『読みました』報告・国内編Part.5

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955書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
高木彬光「刺青殺人事件」をマジ久々に再読。
ノヴェルス以来か・・・
京都帝大の理科系(冶金科)出身、
後に社会派風、歴史ミステリ、法廷ミステリ等のリアル志向な作での活躍を
思えば、本格とはいえ本作のような猟奇性が濃いコテコテな怪奇探偵小説は
あるいは本領ではなかったのかもしれぬという感もある。
物理的な密室殺人はあっさりと名探偵コナン風に解決されるが、
その奥にある心理的な密室(つまり思考の硬直化)という構成は見事ではある。
戦後間もない社会風俗が書き込まれているのは、
小説としては読みどころながら、ミステリとしてはこの時代でないと成立しない要素(刺青が違法行為であり、早川博士のアリバイが不明になる点等)が生じてしまい、この点が普遍性を失わせるものとなっているのは、はなはだ残念な感はある。
犯人もトリックも1度読むと長く記憶に残る強烈さがあるゆえに、
再読までのインターバルは長めにならざるを得ない作とは言い得よう。