【黒蜥蜴】 江戸川乱歩 第九夜

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294書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
講義を続けましょう。
「押絵と旅する男」は、いかに広義に解釈してもミステリの範疇では把握し難い作である。
従って、ミステリとして読んでは面白いはずがないのである。
本作は、怪奇探偵小説家江戸川乱歩が書いたファンタジーであり、
乱歩の体質とも言うべきエロ・グロ・怪奇が抑制され、
(ラブストーリーを書いたら「芋虫」、本格を書いても「化人幻戯」になってしまうのが
本来の大乱歩テースト)
似た嗜好の要素を持つ「人でなしの恋」に健著な病的な風も無く、
むしろ、ロマンティックな風さえ漂う異色作である。
大乱歩短編の代表作でありながらも、新潮文庫の傑作選から外されたのは、
ミステリ傑作選という趣旨であれば、極めて妥当と言わざるを得ない。