『読みました』報告・国内編Part.4

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304書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
田中貴子「検定絶対不合格教科書古文」を読んだ。
あとがきに、この著者がミステリ好きである旨がさらっと記されているが、
さもありなん、教科書に採用されることが多い古文を文学的に読み解いた
第1部「教科書を読み直す」は、まさにミステリの「謎解き」そのものである。
「宇治拾遺物語」の「児のそら寝」に僧と児の性愛関係を読み取り、
「平家物語」の「木曾の最期」の義仲と今井四郎に「うほっ」を見る等々。
また、明治時代の子規の「仰臥漫録」から古代まで遡って古文を読んでゆく
第2部「教科書には載らない古文を読む」も非常に面白い趣向であった。
惜しまれるのは、およそ「教科書」の名にふさわしくない著者の現行教科書批判等が
展開されている第3部「論説編―国語教科書の古文、ここがヘン!」である。
いかにも本書版元(朝日新聞社)らしいものがあり、著者が最も書きたかった部分でも
あろうかと思うが、1部、2部と比較した場合の内容的違和感は大きい。
2部までの280頁でもボリューム的には十分であるし、3部の内容はあとがき等で
軽く論及する程度にして欲しかったものである。
また、こうした方が古文の楽しさを伝えるいう著者の意図には、
より沿う形と成り得たのではなかろうかと思う。
305書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2007/06/17(日) 21:39:00 ID:UoYJ4+oK
稲垣恭子「女学生と女学校」を読んだ。
女学校という存在そのものが、現代ではまさに「ミステリ」と言い得る面があるが、
明治時代に端を発する旧制高等女学校は、現代の女子校とは異質に見えて、
そこに現代の女子学生の諸形態の原型を見ることが出来るのが面白い。
腐女子(第1章「文学少女」)、百合(第2章「女学生の手紙の世界」)
ヤリマン等(第3章「堕落女学生・不良少女・モダンガ−ル」)、
お嬢(第4章「ミッション女学生」)、そして現代の多数の女子校や短大にも
見て取れるであろう現象(終章 「軽薄な知」の系譜)。
元祖JKに対する興味本位ではなくして、現代歴史書として手に取ってみるべき書と
言い得る。

野上弥生子「大石良雄」を読んだ。
表題作は、大石内蔵助こと大石良雄(「よしたか」と読む)が、
句や庭を愛する風流人として生きることが許されず、
吉良邸討ち入り決行へと追い詰められてゆく過程が、
妻子(妻の名が「くり」となっている)や同志等周囲の人々との絡みで描かれてゆく
心理サスペンス・ミステリ風の作であり、短い作ながら読み応え十分。
併録された作者晩年の作「笛」は、母子家庭を材にし、戦後の庶民生活を活写した
アットホームな市井小説と見えながら、ショッキングなラストを迎える。
タイトルが効いて来る締めの淡々とした一文も印象的な作。
「人間」というものが何ら描けていないくだらない新書・文庫ミステリに耽溺している
ミスオタよ、悔い改め、心して読め!