「数学的帰納の殺人」草上仁(早川書房)
ある宗教団体のメンバーが本拠地であった孤島から一斉に姿を消した。
そして20年後。写真記者梅川勝子は死んだ旧友を参った際、
奇妙なものを手に入れ、過去の事件の真相を究明しようとするが……。
タイトルからガチガチのパズラーかと期待して読んだ(裏表紙や
帯でも本格論理とあったし)が、とんだ羊肉狗肉。巻き込まれ型
サスペンスであった。
論理はストーリーの端々に出てくることはあっても、事件の全容を
解き明かす有効なツールとは成り得ておらず、本格味は
暗号や犯罪のシステムを解明する時に感じられる程度であった。
作者も編集部もこれを本格・パズラーだと捉えているのなら、
不幸なことになると思う。特に後者の罪、軽からず。
934 :
新参:2009/10/07(水) 23:02:26 ID:f/v3wpVt
後読感って言う位なんだから
内容の解説は有難いけど、それこそ後読感を聞いてみたい
…もしかして…スレ違?
935 :
名無しのオプ:2009/10/07(水) 23:05:29 ID:f/v3wpVt
後・読、逆だね…orz
936 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/10/10(土) 15:41:10 ID:U92y71fW
上野昂志「紙上で夢みる現代大衆小説論」を読んだ。
「小説より面白い文芸評論集 大幅増補し復刻なる!」のキャッチフレーズが
「おい、おい言うに事欠いて・・・」という感が強い。
60〜70年代の誰もが知るエンタメ作家に関する論考だが、長いだけの2ちゃんレスポンスレベルという印象である。
横溝御大、大乱歩、大藪ハリー、山フー等、ミステリ作家が多く取り上げられているが、
各作家の論考に関して共通するのは、一部作品語りに多くの紙数を費やし過ぎて、
その作家の全体像に迫り得るものとなっていない不満が大きい。
いずれも長期に渡り活躍した作家ゆえ、60〜70年代あたりに時期を限定するなりして、
論考を試みるべきであった。
本論(作家・作品論)280頁強中、山田風太郎に3章70頁強と全体の4分の1程度を割いている
のも、筆者の個人的な強い思い入れは伝わるものの、
(「稀にみる天才であり、彼に比肩し得るのは戦前の夢野久作ぐらい・・・」と語り、
(風太郎と比較した場合)、シバリョウの文章はリズムの平坦さにうんざりしてしまう、
と正に絶賛状態)
1冊の本としての論考における構成上のバランスは欠いていると言わざるを得ない。
他の作家の章では、横溝御大の戦後の長編は戦前の作品群とは異なり、
怪奇浪漫性は装飾に過ぎない(筆者は個人的には戦前の作が好みらしい)という指摘も
2ちゃんではおなじみな言説だし、筒井康隆のヒット作「家族八景」をファンの贔屓の引き倒しと
評し、「こんな薄手の家族心理といったものを深刻そうに書くなどというのは、
まったくもって筒井康隆らしからぬ振舞いだ。私小説のパロディのつもりかもしれないが、
これではパロディにもならない。・・・」としている部分など、スリリングなSFサスペンス小説として
の面白さという観点が皆無なうえに、私小説云々の指摘は全くの方向違いとしか思えぬ。
937 :
名無しのオプ:2009/10/10(土) 16:08:37 ID:flhbWOUs
>>934 それは無理ってものだ
なぜなら彼は誤読漢だから
938 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/10/11(日) 16:22:43 ID:8M0/e2Kt
浜尾四郎「殺人小説集」を読んだ。
このバージョンはレアものである。
やはりこの手の「もの」は新古書店よりも一般の古書店の方がゲットし易い感あり、
余談ながら、馴染みのショップ(店主がちょい不気味なのが難か・・・)で入手。
最早、恒例(注 高齢ではない(w )となった収録作品全話講評逝ってみよう!!
・「彼が殺したか」
大乱歩風のサドマゾねたで落すのだが、無実の人間の処刑という展開にこそ法律家である
この作者の力点がありそうである。ただし、短編にしてはボリューム感がある作だが。
格別に面白い作とは思えぬ。
・「死者の権利」
犯罪の成立3要件のうち、違法性や責任性をネタにした作は多いが、
構成要件該当性ネタ(「殺し」はあったが殺人罪でなく傷害致死罪に見せかけるトリック、
ゆえに刑罰が大きく異なる)はいかにもこの作者らしい。
ミステリ的にはリベンジのシニカルな結末が読ませどころか。
・「悪魔の弟子」
「うほっ」なムード、タイトルにある「悪魔」こと手記の名宛人である検事が直接には登場
しないという凝った設定が光り、シニカルな結末が読ませる。
・「殺された天一坊」
大岡越前ネタだが、シリアスにしてシビアなタッチな傑作。
法による統治の正当性の問題を抉って間断するところがなく、
著名な大岡裁判の数々をシニカルに解釈してゆくくだり、(このクライマックスが「天一坊事件」と
言える)が、非常に面白いうえに凄味さえ感じさせるものがある。
・「島原絵巻」
創元は浜尾集から本作を落すべきではなかった。
石井輝男作品を想起させるような迫力溢れる残酷犯罪劇だ。
締めの一文「最後にわれわれ人間には、平生は考えられぬ位の残虐性が多分にある、という事
である」、法律家であるこの作者らしい実感であろう。
939 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/10/11(日) 16:24:32 ID:8M0/e2Kt
・「正義」
オチが見え気味(本人でなく弟というのが多少凝っているが)、
偶然性が強過ぎる作であり、出来はいまひとつである。
Let justice be done though heaven fall.
最後のこのフレーズのみ印象に残る。
・「探偵小説作家の死」
シリアスなタッチが多いこの作者の短編にしては、入れ子構造を意図した遊び心に富んだ作。
その分、創りものめいた展開(同居する師弟関係にある2人のミステリ作家がお互いに殺人計画を
執筆しているとか)が目立つものの、思わせぶりなラストまで一気に読ませる面白さはある。
・「黄昏の告白」
臨終時の告白と意外な真相を迫力ある筆致で描き切った作。
これも悲劇的なラストまで一気読みさせる、
・「夢の殺人」
夢遊病による殺人ってのは反則技とも言えるのだが、S・S好きなこの作者ゆえ、
そんな事は百も承知なのか、ラストでどんでん返しありがあり、それなりに楽しめるお。
・「彼は誰を殺したか」
後半に「死者の権利」と似た構成要件ネタ(自動車を使用した殺人を業務上過失致死に
見せかける)もあるが、偶然性が強過ぎる設定(ガイシャと犯人が朝の散歩で毎日会う等)で
出来は今ひとつである。
・「有り得る場合」
事実に対する多重視点の面白さを狙った作。
思うに法律家でありながら、この作者は犯人捕縛という勧善懲悪に拘泥しないのは良し。
これが作風の幅を意外に広くしている因であろう。
940 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/10/12(月) 20:06:38 ID:dv1DqH+z
黒羽英二「十五号車の男」を読んだ。
ミステリのコーナーでなく純文学のコーナーに在庫しているショップもある作品集だが、
読了してみて、この判断にもなるほど感あり。
ゆえに年末の年間ベストミステリ選出で本作品集がどう評価されるか楽しみではある。
早速、大好評収録作品全話講評逝ってみようか!
・「月の光」
偶然、夜行列車内で乗り合わせた男が主人公に語りだした奇妙な思い出話・・・
なるほど、「押絵と旅する男」の作者大乱歩の嗜好に合いそうな作で、
高評価したのもうなずけるものがある。
月光が降り注ぐ深夜の夜光列車内の幻想的なイメージは強烈な魅力に溢れ、
あらためて「ルナティック」というワードを想起させるものあり。
ただし、過去の事件の謎解きが鮮明でないため、ミステリとしては問題有りなのであろう。
・「十五号車の男」
いかにも「ミステリ」といったタイトルの表題作なのだが、通勤電車内での座席確保のトラブルから、
主人公がフルボッコにされるシーンに、やや幻想風味(混雑している車内にもかかわrず、
トラブルの相手と2人きりのような感覚に囚われる)がある点を除き、これといった事件は
何も起こらない話なのである。
屈辱を晴らすために主人公がストーカーと化すシーンから、何らかの事件への発展(復讐殺人、返り討ち殺人等々)を期待するミスオタも多かろうが、
同じ長距離通勤者であるターゲットに共感さえ抱き始めるという展開が非常に面白い。
あえて分類すれば、今も活きる現代的な視点に富んだ純文学であり、
老舗雑誌「三田文学」に掲載されたのもうなずけるものあり。
前半、通勤車中の暇つぶしのため主人公が車窓から見える工場ウォッチングを試みるシーンには
近年の工場萌えブームを大きく先取りした感があったり、
作者の見聞ないしは伝聞が元ネタなのか、車内トラブルを紹介したエピの部分も妙にリアルで
面白い。
941 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/10/12(月) 20:08:39 ID:dv1DqH+z
(「十五号車の男」に関する感想)
本作を読むことが出来たのは非常な収穫であったと言い得る。
・「幽霊軽便鉄道」
タイトルのまんまな廃線跡地巡りネタの怪談。
零落した温泉場の風景描写は読ませるものがあるにしても、21世紀にこの話を書いても仕方
なかろう。
・「カンダンケルボ」
亡父の戦時中の任地シンガポールへ、その縁の場所を巡る(観光旅行もまじえるが)私小説風味
が強く出た作。作者が老成(2006年)してから書かれた作だけに、観光小説の趣もあり、
重く感傷的に成り過ぎず、飄々とした語り口で巧く読ませるものあり。
・「古い電車」
孤独な老人の死という哀しい結末を迎えるファンタジックな風味が強い作だが、
こういう作を読み慣れた者にとっては特筆すべきものは見当たらない。
・「母里」
廃線跡地巡りネタに亡母への慕情を絡めた怪談。
メーンテーマはありがちな感が強く、印象は薄い作だ。
・「子生」
これは廃線跡地巡りに子が無い孤独な定年退職者の姿をまじえて描いた私小説風作。
表立った怪奇現象を描かず、合理的な解釈も可能ならしめた展開で成功している。
・「成田」
これも廃線跡地ネタだが、今流行りの「鉄子」ネタまで取り入れているのが、作家としての
尽きぬ意欲を感じさせ、一人称の語りで巧く読ませる小品に仕上がっている。
942 :
名無しのオプ:2009/10/12(月) 22:35:10 ID:O0ufAskI
あ
943 :
名無しのオプ:2009/10/12(月) 23:29:00 ID:nyafQWp8
>>937 読後感氏が“誤読漢”なら書斎魔神氏は“無読漢”だねw
944 :
名無しのオプ:2009/10/13(火) 06:55:07 ID:6PeH0vSq
未読姦だな
945 :
名無しのオプ:2009/10/13(火) 14:24:00 ID:ZwC5x9um
「武蔵野殺人√4の密室」水野泰治(講談社)
上司とのラブ・アフェアーを愉しんでいた阿加子のもとに
殺人事件発生の報が入る。武蔵野の旧家土筆庵で女主人が殺されている
というのだ。しかも現場は密室状態だった。阿加子は事件解決に
勢い込むが、土筆庵では更なる密室殺人が――。
屋敷での連続密室殺人を扱ったミステリであるが、濡れ場から始まったり、
密室の構成がショボかったりするのは如何にも量産型ザクミスらしい。
しかし、中盤で思わぬ展開があり、以降は気を取り直して読んだ。
個々のトリックは小粒であるが、質より量で評価出来るところではある。
真相は意外なものなのだが、残念ながら伏線がなくアンフェア。
伏線の伏線はあるから、半フェアか。ともかく爪が甘い。
これも、ザクミスの特徴である。
しかし、メル欄はないわ。クラシックやないねんから。
947 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/10/17(土) 16:02:37 ID:+M5o64yb
ホックスレで話題に出た泡坂妻夫「亜愛一郎の狼狽」を久々に再読。
角川で読んだ時にも思うたのだが、やはり全体的には創り過ぎていて感心はせず。
・「DL2号機事件」
航空ミステリかと思いきや、さにあらず。ジンクスが「異常」にまで高まった末の犯罪を描いた作。
主人公の呼称はまだ「亜」だけ。冒頭で登場する羽田刑事がワトスン役になってゆくかと思うたの
だが・・・
設定そのものが極端過ぎて謎解きミステリとして面白いものとは思えぬ。
・「右腕山上空」
犯人消失ネタだが、気球からのスカイダイビングによる脱出はともかくとして、
ピンポイントの着地ってのは無理有り過ぎでしょ。
UFOネタも蛇足な感あり。
・「曲がった部屋」
相続成り代わりネタだが、これも無理有り過ぎかと。
お化け団地という僻地の舞台設定をもっと活かして怪奇探偵小説仕立て(シデムシの件も含めて)の話にした方が面白くなったかと思う。
・「掌上の黄金仮面」
「背中の目撃者」というタイトルにすればわかり易かったかと。
いかに創りものと言うても、極端に過ぎる設定で今ひとつ乗れないものがあったね。
・「G線上の鼬」
犯人消失ネタちゅーか、犯行現場錯誤ネタとでも称すべき作だが、特別な地形(道路状況)と
天候(降雪)あってのトリックゆえ、特殊過ぎて買えない感じ。
・「掘り出された童話」
消えるドクロの玩具がOriginated by T. Awasakaという小ネタは、マジシャンの一面もある
この作者らしくて笑えるものがあるが、本筋の暗号ネタは遊びが過ぎてわかり難く感心しない。
亜とこのエピのワトスン役を務める挿絵画家の絡みも、おふざけが過ぎて鼻につく。
・「ホロボの神」
大戦中の南の島の密室殺人(?)ネタ。銃器という存在を知らない部族、この点を利用した犯罪
なのだが、解決はあっけなさ過ぎて萎えるものあり。
・「黒い霧」
重厚なサスペンスタッチを想起させるタイトルに反して、スラプスティックコメディな展開を見せる
異色作、読ませどころはこの点にあり、推理は偶然性に頼った飛躍有り過ぎである。
948 :
名無しのオプ:2009/10/17(土) 16:09:57 ID:uLo4jCmN
無理して評論家気取りで書こうとするから、つまらない文章になるのだよ。林くん。
949 :
名無しのオプ:2009/10/18(日) 03:42:05 ID:FmyeeEhr
猛追すなぁ…
ところでふと思ったんだが…ラノベ登校した香具師って、居たり?
950 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/10/18(日) 15:24:16 ID:l3kmMjE7
石川真介「不連続線」を読んだ。
100円均一台を侮るなかれ。
創元ハードカバー新刊で読んで以来、久々に本作をゲット、再読することがでけた。
夫に先立たれ、義母とふたり暮らしな紀子。その義母が名古屋で鞄詰めの死体となって発見、
紀子の探索が開始される・・・
まだ、90年代初期の作品だけあって、公衆電話も全盛、翻訳を生業とするヒロインが使用して
いるのもパソコンでなくワープロである。
移動や旅行に際しても、ネット検索やカーナビなんてものも存在しないので、
地図や道路マップが頻繁に登場するのも時代を感じさせるものあり。
前半は、メインである事件の追及と共に各地の風景描写やグルメ情報を詳細に書き込み、
ポスト鮎川哲也を期待させる快調な進行なのだが、一旦、探偵役が愛知県警の刑事に交代する
あたりから、関係各県の協力による広域捜査体制、
警察小説的興趣は出て来る面もあるとはいえ、ややスローダウン、
しかも、後半では単独の捜査行を続けていた紀子が、
その名探偵ぶりを評価され、警職法による特別捜査官を任命される火サスも仰天な展開で
おおいに萎えるものあり。
東大法出身で一流メーカー勤務の作者ゆえ、民間人の女性の単独捜査というのは、
少しは理屈を付けないと、その非現実性に堪えられなかったのであろうか。
最大の見所(アリバイ崩し)である時計に関する写真トリックも読者にはわからない手がかりであり
フェアでないのも難だ。
黒いトラック、詩のある風景、人それを上司と呼ぶ・・・作中に登場するミステリ小説のタイトル
には思わず笑ったが、この辺はやはりデビュー当時の作者の鮎への思い入れを強く感じさせる
ものあり。
951 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/10/18(日) 15:24:58 ID:l3kmMjE7
また、ヒロイン像が決して、一般受けするピュアなものでなく、夫と義母を失いながらも悠々と
一人暮らしを謳歌する美貌な30女というのは斬新、かつ、リアル、
謎解きのためとはいえ、寺務所勤務のぱっとしない青年(羽様貫一のネーミング)をもて遊び
気味だったりと、ややそのドライな身勝手ぶりには眉をしかめる面もあるにはあるが。
今なら共感を示す読者(特に女性)も多いのではなかろうか。
結局、全ての謎が解決されるわけではなく、犯人(事実上の主犯)も捕えられないまま終わり、
当時の量刑相場だろうが、義母殺しも懲役10年(実際の服役7〜8年)程度になるであろうと
記されている。
不連続線というタイトルの意味も本筋には関係せず、最後になってこじつけのように書かれている
のみだし、本格ミステリの読後感にしては、なんかすっきりとしないのが最大の問題かとも思う。
952 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/01(日) 12:05:11 ID:HO0ZbBmX
笠井新也「阿波の狸の話」を読んだ。
狸エピ以外の「阿波伝説物語」も併録されている。
しかし、本書で紹介されたエピを読み進むにつれて、
四国では狸=妖怪(の代名詞)なのかと思うぐらいの幅広い活躍ぶりに
驚かされるものあり。
他地方では狐、カワウソ、河童、天狗等が分担する怪事、
それどころか、小豆あらい、ぬり壁等の妖怪の仕業とされそうなものまで
含めて、阿波をはじめとした四国では全て狸が一手に担当している感あり。
狸憑きという話はあまり他地方では耳にしないし、
水辺の怪事は普通河童やカワウソの仕業とされるのだが。
策謀ありの仁義なき戦い風の狸合戦や狸が神として祭られる話も四国ならではかと思う。
まん昔好きでもある俺には、とても面白い本であった。
出来得れば、狸伝説の流布に関しての詳しい謎解きも読みたかったところか。
「ダブル・ジョーカー」柳広司(角川書店)
D機関と呼ばれるスパイ養成学校のスパイたちを巡る短編集第2弾。
柳センセイが拝金主義に屈した瞬間をモクゲキ(GG風)。
賞獲ったから続編書けって要請する版元は読者が同じ作風の物しか
受け入れられないアホだと思ってるんだろうけど、どっこい、
読者はもっとアホだから何だって出しゃ咥えるんだよ。
だからそのまんまの1作毎に変えていく作風で良かったのになぁ。
で中身。相変わらず淡々と進行していく筆致がエスピオらしい。
決して広くない領域できちっとアイディアを産みだし短編を仕立てる
手際は流石。
ベストは「仏印作戦」。暗号ありどんでん返しあり伏線もありで良い。
954 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/03(火) 08:12:46 ID:kdgB1ql1
横溝正史「青髪鬼」を読んだ。
正に古書店均一台は本好きにとってパラダイスだと実感。
早速ながら、収録作品全話講評逝ってみようか!!
「青髪鬼」
前に紹介した「迷宮への扉」などとは異なり、
怪人(タイトルに冠された青髪鬼のみならず白蝋仮面と2人も登場)が
跋扈する典型的なジュブナイル冒険探偵小説であり、
大乱歩の少年探偵団シリーズとか好きな奴にはお奨めな一編だ。
暗号解読ネタ、戦前の由利先生シリーズでおなじみの水上の追跡、
金田一ものでおなじみ洞窟の冒険等々、盛り沢山な見せ場の連続であり、
ジュブナイルとはいえ
横溝御大の優れたサービス精神を感じさせる。
「廃屋の少女」
ジャック・ケッチャム風な思わせぶりなタイトル良し。
だが、出来はジュブナイルとしてそこそこといったところか。
黒手組というネーミングは当然大乱歩作品からのインスパイアだろうか?
「バラの呪い」
文体を見ればわかるとおり、(「青髪鬼」のそれと読み比べてみるとよくわかる)
果たして直接御大の手になったものか、大きな疑問が残る少女漫画風な作。
本書の編集構成に山村正夫とあるのが気にかかるものあり。
「真夜中の口笛」
諸に「まだらの紐」ネタで、終盤のストーリー展開まで同じというのは頂けないものあり。
955 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/07(土) 11:18:23 ID:IFZQfZz3
高木彬光「刺青殺人事件」をマジ久々に再読。
ノヴェルス以来か・・・
京都帝大の理科系(冶金科)出身、
後に社会派風、歴史ミステリ、法廷ミステリ等のリアル志向な作での活躍を
思えば、本格とはいえ本作のような猟奇性が濃いコテコテな怪奇探偵小説は
あるいは本領ではなかったのかもしれぬという感もある。
物理的な密室殺人はあっさりと名探偵コナン風に解決されるが、
その奥にある心理的な密室(つまり思考の硬直化)という構成は見事ではある。
戦後間もない社会風俗が書き込まれているのは、
小説としては読みどころながら、ミステリとしてはこの時代でないと成立しない要素(刺青が違法行為であり、早川博士のアリバイが不明になる点等)が生じてしまい、この点が普遍性を失わせるものとなっているのは、はなはだ残念な感はある。
犯人もトリックも1度読むと長く記憶に残る強烈さがあるゆえに、
再読までのインターバルは長めにならざるを得ない作とは言い得よう。
956 :
名無しのオプ:2009/11/07(土) 12:04:55 ID:Khy6KaNd
何故
957 :
名無しのオプ:2009/11/07(土) 12:07:56 ID:rrKI6qbv
読んだ本はすべて感想を書き込む書斎。
うーん、実にわかりやすいw
958 :
名無しのオプ:2009/11/07(土) 17:07:18 ID:enWvOkFw
読んだ本のタイトルや登場人物の性別を間違えると思うか?
奴が読んでいるわけないだろw
959 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/14(土) 14:59:28 ID:UmaxJ+wo
松本清張「告訴せず」を読む。
国会議員の義弟に用意された選挙資金を持ち逃げした木谷は表に出せない
金ゆえ、告訴を免れ逃亡を続ける。
小豆相場で大儲けし、旅館の女中上がりの愛人と共にモーテル経営に乗り出し、
順風満帆に見えたのだが・・・
事件らしきものはあり、
最後はシニカルなドンデン返し
(「告訴せず」で富んだ男が「告訴できず」で破綻)もあるとはいえ、
非ミステリとは言わぬまでもクライムノベルという感がある作。
複雑な小豆相場の仕組み、モーテル経営の細かいノウハウ等が
相当に書き込まれており、この種の話題に興味がある者には良いだろうが、
読み難さともなっているのは惜しい。
やはり現代にも通じる選挙資金問題の方を、清張先生らしく突っ込んで書いて欲しかったという感を強く抱く。
(主人公の妻子の)古着入手方法が清張長編おなじみのご都合主義、かつ、
時代を感じさせるものあり、今ならユニクロあるし。
960 :
名無しのオプ:2009/11/14(土) 16:05:42 ID:szAxok7S
〉〉958
多読だからこそ生じるミスだと思うがねえ。
961 :
名無しのオプ:2009/11/14(土) 16:33:47 ID:3aEwycNF
多読だと読んだ直後の本の内容を間違えるのかよw
ただのバカじゃないかw
962 :
名無しのオプ:2009/11/14(土) 16:50:47 ID:BDy4uPWx
多読だと登場人物の性別を誤読するらしいw
963 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/15(日) 19:59:01 ID:FoPmRlLB
松本清張「事故 別冊黒い画集(1)」を読んだ。
中篇2編を収録。
「事故」
深夜の住宅街でトラックが住宅に突っ込む事故発生。
被害は物損のみ、わりと小さく終わり一件落着したかに見えたのだが・・・
トラックの運ちゃんの死体が山梨県山中で発見され、同じ頃、女性興信所員の絞殺死体が湖畔の竹薮から発見される・・・
果たして冒頭のトラック事故と2つの殺人事件の関連は如何・・・
相変わらずのつかみの巧さは感じさせるものの、
ミステリとしては、後だしの事実(手がかり)が続々、
中篇ということもあるし、これはまあ仕方ないにしても。
登場キャラが偶然に大手でもない同じ興信所に素行調査依頼したり、
いいところの奥さんがあそこまでするか、出来るかという心理面な不可解さ等々、読んでいて疑問が多発するのが難。
特に解決に至る警視庁刑事の出過ぎぶりは不自然の極み、
いくらご近所のよしみとはいえ、余程の暇人なのだろうかと思うてしまう。
崇拝する清張先生の作だが、本作は「逝ってよし!」と書かざるを得ないのが
残念至極だ。
964 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/15(日) 20:00:27 ID:FoPmRlLB
「熱い空気」
表題作にがっくりしてから読み始めると、あらためて清張作品の凄みを実感
出来る作。
ただし、ミステリではなく、なんとあのテレビドラマ「家政婦は見た!」の
元ネタである。
人間の醜悪さを抉ったものとしては、短編「老春」と双璧を成す佳作であろう。
病院の共同炊事場における付添婦との言葉のバトルなんかも、
最後に思わず笑ってしまうほどのビビッドな迫力に富む。
醜女ヒロイン(??)信子の稲村家における、コンプレックスから来る
暗躍ぶりが凄い。生意気で出来が悪い子供たちの弁当に唾を吐きかけたりするのは序の口、家庭生活平穏破壊工作に日々精進するのであった・・・
信子の示唆により幼い三男が老いた祖母に大怪我を負わせる結果となるが、
母親から激しく叱責された様子の三男、がなぜ信子のことに触れなかったのか、
読んでいて疑問を抱き、いつもの清張先生のご都合主義かと思いきや・・・
最後の最後でタイトルにも繋がる展開をやってくれるのである。
この2作共通しての感想は、誰もが個人情報の守秘ということに関して
疎い時代ということ。また、そうでないと成立しない「物語」とも言い得る。
965 :
名無しのオプ:2009/11/15(日) 20:01:36 ID:k+GQuL+A
昨日あれだけ2chに粘着しておいて
今日になって「読んだ」と言われて信じると思うかよバカw
966 :
名無しのオプ:2009/11/15(日) 20:46:45 ID:Rqf6Hb9d
こういう嘘つきにそんなことを言っても無駄だよ。
完全に無視するか、あるいは「えらい、えらい」とでも書いておけばいい。
(間違っても「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ」と書いてはいけませんw)
読んでいないことはみんな分かっているのだから、
まともにとりあう必要なんかありません。
967 :
名無しのオプ:2009/11/15(日) 21:51:38 ID:STIZzeYu
皮肉が通じない馬鹿だから
「えらい」を本気に取るかもよ。
徹底スルーに越したことはないです。
968 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/21(土) 15:24:03 ID:Vfh8hJqC
松本清張「弱気の蟲」を読んだ。
賭けマージャンの借金は、法的には民法上の不当利得であり払わなくてもOK、
(ただし、清算後の返還請求は出来ない)。
ゆえに主人公(中央官庁の課長補佐)が、返済のための借金を重ね、
作中の如く非常に追い詰められた心理に至るのは、やや理解し難い面もある。
主人公が心惹かれるマージャン屋(役所の外郭団体勤務な男が経営)の妻との
情事、これに伴う脅迫等(役所でのステータス保持のため、マージャン関係の借金を完済せざるを得ない)のエピ等を絡めた展開にした方が説得力が出た
ように思う。
後半のミステリにおける偶然性(3人の関係者が現場に大集合)が強い展開は
清張作品ならではのテーストか。
締めの主人公がマージャン仲間の土建屋を訪ねるシーンは泣けるものがある。
969 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/22(日) 16:35:11 ID:4w1nu1TB
中西新太郎+高山智樹編「ノンエリート青年の社会空間」を読んだ。
俺はネタ探し、読書人の嗜みとしてミステリ以外の書も多く読むが、
この本もそんな中の1冊、なかなか興味深く読了した。
ねらーを見ていて驚くのは、この高学歴社会化した現代日本において、
意外に高卒が目につき、2流・3流大学出身のアホが多いことである。
(この板でも2流大学出の業界人の狂乱ぶりは記憶に新しいところである(w )
この本で取り上げられたノンエリート青年たちは
ねらーとは対照的におおいに働くコミュニケーション能力に富んだ人物が多いが、同じノンエリートとして共感を強く抱いて読める者が多いのではないだろうか。
本書全体の「まえがき」と「まとめ」的役割を持った「序章」と「終章」は
別としても、
大学とは大きく異なる専門学校文化を紹介した第1章、
自転車メッセンジャーの世界を描いた第2章(これは是非ミステリの題材にも
取り上げて欲しい)、引越業の世界を取り上げた第3章、今何かと話題になる
ことが多い請負業の実態とそこにおける労働者像を書いた第4章、
入試難易度最低位高校を卒業した5人の女性のその後5年間を描く第5章、
といずれも下手な小説を読むのがアホ臭くなるリアルな興趣溢れる論考と
なっておる。
ただし、本書の執筆者たちはいずれも大学講師やドクター過程在籍者という
典型的な学歴エリート世界の住人なのがひっかからぬものがないでもない。
いずれノンエリートによる本書の如き論考が上梓されることも肝要かと
思うが・・・無理ぽ?
970 :
名無しのオプ:2009/11/22(日) 18:14:18 ID:qeiqSZ7p
大卒に対する底知れぬ憎悪を隠せない中卒の論客
書斎魔珍
という人がいますよ。
その人に期待したらどうでしょう?
相手にしてくれる出版社はないようですから自費出版になるようですけど。
971 :
名無しのオプ:2009/11/22(日) 23:48:50 ID:nYr8Ym90
まだ活字文化に権威を見るバカがいるとはね。
現実はネットに侵食されて壊滅寸前なのに。
書斎は早くから執筆活動をネットを舞台にやってきた。早かったね。
972 :
名無しのオプ:2009/11/23(月) 00:05:20 ID:IBU1fF5w
執筆活動×→落書き○
973 :
名無しのオプ:2009/11/23(月) 08:49:07 ID:pX4f/Ak7
>>971 あれ?書斎魔神ってどっかの出版社CEOじゃなかったっけ?
974 :
名無しのオプ:2009/11/23(月) 09:01:38 ID:2iKhXZ2r
たかが掲示板への書き込みを「執筆」だの「連載」だのって、
“作家ごっこ”に酔いしれてる馬鹿。
現実世界で、いかにうだつがあがらないかが窺い知れるな。
975 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2009/11/23(月) 16:31:11 ID:5PzY8lwU
松本清張「内海の輪」を読んだ。
前半は考古学萌え!な新進の大学助教授と地方(松山)老舗洋品店主夫人の
情事話。(2人は元義姉弟)
清張作品らしい風景描写の魅力はあるとしても、渡辺淳一かお感が続くが、
後半に至ってやっと倒叙ミステリ展開へ。
だが、オチが酷過ぎる。いくらなんでも同じタクシー運転手が・・・
こんなことは言いたくないが、本作に関しては
果たして清張先生、真面目に書いていたのだろうか?
976 :
名無しのオプ:2009/11/26(木) 19:24:40 ID:k2RBqFPE
『マークスの山』を読みました。字がギッチリ詰まってて読むのが疲れた。
余分な描写を削って半分くらいにしてくれたらテンポも速くなってもっと面白かったと思います。
977 :
名無しのオプ:2009/11/26(木) 19:27:56 ID:k2RBqFPE
『99%の誘拐』を読みました。
面白かった。描写もドライでよかった。
結末もあっさりしててよかった。
文庫本を買いましたが字も大きめで読みやすかった。
978 :
名無しのオプ:2009/11/26(木) 19:33:12 ID:k2RBqFPE
『破線のマリス』を読みました。面白かった。
特に主人公が取り憑かれたように狂気を帯びていくクライマックスは圧巻。
979 :
名無しのオプ:2009/11/27(金) 06:55:37 ID:XJOAZqzE
「悪夢の観覧車」読んだ。
面白かったんだけど、作者のスレはないのか?!
「TVアニメ殺人事件」辻真先(朝日ソノラマ)
スーパーこと可能キリコがバイトしているスナックの常連である
アニメーターが奇怪な死を遂げた。女装をしてバイクに乗り、
看板に突っ込んだのである。警察は自殺と判断したが、彼とデートの
約束をしていたキリコは他殺と睨み、ボーイフレンドのポテトこと
牧薩次を巻き込んで真相解明に乗り出す。
このシリーズは「合本・青春殺人事件」以来2冊目。
このカップルはイマイチ嵌れないのだが、その点は今回も同じ。
キリコがイミフなんだよなあ。ツンデレでもなく暴力娘でもなく。
何かただの便利屋みたい。そして牧は空気。
仕方ないのでプロットを見ていくと、今回は自殺に関するトリックが
2つ盛られている。前者は有り得ない感が漂うものの、
ジュブナイルとしてはアリだろう。後者はスマートでマル。
フーダニットも中々の伏線具合で良い。
「Killer X」二階堂黎人×黒田研二(光文社)
招待を受けて恩師が住む山荘に集められた高校の同級生たち。
しかし、迎えた恩師は彼らを呼んだ覚えはないと言う。
彼は事故により変わり果てた姿となっていた。
猛吹雪のせいで外に出られなくなった彼らは山荘に足留めされるが、
そこに不可解な出来事が次々に起こり、遂には死者が……。
評判の良い合作シリーズなので読んでみたが、確かに面白かった。
凝った構成で楽しめた。特に終盤の畳み掛けは圧巻。
相性良いんだなこの2人。
トリックに関して言えば、1つは最初に疑ったんだがなぁ。結局騙された。
もう1つも解らなかったがこれはややアンフェア気味。
ストーリーが暗いんで続けて読もうとは思わないがいずれ次も読みたい。
あ、その前に「白銀荘の殺人鬼」かな。
最後に、過去のある事件の犯人を特定した部分で、当該箇所には
そこまで詳しくは書かれてないと思うのだが……。
982 :
名無しのオプ:
冬のオペラ 北村薫
読みやすいし、それなりに面白い。
だが、読み終わったあとにはなにも残らない。
そういう意味では本格ものだと言える