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書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
実は俺もかねてから「六番目の男」を読みたいと思うているのだが、
いまだ入手出来ず、そこで久々にフランク・グルーバーの「コルト拳銃の謎」を読んでみた。
西部の無法者ジェッシー・ジェームズが愛用したコルト拳銃をめぐる事件
を描いたいわゆる軽ハードボイルド・ミステリである。
ハードボイルドとユーモア・ミステリと聞くと、水と油的に思うていたが、
本作を読むと、書き方によっては見事にマッチングするのがわかる。
しかも、ハメット風の会話主体の物語進行で描写を徹底して刈り込んだ
スタイル、主人公(ジョニーとサムのセールスマンコンビっていうか、
日本風に言えば香具師風な営業)も、
報酬目当てに見ず知らずの女からこれも見ず知らずの男を殴ることを
引き受けたり(これが冒頭)、曰く因縁付きの拳銃を横流しして金をせしめたり等々、陽性のキャラゆえにビビッドに感じさせないものの、
結構、悪な面もあり、これは後のネオハードボイルド的なんである。
正義の士ぺリイ・メイスン・シリーズで知られるガードナーをハードボイルド
系統の作家に入れることもあるが、文体、キャラ設定、そしてストーリー展開等、どれを見ても、グルーバーの方がはるかにハードボイルド作家と言い得るかと思う。
主人公のひとり、ジョニー・フレッチャーは正に営業マンの鏡的存在、
本作のラストも、ハードボイルドの主人公らしいと共に
やり手らしい割り切りぶりが印象的である。
今なら、仕事とはいえ男の2人旅は「うほっ」疑惑を匂わされたりするが、
そんな懸念無き、
古き良き40年代初期に書かれたグルーバーミステリの代表作である。
小西宏氏(なんと一橋大学院卒だ!)の江戸弁風の軽快な訳文も快調そのもの
であり、一気読みを加速させるものあり。