『読みました』報告・国内編Part.4

このエントリーをはてなブックマークに追加
884書斎魔神 ◆AhysOwpt/w
『戸田巽探偵小説選U』を読んだ。
この第2集は収穫あり。
ミステリには珍しい伝統芸能ねた(日本舞踊)の『踊る悪魔』が面白い。
短い枚数ながら徹底したピカレスク・ロマンが展開され間断するところがない。
読む価値あり。他には特筆すべき作はないものの、第1集よりも時代が下ったせいか、
作者の物語創りに関する技巧の上達を感じさせるもの多数。
ミステリ以外の作の収録も多く、「幻視」「深夜の光線」「人形師」は怪奇小説、
「朝顔競進会」は恋愛絡みのユーモア小説、「色眼鏡」は非ミステリのSS、
創作篇の掉尾を飾る「運の神」「続運の神」は戦後の山陰の農村を舞台にした普通小説である。
885書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/27(日) 22:57:36 ID:aoD230QD
浜尾四郎「鉄鎖殺人事件」を読んだ。
古書店で本書を手にした俺はアホなミスオタの如く思わず勝利の雄叫びを上げた、
「ゲーーーーーーーーーーーーーット!」と。
しかし、好評が多い作ながら、一読、思わずガクーリという感がある。
とにかく探偵しか知らない事実というのが多過ぎ、作者はS・Sを信奉しているとのことだが、
犯人像もS・Sが定立したルールに照らしても、二重の意味でかなり問題有りである。
第一級の知識人である浜尾氏は、一体、本作のどこがフェアな本格探偵小説と思うていた
のであろうか?
ゆえに、好評も納得がいかないものがあるが、戦前の日本の本格ミステリではこの程度で
良しとすべしということなのか。
いっそのこと、猟奇的なタイトルに合わせて、コテコテの怪奇探偵小説、因縁噺の強調の方向で
行けば、それなりに楽しめる読物となったであろうが、理知的・都会的な本格ミステリの表装を取る
だけに始末に悪いものがある。