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書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
アガサ・クリスティー「無実はさいなむ」を読んだ。
アガサの自選ベスト10にはチョイスされているが、日本のアガサファンの
チョイスからは外れている作である。
本邦における一般的知名度は無いに等しい作だが、なるほど読んでみると、
アガサが書きたかったのは十八番のメロドラマをまぶした殺しが
絡む文学的作だったのかなと。
ゆえに、本作は冤罪ネタという現代日本においてもタイムリーなテーマ
を含むとはいえ、週末に気軽に楽しむといった風の創りの作ではない。
(作中でゲーム感覚で事件の推理を楽しまんとするキャラが殺害されて
しまうのは何か象徴的だ)
こんなん地味な作も最後まで読ませる語りの術は巧妙と言わざるを得ないとは
いえ、犯人像はS・Sのルールに抵触するものであり、
アガサらしいアクロバティックな展開の面白さは皆無である。
はっきり言うてつまらんかったね。