『読みました』報告・国内編Part.4

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477書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
半額で入手した新潮新書2冊を一気読みした。
河内孝著「新聞社 破綻したビジネスモデル」
著者は、元毎日新聞常務取締役、現場の編集・営業両面に渡るキャリアが豊富であり、
新聞の現状と将来に関するレポと提言は一読に値する。
身近でありながら、新聞業界のことを書いた書籍でも今まであまり触れられて来なかった
新聞販売店の実態、折込広告の意義等をミステリを読むが如く謎解きした
第2章が特に興味深いものがあった。
著者の提言は、近年は協調傾向にある朝日・讀賣の2大連合に対し、毎日、産経、中日に
よる新聞製作体勢全般に及ぶ広範な業務協力実現であるようだが、
これなら最終章である第5章で予想されているIT社会化における電子瓦版時代
にも形を変えながら対応出来ようかと思う。

郷原信郎著「『法令遵守』が日本を滅ぼす」
著者は私立大のロースクールに出向中の検察官、東大理学部卒という理科系出身の法曹
のせいもあってか、現実の事件を素材にしたクールな現状分析に基づく「法令遵守」
というものに対する考え方
(コンプライアンスは形式的な法令の遵守ではなく、組織の社会的要請に対する適応
とする。まず時代に即した立法趣旨を考えよということか)は、十分に傾聴に値するものがあるやに思う。
現実の事件(ライブドア、村上ファンド、耐震強度偽装、パロマ等近年の著名な事件が
主として取り上げられているものの、鉄道用保守作業車不正車検事件というのは初耳で
あった)を著者独自のコンプライアンスの概念から読み解いてゆく展開は、
ミステリの謎解きの興趣を凌駕する知的刺激に溢れたものとなっている。
しかし、本書中で著者が公判の行方を懸念していたライブドア事件、村上ファンド事件が
共に意外にあっさりと一審有罪判決が出たのは意外であった。