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書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
カーター・ディクスン「赤後家の殺人」を読了。
「部屋」が「人」を殺すのか?
謎の設定だけは魅力的ながら「つまらない」という感は変わらずといった
ところか。
本作を評価するレスもあるが、評価基準不明な誤った言と言い得る。
怪奇性が濃いと評されることが多い作だが、それは第一の殺人が発生する
100頁弱程度(第4章)までのことであり、(宇野氏(以下「うの」と略す)
の名調子による訳文もあって、ここまでは怪奇なムードでサスペンスフルに
読ませる)、作中で怪談話ではない旨が繰り返し述べられているとおり、
以後は合理的な解決を目指した推理が展開される。
だが、展開から見て声の成り代わりは予想出来る範囲であり、
ジョンらしい破天荒ぶりも無い密室殺人のトリックにはがっくりさせられる。
これならマスターズの糸を使用した名探偵コナン風な糸を使用した外れ推理の
方がまだ面白さがあるし、後年の魔女藁や墓場貸のようなトンデモの方が、
あざとい魅力があると言えるかも。
そして、後出し(ガイシャの歯医者通い等)の手がかりが多いのは
本格ミステリとしては大いに問題有り。
また、早業による偽装トリック
(ジョンがヒントにしたと思われるザングウィル作品よりは実行可能性が高いだろうが)も、
名探偵(しかも医師免許あり)ヘンリー卿の目前では無理有り過ぎか。
毒舌十八番なヘンリー卿が本作では、ややおとなしめなのも物足りないものが
あるし、その推理は辻褄合わせに過ぎなく見えるのもつまらん・・・
しかし、大乱歩は何でこんな作を高評価したのだろうか、雰囲気ゆえか。