『読みました』報告・海外編Part.4

このエントリーをはてなブックマークに追加
701書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
フランシス・アイルズ「レディに捧げる殺人物語」を読んだ。
生来の殺人者(?)とケコーンしたやや残念な面相の女の物語とでも
言ったところか。
同じ作者ながらバークリー名義のアンチ・ミステリ的謎解きの興趣は皆無、
倒叙スタイルとはいえ「刑事コロンボ」のような巧みな犯罪工作打破と
いった物語ではなく、その手段はプロバビリティに頼った極めて単純なもの
である。
退屈してしまいかねないストーリーと終盤におけるヒロインの一見不自然な
心理(殺人容認、殺され志向とでも称すべきか)を短い場面展開で繋ぐこと
により巧みな語りで読ませてしまうのはさすがである。
人間を描けるのが文学という鉄則に沿った考えによれば、ミステリという
形式が迫り得た「文学」の形がここあると言うても過言ではなかろう。
(本書解説を担当した中島河太郎先生は本作を倒叙ミステリのカテゴリーで
把握するべきでなくクライムノヴェルと見ているようである。
クライムノヴェルも広義のミステリのカテゴリー内にあると言えなくもないが)