的な評価としては、今は「逝ってよし!」かな。
思わせぶりなタイトルが、作中における登場人物(諜報機関の長)の
ひとりの言にちなむだけであり、直接に本筋に絡まないのは「ディミ・・・」の場合と同様。
ミステリ好きとしては、これもやや外される感あり。