【緑衣の鬼】 江戸川乱歩 第十一夜

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735書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
大乱歩自身が、「ミステリを広義に把握している」と記していないから、そうではないというのは
愚論に過ぎる。
まず、押絵の例を挙げたが、実例を見ていけば大乱歩が現代的視点から見ると相当に広く
ミステリという概念を把握していたことがわかるのである。
「盲獣」や「虫」はクライム・ノヴェル(広義のミステリの範疇になら入る)、
「闇に蠢く」は、グロを強調したサスペンス作品ではあるが、
サスペンス・ミステリとは言い難いストーリー、
「人でなしの恋」「地獄風景」「防空壕」「芋虫」・・・と挙げてゆくと、
それぞれに「ミステリ?」な作ばかりである。
通俗長編にしても、前記したとおり「冒険探偵小説ではなく、探偵冒険小説ではないか」
(作品の主眼の差)との批判も成立し得よう。
大乱歩の城昌幸評は、怪奇幻想だけでなく、本格ミステリと言い得る「化人幻戯」(オリジナル)や
「三角館の恐怖」(翻案)を書いた作家らしくはある。