エラリー・クイーン&バーナビィ・ロス〜PART5〜

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151書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
>初期作の冗長な部分に辟易としてしまう可能性も大
特に国名シリーズ第1作ローマ帽子に顕著。
また、中・短編に関しては、せいぜい水準作程度ということは、
際立った作は無いということでもある。
エルは本質的にはある程度のボリュームが無いと持ち味を発揮出来ない
長編作家であり、短編集を読んで「こんな程度」と受け取られる恐れもある。
(特に、謎々集まがいの「クイーン検察局」を推すなど、ファンとしての良識を
疑うものがある。この作品集の刊行はエルの名を貶めこそすれ、高める要素は皆無であり、
到底、初学者に推せるような代物ではない)
この点では、長めの中編である「神の灯火」から入るのは悪くはないが、
これもエル的というよりは、ジョン的状況設定をエルが書いたらという不可能興味
の方が強い。
従って客観性を重んじた結論としては、
国名シリーズは、同シリーズの傑作と称されるギリシャ棺は、本格ミステリの神エルが
書いたアントニイ的状況で、シニカルな面があるやや凝った作であり、
エジプト十字架は猟奇有り、追跡アクション有りと、ややエルらしからぬ要素が多い作
であり、しかも両作共にやや大部でもあることから、この2作に先駆けて刊行された
コンパクトに纏まった論理重視のいかにもエルらしい「オランダ靴の秘密」を推しておく。
レーン4部作は、世評どおり「Yの悲劇」でOK.。
謎解きの面白さのみならず、キャラの魅力、ラストの余韻といい「小説」としての面白さ
(ゆえに、本格ミステリとしての批判が出る余地はあるが)を併せ持つ読み応えある傑作
なのは間違いない。