『読みました』報告・国内編Part.4

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320書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
原武史「鉄道ひとつばなし2」を読んだ。
著者のどこか文学的筆致が良、好評だった前作も同様だが、
本書もトラベル・ミステリファンには必読な鉄道ネタが満載である。
特に第七章(「鉄道の明日を思う」)にある「一分の盲点」は、正に「鮎の世界」そのもの。
著者は、マニアックな鉄オタにあらず、「鉄道」という交通機関を通して「文化」
を洞察するというスタンスなのが、私のような一般的な読書人にも面白く読めるもの
となっている因であろう。
今では歴史ミステリの素材足り得る第一章「天皇と東京」は、
鉄道を通して官と民の問題を取り上げており、著者の専攻が活かされた読み応えが
ある作となっている。
321書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/06/23(土) 12:07:25 ID:6mjQZZRr
武藤康史「旧制中学入試問題集」を読んだ。
一見、ミステリとは無縁、著者もミステリ関係の著作は皆無な慶應出身(マスター)
の評論家であるが、入手困難なものが多い旧制中学入試問題の徹底した紹介・分析
により浮かび上がって来るのは、時代の影、国家の意思といったものである。
(天皇に関する一連の国語の問題、算術の問題に頻出する戦争ネタ等々
この点には明解な記述はないものの、示唆する記述は散見される)
この辺の展開は、歴史ミステリそのものと言い得る。
なお、過去問を見ていて思うのは、合格・高得点狙いには、教科書(「尋常小学読本」等)
の熟読(教科書記載の漢字、文章からの出題が圧倒的に多い)、
過去問研究(繰り返し出題される頻出問題が多い)等が必須という受験の基本は、
今でも不変なものがあるのは、面白くもあると共に、ペーパーテストという制度の限界
をかいま見る気もした。