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書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
ドロシー・L・セイヤーズ「ナイン・テイラーズ」を読んだ。
本作を初めて手にした時の感動を忘れることは出来ない。
鐘殺す(?)トリックは、中島河太郎先生の著書等でとうに既知であったが、
古典的名作と言われながらも、広く翻訳で読めるようになったのは、
なんと21世紀になってから、しかも創元がセイヤーズ作品を刊行するように
なってからも、執筆順に翻訳され、作者の長編ミステリ10作目、
キリスト教国ではない日本では全く馴染みがない鳴鐘術(ストーリー上重要)に関する部分の翻訳に時間を要したということもあろうか、
かなり待たされたのである。
刊行時には文庫コーナーの一角で「キターーーーーーーーーーーーー!!!」と歓喜の声を上げたのは、果たして俺ひとりだったであろうか。
ただし、読み初めてからは「?」感が強く抱いたのも俺ひとりではなかろう。
S・Sの芸術論を想起させる鳴鐘術なるものに関する薀蓄、実にうざいのである。
アガサであれば、本作のメーントリックですっきりとコンパクトに纏めて
しまったであろう。
いかに古典とはいえ、本作の如き日本の読者向きではない作こそ、
優れた抄訳あるいは超訳が期待されるところかと思うのだ。