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書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :
有栖川有栖「月光ゲーム」を読んだ。
平成元年1月に刊行された本作は文庫化もされ、既にクラシックと言うても
よいかもしれぬが、全体的に若書きが目立つ作ではある。
解説でやんわりと指摘されている点のダイイングメッセージ解釈は無理有り過ぎ、
動機の掘り下げも説得力を欠き、売りであるはずの噴火によるクローズドサークル形成
(携帯もPCも皆無の時代性を感じさせる)によるサスペンスも学生が多数登場する
軽い青春小説風の展開とはミスマッチで、今ひとつ盛り上がらないまま終わる。
ミステリとして見るべきものは、マッチ箱に関する推理という小ネタ程度ではないか。
個人的には、火村助教授と作家有栖コンビのシリーズの方がアダルトな作風で好みな
こともあるが、学生有栖シリーズ作品中でも、後の「双頭の悪魔」の方が、
謎解きミステリとしては質両共に読み応えがあるとは言える。
だが、今読むと、学生が主人公の豊島ミホの青春小説あたりが好きな者には、
1番抵抗感無く読めるミステリの類ではないかと思う。
内輪のサークルの駄弁り、他大学生とのキャンプ活動等の描写は活き活きとしたものが
感じられ、この作者のこの方面の筆力を確認させるものである。