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書斎魔神:
五味川純平「人間の條件」を読んだ。
馬鹿でかい虫眼鏡を携帯して名探偵気取りの奴、
ハイライトを横ぐわえしてハードボイルドを気取っている奴等々
こういった精神が弛緩したミスヲタに突きつけて読ませたいのが本書である。
鉱山を舞台にした第1部と第2部、軍隊を舞台にした第3部と第4部は
板違いかもしれぬが、満州を舞台にした戦闘と逃亡がメーンとなる
第5部と第6部の前半は冒険小説そのものである。
(そもそも主人公梶は気骨がある冒険小説の主人公そのものであると言える)
全部読破して欲しいが、第5部と第6部だけでも読んでみること。
激烈な戦闘シーンに続く地獄巡りを思わせるような逃亡シーンは、一読巻を置かせぬ
ものがある。心して読め!
「雪は無心に舞い続け、降り積り、やがて、人の寝た形の、低い小さな丘を作った」
この最後の一文を読み終えたとき、累積したミステリの文庫本、カッパノノベルス、
講談社ノベルス等々を静かに野辺の送りにしたくなる者も多かろう。