529 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
フランク・グルーバー「ゴースト・タウンの謎」を読んだ。
西部小説得意な作家がOK牧場の決闘でおなじみトゥームストン近郊の
ゴーストタウンの鉱山をメーンな舞台とした作であり、
「コルト拳銃の謎」(これはグルーバーのミステリ作品中の
最高傑作との話もある)が意外に楽しめ、
何年か前に読んだ「フランス鍵の謎」(ジョニー&サム・シリーズ第1作)
も悪くはなかった記憶があるので、期待して手にしたのだが・・・
会話主体の短い作にもかかわらず、人物がごちゃごちゃし過ぎだし、
折角、西部史の名舞台を背景にしながら、「コルト拳銃・・・」のように史実が
濃密に事件に絡んで来ず、銀鉱巡る争闘に終始するのも残念だ。
広大な北米大陸でご都合な主義な出会いの展開が多いのが目立ち過ぎ、
ミステリとして興を甚だしく殺ぐものあり、
むしろ読ませどころは、後半の鉱山に閉じ込められたジョニー&サムコンビの
脱出劇、これに続く西部劇まがいのガンファイト等の冒険アクションで
あろうか。
530 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/08(日) 10:56:18 ID:Q/SNNJpo
クレイグ・ライス「大はずれ殺人事件」を読んだ。
前に紹介した日本でわりと人気があるノンキャラ作品
「スイートホーム殺人事件」よりも、謎解きミステリとしてはマローン弁護士とジェイク&ヘレン夫妻を主人公にしたシリーズものの代表作である本作の方が高い評価もあり。
なるへそ、「スイート・・・」がホームドラマ的に女流ミステリ作家一家の
軽快な日常風景描写からスタートするのに対して、
大人ばかりの世界である本作は序盤から群衆の中の殺人、
これに関連した殺人宣言とコテコテのミステリ展開である。
舞台はウィンディ・シティのシカゴ
(奇しくも最近読んだ作ではフランク・グルーバーの「コルト拳銃の謎」も
同じ舞台、繰り返しその寒さが強調されるシーンがあったけ。
他にも、フレドリック・ブラウンの傑作人情噺風ミステリ「シカゴ・ブルース」
も忘れ難い)。
登場人物の考えオチの洒落た掛け合い、
終盤はカーアクションとガンファイト(?)ありと、
いかにもアメリカン・ミステリという感もあるが、
実は「スイートホーム・・・」と同様に連続殺人の真相はダークでヘビーな
ものである。
クレイグはロスマクならアメリカ有産階級の悲劇風に展開するところを
コージー・ミステリ風にライトなタッチで書ききっているのである。
フェアなフーダニットと言うには程遠い(後出しの事実が多数)ものの、
ミステリとしては、それなりに楽しめはする出来にはなっているとは言い得る。