873 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :
『青いエチュード 鮎川哲也初期コレクション2』を読んだ。
シリーズキャラである星影、鬼貫の初期作が収録された作品集。
大好評につき収録作品全話講評いってみよう!
「山荘の一夜」
登場人物は全て外国人という翻訳気取りな一編だが、雰囲気は淡白な鮎作品そのものなのが
面白い。
非常に短い作ながら、犯人の必然性はばっちし決まっているが、偶然性に頼ったものなのが
惜しい。
「黄色い悪魔」
トリックは「ノックスかお・・・」な一編だが、星影のキャラが活き面白く読める作。
ストリッパーならぬストリップティザーがガイシャ(?)となる作だが、
全く色気も猟奇も感じさせないのが、いかにもこの作者らしいかと思う。
「朝めしご用心」
名探偵アンビル先生が登場するコント仕立てのバカミスとして楽しめ、オチはまるで落とし噺で
ある。
後年における本格のマエストロの姿を知る者には、若き鮎がこんな作を書いていたとは、
やはり意外感大ではある。
「甌」
ストイックで淡白な鮎作品には異色中の異色である艶笑コント。
このマエストロが自作中に「一物」とか書くとは・・・
ラストの下ねたは、これが鮎作品かと絶句状態になるかモナー。
874 :
書斎魔神 ◆AhysOwpt/w :2008/01/20(日) 14:38:39 ID:E4nWr3D2
「白昼の悪魔」
鬼貫&丹那談。
飛行機によるビラ配りが健在だった懐かしい昭和30年代の東京情緒溢れる作だが、
(なぜか人気の「三丁目の夕日」にはこのエピは登場しない)
この犯人キャラにしては、犯行に手落ちが多く、従って謎解きは今ひとつ物足りないものがある。
ラストに鮎の女性観を見る気がするのは面白い。
「青いエチュード」
鬼貫のみ登場。後半、完全犯罪を意図する犯人の男女をコロンボOR古畑スタイルの粘着ぶりで
追い詰めてゆく。この辺は読ませるものの、本作に関しては長編に登場する彼氏のキャラとの
ギャップを大きく感じてまう。やはり偶然性に頼った解決がひっかかる。
あの場でそこまで我慢出来ないか?
「五つの時計」
これも鬼貫のみ登場談。
五つの時計がキーポイントになる謎解きミステリ、ミスオタには納得の面白さと言い得る。
蕎麦屋絡みのトリックが特に面白い。
疵を言えば、「20〜30分ならばともかく・・」という点、
人間心理からみて、やや説得力を欠く感がある。