『読みました』報告・国内編Part.5

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208書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
久々、リチャード・レイモン「殺戮の野獣館」を再読してみた。
再読のせいもあるが、刺激的な作が増加した今日では刊行時のインパクトは既に無く、
むしろ、おぞましい行為の描写を寸止めする展開はシニカルな論者なら「奥床しい」と評する
やもしれぬ。
ジョン・ソールの「暗い森の少女」のような凄味もなく、やはりレイモンはマイナーな作家であった
と思わざるを得ない。
リアルな野獣とでも称すべきヒロインの前夫ロイというキャラの処理にも失望を禁じ得ない
キワモノな作らしく、モノホンな野獣とのガチンコ勝負を期待していたのだが・・・
209書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/08/17(日) 15:45:58 ID:7+PvZnX/
レイ・ゴールデン「5枚のカード」を読んだ。
ポケミス名画座シリーズの1冊として刊行された作だが、
裏表紙の解説に「サスペンスフルに展開する異色のウェスタン小説」とあるとおり、
実態は完全に西部小説、プロファイルを見ても、作者はテキサス州フォートワース生まれの
典型的西部小説家であり、フランク・グルーバーのようなミステリも書く人ではないようである。
牛泥棒をリンチにかけた関係者の連続殺人というフーダニットとして書くことも十分に
可能な設定なのだが、犯人は早々と登場、以後はグローリー・ガルシュという西部の町を舞台に
丁寧な情景描写を積み重ねたウェスタンの世界が展開されてゆく。
短く読み易いのが取り柄であり、それなりに楽しめはするのだが、リクエストがあったとはいえ、
なぜ本作がポケミスで刊行されたのか、これこそ「ミステリ」ではある。
解説中にある「laid eyes」ネタではないが、「ふたりは込み上げる欲望に身を任せた」(71頁)、
「はじめて欲望の奔流に身を任せた・・・」(139頁)、訳者の「好み」のような
ポルノグラフィーまがいのこの「原文」も気にかかるところだ。