【本格の】鮎川哲也 五つの時計【鬼】

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207書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
840 :書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/03(木) 22:08:55 ID:5fsUfHqf
鮎川哲也『殺人歌劇<第一幕> 自選傑作ミステリー』を読んだ。
全7編を収録。
最初に収録された4作は、このマエストロのイメージからは意外感が大きいが、
非常に面白くも興味深いと同時に、
マエストロ鮎は、人間が描けない単なるパズラーやトリックメーカーにあらず、
優れた小説家でもあったことを再認識させられるものとなっている。
では、今年も大好評な収録作品全話講評いってみよう!
『絵のない絵本』
タイトルからもわかるとおりアンデルセンねた。
しかし、メルヘンちっく、スプラッターというこのマエストロの作風からは想像し難い内容が
展開される意外性に富んだ異色中の異色作であり、なんとも面白い。
『マガーロフ氏の日記』
本書収録の作者の手になる『作品のノート』に、
『推理小説のジャンルに「秘境物」がある。(中略)海外作品でいえばジュール・ヴェルヌの
<地底旅行>やコナン・ドイルの<失われた世界>も「秘境物」に分類されるだろう』
と記されているが、概念規定・例示共に疑問を感じるものの、作品そのものは面白い。
マモントの遺骸が残るシベリア奥地の村を舞台にした神秘とエロティックな要素もある奇談、
これもこのマエストロの作として異色であるが、日記形式の語りが効果を発揮、
全編に漂うサスペンスは秀逸である。
『ああ世は夢か』
明治東京情緒が横溢、これもまた異色の一編で、この作者には珍しい猟奇犯罪が描かれている。どこかせつないラストが印象的な作でもある。
『人買い伊平治』
『マガーロフ・・・』や本作は、横溝御大の戦前の短編と言われても信じてしまいそうな作風である。
実話をネタにした奇談に近い南洋犯罪談である。
作者があえて脇に配したという女郎屋の主人伊平治のキャラは面白く、幕切れも『ああ世は・・』
とは異なる感慨に富んでいる。
208書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/05(土) 22:23:06 ID:SND6ZtuN
841 :書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/03(木) 22:09:39 ID:5fsUfHqf
『小さな孔』
本作以下3作は鮎作品らしいミステリである。
本作に関しては、オチが地味なうえに特殊過ぎるきらいあり、出来は今ひとつと言い得る。
『かみきり虫』
偽装が問題視された今日では面白く読める一編で、表題となったかみきり虫ネタも楽しいもの
がある。
東北の山峡の温泉が舞台であり、どこか松本清張作品にもありそうな作でもある。
『水の中の目』
刑事コロンボの『ハッサンサラーの反逆』を想起させる部分もあるが、無論、本作が先行している。
まさに綱渡りの計画犯罪であり、いささか(注 いささか先生ではない(w )創り過ぎの感も無くは
ないが、ミスオタが読んで楽しめるものには仕上がってはいる。
締めで鬼貫&丹那を使っても面白い一編だったのではと思われ。
209書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/05(土) 22:23:52 ID:SND6ZtuN
844 :書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/05(土) 22:06:05 ID:SND6ZtuN
鮎川哲也『殺人歌劇<第二幕> 自選傑作ミステリー』を読んだ。
前集とは異なり、典型的な鮎中・短編ミステリ5編を収録。
正直言うて、自選でこの程度という感のものばかりである。
また、前集のようなバラェティ感を欠くのも残念。
『皮肉な運命』
クラシックオタな鮎らしい一編だが、『作品ノート』のある2曲に関する記述、
『・・・したがって一方がハ短調で一方が二短調で・・・といったことも、多くの読者は先刻
ご承知の筈だ』、これはオタらしい思い込みが強過ぎる感がある。
ミステリファンとクラシックファンが必ず被るとは限らないし、より広範な読者を視野に置いた場合
には暴論と言われても致し方あるまい。
余談ながら、作者は、はしだのりひことシューベルツというネーミングに反感を持っているらしい。
(『風』は名曲)
『まだらの犬』
収録作品中最長の作。
鬼貫&丹那も登場し、丹念な捜査活動により容疑者が絞り込まれてゆく過程は警察小説として
の興趣もある作で、物語の締めは名無しの婦人警官がつとめ、一番おいしいところを持ってゆく。
鬼貫ファンには不満もあろうが、名探偵の活躍に拘らず、鬼貫の透明性を理想としたこの作者
らしくもある。
210書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/05(土) 22:24:49 ID:SND6ZtuN
208 :書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/05(土) 22:23:06 ID:SND6ZtuN
841 :書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/03(木) 22:09:39 ID:5fsUfHqf
『小さな孔』
本作以下3作は鮎作品らしいミステリである。
本作に関しては、オチが地味なうえに特殊過ぎるきらいあり、出来は今ひとつと言い得る。
『かみきり虫』
偽装が問題視された今日では面白く読める一編で、表題となったかみきり虫ネタも楽しいもの
がある。
東北の山峡の温泉が舞台であり、どこか松本清張作品にもありそうな作でもある。
『水の中の目』
刑事コロンボの『ハッサンサラーの反逆』を想起させる部分もあるが、無論、本作が先行している。
まさに綱渡りの計画犯罪であり、いささか(注 いささか先生ではない(w )創り過ぎの感も無くは
ないが、ミスオタが読んで楽しめるものには仕上がってはいる。
締めで鬼貫&丹那を使っても面白い一編だったのではと思われ。