『読みました』報告・海外編Part.4

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658書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
アガサ・クリスティー「無実はさいなむ」を読んだ。
アガサの自選ベスト10にはチョイスされているが、日本のアガサファンの
チョイスからは外れている作である。
本邦における一般的知名度は無いに等しい作だが、なるほど読んでみると、
アガサが書きたかったのは十八番のメロドラマをまぶした殺しが
絡む文学的作だったのかなと。
ゆえに、本作は冤罪ネタという現代日本においてもタイムリーなテーマ
を含むとはいえ、週末に気軽に楽しむといった風の創りの作ではない。
(作中でゲーム感覚で事件の推理を楽しまんとするキャラが殺害されて
しまうのは何か象徴的だ)
こんなん地味な作も最後まで読ませる語りの術は巧妙と言わざるを得ないとは
いえ、犯人像はS・Sのルールに抵触するものであり、
アガサらしいアクロバティックな展開の面白さは皆無である。
はっきり言うてつまらんかったね。
659書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/12/19(土) 15:41:41 ID:MiCF+FFQ
H・C・ベイリー「フォーチュン氏の事件簿」を読んだ。
フォーチュン談を読むのは、大乱歩編のロングセラー「世界短編傑作集5」に
収録された「黄色いなめくじ」以来である。
独自な病的テーストは印象的ではあったが、
当時はゲーム感覚の謎解きミステリに嵌っていたため、その後は縁が無いまま
年月が過ぎた感あり。
この作品集は残念ながら「黄色い・・・」を上回る、匹敵するような作は無く、
その点では期待外れは否めないものの、黄金時代に謎解きよりも人間や
社会観察に重点を置いたこのような作が存在したという歴史的な意義は
認めるにやぶさかではない。
好評の声に応え、一応な収録作品全話講評逝ってみよう!!
・「知られざる殺人者」
本書解説を担当した戸川安宣氏は、フォーチュン談とハードボイルドの
共通性に関して触れているが、生来の邪悪に対して拳銃でカタをつける形に
なるこの作など、正にハードボイルド的と言い得るかも。

「彼は死体をヘッドライトの光のなかへ運んで行ってじっと眺めた。
『これでかたづいたか』と呟きながら肩をすくめ、死体を車の中へ引きずり
こんだ。」
ただし、シャーロック・ホームズのライヴァルたちシリーズとしては「?」
なのだが。