539 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
フランク・グルーバー「探偵 人間百貨事典」を読んだ。
これはある意味貴重品。
同じ作者のジョニー&サムものと異なり、ポケミスからも創元推理文庫からも
スルーされた人間百貨事典こと超絶セールスマン(ちゅーか、訳文にもある
とおり香具師)オリヴァー・クエイド登場作品である。
クエイドはジョニー・フレッチャーの商才溢れる頭脳とサム・クラッグの
腕っ節(肉体)を兼ね備えたようなキャラであり、
「自分の面倒は自分でみる男」である巨漢の相棒チャーリー・ボストンの
影が薄い感じがあるのが、掛け合いの面白さという点では残念かな。
全話講評いってみよう!!
「鷲の巣荘殺人事件」
相棒のボストンは登場せず、クエイドが百貨事典のセールスに立ち寄った
コテージでのエピ。
滞在客のひとりが殺されたうえに、逃亡中のギャング団まで乱入する急展開、
意外な犯人(好青年)、クエイドの博学(化学)ぶりを活かしたハードボイルドらしい非情のギャング団始末等・・・短めの作ながら読ませどころを心得た
展開で楽しめるものあり。
「ドッグ・ショー殺人事件」
ドッグ・ショー会場で発生した地元名家御曹司殺人事件に巻き込まれた
クエイド&ボストンコンビ。事件の真相はハメットよりもチャンドラー風
(過去ある女の犯罪)なのが、ちと面白い。
特筆すべきものはないものの、軽快なテンポで一気読みさせる。
540 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/14(土) 14:57:36 ID:UmaxJ+wo
「不時着」
飛行機事故でスタート、遭難パニック小説?と思わせる出だしだが、
クエイドたちが登場後は謎解きミステリ展開へ。
逃亡中の強盗2人組も乱入し、サスペンスフルな展開となり、
最後にはわりと巧みでスケールが大きい犯罪計画(故意の墜落事故等)が
明らかになる面白い作だ。
「州博覧会殺人事件」
経営不振な出版社をめぐる法律ネタが光る作。
相変わらずなクエイドの歴史薀蓄等がたっぷり楽しめる作でもある。
「漫画映画殺人事件」
漫画映画の犬の吹替に抜擢されたクエイド(お前は山ちゃんか(w )
舞台がハリウッド、競争相手のNYの私立探偵も登場し、
いかにもアメリカン・ミステリらしい軽快な心地良さ、
これも最後に法律ネタ(著作権に関する契約の有効性)が炸裂する一編で
面白く読める。