横溝正史 -第十五章 本陣の悲劇-

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529書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
蝶々の二都物語的構造(関西は背景のひとつに過ぎない)に無自覚な連中がいるようだな、
そして笛の件は完全スルーなのが笑える。
そもそも、御大の代表作で関西を
>大多数の作で舞台にしていない
この点を置いて議論は進展し得ないのである。
思うに、御大は関西人とは言うてもハイカラな神戸の街っ子育ち、
大阪に代表される(阪大薬学部の前身である大阪薬専を出ているので、御大は大阪にも
詳しいはず)の押しが強い独自の濃さには違和感(ないしは嫌悪感)を抱いていた可能性すら
ある。典型的な関西人と言えば鶴光師匠が思い浮かぶが、コテコテだもんな(w

「館もの」に関する考察
歴史的考察をすれば、「館」が物語の主舞台(事件、物語のクライマックス等)になっていれば
全てこれに含めてOKと見てよい。
海外古典で著名な嚆矢は「赤い館の秘密」であり、名作「グリーン家殺人事件」「Yの悲劇」も
「館もの」に含めるか、この趣向を有する作と見て差し支えないと言える。
この視点から、横溝作品(長編)を検討すると、笛は密室殺人、いわゆる「悪魔」の退場する
クライマックス等々、主たる事件の大部分が椿邸で発生しており、館ものの趣向を十分に備えた作
と言い得るが、冒頭の椿子爵の失踪、明石の一件が事件のキーとなっていること等、
舞台の広がりも見られるため、典型的な「館もの」とは言い難い面もありそうである。
この点、金田一の上京も中止になり、館で怪事件が連続し、事件の解決まで終始主舞台となって
いる迷路荘は、正に典型的な「館もの」と言い得る。
まあ、アーヤ作品にばかり囚われるのは近視眼的であると批判されて当然であろう。